戦国スローライフで楽しみます。





ドリーム小説

「色々思うのですが、直政さんってお嫁さんいないの?許婚とかさ」

の些細な疑問だったのだろう。
単純な質問だったのに。
問われた直政にしてみれば、面白くないと感じた。
話は続き、

「あ!すでに別の屋敷とかにいるとか?私まだ紹介されていないとか?
それとも、私が居ついたことで、奥さんとひと悶着遭って別居中とか!?」

いまだに嫁を紹介されない理由をそう思っていたなど。
普通に考えれば、嫁を紹介されない理由として、最初から嫁など存在しないとは思わなかったのだろうか?

ただ、が知っているこの時代と言うのが、自分のこの時代とは少々状況が違うようなので、も戸惑っているのだろう。
それならば、それでいい。
に納得してもらえたならば。

だけど、ずっと気持ちがモヤモヤする。

「ちょっと安心しました」

「何に?」

「直政さんのお嫁さんに土下座せずにすんだと思って!!」

自分の気持ちなど知らずに能天気に答えたに直政は呆れた。
もっと呆れたのは、そんなを好いていた自分にだ。





【7】





七夕を自分なりに楽しんだという事は、季節は夏なのかと改めて思った。
そう言えば、段々暑くなっていくなぁと今更思った。
けど不思議とこちらの夏は自分がいたところに比べたら過ごしやすいように感じた。

(温暖化問題とかまだないのだろうなぁ)

その原因になるようなものが起こっていないとか。
まぁ詳しいことなどは知らないのだが。

(それでも暑いには変わりないけど…)

夏と言う季節にでもなればそれが普通だ。

(そっか…もう夏なんだ…)

所謂戦国時代に来てしまったが、どこか、何か違う戦国時代。
自分的には苦労なく過ごせているのでいいものだろう。
これで文句を言うと罰が中りそうで怖い。

(戦国ライフを楽しむぞ。なんて言っていたけど、楽しめているよね、ちゃんと…)

いつかは元の時代に帰りたい。
けど、それがいつになるのかわからないし、もしかしたら戻れないかもしれない。
でも、急に戻る事になるかもしれない。
そうなったときに、今を後悔しないように楽しもうと考えたのだ。

ただ、毎日何か起こるわけじゃないので、割とのんびりしたものだ。
何もしないで過ごすのはどうかと考え、女中達の手伝いくらいはしようと、空いた時間に何かしらしている。

電化製品の無い時代なので、手伝うと言っても案外苦労する面も出て、あぁ自分は不器用だったのかと思う事も多々あった。

「洗濯機って偉大なんだなぁ…」

今日は洗濯を手伝っていた。
全部手で作業せねばならないことで、洗濯が一番大変だと思っていた。
着物相手に手もみで洗う。
意外にも洗濯板というのもまだ存在していないようなので、洗濯機を作るなんてことは無理なので、洗濯板ぐらいはなんとかならないかと、は相談してみた。

「せんたくいた?なんだいそれは」

「えとですね、こう…まな板みたいなもので、まな板と違うのは表面が波状と言うか、段になっているもので。それに衣類をこすりつけて洗うみたいな…」

「それでどうなるの?」

「今よりは汚れを落とすのに楽になるはずです。私も使ったことはないのですけど」

こんなものだとは女中達に説明する。
大昔から存在するものだと思っていた洗濯板。
意外にも近代的なものだったのかと驚いた。

「へぇ使ってみたいわね」

女中達には良い反応がもらえた。あとはそのものを用意せねばならないだろう。

「って事で、直政さん。何かいい案ありませんか?」

「……俺に聞く事か?」

「色んな人に話を聞くのもいい手だと私は思うんで」

「そ、そうか…」

直政が洗濯をしている姿など見たことはないし、多分話を振ったところで困るだろうなと思ったのだが。
案外そう言う人から何か案が出るのでは?と思ったのだ。
きっかけが掴めればいいだけだ。

「洗濯って…今はまだいいですけど、冬になればもっと厳しいじゃないですか、だったら今の内になんとか楽にできたらなあって」

いや、冬場に洗濯板を使った場合、それはそれで大変そうな気もするのだが。

「楽にか…」

「楽しちゃダメですか?楽した分、他のことに手が行くじゃないですか」

直政は人一倍厳しそうそうだから、楽と言う言葉を悪く受け取るだろうか?

「言い方を変えるなら、効率よく!です」

「ほぅ」

「その方がよくないですか?」

「俺には悪知恵が働くように聞こえた」

「失礼な。でも、そう言うのって結局楽したいから、考えるんじゃないですかね?」

は笑う。
けど、内心安堵した。
直政と普通に会話ができていると。
ふとしたことで、芽生えていた想いに気づいた
それはこれ以上大きくしちゃいけない、形にしてはダメだと知らない振りをすることにした。
直政はいずれ井伊家を継ぐ身。
家康の期待も大きいらしい。
そんな人には、それなりに良い身分の女性が嫁いでくるだろうし。
いずれいなくなるような自分はそれに蓋をした方がいいのだ。

(我ながら後ろ向きだなぁ…)

今までしてきて恋愛なんて、語る様なすごいものじゃない。
どこでにでもあるような幼い恋で。
大人になったら、もっとすごい恋愛でもするのかと思うも、それはそれで何か怖さがあって。
結果的に、恋愛には興味がないような態度をとっていただけだ。

(多分、時代とか…状況が…特別感出しているんだよ)

だから、きっと直政に恋をしても、向こうからすれば対象になるようなものではないだろう。

(単に…家康様に命じられたから面倒みてくれているだけだろうし)

直政の優しさを事務的に考えるのは良くないとわかっている。
そうではないと。
この数か月で、直政は直政なりに自分を気遣ってくれているのを見ていたから。

(自分の所為なのに…直政さんの所為にしちゃダメだよね)

ため息が出そうになるが、慌てて留まった。

「どうした?」

直政の手がの頭に触れた。

「な、なんでもないですよ」

「楽に洗濯する為にと、考え込むほどの事か?」

「重要なことですよ、これは」

「はは。そうか」

珍しく、声を出して笑う直政に、は息をのむ。

(こんな風に笑う事もあるんだ、この人)

いつも難しいような顔をしているから、いや、それでも自分の前では大分気を許してくれているようには見える。

(だから、錯覚しちゃうんだよ…危ない、危ない)

気持ちを切り替えよう。
まずは洗濯板だ!





「は〜水に強い木とか、違いがあるんですね」

「そうだよ。全部が全部同じじゃないんだよ、嬢ちゃん」

板にするちょうどいい木はないかと、それを作ってくれそうな人を捜しに出かけてみれば。
町の大工に行きあたり、洗濯板について相談してみれば、大工には簡単な話だったようで。
割とあっさり話が進んだ。

「その洗濯する時に使うってなら、すぐに壊れちまうようなもろいものじゃ嫌だろ?)

「毎日使いますしね」

木材ならなんでもいいと考えていたが、そうじゃないのか。とは感心してしまう。
の洗濯板に関する知識など、テレビで見たとかその程度で、実物など見たことがないのだ。
しばらく大工と話をすると、大工はいくつか作ってみると言ってくれた。
試作としてできたときに知らせるからと、あとを大工に任せることにした。

「良かった。話がまとまって」

「家事をするのに、楽をしたいと考えるところがすごいな」

「そうですか?時短ですよ、時短」

「物は言いようだな」

「悪いことじゃないです。これで女中さん達が少しでも楽になればいいじゃないですか。その空いた時間で少しでも体が休めればいいと思うし」

「だが、それが彼女達の仕事だろう?」

「ブラックじゃないんですから…まぁこの辺も考え方の違いですよね」

「……」

「直政さん?」

から見れば、俺は相当頭の固い奴に視えるのだろうな」

「あら、嫌だ。今更気づきましたか?」

「お前は…」

直政は呆れたような顔をするが、それでも目が穏やかで、自分を、を見る目が優しいよな気がして照れ臭い。

(う…思い出しちゃう)

直政が七夕の短冊に書いた願い事を。

が笑顔でいられるように」

どう考えればあの願い事になるのだろうかと思うが。
実際、願い事は半分叶っているだろう。
けど、半分なのは自身の所為なので仕方あるまい。

「七夕といい、洗濯板とやらといい、がいた時代と言うのは想像がつかないな」

「まぁ私はこっちが過去の時代だってわかっているから、受け入れ安かったですけど」

「?」

「直政さんや直虎さまにしてみれば…少しは気味悪いとか思いませんでした?」

「思わない。変わった奴だとしか思わなかった」

「…それは褒められているのかな?」

思っていた。と言われないだけいいが。

「褒めてはいないが。感心はした。俺としてはの話は面白いから気にしない」

「あ、ありがとうございます…」

全部を話せるわけではないが、直政が嫌でないなら。

「また何か面白そうな話があったら聞かせてあげますね」

少しでも、直政と過ごせる時間が増えるなら。
これくらいはいいだろうと。

「あぁ、頼む」

なんて直政が笑うから、だから惹かれてしまうのかもしれない。



「はい?」

「何か、買っていないか?義母上の土産にでもなりそうなものでも」

「そうですね。直虎さまへのお土産見つけましょうか」

相変わらず義母上一番か!とツッコミたくなるが。
これが日常で、ちょうどいいのかもしれない。
直政らしいわけだし。
自身も直虎が嫌いなわけではないし、寧ろ慕っているから。

「何がいいですかね〜」

「義母上なら何でも喜んでくれると思うが…」

「直政さんの手持ち次第ですね」

「なに?」

「だって私、今無一文ですよ〜お財布持っていないんで。ご馳走さまでーす」

「まったくしょうがない奴だな」

買って帰らないという選択肢がない直政には笑ってしまうのだった。





数日後、大工から試作品を見せてもらい、女中達に使ってもらったところいい評価を貰えた。
洗濯が楽になると喜んでくれた彼女達に、も嬉しくなる。

(これは歴史を改ざんしてしまっているのかな?)

洗濯板がお目見えしたのはもっと後の話のようだが。

(ま…こんなんで歴史の何が変わるとは思わないけど…変わった所で、ここはちょっと違うしね)

最早別次元の戦国時代だろうと思えている。
だから、の居た時代には何も影響はないと信じたい。

(変わったら、変わった時の話で…そもそも、変わったとしても悪い方向に行くとは思いたくないね)

洗濯板ひとつで戦争が起こるなどとは思いたくない。
こうなれば、他にも試せそうなものはどんどん出してしまおうか?
それで楽になるなら誰も損はしないじゃないか。
自身にできる範囲だから、問題ないだろう。

(違う意味で、戦国ライフを楽しみ始めてきたかも)

全てが順風満帆。
そんな気がしてきただったが。
暑さにやられてしまったのか、その日体を起こすことができなかった。

(病気は…自分じゃなんともできないよ…)









ネタが洗濯板の話だけど、ちょっと彼女的に迷い中。
20/06/14