|
合縁奇縁
【3】 「姐御、姐御ー」 「・・・・・」 「姐御。これなんかどうっすか?」 「ちげーよ、姐御にはこっちの方がお似合いなんだよ」 「・・・・・」 「俺はこっちの方が良いと思いますぜ」 「姐御。それより団子でも食いましょうや」 「・・・・・・・・・はあ」 は盛大に溜め息をついた。 肩をがっくり落としながらというオマケ付きで。 「悪い人たちじゃないんですよ?」 「・・・・わかりますけど・・・・・恥ずかしいんです」 「おやまあ」 の隣で暢気に扇子を扇いで笑みを浮かべているのは伊達成実。 伊達政宗公が治める街並みを少しばかり見たいと思ったは成実と一緒に館を出た。 だがそれを目ざとく見つけたのは政宗親衛隊ともいえる若武者たちで 「俺らが案内しますっ!の姐御ぉ!」 と嫌だと断る前にガタイのいい若武者たちに頭を下げられてしまった。 「姐御って言うのは何度も止めてくれって言ったのに!」 成実の隣でぷりぷりと頬を膨らませながら歩く。 女の買い物を男は嫌がるものだが、彼らは丁寧にこれがいいとかあれがいいとか 色んな品々を見つけてはに見せる。 「もっとゆっくり静かに見たい・・・・」 さめざめとした気分で涙が出てくる。 彼らの好意なのだが、自分が目立ちまくって嫌なのだ。 「姐御。あーねーご」 ちょいちょいと一人が手招きする。 「なんですか?」 姐御と言われて嫌だとか言いつつもは素直に彼の元に行く。 根が素直な子なのだと成実は小さく笑う。 あの素直さをもう少し我が殿へと向けてくれればいいのに。 残念ながら政宗公にはは近づこうとはしない。 「姐御お疲れでしょう?ここの茶屋は美味いものあるんで何でも食ってくださいよ」 「俺らの奢りっす」 「え。でも悪いですよ」 「いーっすよ。沢山連れ回しちゃいましたし」 「そうそう。姐御の足まだ完治してないんじゃないんすか?少し休みましょうや」 彼らの好意にはジーンと感動してしまう。 自分は嫌々ながらに行動していたのに。 そんな自分を恥じながらもここは甘えてしまおうとは素直に頷いた。 「ありがとうございます。もちろん皆さんも一緒に休憩しましょう」 照れながらも笑いかけてくれたに男たちは内心ガッツポーズを決めてしまう。 (姐御、可愛いっすよ!) (俺ら姐御に一生着いていきます!) などなど。 当初は自分たちが仕える殿様の為だったはずなのにいつの間にか彼らは親衛隊になってしまったらしい。 でも基本は殿のため。 政宗公が選んだ彼女なのだから最終的にはその政宗の為に動くつもりだ。 「成実さんは何にします?」 天気もいいので外の縁台には腰掛けた。 お品書きを見せてもらって隣に腰を下ろした成実にも見せる。 「私はお茶だけでいいですよ。小腹は空いていませんし。さんはお好きなだけどうぞ」 「そんなに私も食べないのですけど」 苦笑しながらもお品書きに視線を向ける。 「じゃあ、私はくずきりに黒蜜をかけたので」 茶屋の娘に注文する。 品が来るまでぼーっと空を見上げる。 ここに来てどのくらい経ったのだろうか? 自動車事故に遭ったはずなのに気づけば小十郎が仕掛けた動物用罠にかかっていた。 自分は動物以下かと後から少し落ち込みはしたが。 政宗には怪我が治るまで面倒は見てやると言われた。 とりあえず怪我をした左足首も歩けるまで回復した。 でも長時間歩くにはまだまだ辛い。 「お待たせいたしました。どうぞ」 「ありがとうございます」 椀を受け取りくずきりを食す。 他のものたちもそれぞれ好きなものを食べているようだ。 「のんびりしていますね、ここは」 「政宗様がお治めですからね」 「それでも乱世なのですよね?」 「そうですね。あちこちで不穏な動きもありますしね。でもここは大丈夫ですよ」 「はあ・・・・・」 何を根拠にと思うが自分はここに来て日が浅い。 過去の歴史は知っているが、ここがそこと丸まる同じではないようなのでそれもあまり役に立っていない。 (なんで戦国時代にリーゼント?) 服装、髪型、言葉遣いなどなどどれもがの知っている戦国時代とはかけ離れていた。 本当のあの時代にもし飛ばされていたのなら喜びより恐怖の方が勝っていたかもしれないという点はあるが。 (でもでも。もしかしたら真田幸村とかに会えるかもしれないし) 大好きな武将様に会えるならばちょっとはそっちでも良かったかなと思う。 そう思った時にふいに思った。 だから成実にさらりと聞いてみた。 「成実さん。真田幸村って人知っています?」 「真田・・・・幸村ですか」 成実の目が一瞬キラリと光ったように見えた。 和気藹々と笑いあっていた男たちも目つきが代わる。 「え?え?なに?」 「さんこそ、真田幸村とはどう言ったご関係で?」 「関係はないですよ?私が一方的に知っているだけですから」 慌てて関係性を否定する。やはりここにも真田幸村はいるようだ。 嬉しさ反面、成実たちに余計な面倒を起こさせないよう気をつけねばと思う。 「一方的にですか」 「あの。前に私がここへ来た経緯をお話しましたよね?」 まだ間もない頃に成実は正直に話をした。 彼もそれを政宗には伝えると言っていたが。 その時に伊達政宗という人物を知っていた理由をちゃんと話したのだ。 彼は自分がいた世界での過去の人物だと。 たまたま彼が治めていた仙台という町を友だちと旅行していた際に事故にあったは気がつけばここにいたのだと。 伊達政宗以外については特に話もしなかったし、伊達政宗の人生や歴史についてもあえて話はしなかった。 とりあえず、信じられないでしょうが別の世界から自分は来ました。とだけ言ってみた。 歴史云々は抜きにして成実も政宗にそう伝えたようだ。 「ああそういえば。ということはさんの世界には真田幸村も存在したというわけですね」 「はい」 それで知っていたのかと成実はニッコリ笑った。 「あの。で、どんな方がご存知ですか?」 「まあ一応」 「わ。会った事あるんですか?」 思わずの口元が緩む。 「あ、姐御・・・・・まさか・・・・・」 「真田なんかがいいんですかい?」 「なんかってなんですかー真田幸村ってすごい人なんですよ!・・・・私のいた世界では」 思わず拳を握り力説してしまう。 成実はどうしたものかと頭を掻く。 「いずれお会いするかもしれませんよ。その時までのお楽しみでいいのでは?」 「え!会えるのですか!キャー!真田幸村に会えるー」 「「「「姐御ぉ!!」」」」 思わず立ち上がって喜ぶに男たちは情けなくも彼女に縋った。 「真田のところなんかに行かないでくださいよ!」 「あんな奴より筆頭の方が何倍、いや何十倍も強いですから!」 「真田幸村は弱くないですよ。強い人じゃないですか」 なんて言ったって彼は「日の本一の兵」と言われた人だ。 ここの世界の真田幸村はどんな人だろうとは目を輝かせる。 「うん。決めた!早く足を治して真田幸村に会いに行こうっと!」 「「「「姐御ぉ!!」」」」 男たちの気持ちとは裏腹にはくずきりを美味しそうに食べるのであった。 「お姉さーん。団子をお持ち帰り用で包んでいただけますか?」 成実は茶を飲み干し言った。 その時政宗が見たもの。 ご機嫌な。特に変わりもない成実。がっくり肩を落とした集団の部下。 「なんだありゃ」 が成実と町に出たとは聞いてはいたが。 でもが笑っているなど珍しくそして見れて得をしたなどと思ってしまう。 「ありがとうございました。中々楽しかったです」 「姐御・・・それは良かったッす」 「また良かったら行きましょう」 「それは喜んでお供しますっ!」 「でも、でも!」 「はいはい。君たちは持ち場に戻る。余計なことは言わないこと。いいですね」 成実にさっさと散るように言われてしまう。 命令なのだろうと仕方なく男たちは立ち去る。 「さん」 「はい?」 「これを政宗様に届けてくださいませんか?」 政宗と言われての顔が渋面になる。 何故自分がとあからさますぎて成実は小さく笑う。 「私はこれから自分の仕事がありますので。せっかくの出来立てのお団子なのですから早めにお渡ししたくて」 「・・・・・わかりました。渡すだけなら」 成実からお団子の入った包みを受け取る。 お願いしますと成実は立ち去る。 仕事がある成実を引っ張りまわしたのは自分だし仕方なく思い政宗がいる室に向かおうとする。 だか政宗が先に姿を現した。 「楽しかったかい?成実たちと町へ行ったんだって?」 「・・・・そ、そうですけど・・・・・どうぞ。成実さんからのお土産です。早めに食べてください」 出来立てだからと政宗に団子の包みを突き出す。 政宗は苦笑交じりで受け取る。それを見届けは踵を返す。 「oh、どこ行くんだ?ちょっと付き合えよ」 「何故、私が」 「聞きたいことがある。それに貰った団子を一人で食うのもつまんないだろ?」 本当はさっさと立ち去りたいのに。 に用があるのは本当らしいので仕方なく政宗の後を歩いた。 政宗の室に着き彼はごろりと横になる。 「茶。悪いけど淹れてくれよ」 「はあ?何で私が」 「いつもなら小十郎が淹れてくれんだけど、今いないしな」 「自分で・・・・・・わかりました」 途中まで言いかけて止める。 自分で淹れればと思いつつもこの人考えてみれば殿様なのだから普通に茶を淹れられないのだとは勝手に思いこんだ。 殿様だものな。 茶室で茶をたてるなんてことはできそうだけど、普通に飲む茶はきっとできないのだと。 茶の用意をしながらずっと考える。 元の世界に帰ったら友だちに「伊達政宗は茶も淹れられないお坊ちゃまだ」とか話してやるなどと。 自分ではなく友だちがここにいれば良かったのに。 別に代わりに事故に遭えというわけではなく。だって今真田幸村に会うぞ!という目的ができたわけだし。 「はい、どうぞ」 「SORRY すまねえな」 政宗は起き上がり胡坐を掻きトンと置かれた湯気の立った湯飲みを手に取る。 は思わずジーッと政宗を見る。 とりあえず飲んでもらえた茶は不味くはないようだ。 「ん?なんだ?」 「話ってなんですか?聞きたいことがあるって」 「ああ。は俺の国を見てどう思った?」 「どうって・・・のんびりしたいい国だと思いましたよ。あと気のいい人たちが多いですね」 見かけはあんなだけど・・・とは出さずに。 「そうかい。気にいったか?」 「・・・・・嫌いではないです」 「俺は気にいったか聞いているんだけど」 「・・・・・・・・・あなたに向かって言うのかなんか癪なんです」 「なんだそりゃ」 そこまで嫌われる理由が政宗にはわからないのだが。 も政宗に半ば八つ当たりのようなことをしてしまう自分の気持ちがよくわからない。 「足は?」 「そこそこ歩けます。皆さん気を使ってくれるし」 「そうかい」 「とりあえず目的もできたので。それに向かって早く足を治したいんです」 「目的?そいつは良かったな。どんな目的か興味あるな」 「そうですか?」 言ったら滅茶苦茶引き止められたけど。 「真田幸村に会いに行くのが私の目的です。さっき決めました」 「・・・・・・真田、幸村ねぇ・・・・」 ピタりと動きを止める政宗。 成実と同じだと思った。 やはりと言うか敵対関係にあるのだろう。口にしたのは不味いか? いやでも、足が治るまで世話してやると言ったのだ。足を治せばそれ以降は関係ないはずだ。 「ずっと憧れていたので。もし会えるなら嬉しいなあって」 「へぇ」 政宗は数回会った真田幸村を思い出す。 こいつが生涯の好敵手だと決めてはいたが中々決着は着かずにいた。 そして何より彼が師だと仰ぐ甲斐の虎とのやりとりが暑苦しいし煩い。 思い出してしまったので脳裏に「おお館さまぁぁぁ!」「幸村ぁぁ!」などというのが連呼される。 「ああ!うるせー武田主従!」 「え・・・・」 「・・・・・・真田なんかより俺の方が格好いいぞ」 突然立ち上がったかと思うとずいっと顔を近づけてきた政宗。 「は、はあ?なに、急に」 「足が治ったらここ出るつもりなんだろ?真田に会いに行く為に」 「あ、あの」 足を崩して座っていただが、政宗は近づくと同時に左足首を軽く掴む。 「壊しちまうか?そうすりゃ会いにいけねーよな」 「ば、馬鹿なこと言わないでよ!」 「俺は本気だ」 ぐっと政宗の手に力が入る。 「や、やだ」 はその手を剥がそうと掴むが逆に手首を取られそのまま押し倒される。 「面白くねー」 政宗の前髪がの顔にかかるかかからないくらい。 なんとかして逃れようとするが圧倒的に政宗の力のほうが強く困難だ。 「い、嫌だったら!」 それでも力を押し返そうとするに政宗の顔が歪む。 面白くないことだらけだ。 「俺は本気だ」 政宗はそのままに口づけた。 19/12/31再UP |