合縁奇縁




【2】


ドリーム小説
最悪だった。
車にはねられたと思ったのだが、気づけば見知らぬ森の中。
しかも足に痛みを感じ見れば可笑しな罠に引っかかっていた。
痛くて痛くて泣くのは簡単だったが、このままだと足首から下がなくなりそうだったので
泣かずに必死で罠をとろうとしていた。
こんなに流れる自分の血を見るのは初めてで何度も悪酔いしそうになったがなんとか堪えた。
何故、どうして?というのはわからないが車にはねられていたのならこの程度ではすまないと思うから。

悪戦苦闘している時に、着物姿の男性三人が姿を現した。
罠を仕掛けた人たちらしいのだが、そんなのはどうでも良くて必死だった。
男の一人が罠を解除し手当てもしてくれた。
もっとちゃんとした場所で手当てをしてくれるといいを運んでくれた。
その途中で沢山の血を流しすぎた所為と安堵してしまった所為で気を失った。

目が覚めた時に右目に眼帯をした男に顔を覗きこまれていた。

「!!」

「oh〜気づいたかい?あんた、名前は」

バッと身体を起こした時にくらくらと目が回りそうになった。

「おっと、気をつけな。まだ安静にしていたほうがいいぜ」

「・・・・・・・は、はい」

貧血だ。
あんなに血が流れればそうなりもするだろう。
いや、それ以前に流しすぎて失血死という可能性もあったかもしれないのだ。
そう思うと思わず身震いしてしまう。

「・・・・・・」

「指先にもいくつか切り傷があったが、そっちはたいしたことはねー。数日もすれば気にしなくもなるさ」

言われて見た指先にも包帯が巻かれている。
だが痛みがするのは足の方だ。
ジンジンと疼く左足首。

「悪かったなあ。まさか人間があんな罠にかかるとは思っても見なくてよ」

仕掛けたのはオレじゃねーけど。と男はいう。
は男の言い草にカチンとする。
自分がいかにも無能だと思われたようで腹がたった。
「あんな罠」には自分だって何故かかったのかわかりはしないのだ。
気がついたら。なのだから。
本当は車に轢かれてしまうところだったのだ。

「・・・・・・あ!――ちゃん」

「An?なんだって?」

「私の友だち!一緒にいた子なんですけど」

「知らねーな。俺らはあんた一人しか見ていないぜ」

「そんな・・・・・って言うか、ここどこよ・・・・・・」

「どこって「政宗様」

「政宗?」

「An?」

自分に手当てをしてくれた厳つい男が入ってきた。
男が発した言葉には目を疑う。

「政宗って・・・・あなた・・・・・伊達政宗のコスプレする人?」

「何言ってんだ、あんた」

「周りの人にそう呼ばせてんの?うわ・・・・・・」

「女。助けてくださった方に対して失礼じゃねーのか?」

の言葉に反応したのは政宗と呼ばれた男ではなく厳つい男の方だった。
低く半ば脅かしているかのような声に一瞬怯む。

「止めろ、小十郎」

政宗に制されて小十郎もフッと気を緩めた。

(ほ、本物、本物の***だよ!この人!)

よく見れば頬に斬られた跡のような傷がある。
政宗は軽く頭をかいた。

「あんたの言っている意味がよくわかんねーけど、オレは奥州を束ねる伊達政宗だ」

「奥州・・・・伊達、政宗・・・・・嘘でしょ」

ただのそっくりさん。
政宗好きが高じてコスプレでもした人だと思った。
だがそう思うには疑問に思う点はいくつかあるのだが。

「もう一回聞く。あんたの名前は」

「・・・・・・・・

。いい名前じゃねーか。とりあえずゆっくりしていけや」

「え、遠慮します!」

「無理するな。その足じゃ少し動くだけでも苦労するだろ?」

確かに。
動かしていないのに傷口が痛む。
それでもなんとなく、ここには、彼らに世話になるのが嫌だった。

「平気です。助けてもらったのはありがたく思いますけど・・・・・・」

ということは。
自分は伊達の領地しかも私有地に無断で入ったことにならないだろうか?
罠を仕掛けたのは政宗の後ろに控える小十郎らしいし。
彼らは敵からの侵入を防ぐ為に罠を仕掛けたはずだ。
それに理由はどうあれ引っかかった自分はスパイなどと疑われても可笑しくないと思うのだが。
このままここにいたらどえらい拷問にあったりしないだろうか?

「お頭〜」

「筆頭!」

「あ。こら、駄目ですよー女の子が起きちゃいますから」

制止する声が耳に入らないわけではないが、周りの者たちは成実の押さえを退けて室へと押しかけてくる。
はその押しかけてきた人物を見て掛布で身を隠してしまう。

「てめーら。勝手に入ってきやがって・・・・」

小十郎の低い声には余計にびくついてしまう。

「いや、筆頭が助けたつー子がどんなか気になって」

(本物、本物がいっぱいいる。伊達軍じゃなくて、ここは伊達組の間違いじゃないの!)

声にならない悲鳴でいっぱいになる

「ほら。君たちが一斉に押しかけるから女の子が怯えちゃっていますよ。駄目じゃないか」

「「「「すんません」」」」

「ごめんね。見た目は怖いけど中身はそうでもないから」

成実がにっこり笑いかけてくれたことで多少心に余裕ができた。
だがホッとしたのも束の間だった。

「ま、いいから寝てろ。話はそれからだ。あんた・・・の足の傷は相当酷いからな。こっちで面倒みるから」

政宗がを安心させる為に彼女の頭を撫でようとした。
するとはビクつき身を竦める。

「?」

「さ、触るなー!」

「ぐはっ!」

身を竦めたと思ったがそれも一瞬では拳を思いっきり突き出した。
それが運悪く政宗の顎に当たり、彼は後ろにひっくり返った。

「おや」

「てめぇ。政宗様に何しやがるっ!」

小十郎は腰に差していた刀に手をかける。
成実以外の者もへ向けるまなざしがきつく痛い。

「・・・・だ、だって・・・・」

強面の男たちに囲まれて食みの縮む思いだが負けじと反論する。

「死にたくないもん!わけわかんない場所でこのままどうしていいかわからないし」

の必死な抵抗(?)に成実は笑った。

「あははは。面白いなあ。まあこの面子を見たら誰だって怖いですよねぇ」

政宗の言葉を素直に聞けないのは最初から自分たちに気を許していない証拠だ。
なりに気を許したら駄目だと危険信号を出していたようだ。

「いいね、いいね〜気に入ったぜ、

の拳が当たった顎を摩っている政宗。
いまだその場に転がったままだ。

「気の強い女は嫌いじゃないぜ。ゆっくり養生しな。別に命をとるつもりなんかねーさ」

彼女はあそこにいた理由は知らないが、小十郎の仕掛けた罠にはまり怪我をさせてしまったのはこちらなのだ。
怪我が治るまでは面倒を見てやる。

「行くぞ、小十郎。あとは成実に任せる」

「御意」

スッと立ち上がり、成実以外を引き連れて政宗は室から出て行った。
は安堵したようでそのまま掛布に顔を埋める。

「えーとさん?気分はいかがですか?薬も飲んだ方がいいので何か食べましょうか?」

「・・・・・・」

「あ、薬と言っても変な薬じゃないですよー?痛み止めや血を増やす薬ですから」

「・・・・・」

さん?」

成実は動かないにどうしようか迷う。
身体に触れようとしたものなら、先ほどの政宗と同じようにぶっ飛ばされるかもしれない。
一瞬躊躇するが、成実は軽くの肩に手を置いた。
の身体が強張るのが見てわかる。

「大丈夫です。私はあなたに危害を加えようとは思いません。味方ですよ」

「・・・・・・」

「あなたが心配なさるようなことはありませんから。政宗様はあなたを気に入ったご様子でしたし」

「・・・・・ほ、本当ですか?私、市中引き回しの上打ち首獄門・・・ってことになりません?」

「え、なぜそのように思うのかがこちらとしては不思議なのですが」

「だって、だって・・・・・私、不審者じゃないですか?」

「ご自分でそういうのもどうかと・・・・とりあえずゆっくり休んでください」

ポンポンとの肩を軽く叩く成実。
食事を持ってきましょうと一旦成実は室から出て行った。



を安心させるために、成実は彼女と一緒に食事をした。
同じお櫃からご飯を盛り、同じ鍋から汁物をよそった。
警戒心が強いに大丈夫、毒など入っていませんよと。
流石にそこまでさせてしまったことには申し訳なく思ったのか成実には早くに警戒を解いた。
そして誰もが聞きたがっていただろうの素性を成実に話したのだ。

「では。私のほうから政宗様に報告させていただきますね。本当はさんが話されるほうが良いのですが」

「・・・・ごめんなさい」

「いいのですよ。あなたは怪我を治すことに専念しましょうね」

「はい・・・・・あの、美味しいです。お食事」

「それは良かった。人参も牛蒡も美味しいでしょう?」

汁物に入った沢山の野菜。
甘みがよくある人参だなとは思っていた。

「はい」

「この野菜、片倉殿が育てたものなんですよ」

「片倉?・・・」

「政宗様のそばにいましたでしょ?頬に傷跡がある、ちょっと怖そうな人が」

「は、はい。え!あの人が?」

本物の***だと思っていたあの男が作った野菜だと言うのか。
箸で摘んだままの人参をマジマジと見つめてしまうのだった。




成実のおかげで安心した
だがそれが返って気を緩んでしまうきっかけになり熱をだし寝込んでしまった。
疼く足首の傷が熱を持ってしまったのだ。
二三日熱にうなされるを政宗が見舞いに来たのだが、は政宗には心を許しておらず
辛い状態にも関わらず政宗に強い眼差しを送るのだ。
却ってそれが、政宗がを気に入る要因になってしまったようだ。
そして、強面の配下たちも自分たちが尊敬する筆頭が小娘を拾い保護し足繁くの下へ行く姿を見て思った。

「お頭はあの子を娶るじゃないのか?」

「気に入ったと言っていたよな?」

「だったら、あの子は俺らにとって姐御になるんだな」

「そうか、姐御かあ!」

などと勝手に解釈し、以降の姿を見ると「姐さん!」と深々と頭を下げるのだった。
とりあえず、これがの物語の始まりなのである。









19/12/31再UP