合縁奇縁



ドリーム小説
【3】





「ご主人。先日は申し訳ないことをした」

そう言って満月堂に姿を現した真田幸村。
先日と言うのは、幸村がこの店のとぶつかり品物をダメにしたと言うことだろう。
六郎は久しぶりに姿を見せた幸村に、気にしないでくださいと返す。

「だが・・・」

「あれの方が幸村様にご無礼なことをしたと、こちらの方が申し訳なく思っているのですよ?」

アレとはのことだろう。
幸村の方もそんな事はないと首を横に振る。

「元はといえばそれがしの方がちゃんと前を見て歩いていなかったからで・・・」

「まあそうおっしゃってくださって良いのですが。あ、今日はなにになさいますか?」

六郎に促され幸村は頷く。
だが、店内を思わず店内を見回してしまう。

「幸村様?どうかなさいました?」

「あ!い、いや!な、なんでもないでござるよっ!」

これとこれとこれ!と和菓子を指差す幸村。
その代金を払い、更に先日ダメにした和菓子分の代金までもよこした。
六郎はいらないと言うのだが、幸村のほうが頑として受け取らないのだ。
六郎は仕方なくその代金をしまう。

「外の縁台で構わないでござるか?」

「ええ、どうぞ。あそこは幸村様の指定席のようなものですからね」

「すまぬ」

幸村は外に出る。
日当りの良い場所に設置された縁台。
そこで食べる満月堂の和菓子が一番美味いと思っているのだ。
幸村は縁台に腰掛け、注文したものが来るのを待つ。

「ただいま、戻りました〜」

「ましたー」

と一太郎が手を繋いで裏口から入ってきた。
最近の二人は本当に仲が良いようで一緒にいることが多い。

「おかえり。あ、。これ、表にいるお方に出してくれ、注文の品だ」

帰ってきた早々で悪いがと六郎が盆に乗せたお茶と和菓子数品を出す。
はすぐに前掛けをして品を運ぶ。

「あ、そうだ。その方な、先日の詫びだとわざわざ支払いに来たぞ」

「えー?」

なんのことだと?が小首を傾げるが、すぐに六郎はいつのことだと説明する。
ぶつかったあの子のことかとはすぐにわかるが、売上金の中からその相手が支払った代金分を取り出す。

?」

「ダメです。あれは私のお給料から引いてもらうんですから」

「おいおい」

は代金も盆に乗せて外に出る。
子どもがそんなに気を使うなと言いたいらしい。
の強気な態度に、相手の正体を知ってどうするのだろうかと、六郎には興味が沸いたので黙っていることにした。

「お待たせしましたー」

「すまない。あ、あ。そなたは」

「こんにちは。先日はどうも。はい、ご注文の品です」

縁台に和菓子とお茶を置く。
幸村は現れたに改めて謝ろうと思ったのだが。先にが手を出した。

「はい。さっき親方に渡したっていうお金」

「へ?」

「ダメよ。弁償なんて」

「だ、だが」

「大体、私も落としちゃったものを君に渡しちゃったんだもん。それにお金払うことないのよ?」

そう言って幸村の手にお金を握らせる。
突然手を握られたことに幸村の顔が少々赤くなる。

「あの代金分は私が弁償するからいいの」

「あ、い、いや、あの・・・・だ、だけど。本当にそれがしが悪く」

「子どもが変に気を使わないの!」

「こ、子ども!?」

瞠目してしまう幸村。
そして幸村の手を離し、さっさと店の中へ引っ込んでしまう

「こ、子ども・・・・そ、それがし・・・」

一応初陣を疾うに過ぎた年齢であるのだが。
そんなに幼く見えるのか?
しかし子ども扱いされたのは初めてだ。

「ぶっ・・・」

「・・・・佐助・・・笑うな」

いつの間にか佐助が着いて来ていたらしい。
木の上から漏れた笑いに向かって睨む幸村。
佐助は忍失格だな〜などといいながら幸村の前に姿を見せた。

「だ、だって。しょうがないでしょ、この場合・・・・・あはははは。あー面白ーい」

「う、うううるさい!」

幸村は半ば拗ね気味で注文した団子などを頬張った。
佐助も幸村の隣に腰を下ろし、店の中に向かって声をかける。

「お姉さーん。お茶くださいなー」

その呼びかけにが反応する。

「いらっしゃいませー。どうぞ」

「どうもね〜あと、櫛団子の餡子10本ほどもらえる?」

「10本?わかりましたー」

「ね。団子でも食って気分落ち着けてよ、旦那」

佐助なりに励ましてくれているらしい。
だがニヤついている佐助の顔が幸村には小憎たらしい。
団子もすぐにが持ってくる。
代金を佐助が支払う。

「はい、旦那食ってくださいね〜・・・・・あ、そういや、お姉さんいつから働いてンの?」

この店は家族でやっているのを知っていたが、他所から雇うのは初めてなのを佐助は知っていた。

「少し前からですよ。住み込みで」

「へぇ」

「親方のお饅頭に惚れこんで、弟子入りさせてもらいました」

ニコりと微笑むに幸村の口から団子が零れそうになる。

「あ!旦那汚ねっ!なにやってるの!」

「す、すまぬ」

慌てて団子を放り込み口許を拭う幸村。
はお絞りを差し出す。

「はい。あわてなくていいのよ?ゆっくり食べてね」

「・・・は、はい」

顔中が真っ赤なのだろうなと思うくらい熱かった。

(へぇ〜旦那にしちゃ珍しいねぇ〜)

幸村の変化に佐助は目を細める。
少し前の幸村はとある事情により己の気持ちをひた隠しにしていたから。

(あの子とお姉さんとじゃ全然性格とか違うけど・・・ふーん・・・)

だけど、すぐにそうだと決め付けてしまうと幸村の性格だ。
頑なに違うと拒絶しそうだし。

(面白くなってきたかな)

何より、幸村が元気になってきたのならばいいかなと思って。
佐助は更に菓子を注文し、それを食う幸村を見てがとても驚いていたのが印象的だった。



*



「本当、よく食べるね。美味しいのはわかるけど」

今日も満月堂に来ていた幸村。
大量の和菓子を平然と食べているのを見ては呆れてしまう。

「しかも太る気配がないのは、女の敵だわ」

「て、敵!?そ、それがし別に」

の言葉に即座に過敏な反応する幸村を見て笑ってしまう。

「例え話よ。面白いね、君って」

に笑われてしまい幸村も釣られて笑う。

「それとも燃費が悪いのかしら?ちゃんと三食ご飯食べてる?」

こくりと頷く幸村。

「ここで働いている私が言うのも変だけど、お菓子よりちゃんとご飯も食べないとダメよ?」

縦よりも横に成長するわよ。なんては言う。
の言い方は本当に幸村を子ども扱いしているような感じだ。
そんなに自分は幼いのだろうか?

「そ、それがし。そんなに子どもではござらぬ」

「・・・・・じゃあ、いくつ?」

「今年じゅ、十八になったでござるよ」

「十八?・・・・・十五、六歳かと思った・・・・」

流石にそれで子ども扱いは悪いか、とは幸村に素直に謝る。

「だけど、私よりは年下か・・・」

殿はおいくつで?」

「女性に年齢を聴く〜?」

「す、すまぬ」

「あははは。別に聴かれて困る年齢じゃないけど。二十歳越えています」

年下だから子ども扱いされるのか・・・などと思ってしまう。

「だからって、オバサン扱いはしないでよ?ここの人たちって二十歳過ぎても嫁に行かないのが遅いっていうし」

最近では言われなくなったが。

「そ、それがし。そのようなこと思わぬでござるよ!」

「本当?・・・ふふっ。ありがと」

「だーんな。また満月堂さんに入り浸っていたんですねぇ」

佐助が幸村の前に姿を現す。

「きゃ!」

突然目の前に現れた人影、佐助には驚き後ろに転びそうになる。

「おっと。ごめんごめん」

倒れそうになったを咄嗟に佐助が支える。

「びっくりしたぁ・・・佐助さん、本当に忍者なんだ」

「そうだよ〜それも超優秀な凄腕の忍だよ」

ニコニコっとの顔の近くで笑う佐助。
少しだけの顔が赤くなる。

「・・・・それで?どうかしたのか?佐助」

「あーはいはい」

から離れる佐助。

「大将がお呼びですよ」

少しだけムッとしたような幸村だったが、佐助の大将って言葉に目を輝かせた。

「なんか、旦那に頼みたいことがあるようですよ」

「そ、そうか。よし、今すぐ行くぞ、佐助!」

パッと立ち上がる幸村。

「はいはい。じゃあちゃん、またね〜」

「はい、ありがとうございました〜またのお越しをお待ちしておりまーす」

二人に頭を下げて見送った
皿を片付け中へ戻る。
戻ってきたに六郎が苦笑している。

「親方?」

「お前は相変わらずだな〜」

「なにがですか?」

「気づいていないからねぇ・・・ま、元々気さくなお方だしな」

六郎は前掛けをし直し奥へと向かう。

「ほら、突っ立ってないで明日の餡子の仕込みをやるぞ!」

「はい!」

も六郎の後へ続いた。



躑躅ヶ崎の館へ向かう途中の幸村と佐助。
佐助の横顔を幸村がジッと見ている。

「なーに?旦那。俺様ってば見惚れちゃうほどいい男ですか?」

「ち、違う!そうじゃない!」

男に見つめられても嬉しいことはないので、できれば凝視するのは止めて欲しいところだが。

「佐助は」

「ん?なんですか?」

「佐助はそれがしより背が高いな」

は?突然なんだ?
佐助は唖然とする。

「・・・・今更何言っちゃってんですか?旦那・・・・」

「あ!い、いや!別に・・・ただ思っただけだ」

佐助は自分の手を幸村の頭上にかざす。

「んーでもさ、そんなに大差ないと思うんだけどねぇ。俺のほうがちょっとばかし高いってくらいで」

「そ、そうか!?ならば、それがし、もっと大きくなれるか?」

大きくって・・・子どもかあんたは・・・。
佐助は微苦笑してしまう。

「それはどうっすかねぇ〜菓子食うの止めて野菜食えば大きくなれるんじゃないですか?」

「むっ・・・・満月堂の菓子が食えぬは困る」

「いや、だからほどほどに・・・・って聞いていないッすね?」

そんなにに子ども扱いされるのが気になるのだろうか?

(ま、良い傾向だと思うけど・・・まだちょっと違う気がするな〜)

母親に認められたい子ども。
そんな風に見えるのは佐助だけだろうか?









19/12/30再UP