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琴瑟相和
一度は壊れてしまった豊臣という家族。 だけど、今はそれも修復された。 だがまた壊れてしまっては元も子もない。 それが長く続くように、子供達は頑張っているのだ。 そして、年が明けて…。 「今年はね…いっぱいやりたいことあるんだ」 がそんな事を三成に言った。 彼女のやりたい事は、1年を通して家族と、馬鹿兄貴達と色々な場所で過ごすと言う事だった。 あと。 「あとね…あとはね。利家さまとお松さまに沢山親孝行もするの。私の事をすごく大事にしてくれるから」 とも言っていた。 「一年…たくさん、楽しんで…いっぱい思い出作るのー…そしたら、そうしたらね………」 思い出を作って、何かがまだあるようだ。 【5】 「本当、贅沢だよね〜」 「言いだしっぺのお前が言うか?」 清正が呆れながら茶を啜る。 「そうなんだけど」 も同意はするも、その顔は笑っている。 の言ういっぱいやりたい事。 季節を通じて、家族と過ごしたい。 そういうものだった。 新年早々は、馬鹿兄貴達とねねのもとへ行き、過ごした。 「さぁ。遠慮しないで食べてちょうだい」 「お!おねね様の飯、久しぶりだぜ!!」 「こら、落ち着け正則」 広げられたねねの手料理に正則が感嘆し、それに対し清正が諌める。 だけど、清正の顔を笑っていた。 「はい、みっちゃん。どうぞ、清正もはい」 「あぁ、すまん」 が皿に料理を盛り、三成達に渡す。 「悪いな」 「正則は?どれ食べるの?」 「俺はなぁ。卵焼きと、そのゴボウの奴と」 これとこれとこれ。などとに言い、は言われた通りに全部盛る。 「正則。そんなに慌てなくてもいいんだよ。沢山あるんだから」 「そうっすけど。やっぱり嬉しくて」 そう言われるとねねも嬉しいから、笑顔になってしまう。 盛られた料理を正則は嬉しそうに頬張る。 「で?今回は隠さず、お前も出したのか?」 「す、少しだけ。お松さまに教わって、ちょっとだけ」 照れや自信のなさもあったが、約束は約束だからとは隅に置いた重箱指さした。 「大福。作ってみたの」 「マジか!じゃあ、あとで食おうな!」 秀吉には食べて貰えないが、ねねや馬鹿兄貴達には食べてもらえるならば良いかと思えた。 その日は本当にお腹が痛くなるほど笑って、とても楽しかった。 春先にも、夏にも、秋にも。 がどこそこへ行きたい!と言って、それを叶えてきた三成達。 戦にまで発展した頃、自分達のことしか考えず、沢山を悲しませた。 せめてもの、償いではないが。 が楽しんでくれたならばいいと思って。 寒い冬がやって来た時、温泉にでも行きたいと言った。 今回は、馬鹿兄貴達との4人のみでとある温泉街へやって来た。 「本当、贅沢だよね〜」 「言いだしっぺのお前が言うか?」 有馬の温泉街で、秀吉も戦の疲れを癒していたそうだ。 秀吉は大層気にいり、地震などで町が被害を受けた時、復興のために力を注いだそうだ。 ただ残念なことに、再建した頃、秀吉は病に倒れてしまっていたので、それを自身の目で見る事はできなかった。 今回は、達だけでも来られる事が出来て良かった。 本当はねねも誘って来たかったのだが、都合がつかなかった。 「利家様やお松さまも一緒だったら良かったのになぁ」 「前田殿もお忙しいからな」 「だから、それこそ利家様に来てほしかったんだよ」 「まぁそれはそうだが…三成を連れて来れただけでも満足してろ」 今の利家以上に三成は忙しい。 だから、少しとはいえ、執務を休ませてしまうのを申し訳なく感じてしまうし。 かえって、三成に無理をさせてしまっているのでは?と心配になる。 新年の宴の時に、三成も一緒だ!と我がままは言ったが。 実際はどうなのだろうか? 毎回つき合わされて、嫌気がさしてはいないだろうか? 「心配しすぎだ、馬鹿」 清正はの額を軽く叩く。 「俺達は、そんな風に考えちゃいない。これでも足りないくらいだぞ。それに三成の方が、お前の願いを叶えてやると言っていたくらいだからな」 「みっちゃんが?…そっか…嬉しいな」 「良かったな」 「うん」 1年好きなだけ楽しんだ。 できたかわからないが、利家と松、ねねに親孝行と呼べることをしてきたつもりだ。 「だからかな。今年の終わりに、みんなで温泉来られて良かった」 「別に今年に限ったことじゃない。言えば、来年も再来年も付き合ってやるぞ」 「ありがと」 でも、もう来年はない。 今年で最後だ。 ねねがいないのは残念だが、家族で最後にこうして過ごせて良かった。 それが、ずっとが考えていた事だから。 「!まだ他にも温泉あるらしいぜ。行ってみようぜ」 正則が障子を開けて入って来た。 「今日はもうよせ。ろくに浸かってもいないのに、馬鹿でも風邪をひくぞ」 湯冷めするだけだ。と三成が文句を言いながら座り込んだ。 どうやら二人でいくつかの温泉に入ってきたようだ。 「なんだよ。お前が長すぎるんだよ」 「じっくり浸かって何が悪い。ガキみたいに騒ぐお前がどうかしている」 正則の仕事が三成の警護だとは言え、二人が一緒にいるのが当たり前になっていて。 しかも軽い口喧嘩に発展はしても、なんだかんだで仲が良いように見える。 「けどよ〜もったいないじゃん!折角来たんだからさ」 「なんだ、正則はまだ行きたい所があるのか」 「清正も行こうぜ!」 「そうだな。行ってみるか」 清正は腰を上げる。 「三成。お前はどうする?」 「俺は、今日はもういい。これ以上浸かればのぼせるだけだ」 ゆっくり休みたいと三成は言った。 「そうだな。温泉に入りに来て倒れては元も子もないな」 三成とは逆に清正は正則に付き合うことにしたようだ。 これはこれで清正がに気を使ってくれたのだろう。 「は?」 「私も今日はもういいよ」 「そっか、じゃあ、そこの馬鹿の面倒みていてくれよな」 正則がニッと笑って言うと、三成はバツが悪いような顔をしつつも。 清正に向かって行った。 「清正。そこの大馬鹿が馬鹿をやらかさないように見ていてくれ」 と。 当然正則は騒ぐが、清正はわかったと笑いながら、正則の背を押し室を出た。 「やっと静かになった…まったくあいつは…」 「でも、そんなに嫌でもないでしょ?みっちゃんは」 「さぁな」 正則は正則で、自分達の道が別れてしまった事を悔いているようだ。 戦も終わり、またもう一度やり直せることになって、一番喜んだのは正則なのかもしれない。 三成も清正も、袂を解ってしまってことを悔やみはしたが。 結果的に互いを失おうともそれはそれで仕方ない事だと思っていた。 いや、清正はそうでも、三成は揺らいでいた。 正則は、戦を喧嘩と例え。 喧嘩の後は素直に仲直り。敗けた方は勝った方の言う事を聞く。 単純な解決法で、言い切った正則であったが。 やっぱり、どこかでいつかまた…と不安でもあるのかもしれない。 「この1年、いっぱい3人には付き合わせちゃったね。ありがとう」 「なんだ急に。気持ちが悪い」 「もう〜普通に感謝しているだけなのに〜」 「それこそ、わざわざ口に出さんでもいい」 「けどさ、私は」 「この1年と言わずに、別にいつでも言えば俺達はお前の気が済むまでいくらでも付きやってやる」 三成はが淹れてくれた茶に口をつけた。 「いつでも…」 「あぁ。いつでも、いつまででもだ」 は嬉しいはずの三成の言葉に顔を俯かせた。 「それは…」 「なんだ、それでも不服か?」 「違うよ!嬉しいくらいだよ!」 は顔を上げる。 「けど、実際は、そんな風に…ずっとなんて…無理だよ?」 「そうか?」 「そうだよ…それに、私は今までずっと皆に守ってもらって、可愛がってもらったから。十分すぎるくらいで…だから、もう、これで終わりにしようって」 「終わり?」 三成はまた怒るだろうか?と少しだけ不安になる。 「秀吉様はもういないけど、豊臣の家はちゃんと守られて。馬鹿兄貴達も誰一人欠けずにいてくれた。だから、そろそろちゃんとしなきゃって思って。それでも、最後のこの1年くらいは、楽しい思い出いっぱい作って」 「………」 「思い出。いっぱいできて、利家様とお松さまにも、おねね様にも親孝行できたと思うから。だから、お嫁に行こうって思ったの」 そう。 それがの考えていた事。 ずっと利家や三成達、兄貴達に守られている世界でもいい。 だけど、世間では自分はもう家を出ても可笑しくない年齢で。 女子ならば、どこかへ嫁ぐべきで。 以前、茶々にも嫁ぐ先を探してはくれないか?と言われたくらいだし。 秀吉の所にも縁談の話がいくつもあったらしい。 だから、今度は自分がどこかへ嫁ぎ、その家を守る役目をしなくてはと思った。 できれば、嫁ぐ家は豊臣とのこれからを確固たるものにできるような家がいい。 そう思うと、やはり徳川家に嫁ぐのが一番かもしれない。 「そうか」 また勝手な事を思うだろうか? それとも、成長したな。などと褒めてくれるだろうか? はたまた、くだらない。と一蹴されてしまうだろうか? この話はまだ誰にもしていない。 三成に言った、今が初めてだから。 三成がどんな反応をするのか、怖い。 「それで満足したのか?」 「う、うん」 恐る恐る三成の顔を見る。 声音からはよくわからない。 「では、俺のところに来るか」 「ん?」 「自分で言ってただろう?いっぱい思い出を作り、それで誰かのお嫁さんになるんだと」 「い、言ってないよ、私!?」 「言ったぞ、俺は確かに聞いた」 「う、嘘!?いつ!!?」 「新年の宴で、あぁ、お前は酔って寝てしまったが、その時に言っていた」 自身は覚えておらず、急激に恥ずかしさに襲われる。 「ま、また冗談なの?みっちゃん…」 「冗談で済ませば、俺は前田殿に何をされるかわからんのだが」 三成はやれやれとため息を吐いた。 「俺はこの1年。の好きにさせて、それで満足したならばお前を受け入れようと考えていたんだが」 「………」 「前田殿にも、ちゃんと話してある。何も問題はない」 秀吉と利家。 どちらにこの話をして、了解を得るのに苦労するのだろうか? どう比べていいか、判断はできないが。 「それで。どうするのだ?他に嫁ぎたい相手でもいるならば好きにしろ」 例えば、清正とか。 は何度もかぶりを振る。 清正が嫌だと言う話ではなく、他に嫁ぎたい相手がいると言う話でもなく。 「みっちゃんのお嫁さんに、わ!!」 とは慌てて立ち上がり、三成に頭を下げようとしたが。 足を引っかけ、そのまま倒れこみそうになった。 「何をしているのだ、大馬鹿」 「あ〜本当だね」 三成がしっかりとを受け止めてくれていた。 「えと。みっちゃんのお嫁さんになりたいです。私をお嫁さんにしてください」 勢いとはいえ、このまま三成の首にかじりついた。 「あぁ。俺の方こそよろしく頼む」 三成もしっかりとの背に腕を回した。 18/01/28
19/12/30再UP
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