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琴瑟相和
別にが誰と仲良くしようが構わない話だ。 それはそれで良い事だと三成は思う。 随分、にも心配をかけ、自分は沢山泣かせてしまったから。 これからを思えば、が幸せになる道を選んでくれることを願うだけだ。 だけど。 幸村と話をしている彼女を見た時、少しだけ面白くないと感じたのは何故だろうか? 三成は、二人の姿を見るのを止めて仕事へ向かった。 その日、急な話であったが驚いた。 「え?私に…ですか?」 「あぁ。お前に会いたいってさ」 利家から言われたことだ。 とある人物がに会いたいと利家に言ってきたそうだ。 利家にも特に断る理由もないので、二つ返事で了承したそうだ。 いや、通常断る理由がない。 なぜなら。 「茶々様が、私に…」 亡き秀吉の側室、跡継ぎ秀頼の母茶々。 秀吉やねねには娘のように可愛がってもらったが、茶々とはそんなに面識はなかった。 なので、いざ会うと思うと緊張してしまった。 そして、いざ大坂城にやって来たのだが。 「もしかして…私怒られるのかな…」 茶々に呼び出される理由を考えると、家康との間で勝手に進めようとした一件の事を思いだす。 後から聞かされた話だが、あの和睦条件を送られた際、茶々は大層激怒したしたそうだ。 「まぁいいから、会ってこい。別に茶々様は怒っちゃいねぇよ」 利家に背中を押された。 通された室で、待っていると、茶々がやって来たので低頭する。 「よい。面を上げよ」 利家は大丈夫だと言いながらも、見た茶々が不機嫌だったらどうしようかと思ったが、頭を下げたままにもいかないので、はゆっくりと顔を上げた。 「そなたには先の件で大層辛い思いをさせてしまったと聞いた。今更ではあるが、豊臣の為に奔走してくれたことに礼を言う」 には意外な言葉だった。 お蔭ですぐさま反応できずにいた。 「殿の築いた世、これから秀頼が継ぐ為にもそなたにも力を貸してもらいたい」 「も、勿体ないお言葉です。それに、私は…結局は自分の事しか考えていなかったから」 「自分の事とは言うが、己を差し出す真似などそう簡単にはできぬと思うが」 「あ、あれは…馬鹿兄貴達が仲違いするのをもう見たくなくて…」 馬鹿兄貴達と言うと、茶々は楽しげに笑った。 「三成達の事か。ほんに馬鹿兄貴達じゃの」 そんなに接した事のない、茶々であったが、彼女には三成達の関係がしっかり伝わっていたらしい。 「多少の兄弟喧嘩は良いが、あのような喧嘩はもう嫌じゃの。だが、もうそのような事がないとそなたも安心するがいい」 「はい。ありがとうございます」 実際、茶々も姉妹の間で色々揺れたのではないだろうか? 末妹のお江が敵対した家康の嫡男に嫁いでいたわけだし、もう一人の妹お初が二人の間に入って苦労もしたようだから。 の知る歴史の流れでは本来、関ヶ原の戦いは家康率いる東軍の勝ち。 三成は囚われて処刑されてしまう。 一旦は家康に着いた清正も、秀頼を守る為に尽くしていたと聞く。 だが、それから起こる大坂の陣で豊臣は滅んでしまうのだ。 茶々も秀頼もその時自決してしまうし、最後まで真田幸村も豊臣の兵として戦うも、彼も討死してしまう。 (だけど、関ヶ原では西軍が勝った。違う歴史の流れになっているよね…) 今また、馬鹿兄貴達は一緒に進む道を選んだのだから。 「だが、これから先の話だが」 「?」 「そなたにその気があるならば、私がそなたの嫁ぎ先を探してもいいのだが」 「え!?わ、私の!!?えと、あの…それは」 は顔を真っ赤にしてしまう。 茶々はそれを見て再び笑った。 「殿はいくらでもそなたを利用できたのにしなかった。大事にされておったのじゃの」 「え……」 そう言えば、そんな話を利家から聞いた。 正式にではないとはいえ、を娘として政略結婚に利用しようとすればいくらでも使えたのに、秀吉は一切を利用しようとしなかった。 にしれみれば、そんな価値はないのだろうと思っても、周囲から見ればを大事にしていたからこそ、秀吉は強引に婚姻など結ばせないようにしていたそうだ。 「まぁ、この話はここでの話じゃ。今は利家殿の世話になっているそうじゃな」 「はい。利家様とお松様に」 「だったら、私が勝手な真似をするわけにも行かぬだろう」 利家にもの気持ちがバレてしまったので、は苦笑するしかなかった。 茶々としばらく話、楽しんだ後。は利家の屋敷に帰ろうとしたが、ある人物の姿を見つけて駆け寄った。 「お久しぶりです。幸村さん」 「これは!お久しぶりです。殿」 幸村がいた。 「くのいちから聞いています。私に話があるとか」 「はい。お聞きしたい事があって…」 「話を聞いていて、すぐさま殿に会いに行けず、申し訳なく。結果殿が来られるとは」 「幸村さんもお忙しいでしょうから気にしないでください」 それに今日は優先事項として、茶々から呼ばれたからだ。 その事を話してから、は本題に入る。 「あの…ずっと気になっている事があって…稲ちゃんは…どうしていますか?」 「義姉上、ですか」 幸村の義姉である稲。 本多忠勝の娘である彼女は今回の件で、夫ともに徳川へ着いた。 全員の処遇については知らないのだが、家康は蟄居を命じられ、息子秀忠が跡を継いだ。 徳川についた大名は改易で済み、誰一人処刑されるような事はなかった。 徳川を処断する事をねねが反対したからだという。 同じく徳川についた清正と正則も、三成は特に利家からの要望もあって、直接政に関わらないが、三成、秀頼の傍で動いている。 稲はどうしたのか?ずっとそれが気になっていた。 にとって、こっちで出きた友達。 稲、甲斐、くのいち。性格も好みもまったく違う4人であったが、一緒にいるのが楽しかった。 甲斐とくのいちは豊臣側だったので、今でも気軽に会えるが稲とは一度も会えていないのだ。 「稲ちゃん…徳川方についたから…その後どうしたのか気になって、誰も何も言わないから…」 最悪な事を想像してしまった。 ただ、そんな悪い事にはなっていないと思うのだが。 話を聞くならば、身内の幸村に聞いた方がわかると思ったから。 「大丈夫ですよ。殿が心配なさるような事にはなっておりませんから」 「本当ですか?」 「えぇ。義姉上は今も私の兄と共に沼田の地におります」 「………そっかぁ…」 元々真田家は家存続をも考えて徳川、豊臣へと別れた。 父昌幸と幸村は豊臣へ。兄信之は妻稲の事もあって徳川へついた。 幸村の話では、昌幸や幸村は兄夫婦の恩情を願ったそうだ。 結果、願い受けられ元々いた沼田で静かに暮らしているようだ。 「良かった…」 「義姉上もきっと殿の事を案じておられるはずです」 「今すぐは無理でも、また稲ちゃんに会いたいです」 「文を書いてはいかがでしょうか?義姉上も喜ぶと思いますよ」 「そうですよね!待っているだけでは駄目ですよね!ありがとうございます、幸村さん!」 は幸村に何度も頭を下げた。 「そんな礼を言われるほどでもないですよ。私の方こそ、早くにお伝えしていれば」 頭を下げるに幸村は慌てる。 「どうかしたんですか〜お二人で」 くのいちが姿を見せる。 「稲ちゃんの事を幸村さんに聞いていたの。ほら、この前くのちゃんに頼んだでしょ?」 幸村と話がしたいと。 「あぁ、そうだったね。そっか、は稲ちんの事を気にしていたんだ」 「うん。少しでもわかって良かったよ。稲ちゃん元気みたいだし」 「つ〜かぁ、それ。みっちゃんに頼めば聞けたんじゃないの?」 「そうなんだけど…なんか聞きにくくて」 くのいちが手を口にあてて笑う。 「そんな事ないと思うよ〜きっとみっちゃんはに頼ってもらえるのが嬉しいと思うし。話を聞けばなんだそんな事って笑われるよ〜」 「そうかな?」 「そうそう。さっきも幸村様といるをジッと見てたよ」 「え?」 あそこで。とくのいちが指した方向をは見てしまう。 だが、そこに三成はいない。 「案外みっちゃんもを気にしているかもよ〜」 「………」 はくのいちを恨めしそうに見る。 普段見せない彼女の表情にくのいちが若干慌てる。 「?」 「くのちゃんは…本当に忍びなの?」 「へ?なんで?」 「ベラベラ簡単に話すから…」 いつもの事でしょ?とくのいちは笑うも、は少し頬を膨らませている。 「?」 意味がわからないと首を傾げるくのいちだったが、すぐ近くで咳払いする幸村がいた。 それでようやくくのいちもわかったようだ。 「にゃははは〜」 「くのちゃん!」 同じような感じでの気持ちを利家にバラされてしまったのだから。 「ごめん。、うっかりしちゃった」 「うっかりじゃないよ!もう!!」 恥ずかしいとは顔を覆った。 「幸村さん!」 「は、はい」 「内緒にしてくださいね!」 の懇願する姿に幸村は穏やかに笑う。 「大丈夫ですよ。私は誰かと違って口は堅いですから」 「にゃー!幸村様、誰かって誰ですか!!」 くのいちが幸村に抗議する姿にも笑ってしまう。 「本当、誰の事ですかね〜」 「もう〜まで!!ごめんって〜本当うっかりしていたんだよ、幸村様って戦の時と違って普段はぼんやりしていて影が薄いから」 「失礼な奴だな」 「にゃ。またうっかり口が滑って」 くのいちは両手で口を押える。 「う〜これ以上余計な事を言ってしまいそうだよ。これにてドロン!」 くのいちは姿を消した。 「しょうがない奴だな、本当」 幸村は苦笑する。 「ですが、根は良い奴なので、これからもよろしくお願いします。殿」 「私の方こそ、くのちゃんの明るさには私も助けられていますし。ちょっとうっかりさんですけど」 これには二人して笑ってしまった。 「あ。みっちゃん!」 幸村と別れた後、ずっと待たせてしまっているだろう利家の元へ行こうとしていた。 そこで三成の姿を見つけた。 「…か」 「さっき茶々様にお会いしてきたよ」 「…だからここに居たのか」 「うん。色々お話できて良かったよ。あと、幸村さんに」 幸村の名前を出されて一瞬三成が目をそらしたような気がした。 「稲ちゃんの事を聞けて良かった」 「稲…稲姫か?」 「うん。ずっと関ヶ原の戦いの後どうしているのか気になって。幸村さんに聞いてみようと思って」 「そうか…」 「くのちゃんにみっちゃんに聞いても良かったんじゃないかって言われたけどね」 「まぁ…黙っている事でもないから、聞かれれば教えてやれたが」 やはり余計な事を考えすぎたかなとは思った。 「あ。そろそろ行くね。利家様をずっとお待たせしていると思うから」 随分話し込んでしまったから。 「」 「ん?」 「その…前田殿の屋敷で…不自由はないと思うが…どうだ?楽しいか?」 秀吉が居た頃とは違うだろうからと三成なりに心配してくれているのだろうから。 「うん。楽しいよ。今だって、みっちゃんや、清正、正則が会いに来てくれるし。馬鹿兄貴達が3人で居る姿見られてやっぱり嬉しいもん」 「馬鹿は余計だ」 三成はの頭を撫でた。 「ま。左近に言わせると、お前も馬鹿の一人らしいがな」 「もう〜」 自然と笑みが零れる。 三成と居るのは本当優しくなれる。 三成とずっとこうして居られたらいいなと思って。 14/08/31
19/12/30再UP
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