口閉ざす馬鹿、拗ねる馬鹿。



ドリーム小説
清正に愚痴っているようになるのだろうが。
彼には嘘がつけずに馬鹿正直に話してしまう。
隠すものが何もないからだろう。
清正もわかっていて答えをくれるから。つい甘えてしまうのだ。

「ほら。まだ豆大福はあるぞ、食え」

「私一人で食べられるわけないじゃん。清正も食べてよね」

「あぁ」

縁側でねねの作った豆大福を頬張る。
一つ目に食べたものより美味しく感じるのは、くすぶっていたものが小さくなったからだ。

「あー。美味しそうなもの食べていますなー」

「くのちゃん」

忍びである彼女が音もなくどこからともなく姿を見せる。
驚かされることも多いが、最近ではなれた。
なれたと言うより、彼女の方で気を使って先に声を出してくれる。

「食べる?おねね様の作った豆大福。とっても美味しいんだよ」

まだまだ沢山あるからとくのいちにも勧めた。

「わーいいの?じゃあいっただきまーす!」

くのいちは喜んで豆大福を頬張る。

「あまり食いすぎるなよ。忍びが重くて跳べないんじゃ笑われるぞ」

「ぬ。そんなヘマはしないっての。っていうか、忍び以前に女の子に対して失礼ですぜー」

「だよね。清正酷い」

は笑う。

「けど、やめられないくらい。おねね様の豆大福は美味しいんだ」

そう言ってもうひとつ手に取った。

「本当。病み付きになりそうだねぇ」

くのいちも気に入ったようだ。

「あ。お前・・・・本当に食いすぎるな。俺もまだそんなに食っちゃいねぇんだ」

「早い者勝ちだよ、こう言うのは」

「あのなぁ」

まだあるから。なんて余裕があったが、くのいちに盗られまいと清正も豆大福に手を伸ばす。

「あぁ。そうだ。、こいつに言ってやれ」

「ふにゃ?」

あたし?とくのいちは首を傾げる。

「え?別にくのちゃんに言うことないよ」

「あるだろう。正確にはこいつの主だ」

「幸村さま?なになに?言付けがあるならちゃんと伝えるよー」

「あぁ伝えてやってくれ。三成を独り占めするなって」

「清正っ!」

変なことを言うな。と清正の肩をバシバシ叩く
恥かしいじゃないかと顔を赤くして。
だがくのいちは瞠目したかと思ったが、すぐににゃははと笑う。

「それはあたしが逆にお願いしたいくらいだね〜早く幸村さまを返してほしいよ」

「く、くのちゃん?」

「まぁ幸村さまも友だちと一緒で楽しいんだろうけどねー」

くのいちも自分と似たようなことを考えていたのだろうか?
そう思うとより一層彼女に好感が持てた。

「どいつもこいつも仕方ねぇな」

やれやれと清正は肩を竦める。

「代わりじゃねぇが。いい男を一人紹介してやるよ」

「は?何言ってんの、清正」

「そうだよー」

清正は立ち上がる。

「三成も、幸村も焦るかもな。そいつと楽しげなお前らを見て」

「「・・・・・」」

「ただ少し性格に難ありだが」

誰だ、それは。くのいちと顔を見合わせる。
清正の言ういい男ってのも気になるが三成がそのいい男と一緒に居て気にしてくれるのだろうか?
そっちの方が気になった。
気になったから・・・・。

「くのちゃん」



「「ちょっと行ってみようか」」

と清正の案に乗った。





【3】





「あれからどうだった?くのちゃん」

「どうって言われても・・・・幸村さまだからね〜楽しそうで良かったなーって」

清正にいい男を紹介してもらった後のことだ。

「そういうは?噂のみっちゃんはどういう反応だった?」

互いに好きな人がいるとわかると、ごく自然にその手の話に花が咲いた。
今では互いに色んな事を話せて楽しい。

「あーだめ。なんか忙しいみたいでまったく顔を合わせないんだー」

「お互い上手くいかないもんだねぇ」

恋愛ってそう言うものだろうなと二人して苦笑した。

「何をたそがれて居るのよ、あんた達」

甲斐姫が腰に手を当てて二人の前に立った。
稲姫はすでに幸村の兄である旦那と共に沼田に帰ってしまった。
だから最近では3人で一緒にいる方が多い。

「たそがれると言うか・・・・・あ、そうだ。甲斐ちゃんも誘えば良かったね」

「あーそうだねぇ。あたし達だけで楽しんで悪かったかも」

「何の話?」

くのいちが大袈裟に「楽しかったよー」とか「残念だったねー」と火に油を注ぐような反応をするので。
意味のわからない甲斐姫はこめかみを引くつかせる。
元々彼女は短気なのだ。今にも拳が飛び出しそうで怖い。

「あ、あのね。この前清正がいい男を紹介してくれるって言って、くのちゃんと二人で会ったんだよ」

「何それーってどこの誰?」

スッと怒りが収まったようで、この辺甲斐姫も年頃の娘さんの反応だ。

「九州の立花家のご当主・・・でいいのかな?」

「確かそうだと思ったよ」

「立花宗茂さん。びっくりしたよねー」

「うんうんしたした」

くのいちが頷いた。

「えー!いいなぁ!あの素敵な人と会ったの〜!!」

存在は甲斐姫も知っていたようでかなり羨ましがられた。

「本当、誘って欲しかったわ、それは。で、どうだったの?」

興味津々で二人に顔を近づける甲斐姫。

「どうって・・・・なんか素で恥かしい台詞を吐く人だったよね」

「うんうん。けどちょっと胡散臭い感じもした」

「あ。わかる〜あれだよ、幸村さんが天然の爽やかでも、宗茂さんは計算された爽やかさ?」

宗茂に対して酷い言い草だろうが。

「裏表のある人なの?」

「裏表って言うか・・・・なんか本心を掴ませない感じ?宗茂さんに惚れたら大変そう」

「上級者向けだよ」

だからと言って二人が宗茂に乗り換えると言うのはないのだが。

「それでもお話している間は楽しかったよね、くのちゃん」

「そうだね。人を飽きさせない能力はあるよね」

「って!結局楽しかったって自慢しているだけじゃないのよー!」

ずるいと何度も連呼する甲斐姫に二人は笑った。
すぐさまは「あぁそうだ」と思いだす。

「私ね・・・・つい最近まで甲斐ちゃんと幸村さんたちに嫉妬していたんだー」

「・・・・・・・・・はぁ?」

別に言わなくてもいい事だとわかっていたが。
もっとすっきりさせたくて言葉にしてみた。
甲斐姫は何を突然と眉根を寄せた。
甲斐姫だけでなくくのいちもキョトンとしている。

「幸村さまはわかるけど・・・・なんでこの子も?」

半分は事情を知っているくのいち。
だが甲斐姫に嫉妬する理由がわからない。

「あたしの魅力にってことかしら?」

「あ。そうじゃなくて」

「はっきり言うわね、・・・・」

「ごめん。あのね・・・・みっちゃんから見て甲斐ちゃんって特別なのかなぁ・・・って思って」

「って言われてもねぇ。あたしはそんなに三成殿と会ったことないわよ」

「ほ、ほら!前にも言ったでしょ?みっちゃんが甲斐ちゃんを褒めていたって。本当に滅多にそういう事言わないから」

はお腹の前で指を絡め、甲斐姫の様子を窺い見る。

「本当、ってばみっちゃんが好きねぇ」

「か、甲斐ちゃん!?」

「いやいや、それはわかりきった話だから」

「くのちゃんまで!?」

頭から湯気でも出るのではないかと言うくらい、の顔は真っ赤だった。

「まぁみっちゃんが?あたしの事に惚れているって言うなら仕方ないけどー」

「ないない。それはなーい」

「あんたね・・・」

ニシシと笑いながら否定するくのいちに、甲斐姫は手とうをかました。

「小さいことでウジウジ悩むよりも、どかんと突撃しちゃいなさいよ」

「え?甲斐ちゃん?」

「あんたが思っているような特別な関係じゃないわよ。わかっている癖に」

ツンと額を指で押された。

「気にして悩むくらいなら、当たって砕けろよ!」

「く、砕けるのは嫌なんだけど・・・」

「恋愛ってそんなものよ。尻込みしていても何にも始まらないのよ」

「さすが猪女ですなーいやー見習わないと」

「あんた馬鹿にしているでしょ」

この二人はなんとなく似ている。三成と正則の関係に。
一緒に居ればこうしたくだらないやり取りをして。
かと言って別に不仲ではない。

「とりあえずさ。最近会えていないんだったら、会ってくれば?」

「くのちゃん」

寧ろ今行け。と言わんばかりにくのいちに背中を押された。
今行かなくてもとは思うが、早い方がいいと二人は言う。

「って言うか、今の二人の言い方だと。私、みっちゃんに告らないとダメみたいじゃんかー」

「いいじゃない。告れば」

「やだー!まだそんなの考えていないもん」

それに三成が自分をどう思っているのかなんてわからない。
清正達が自分を妹分のように扱うように三成も同じかもしれない。

「いいから。会いに行っておいで。会うだけでもいいじゃん。ほらほら」

早く行かないとシメるわよ。と理不尽な事を言われた。
は渋々その場を離れた。




「あ〜あ〜大丈夫かなぁ〜」

重い足取りのの後姿にくのいちが不安の声を上げる。

「大丈夫じゃないの。別に喧嘩をしているってわけじゃないんだし」

拱手し同じ様にの後姿を見ている甲斐姫。

「嫉妬されているとは思わなかったけどね・・・・」

「嫉妬の対象に普通入らないよねぇ」

「一言多い・・・って言うか。あたしにはがなんであそこまで悩んでいるのかわかんないんだけど」

面倒臭そうに息を吐いた甲斐姫。

「へ?」

の話を聞いていると、三成殿との惚気にしか聞こえないのよね・・・・」

「ありゃ。気づかないのは本人だけってか」



***



(あ・・・・・先客がいる・・・・って幸村さんたちだ・・・)

本当仲がいいなと苦笑してしまう。
甲斐姫とくのいちに、三成の下へ行けと言われてきたものの。
楽しそうな話し声が聞こえて立ち止まってしまった。

(邪魔だよね・・・・って言うか、話すことないし・・・)

甲斐姫達の所に戻ろうか。
それとも清正達でも捜そうか。

「何をしている馬鹿」

「っ!!?」

気持ちいいくらいタンと障子が開いた。
三成が勢いよく開け放ったのだ。

「みっ、三成・・・・」

「お前、それは」

三成は深く眉を顰めた。

「ん?おぉ殿ではないか。急に三成が席を立つから何事かと思った」

兼続がそこに居ないで中に入ったらどうだと勧める。

「こ、こんにちは」

「三成殿に用事ですか?」

幸村にも柔らかく微笑まれた。

「え、あ、その・・・・特にこれと言って・・・・・」

なんとなく心の準備が出来て居なかっただけに目線が定まらないし、手のやり場にも困ってしまう。

「邪魔しちゃ悪いなーと思って」

「邪魔などと思いませんよ。どうぞ、こちらへ」

幸村が座布団を一枚出した。

「ほら、座れ。馬鹿」

の後頭部を軽く押した三成。
つんのめるように座布団に正座する

「兼続が大量に饅頭を持ってきた。俺はそんなに食えんから、お前が変わりに食え」

一口大の饅頭。菓子皿をの前に三成が出した。

「ありがとう」

「・・・・・」

礼を言うも、どこか不機嫌な三成。
やっぱり邪魔をしてしまったのかとは居た堪れなくなる。

「みっ・・・・三成、あの」

「なんだ」

「・・・・・・・なんでもない」

やっぱり怒っている。
甲斐姫とくのいちんは勢いで告白しろなどと言われたが、到底できるはずもない。
と言うより、一蹴されてしまいそうだ。

「三成。急にどうした?女子にそのような怖い顔をするなんてな」

「別にどうもせん。ただ・・・・」

「ただ?」

「こいつが大馬鹿なだけだ」

「三成殿・・・理由になっていませんが・・・・」

は俯く。
食べろと言われた饅頭に手を出すこともなく。
三成の機嫌を悪くさせたのが自分だと思うと何もできなくて。
大馬鹿と強く言われてじんわりと涙が出そうになる。

「理由が聞きたいのは俺の方だ」

「はい?」

「急に余所余所しい態度を取って・・・・なんだ、急に三成などと呼んで」

「・・・・・三成?それのどこが余所余所しいのだ?」

兼続も幸村も訳がわからず首を傾げる。
は思わず顔を上げた。









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19/12/30再UP