口閉ざす馬鹿、拗ねる馬鹿。



ドリーム小説
「別にどうもせん。ただ・・・・」

「ただ?」

「こいつが大馬鹿なだけだ」

「三成殿・・・理由になっていませんが・・・・」

「理由が聞きたいのは俺の方だ」

「はい?」

「急に余所余所しい態度を取って・・・・なんだ、急に三成などと呼んで」

「・・・・・三成?それのどこが余所余所しいのだ?」

「三成・・・・それって・・・・」

「っ!!」

一言が発するたびに三成が強く睨む。
今までこういったことはなかったので、は思わず肩を竦めてしまう。

「三成。なんだ、いったい・・・?」

一緒に居る兼続と幸村には意味が通じず困惑している。

「急に不機嫌になられて・・・いったい何が?」

どうもと何かあったように見える。
しかもその理由を聞きたいと思っているのが三成の方らしい。
二人はあまりのことを知らない。
少し前に三成から紹介されただけだ。
秀吉とねねに実の子のように可愛がられているらしいのは知った。
兼続よりも幸村の方がの事は知っている。
知っていると言っても、稲姫やくのいちと友好があると言う程度だ。

さて困った。
兼続と幸村はどうしたら良いのかと。
二人だけにするべきか、見守るべきか・・・。
三成は自分達がここに居てもなんら問題はないのだろうか?

、お前」

緊張が走った。
三成が先に動いた。
思わず息を呑む兼続と幸村だった。





【4】





「なぜ、急に三成などと呼ぶ」

「「・・・・???」」

それのどこが不機嫌な理由なのだろうか?
幸村と兼続は余計にわからなくなる。
だが、言われた方のは小さく唸り俯いた。

「この所ずっと一人で塞ぎこんでいる様子かと思えば、人の事をそう呼ぶ」

「だ、だって・・・・」

「だってなんだ。それとも俺には話せずとも清正には話せるのか?」

清正?あぁ加藤清正殿か。
新しい登場人物が出てきたなと二人は困惑よりも段々と興味が沸いてくる。
微かではあるが、この少女は三成になんらかの影響を与えているらしいと気づく。

「話せるって・・・別に」

「あぁ俺よりも奴の方が頼れるからな」

「そんな!みっちゃんだって充分頼りになるもん!!・・・・あ・・・・」

「それでいい」

一瞬であったが、三成が優しく笑んだように見えた。

「え?」

「無理して三成と呼ぶ必要はない。今まで通りでいいと言っているんだ、俺は」

スッと顔をそっぽを向かれた。

「いいの?みっちゃんって呼んでいても・・・」

「別にダメだなどとは言った覚えはない。今まで好き勝手に呼んでいただろうが・・・・」

は自然と口元が緩んだ。
痞えていたものがスッと消えていく。

「うん!」

は大きく頷いて、ようやく兼続の土産だと言う饅頭に手を伸ばし食べ始めた。

「うん。美味しい」

「そうか。よかったな」

当人だけで納得した様子なのだが、この場にいる兼続と幸村は呆気に取られていた。

「す、すまぬ、二人共・・・・・・私たちを置いていくのは勘弁して欲しいのだが・・・・」

「三成殿の不機嫌な理由は呼び名・・・ですか?」

「「あ」」

すっかりその存在を忘れていたと言わんばかりの三成との反応。
直後、二人はそろって頬を赤く染めた。

「お、お前達には関係ないだろう!」

「まぁそうなのだが・・・だったら二人きりの時に解決すれば済む話ではないか」

聞かれたくないのならば、そう言えばいい。
さすれば兼続達も気を使えたのだ。
だが突然始まり、あっという間に解決してしまった。
何か劇的な事でも起こるかと期待したのだが、生憎そのようなものは起きなかった。

「え、えとですね。私、ずっと三成の事をみっちゃんって呼んでいたんですけど・・・。
この前、甲斐ちゃん達にそう呼ぶと、石田三成のイメージが変わるって言われて・・・・」

「いめいじ?」

「あ、えと。印象です。印象が変わっちゃうって。威厳とかなくなりそうねって」

は戦場での三成を知らない。
いつも清正達と馬鹿馬鹿言い合っているような姿が日常的だ。
だけど、石田三成をそう知らない者には、なんとなくあまり好ましい感じには聞こえないようなのだ。

「でも、別にいいんじゃないかって言ってはくれたけど・・・・みっちゃんもやっぱり嫌がっているかもって思ったし」

は俯き加減で指を絡める。

「周りの人にみっちゃんが悪く思われるの嫌だったし・・・・」

だから兼続達の前であえて「三成」と言ったのだ。

「でも、結局三成殿はそれが嫌ではなかったのですよね?」

「そのようだな。不機嫌になるくらいだ」

「う、煩いぞ、お前達」

三成は更に顔を赤くする。
それが余計に兼続達には面白く映ったのか、幸村と揃って笑い出した。

「あと、まだ何か隠しているだろう。今の内に言え」

三成は腹を括ったかのようで、兼続達に聞かれても構わないと悩みを全て話せと言った。

「な、ないよ」

「いや。あるはずだ。やっぱり俺には話せぬか?清正には話せて」

「な、なんか根に持っているような言い方だよね、みっちゃん・・・・」

「そうか?だが実際、お前はいつも清正に泣きつくからな」

「なんだ嫉妬か?三成。お前も人の子だな」

楽しげな表情を浮かべ兼続が茶々を入れる。
間髪三成からは「黙れ」と扇子を投げつけられる。

「図星のようだな」

扇子を見事に受け止め畳の上に置く兼続。

「あ、でも。私は嫉妬しちゃいましたよ?お二人に」

「?」

が小さく舌を出した。

「小田原から戻ってきて、みっちゃんはずっと兼続さんと幸村さんと楽しそうで。
私なんか入る隙間もないくらいで、相手にされなくてつまらないなーって」

「それはすまない事をしたな、殿。だがこれからは遠慮なく混ざればいい」

一つのネタとして言ったに過ぎないのだが、兼続は真面目に頭を下げた。
頭を下げられた事に慌ててしまうも、二人共まっすぐな性格の人間なのだろう。

「ありがとうございます。これからはそうしますね。でも、今度の休日はみっちゃんは私が予約しますから」

「予約?」

「うん。そう。私との約束を守ってもらうんだから」

は三成に笑いかける。

「みっちゃんと清正と正則は、私の遊び相手になってもらうんだから。約束したでしょ?」

小田原へ出兵する前。
着いて行きたいと駄々をこねただったが、三成達は大人しく待っているように言った。
寂しい思いをさせるのは承知だが、戦場での身に危険が迫る方が嫌だからと。
その代わり秀吉が天下を取り戻ってきたときには、に付き合うからと。

「そうだった・・・・約束だったな」

三成は手を伸ばし、の頭を撫でた。

「戦に連れて行けなど、泣き喚いて大変だった」

「な、泣いてないもん!嘘言わないでよ!」

「そうだったか?」

くつくつと笑う三成。

「そうしてみると、兄妹みたいだな」

「「え?」」

兼続が腕を組み頷いた。

「仲良きことは良い事ではありませんか」

幸村にも微笑ましく映ったようだ。

「兄妹・・・ね」

「まぁ幼子みたいに手のかかる馬鹿者だがな」

三成は呆れた口調でポンポンとの頭を軽く叩いた。

「馬鹿の次は子ども扱い?なんか酷くない?」

頬を膨らませ非難するだが、内心面白くなかった。

(否定してくれないんだ、みっちゃんってば・・・誰が妹だっての)

だけど、兼続や幸村に向かって「違う」と言い切れないと同時にじゃあそれ以上の者かとも言えない。
折角ここ最近のモヤモヤが消えたと思ったのに、また違うモヤモヤが湧いたようだ。



***



「気持ちいいー!!」

思わず両手をあげてそう叫んでしまった
草原を見ての感想だ。

「こらっ!暴れるな、馬鹿」

「あ。ごめん、清正」

と3人との約束がようやく果たされた。
やりたいことと言われて、あれもこれもと色々考えたがまずは4人でどこか遠出したかった。
これと言った目的はなく馬に乗って。
は一人では馬に乗れないから、清正に相乗りさせてもらった。
清正の前に座って、いつもより高い目線で見える景色に感動した。

「結構走らせたな」

三成と正則も騎乗したままで話しかけてきた。

「民家ひとつねぇぜ。おねね様に弁当頼んで良かったよなー」

正則の馬には昼餉用の弁当を乗せてある。
ちょっと遠足に。などとがねねに言ったのだが。
ねねは「じゃあお弁当が必要だね!」と四人分の弁当をこさえてくれたのだ。

「それよりも今日中に帰れるのか・・・・・」

「なんとかなるんじゃないのか?とりあえずはの機嫌次第だな」

「へへっ違いねぇ!」

「何、それ。それじゃあ私が嫌だって言ったら帰らなくてもいいんだ?」

それはいい事を聞いたとは歯を見せ笑う。

「その時はそこらに捨てて帰るぞ」

「清正の鬼!」

「そうだ!そうだ!清正の鬼ー!」

正則も一緒になってふざける。
清正はムッとし、手綱を引く。すると馬が嘶き前足を上げた。

「きゃあっ!」

は後ろにひっくり返りそうになるも、背には清正がいるので問題ない。

「清正ッ!」

「俺は鬼なんだろ?」

「お、鬼じゃないよ。清正は、うん。鬼じゃない」

「やっている事は鬼と言うより餓鬼だな」

ボソっと三成が言うも、しっかり清正には聞こえていたようで。

「お前に言われたくないな、みっちゃんよ」

「俺のどこが餓鬼だ。キヨちゃん」

互いに口角を引きつらせている。
確かにその辺はまだまだ餓鬼と言われても仕方ないのかもしれない。

「お前らみっともねーなー」

「「煩いマー坊」」

「なっ!なんだとー!!」

気が合わない。などと口にしてもなんだかんだで息が合っているようにには見える。
だから、3人が以前とまったく変わらない様子なのが嬉しい。

「あはははははっ」

だから自然と腹を抱えて笑ってしまう。
別に中身は変わっていないのに、少し距離が出ていたように感じて寂しかった。
その内を黙って、一人で拗ねて。
でも彼らは気付いてくれて。

(ま。兄妹に見えてもしょうがないのかな・・・・)

特に清正にいたっては、いち早くそう言う場に現れ話を聞いてくれるのだから。
正則は一緒に馬鹿を言い合える年上だけど、弟みたいな。
順で言うなら長兄が清正、次兄が三成、正則、だろうか?

(うーん。でも、みっちゃんが3番目でもいいような気がする)

どっちにしても清正が長兄には変わりない。

「どうした?

「ん?」

「またなんか悩み事か?」

「そういう時はちゃんと俺らに言えよ?お前を苛める奴がいるならぶっ飛ばしてやるからよ」

静かになったに3人はどうしたのかと尋ねてくる。
はなんでもないとかぶりを振る。

「さて。おねね様の作ったお弁当食べよう!」

そしてお腹いっぱいになったら、太陽の下で昼寝をするのもいいだろう。
まだまだ3人とやりたい事はいっぱいあるのだ。
当分の間、付き合ってもらうつもりだ。






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10/02/19
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