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戦国スローライフで楽しみます。
「ありがとう、稲ちゃん」 「お礼を言われることじゃないわよ」 「ううん。あそこで稲ちゃんに会わなければきっと一人で変な風に考えこんでいただろうから」 「そう言われちゃうと、困っちゃうわね」 なんて会話をした数日前。 直政に対し、ちょっとばかり怒りの矛先を向けてしまった。 屋敷に居づらく、町中をぶらぶらしていた所、稲と出会って話を聞いて貰った。 お蔭ですっきりした気持ちで屋敷に戻り、直政と腹を割って話した所上手くいった。 だからそんなに深く考えていなかったのだが。 「そう言われちゃうと、困っちゃうわね」 に、意味があるとは思っていなかった。 「え?…それって…」 「ごめんなさい、。あれは偶然じゃないのよ」 と後日稲から聞いた。 「どういうことかな?」 「直政殿が、の話を聞いてくれないって。自分じゃ何を言っても上手く行かないからって」 「………」 だが、稲の性格ならば何も知らずにあの時出会っても相談には乗ってもらえたはずだ。 「直政殿は直政殿で、を心配していたのよ。それだけはわかってちょうだい」 「別に怒っていないし…なんか私一人でお子様だなぁって思っちゃうよ」 「そんなことないわ」 「かなぁ?でもなぁ…」 直政ならば言いたい事があるなら面と向かって言ってこい!ぐらい言いそうなはずだ。 「それは…年頃の女性に対してそんな風は言えないってことじゃないの?」 「私、お年頃ですか?」 「立派にお年頃よ」 その割には直政は人を雑に扱うと思う。 変な所で気を遣って変わった人だ。 「まぁでも、稲ちゃんのあの返事の意味はよくわかったよ」 「本当ごめんなさい」 「いいよ、別に。稲ちゃんならあれはなくても相談には乗ってくれただろうし」 「そう思ってくれるなら嬉しいわ」 稲が言う、困っちゃうわ。とは直政に頼まれたこともあって。 から素直に礼を言われると困っちゃう。と言う意味だったのだろう。 まぁ深く考えるのはやめにしておこう。 【3】 「から見て、直政殿はどんなお方に見えるの?」 「は?何急に…」 稲にしては珍しいことを聞いてくるなと思った。 堅物そうに見える稲でも、そう言う話題に興味はあるのだろうか? いつの時代でもってことか? 「急ってわけでも、以前からに聞いてみたいとは思っていたのよ?」 「はあ」 かと言われても、今のはそんなに直政に興味はない。 寧ろ、同世代と言っても、頭の固そうな男だ思っていたし。 「見た目イケメンでも、中身おじいちゃんか!ってくらい固いよね、直政さんは」 「お、おじいちゃんて…」 「割と最初の頃にそう思ったんだよ。黙っていればイケメンなのに暴力的だよなぁって」 「いけめんって…」 「えとね、こっち風に言うと…男前でもいいし、イケメンって少しチャラいのかな…あぁえーと。美丈夫?」 男前は、中身も良いとされ、イケメンは見た目重視の言葉らしい。 その辺の詳しい事は知らずには軽くイケメンと言ったが。 直政はどちらかと言えば、美丈夫と言うのが似合っているかもしれない。 けど、やっぱり。 (黙っていればって感じがする…あのすぐに手が出るのがなぁ…) そうなってしまうのは、ほとんど自身の所為だと思うが、自分でそうは思わないのだろう。 「直政殿は美丈夫…うん、そうね。その言葉はしっくりくるわね。でも、黙っていればってのは失礼じゃないの?」 「え、だってあの人口を開けば義母上が、義母上がぁ…って。どんだけお義母さん好きなんだよって思って。あと、割と私に対してアホの子を見るような目をするよ」 「………想像がついてしまうのは何故かしら?」 「黙っていればいいのにねぇ」 「でも、言うほどお喋りな方ではないと思うけど」 では、喋った時のその単語の多さを控えるべきなのだろう。 「は贅沢な悩みを言うのね」 稲は嘆息した。 「?」 「直政殿は家康様期待の方で、若い子達が憧れているというのに」 「え、でもなんか怖い異名着いているでしょ?」 「井伊の赤鬼ね」 戦場で見せる姿を赤鬼みたいなのだろう?とは想像する。 「勇猛果敢に先陣を切る姿から、そう言われているのだけどね。あとは兜から鬼を連想させるのかも」 「ふーん、私からすると鬼って桃太郎に出てくるような居座っているような感じがするけどね」 直政には動、が思う鬼は静なのだろう。 どちらにしても、稲はが直政に対し見くびっている気がした。 それとも、屋敷内で過ごしている、そのの言う姿が本来の直政なのだろうか? (直政殿もにはすべてを話すわけではないだろうし…) 稲は稲での事情を知っているので、それも仕方ないのだろうなと妙に納得してしまった。 「だけどさぁ、稲ちゃん」 「なに?」 「稲ちゃんがそこまで言うって事はさ、稲ちゃんに直政さんに惚れているとか?」 「な、な!!?」 「若干直政さん贔屓だし」 「ち、違うわよ!!?そうじゃないわ!!もう、ってば…」 突然言われて稲は焦った。 そんなつもりは稲もない。 「じゃあ稲ちゃんの好みって?」 「え、え…」 答えなくてはダメなのか?と稲は唸るも、実際直政に対しそんな感情はない。 だから誤魔化すのは辞めようと決する。 「えと、わ、私はどちらかと言えば…父上のような方が…」 「あ〜忠勝様かぁ…」 稲も直政と似たようなものだなとは思った。 しかし、忠勝のような人とは。 戦国の世じゃ、結婚と言うと親が決めた人とか、上司からの薦めとかで。 恋愛結婚は珍しいようだが。 忠勝のような人とは…中々難しい気がするし。 ハードルも高い。 もし、この先稲に求婚しよう者がいるならば、それを乗り越えるのは大変だ。 ただ。は知らないのだが、この先稲が嫁ぐ相手は忠勝とはまったく違うタイプの人間ではある。 それはまた別の話だ。 その後、何気なく屋敷を出た。 稲は用事があるらしく、帰っていったので、一人だ。 元々知り合いがそんなにいるわけじゃないので、友達と呼べるのが稲だけなので少し寂しい。 (かといって、出会いって思っている以上にないよね…) だが、と同世代の子はみたいにフラフラはしていない。 仕事をしている子達が多い。 武家の娘ならばそれなりの教養を学び、武術の稽古などをするのだろう。 自分もすべきなのか? (けど、折角の戦国ライフを楽しみたいんだよねぇ…) その前に、戦国ライフと言っても実際何で楽しむべきなのだろうか? (戦に出るとか?いやいやいや、私にそれは無理だし、しかもイベントみたいに楽しむのは可笑しいでしょうが…) それを万が一直政に言ってしまえば、あの男は真面目に説教をしてくるだろう。 (そもそも、今…どういう状況なのかな?) 家康がまだ天下を取っているようではない。 秀吉の時代なのだろうか? 直政が行く様子も見られないのだが。 (今度、詳しい事を直政さんか、直虎様に聞いてみよう) まだまだ戦国ライフを満喫しているとは言えないだろうから。 「あ」 先日直政が言っていた。 甘味より醤油味の方が好きだと。 「お土産で、なんかお煎餅でも買って帰ろうかな」 不特定多数よりも、身近な人と親睦を深めるのもありだろうな。 19/04/21
19/12/30再UP
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