戦国スローライフで楽しみます。



ドリーム小説
昔から漫画や小説、映画。アニメ、ゲームの世界に憧れていた。
自分がその世界に入り込んでしまったならば。
憧れの、好きなキャラ達と過ごせるのではないか!
もしできるなら原作中のあんなシーンやこんなシーンを体験できるとか。
自分にとって嫌だと思った修羅場なシーンを阻止できないものか。
とか考えたりしたんだけど。

まぁ実際、そんな事が起こるわけがない。

そんな事は二次創作で楽しむぐらいだ。

でも、最近ちらほらと目にするもの。
出版される内容が、異世界で冒険するものや、ゲームの世界に転生してしまうものだったりする。
異世界に召喚されてどうこうってのも多いが、なんらかの事故で亡くなり転生して新たな人生を過ごすことにってのも多い。
転生先がモンスターなんてこともあるし、貴族の子供で苦労なく育ってみるとか。
そんな中で魔法を覚えてなんてな。

転生しなかった場合、ふつうにその世界に召喚されると聖女なんて特別な存在になったり。
ただの冒険者になったとしても、レベルや能力がチートでなんも苦も無く進むことができたり。

異世界でスローライフを送る分には、あまり問題はないのだろうが。

…とにかく、色んな異世界ライフの物語が数多く存在するのだ。

その異世界ライフの中で、ゲームの世界。
しかも乙女ゲームの世界に転生してしまった話ってのも多くて。
大概は、前世でそのゲームのファンで、転生先が主人公の悪役ライバルキャラだった。
そして、そのライバルには断罪イベントだとかで主人公に負け没落する人生が待っていた。
前世の記憶を頼りに、いかにフラグをへし折り生き残るか!と若干コメディっぽいノリの話が多かった。

自分が読んでいた漫画のほとんどが完結していないなかったので、悪役令嬢に転生してしまった彼女達が、最終的にどうなったのかは知らない。
まぁ多分すべてのフラグはへし折っていくのだろうなぁ。

読みたかったなぁ、あの話も。その話も。
最後はどうなるのか知りたかったよ…。

と言うのも。

まさかのまさか。

自分の身にも異世界ライフが起こったのだ!

絶対にありえない!
普通に考えればそうなるのだが、今までの漫画の知識とかで瞬時に悟ってしまった自分。
こんな事が起こるなんて!!

嬉しい!!

………って思うじゃん?





「どうかしましたか?さん」

「あ、いえ。なんでもないです」

「そうですか、良かったです」

ニコリとに微笑む女性に、も釣られて笑みを見せる。
だけど、笑顔ってこうだっけ?と考えてやるものではないのでどこか不自然に感じてしまう。

「まだこちらの生活にはなれず心細いことも多いと思いますが」

「あ、あ〜そうじゃないです。寧ろ保護していただいてとてもありがたく思っています」

「そうですか?」

「はい!本当…十分すぎるくらいで」

「でも、何か不都合がありましたら遠慮なく言ってくださいね」

「はい、ありがとうございます。直虎様」

ぶっちゃけてしまうと、異世界スローライフに憧れていた
別に事故に遭って転生してまでとは言わないが、もし、万が一!と言う事を思っていたが。
それが本当に叶ってしまった。

叶ったのだが。

「だからって、戦国時代って!!」

キラキラしているイケメン揃いのお貴族様がいるわけでもなく。
とても立派で広くで華やかな庭園がある白く綺麗なお屋敷もなく。
炎や氷などが出せる魔法が使えるわけでもない。
がたどり着いたのは戦国時代だった。

「どちらかと言えば、信長協奏曲とか、アシガール的な方でしょうが…」

自分が想像していたものとはかなり違う。
キラキラしていない、寧ろ泥臭さを感じてしまう。
だがしかし、

「もしかしたら、キラキラのイケメンはいるかもしれない…いや、いる。絶対いる!」

「おい」

「西洋のお城でなくても、日本には立派なお城はある!今も普通に立派なお屋敷にいるわけだし」

「…

「魔法は別にあってもなくてもいい!元々使えないわけだし!」

「お前は…」

パチンと後頭部を叩かれた。

「何!?…あら…虎松さん…」

が世話になっている井伊家当主直虎の息子である井伊直政が呆れた顔でを見下ろしていた。

「阿呆な思考をダダ漏れで口に出すな」

「ぬ…」

直政は嘆息しつつの隣に腰を下ろした。
先程まで直虎と縁側でお茶をしていたのだが、直虎は呼ばれ退出していった。
それで、ぼーっと戦国時代へやってきてしまった事を考えていたのだが。
直政の言う通り、考えていた事全部口に出していた。

(この人、黙っていればイケメンなのに…若干暴力的だよね…あとどんだけ義母上好きなんだよ…)

キラキラとまではいかないが、イケメンはいた。
いたが、どこか残念だとには思えたのだ。
だが運は良かったのだろう。
どこか閉鎖的な時代において、後の権力者となる徳川家康と出会い。
その家臣でもある井伊家に引き取られたのだから。
それで文句を言ってはいけないだろう。

「阿呆な思考って失礼だよね」

「俺が止めねば、お前自身が恥ずかしい思いをするだろうが」

「恥ずかしいかな…」

「恥ずかしいことだと思ってくれ」

は真剣に唸ってしまう。

「いやいや、それ重要でしょう」

「どこがだ?」

直政はため息を吐く。
いつもそうだ。
この人は自分を見ると、呆れた眼差しを向け、残念そうにため息を吐く。
普通に考えると失礼な態度じゃないのか?と反論したくもなるも。
井伊家に居候している身を考えれば圧倒的弱者なので、文句など言えるはずもない。

「……・…」

「なんだ?人の顔を見て」

「いやぁ、まぁ…虎松さん…って言うと、なんかおそ松さんの仲間入りっぽいよね。同じ松だし」

「は?」

あ、うん。
自分でも若干バカな事を口にしたなと思った。
それ以前にこの男がニートな6つ子の存在を知るわけもない。
わかっているのだが。

「あの6人とは性格、行動似ていないか…そもそも虎松さんはニートじゃないし、ニートでこの性格だったらちょっと引くわ…」

どんだけ王様だよ!とツッコむだろう。

「あぁわかった」

「何が?」

「今、お前にバカにされていることだけはわかった」

「していないよ。どちらかと言えば真面目ですね。と尊敬したくらいだし」

「そうは思えない」

何度目かの直政のため息。
何度もため息を隣で吐かれると正直いい気はしない。
そもそも、この人は何で自分の隣に腰を下ろしているのだろうか?
暇なの?
お武家様でも暇な時間ってあるんですね。

「何か不都合はないか?」

突然話が変わった。

「?」

「欲しいものとか必要なものとかはないのか?」

「な、なに急に…」

「新しい場所での生活は、色々気苦労が絶えないだろうと…」

急に、人を気遣う態度を見せるなど。
失礼な話だが、ちょっとだけ直政に感動してしまう

「それは、その」

「困っていることがあるならちゃんと言ってくれ。できる限りのことはする」

「あ、ありがとう。今は特に…その」

キラキラのイケメンとは言わないけど、居たよ。
ちゃんとイケメンは居たよ。
あれか、乙女ゲームのなんかのルート入りましたか?直政ルートって奴ですか?

「でないと、義母上が心配なさる」

「は?」

「なんだ?」

「最後の一言いらないし…」

ちょっとだけときめいた乙女心返せよ。結局義母上かよ!
わかった。6つ子にない属性。
マザコンだよ。
6つ子も家族思いっちゃそうだけど、どちらかと言えば養ってもらいたい気質だからそこまでってほどでもない。
だけど、あんたは義母上中心だから?

「はい。とら松はおそ松さんに仲間入り〜」

「……なんだか、ものすごくバカにされた気分なんだが…」

「しょうがないよ。とら松だもん」

直政はムッとする。

「何故、お前に幼名で呼ばれ続けねばならないのだ」

「直虎様がそう呼んでいたから」

あ、それで行くと。直虎も同じ虎が着いているわけだが。
その辺は一緒にする必要はないだろう。

「今の俺は直政であって、幼名で呼ばれる筋合いはない」

「それを義母上様に言って、義母上様が正せば従いますけど」

「………」

結局のところ、直政には義母のことを出せばそれ以上は逆らえないのだろう。
ただ、自分の今の態度もないかな?と買い言葉に売り言葉ではないがポンポン口に出てしまった。
きっかけは義母上でも一応心配してくれたようだし。

(こういう可愛げのない態度って…一番嫌われるよなぁ…)

自身の保身を考えるわけではないが、この先このままの生活であれば。
頼れるのは直政や井伊家の人々だろう。
嫌われれば、自分も居づらくなるし、屋敷の空気も悪くなるかもしれない。

(まぁ…追い出されれば別だけど…それか下女に下がるとか…)

一応家康に命じられた事だから。
義母上と同様に家康第一の直政にしてみればそれはないのかもしれない。

(あ〜こういう考え方する自分も嫌だなぁ)

直政に顔を背けつつ嘆息してしまう
悪い事を考えると止まる事はなく、悪循環のように次から次へと湧いてくる。

(向こうにしてみれば、世話をするのがこんな生意気な可愛げのない奴より、ちゃんとした家柄のお嬢様とか、
礼儀正しい綺麗なお姫様の方が良いよね…例えば家康様の娘様ならばテンションもあがるだろうし…
私なんぞを世話しても、なんと特典もつかないし。
育てたところで戦場で役に立つスキルもないし、ただ飯食らうだけだし…容姿も並だし…なんのいい事もないじゃん)

自分で考え落ち込んで来た。

(あんな可愛い義母上が傍に居れば、そこらの女子はじゃがいもとかに見えるだろうさ。プラス性格悪い女って最悪じゃん…)

はどこかに引きこもりたい衝動に駆られ、両手で顔を覆った。

(そもそもなんで私は戦国時代にいるんですか?誰が何の目的でここに呼んだのさ)

目的があっての召喚でしょ?
これから先、この世界に危機が訪れるから、それを回避するための勇者であったり、聖女だったりするわけでもない。
平凡な一般人だ。
一般人呼んで何がしたかったのさ!

(あぁそうだ…きっと誰かと間違えたんだ…間違えて私はここに来たんだ…)

ならばとっとと元の世界に返してくれ。
元の世界に戻ったならば、今までと同じように異世界ライフの漫画でも読んで大人しく楽しむからさ。

「ど、どうした?…具合でも悪いのか?」

急に黙り込んだに直政は慌てて声をかけた。

「………とりあえず、廊下の水拭きぐらいはできるようになるから…」

「は?」

「最低限、下女として雇ってください…」

それが一番手っ取り早いかもしれない。

「な、なんだ急に…」

「多分それが一番丸く収まるから」

隣から直政のため息が聞こえた。
まただ。また何か気に障るような事を言っただろうか?

「本当、忙しない奴だな…急に喋り出すかと思えば黙りこくし…かと思えば可笑しなことを口走るし」

「わ、私は」

「俺には年頃の女子の悩みなどわからない。理解してやれるほど詳しくないし、その…鈍い方だ。
の気に障るような事をしてしまったのならば謝る。ただ何があったならばちゃんと言ってくれ」

こちらが大人げない対応をしたと言うのに。
そして勝手に落ち込んだだけなのに。
直政が詫びるとか。

(この人の方が大人だなぁ、本当…)

直政はの肩に手を置いた。

「雇ってくれと言う発言の趣旨はよくわからないが、手伝いをしたいというのであれば止めはしない。存分に働けばいい」

「……お手伝い感覚…まぁいいけど…」

右も左もわからない状況なのだ。
ここに慣れるにはそれが一番手っ取り早いのかもしれない。

「あと幼名で呼ばないでくれ」

「とら松さんって中々いいと思ったけどな。まぁいいか」

は笑んだ。

「じゃあ改めてよろしくお願いします。直政さん」

「あぁ、よろしく頼む」

少しだけ戦国での生活も楽しいかもしれないと思えた。








19/03/17
19/12/30再UP