花と龍と思いのカケラ。




ドリーム小説
「気づいてもらえないとか言っても、にも問題はあると思うわ」

尚香が突然そんなことを言い出した。

「え・・・・それって・・・・」

「簡単なことよ。気づいてもらえるようにするのよ!」

ね?とニッコリ尚香は微笑む。
その微笑み、普通は見惚れてしまいそうな天使の微笑みに見えるが。
には悪魔のような微笑みにしか見えなかった。

(絶対・・・・面白がってる・・・・)

だが尚香のいう事にも一理あるとは思う。
だからちょっとだけ行動に出てみようかなと言う気になる。

「けど・・・・どうするわけ?」

「それは自分で考えなさいよ。人にあれこれ言われてやるの嫌でしょ?」

「そう・・・かな?」

単に何をすればいいのかを考えていないだけではないか?
尚香は違うと首を横に振る。

「私が言ったこと、素直にやれといわれてできる?どんな無茶でも」

「無茶するようなことなの!?」

「そういうわけじゃないけど。合う合わないってのがあるし」

のやり方で趙雲に気づいてもらえる。
または想いが届くように行動すればいいのだ。

「うん・・・それはそうかも」

「遠くから見ているのもいいけど、たまには自分から声をかけてみなさいよ」

「え。普通に会話はするよ」

そうじゃなくて・・・・尚香は肩を落とす。
だがまぁ、あれこれ言うのも面倒だ。好きにしてと言い切った。





【10】





も頑張るのよ。尚香はそう言った。
だけど何をどう頑張ればいいのだろう?
普段から思う事は姫様扱いを止めて欲しいということ。
だけど、臣下の礼なのか知らないが、趙雲は頑なに拒否をする。
この想いに気づいてもらうには、やはりそれを伝えるしかないのか?

「・・・・それって、結構勇気いるし・・・・あとのこと考えると怖いなぁ・・・・」

趙雲の性格を考えると丁重にお断りをされてしまいそうだ。
しかも最初からなかったことにさえされてしまいそうで。

「そうしたら、私・・・・次の日からどうしたらいいかわからないし・・・・」

今までどうしていた?人を好きなったとき。
そんなに経験豊富というわけではない。
寧ろ劉備と出会う前、向こうの世界ではまだ子どもだった。
恋愛というのを真剣に(子ども心に真剣ではあったと思うが)なっていないと思う。
可愛い恋愛。そういう言葉が似合うような。
恋に憧れる。そんな感じの。

「今もたいして変わらないか・・・・はぁ」

欄干に頬杖をつき溜め息をこぼしてしまう。
でもそう言う事を考えられる余裕ができたことも感じる。
少し前は劉備と尚香のことがあったり、戦が頻繁に起きているような状況だった。
劉備が蜀を得て、母も呼び寄せ親子で暮らせるようになった今。
天下は安定していないとはいえ、少し前に比べればマシになっているのだ。
自分の恋愛を考えてしまうような。

「どうした?シケタ面して」

の頭に手が乗せられた。

「孟起」

馬超が悩み事か?と訊ねてくる。

「どうせ。お前の悩みは趙雲のことだろうけどな」

ニッと笑んでそのまま頭をくしゃくしゃに撫でられる。

「あーもー髪がぐちゃぐちゃになる〜」

「そんなに酷くはやってねぇよ」

苦笑しながら数回軽く頭を叩かれた。

「ねぇ孟起。私ってそんなに子龍様のことばかり?」

「ん?大概そうじゃねぇか」

離れた場所にいる幼馴染の関平に日々愚痴の文を送りつけているのだ。

「単純な子なんだね、私・・・」

「裏表がなくていいじゃん。俺はそういうの嫌いじゃないぞ」

「え」

馬超はスッと顔を近づけた。
馬超の鼻先が自分の鼻先とくっつきそうなくらいの近距離。
確かに趙雲が好きだとは思うが、馬超の整った顔も中々の魅力的なもの。
それがすぐ近くにあると思うと恥かしくて首を引っ込める。
今の自分はすごく顔が赤くなっているだろうと思う。

のそういうところ、好きだな」

「も、孟起」

顔中熱を帯びたのがわかる。
そして耳まで真っ赤になっていると、鏡を見ずともわかる。

「趙雲やめて、俺にしとくか?」

「え、な、何言って」

思わず後ずさりをしてしまう
今までそんな雰囲気出したこともないのに。

「あ、あの・・・私」

馬超の方がスッと離れる。

「冗談だ。はははっ、からかって悪かったな」

実に楽しそうに笑う馬超には唖然としてしまう。

「か、からかったって・・・・孟起・・・・」

「単純だな、お前は」

「ひ、酷いよ〜!!そういうことで人をからかうのって趣味悪いよ!!」

顔中真っ赤になってしまうくらい緊張してしまった。
バカと何度も馬超の体を叩く

「どう反応していいか困ったんだからね!・・・・もう・・・・・あ、あれ」

緊張が緩んだ所為か、涙腺まで緩んだ。
場慣れしていないこともあってか、馬超のからかい。今回は度が過ぎたようだ。
はポロリと涙が零れた。

「うっ・・・・やだ・・・・」

流石に馬超も驚いてしまう。
は裏表のない子だというのは自分で言ったようにわかっていたから。
これがウソの涙ではないということも。

「わ、悪い。俺が悪かった。やりすぎたな」

馬超はを抱き寄せる。

「孟起のばかー」

「はいはい。俺は馬鹿ですよ」

ポンポンとの背中を軽く叩く馬超。
も馬超の胸に顔を埋めてしまう。
自分でもまさか泣いてしまうとは思わなかったのだ。
しかし場所が悪かった。
庭院が見通せる通路でのこの行動。
目にしてしまう者もいる。
その場合、見ない振りをしてくれればいいがそうも行かなかったようだ。

「おいおい。馬超〜に何してんだ?あぁ?」

のことを妹同然に可愛がる張飛だ。
関羽も同じだが、その関羽が側にいない今、劉備も忙しいだろうし。
兄者たちに代わって俺がを守ってやるぜ!そう意気込んでしまう。
ただ実の娘がいればそっち優先になるが。

「張飛殿。いやコレは別に・・・・おい、。そろそろ泣き止め」

「そ、そんなこと、い、言っても・・・・」

「何ぃ!おめぇ、を泣かしやがったのか!?」

「あ、いや・・・・参ったな・・・・」

厄介な御仁に見られたものだ。

を泣かせるたぁどういう了見だ!俺様がぶん殴ってやる!」

「ご、誤解だ張飛殿!」

今にもかかってきそうな勢いだった為に、馬超はの手をとり走りだした。

「も、孟起!?」

「逃げるんだよ!殴られるなんて御免だ!」

「お!待てこの野郎〜!!」

逃げる二人を張飛が追いかけていった。

「姫様・・・馬超殿・・・」

張飛が声をかける少し前。
二人のことを趙雲も目にしていた。
馬超が楽しげにに何か言っている。顔を赤らめたかと思うと泣き出した
それを慰めている馬超。
馬超にしては柔らかく笑っているのが印象的だった。
何があったのだろう、二人の間で。

「・・・・・私には関係ないことだ。お二人が仲良くされているのはいいことじゃないか」

出会ってすぐに打ち解けていた。
誰にも媚びる性格ではなくはっきりした態度をとる馬超に。
分け隔てることなく笑いかける
お互い一緒にいるととても楽しそうに見える。
それは趙雲にしてみれば嬉しいと思える。
いつもと一緒にいた幼馴染と遠く離れて暮らすことになった時、は寂しそうだったから。
離れてしまった関平の代わりではないが、馬超がちょうどその時と同じような位置にいてに笑顔を取り戻している。
自分はにそうさせてあげられない。
趙雲は知らずに寂しそうにしていた。
がそのうち嫁ぎ去っていくのならば、それまではこれまでと変わらずお守りしよう。
そう誓ったばかりなのに。
その役目は自分ではなく、馬超の方がいいのだろうか?



***



「あーあ〜散々だったぜ・・・・」

「本当だね」

張飛から逃げ切る為に城下に逃げ込んだ馬超と
もう疲れたという顔をしている馬超に対しは笑顔だ。

「こいつめ・・・・もうケロっとしてやがる」

「えへへ。だって美味しいんだもん」

は肉まんを一つ食べていた。
逃げ切った時、偶然飲食店の前でを見た店の親父がに一つくれたのだ。
彼は劉備に着いて一緒に放浪してた民の一人だった為にの顔を覚えていた。

「蒸したての肉まんだよ〜」

「さっきまでピーピー泣いていたくせによ」

「泣かしたのは孟起ですー」

「そうです。俺が悪いんだったなー」

ほんのちょっとしたからかいのつもりだったのに、が意外な反応を示したので本当困った。
そういう事に免疫がないとは答える。
馬超の隣で肉まんを食べている姿を見れば、色気より食い気。確かに免疫はないだろうなと納得する。

「仮にも姫様が歩きながら食うか?」

「私は別に姫じゃないもん。兄ぃの妹だけど。そんな扱いされる必要はないです」

「まぁな・・・・・だけどよ、今のお前の姿を、趙雲が見ればはしたないって叱りそうだよな」

「うっ・・・・・」

は立ち止まる。
普通に生活していて歩き食いは確かに行儀が悪いようにも思う。
国の習慣として思えば、は座って食べるのが普通の場所にいたから。

「という訳で、残りは俺が食ってやろう」

「あ!」

馬超がが手にしていた肉まんを横からパクリと食べてしまう。

「おぉ。美味いな確かに」

「一口欲しいなら欲しいって言えばいいのに〜!!」

一口どころか二口、三口と馬超は食べてしまう。
哀れ肉まんは馬超に食べられてしまった。

「もう、酷いよ、孟起!」

「肉まん一つで怒るなよ。メシぐらい奢ってやるからさ」

「・・・・・・じゃあ許してあげる」

やはり食い気の方が勝っているようで馬超は噴出してしまう。

「な、なによ!」

「いや、いいんじゃねぇの?のそう言うところキライじゃねぇし。言ったろ好きだって」

「え、え。ま、またからかっているわけ!?」

瞬時に顔を赤くするに馬超はくつくつと笑う。

「からかっていないって。純粋に思っただけだ。恋愛絡みじゃなくても普通に好きだと思うものあるだろ?」

「あ、う、うん」

友だちとしての好き。
馬超はきっとにそれを向けてくれているのだ。
ただ、ちょっとだけ誤解してしまいそうな言い回しだ。

「それでよ。メシ食ったら、もうちょい付き合ってくれよ」

「別にいいけど?」

「助かる。あとで張飛殿に賄賂でも贈っておこうと思ってな・・・・」

張飛にぶん殴られないように、好物の酒でも贈ろうというのだろう。
馬超がをからかった結果ではあったが、も過剰に反応しすぎた結果だから。
ここは素直に馬超に付き合ってあげるとしよう。

「翼兄ぃにはうんと美味しいお酒をあげるといいよ」

それで張飛の気が治まるなら安いものだと馬超は笑った。





とともに張飛に酒を届けた馬超。
を泣かせた責任云々はあっさり解消された。
今度飲もうなと逆に約束させられたくらいだ。
も自分の室に戻っていき、馬超は厩舎に行き愛馬の世話でもしようかと向かう。

「馬超殿・・・執務もしないでどこに行かれていたのですか?」

馬岱殿が嘆いていますよ。と待ち伏せていたらしい趙雲に言われる。
なんだろうか?やけに引っ掛かる言い方をするなと馬超は感じた。

「あ?まぁな。連れてメシを食いに行ったり、張飛殿のところに行ったりしてな」

「姫様とですか・・・・」

「拗ねるな、今度は一緒に連れて行ってやるから」

趙雲がかぶりを振る。

「何をおっしゃいますか・・・拗ねてなどおりません。あなたが一緒ならば大丈夫だとは思いますが。姫様を連れまわすのはどうかと思います。もし何かあったら」

馬超は息を吐き、軽く髪を掻いた。

「考えすぎだろ。そんなことは・・・・。あんたがそんなんだからが悩むんだよ」

「は?私が?なんですか・・・?」

馬超は趙雲の前に立つ。馬超は趙雲の胸倉を掴む。

「俺とアンタの違い。何かわかるか?」

「ば、馬超殿?」

至近距離で馬超に睨まれてしまう。

のことを女≠セと思っているか思っていないかだ」

「え・・・・」

馬超は手を離す。

「ちゃんと見てやれよ。女として」

トンとそのまま馬超に押されて趙雲はふら付いた。
馬超は趙雲を置き去りにして立ち去った。







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もう、馬超さんってば〜wこれで少しは変わればいいんですがねー
08/11/28
13/10/31再UP