花と龍と思いのカケラ。




ドリーム小説
  平ちゃんへ


 成都で生活をするようになって、もう一月が経ちます。
 ようやく平ちゃんにも文を出せるくらい落ち着けました。
 成都に行くまでの道のり、本当緊張したよ。
 子龍様と孟起と一緒だったから、楽しい道のりでもあったけど。
 
 あれから、あれからなんだけどね。
 兄ぃとの再会は勿論。母様とも再会できたよ。
 兄ぃがようやく落ち着けられるようになったからって、母様を迎えに行ったんだって。
 家族が数年ぶりに揃って本当嬉しかった。
 もう離れなくていいんだもんね。

 あと・・・あとね。
 平ちゃんとも喧嘩しちゃった、あの事。
 尚香様とのこと。
 一応解決しました。解決っていうのかな?
 私が単純に尚香様に嫉妬していただけだし・・・・。
 でもね。私が自分で尚香様に話さないと、時間を作らないとって思って。
 あんな態度の私を、尚香様が受け入れてくれるかすごく不安だった。
 今更って感じもしたし。
 本当、私・・・感じ悪い子だよね。
 でもね、尚香様。受け入れてくれた。
 それよりも、年が変わらないからって、堅苦しい言葉は使わないって言ってくれた。

 だからね、平ちゃんへの次からの文。
 尚香様のこと、尚香って書くからね。
 それくらい、打ち解けられたんだよ。尚香が優しいいい子だった、ってことなんだろうけど。
 本当、兄ぃはいい奥さんもらったよね。
 改めてそう思えた。思えたら、すっとした。

 成都の街並み。雲兄ぃや平ちゃんにも見てもらいたいな。
 そう簡単にはできないだろうけど、早く二人にも来てもらいたい。
 なにか、こっちへ来るような用事はないのかな?
 そしたら、平ちゃんをいっぱい案内してあげるのに。
 尚香と仲良くなるきっかけになった、美味しいお菓子の売っているお店とか。
 本当、そこのお店気にいちゃって。
 食べたいなーって思うと、一人で買いに行くんだ。
 これぐらい、普通だよね?
 でもね、いつもそんな時、子龍様に見つかるんだ。
 見つかって、「護衛もなしにお出になられませんように!」って言われちゃう。
 別に大丈夫なのにね。
 私のこと、いまだにお姫様扱いするのって子龍様だけだよー。

 とまぁ。最近の私はこんな感じです。
 平ちゃん。一度くらいこっちに来てよね。
 平ちゃんの大好きな月英さんの点心が待っているからね〜
 あ、月英さんの点心。孟起がすごく気に入ってた。
 
 んーまだまだ書き足りないよ。
 平ちゃんに話したいこといっぱいあるもの。
 でも、今日はここまでにします。
 また、文出すね。

 平ちゃんも雲兄ぃのそばで毎日頑張っているだろうと思うから。
 体には十分気をつけてね。

 それじゃあ。



                            





【8】





関平は幼馴染からの文に苦笑した。
だが、いい方向へ向かっているのだなとわかって安心はした。

「関平。はなんと言っていた?」

関羽が知りたいようで少しそわそわしている。

「殿が母上様をお迎えしたそうで、家族が揃って嬉しいと・・・」

どうぞとの文を関平に見せる。
別に見せても問題ない内容だろう。

「そうか。ようやくお迎えできたか・・・・兄者はいつも母上様のことを気にしておられたからな」

関羽にとっても劉備の母は自分の母と変わりなく大事な人だ。
劉備の母も関羽や張飛を大事に思ってくれている。
だが、しばらくして関羽の眉が潜んだ。

「関平。ここに書いてあるのは誠の話か?」

「は?はい、そうですが、それが何か?」

は奥方様のことを・・・その・・・」

何か不味いことでも書いてあったか?と関平は不安に思ったが、関羽の言葉にああと頷く。
そんなに深刻なものではないのだ、あれは。

「父上。父上がそのような顔をなさる必要はありません」

「だ、だが・・・・これは大変なことではないか」

「父上。文に書いてありますとおり、もう心配はいらぬとも言っているではありませんか」

「そ、そうなのだが・・・」

本当に甘い。
関羽にとって、は可愛い妹なのだろう。いや娘と言っても可笑しくない。
張飛のように娘が欲しいとでも思っているのだろうか?
生憎関羽には息子ばかりが揃っている。
だから余計にをかまうのかもしれない。
普段はそんなデレデレした様子など微塵も感じさせないのに。

「単純には奥方様に嫉妬していただけです。殿を盗られたとでも思ったように。可愛い子どものヤキモチです」

「うむ・・・・・」

「別にが奥方様に何かしたというわけでもありません」

「だが・・・・」

「父上?」

珍しく歯切れが悪い。
いや、どことなく面白くなさそうな顔になっている。

「・・・・は関平には何でも話すのだな・・・」

「・・・・・・父上・・・拙者に嫉妬してどうするのですか・・・・」

少し呆れた。
関羽はそんな事はないと力強く否定するも、先の言葉は取り消せるものではない。
良かった、この場にいるのが二人だけで。

「そのご様子じゃ。が嫁ぐなどと言う話が来た場合大変そうですね」

に嫁入りはまだ早い」

「ち、父上・・・・」

本当。もしかしたら劉備や張飛以上に甘いのは関羽なのかもしれない。

「そ、そもそも。そのような話、兄者は受け取らぬかもしれん」

「だといいですね」

それしか言えない。

(まぁ・・・・が趙雲殿に惚れているのを殿も知っていそうだしな)

妹の恋を影から応援していそうだ。我が殿は。
に文の返事でも書くかと、関平は関羽から文を返してもらい、自室へと戻っていった。



***



。関平から文が届いたぞ」

関羽からの劉備への報告書などと一緒に届けられたそうだ。
劉備がに渡してくれる。

「本当!平ちゃんにしては返事が早いなぁ」

でも返事が送られてきたのはとても嬉しい。
本当は直接話したいことが山のようにある。
会って話した方がもっと伝わるだろうに。だがそれは仕方ない。
文を受け取ったは嬉しそうにその室から出て行く。

「平ちゃん。なんて書いてくれているのかな?」

細かい作業は苦手だと言っていた。
自分も上手く伝えたか不安だったから、関平の方もきっと苦労したかもしれない。
早く自分の室でと思ったが、待ちきれずに庭院の一角に腰を下ろして読み始める。

「えーと。へ・・・・ちゃんとからの文届いたぞ・・・


 成都での生活。そう苦労はなくやっているようで安心した。
 いや、殿がお治めになって、の側には沢山頼れる方が居られるからその心配は
 杞憂なのかもしれないな。

 荊州は殿から聞いてると思うが、今の所安定している。
 父上も殿のように、民の声を聞いて、その土地の彼らから慕われるようになっている。
 先日、拙者も一緒に畑仕事をした。
 毎日鍛錬しているから、鍬を振り下ろすなんてことは大したことないと思っていたが。
 大間違いだ。得物を振り回すより大変だ。
 軽々しく思っていた自分がとても恥かしい。

 母上様との再会は父上もご自分のように喜ばれていたぞ。
 拙者も長いことお会いしていないから、挨拶ぐらいはしたいと思うのだが。
 母上様との再会に喜ぶのもいいが、子どもじゃないんだ。
 甘えてばかりいるなよ?

 奥方様とのことは、良かったな。
 だが、拙者はと喧嘩などしただろうか?まったく記憶にないのだが。
 元々あれはのヤキモチみたいなものだし、が大人になれば済む事だろうな。
 ・・・。なんだか、が膨れっ面になっていそうな感じがする。
 とにかく。良かったなとだけ言っておく。
 
 すぐに食べられる場所にいるわけじゃないんだ。
 月英殿の点心の話はするな。馬超殿が羨ましい・・・・。
 できれば、拙者もすぐにでも食べに行きたい。
 何か成都へ伺うような用事があれば、名乗り出て行くのだがな。
 こればかりは仕方ない。

 だが、いつか行くような機会があれば、に案内を頼むからな。
 また文を書く。それまで元気でな。


「平ちゃんらしいなぁ・・・・本当、平ちゃんに会いたいなぁ」

まだ離れて一月と少し。
そんなに長い期間ではないのに、とても寂しく感じる。
いつも一緒にいた幼馴染。
武芸ばかりだけど何事にも真剣に取り組む姿はとても羨ましいと思った。
関平からの文をしまおうかと思ったが、もう一枚料紙があったことに気づいた。

「?」

 書き忘れた。
 早く趙雲殿から脱姫様扱いをされるといいな。
 もう殿と奥方様とのことは解決したのならば、今度は自分のことを頑張るんだな。
 惚気を聴くつもりはないが、次にいい話が聴けることを祈る。

と。趙雲とのことが書いてある。

「も、もう〜平ちゃんってば〜」

確かに関平のいう事もわかる。
脱姫様扱い。
本当にそれは自分が一番望んでいることだ。
周囲のそんな態度をとるのも趙雲だけだ。それに彼は気づかないのだろうか?

「平ちゃんに言われなくてもわかってるもん、そんなこと〜」

と言うよりいい話とはなんだ!
今の今までを知っている関平ならば、それがいかに平坦な道のりではないとわかるじゃないか。
きっと次に出す文にはそんな報告できるわけないのに。

「・・・・・でも、本当もどかしいなぁ・・・・」

文を折りたたみ、小さく溜め息をついた。

「姫様?」

「し、子龍様!」

趙雲が偶然通りかかった。

「どうかされたのですか?溜め息など・・・」

「え、あ、あの。いえ、なんでもないです」

の手にある文に趙雲は目が行く。

「もしかして、関平からですか?」

「そうです。この前出した文の返事が届いたので、ここで読んでいました」

その割には嬉しくないのか?と趙雲には見えたようだ。
だがは本当のことをいえるはずもない。
趙雲のその態度に悩んでいます。などとは。
どういうわけか、この男は頑なに自分のことを姫扱いする。
仕える主君の妹だからだろうが。
劉備は漢王室の末裔だかなんだか知らぬが、その筋の家系の出らしい。
だが、は劉備と血の繋がりはない。
その事を知らないから、そういう態度をとるのだろうか?
だったら、その事を話せばいいのだろう・・・。
とは思いつつも、なんだか劉備との兄妹関係を否定してしまいそうな気がする。
いや、血の繋がりなど関係ないだろう。
関平は関羽の養子であるし。

(口のするのがきっと怖いんだ・・・)

そんなこと口にせずとも自分と劉備は兄と妹。それでいいじゃないか・・・・。

「姫様?」

「な、なんでもないです」

「ですが、どこかお加減でも悪いのでは?」

は慌てて首を横に振る。病人扱いされるのは勘弁して欲しい。

「違います。ちょっと寂しいなって思っただけです」

これは本当の話だ。
関平と遠く離れてしまっていることに寂しく感じているのは。

「そうですか・・・そうですね。いつも姫様と関平は一緒におられましたから」

「文だと・・・言いたいこと全部書けるわけじゃないし・・・・」

「関平と内緒の話でもしているのですか?」

「内緒の・・・・・な、内緒です。内緒」

読みますか?などと到底文を渡せるわけもなく。
確かに内緒の話をしているなと苦笑してしまう。

「姫様は相変わらず関平には本音が話せる。というところでしょうか?」

趙雲が笑う。
からかわれているのだろうか?
だから少しだけ反抗をしたくなる。

「そうですよー。平ちゃんには何でも話せちゃいます。子龍様のこととか」

「え?私のこと、ですか?それは一体・・・」

「内緒です。内緒の話なんで言えませんよ、そんな事」

の目がとても楽しそうだと物語っている。
口の端もキュッと上がって笑みを浮かべ。

「姫様・・・」

「内緒なので教えませーん。平ちゃんに聞いてもダメですからね」

うっかり関平に聞くようなことになれば、彼はあっさり趙雲に話してしまうだろう。

「そういわれまして、そんな風に言われると気になりますよ」

「聴きたいならば〜」

は立ち上がって、趙雲の前に立つ。

「子龍様が私のこと姫様≠チて呼ぶのをやめたら教えてあげます」

「それは無理です」

と言うより、それとこれは別物らしい。
頑なに拒む趙雲には頬を膨らます。

「私、姫じゃないのにな・・・・」

上目で面白くなさそうに見られる趙雲。
その視線に、言葉がつまってしまう。

「あ!。そこに居たのね。ねぇ、ちょっといいかしら?」

尚香が駆けてくる。

「尚香。うん、なに?」

「この前くれたお菓子あるでしょ?あれまた食べたいなと思って、ねぇ、買いに行かない?」

「うん。行く!行こう、尚香。それじゃあ子龍様、またね」

すっかり尚香とは仲良くなったようだ。
尚香の手を取りは駆け出す。

「・・・・あ!姫様!奥方様!お出になられるならば護衛をお連れ下さい!」

趙雲が慌てて追いかける。
二人とも護衛なんていりませんと止まる気配もなく行ってしまう。




 ってわけで。子龍様にそう言ったから。聞かれても、平ちゃん教えちゃダメよ?
 姫様って呼ぶのをやめない限り絶対、教えちゃダメだからね!
 



早くに新しいからの文が届いた。
中身を読んで関平は頭を痛める。
何をしているというのだ、は・・・。

「流石にこの内容じゃ父上に見せられないな・・・・」

趙雲のことを鈍いとか、なんとかずーっと綴られているものだったから。








平ちゃんと文通。遠くに居ても近くにいるような感じ。でも実際はそばにいないのでもどかしいのかもね。
08/10/15
13/10/31再UP