人と時と風の中




ドリーム小説
応龍の戦巫女、それが呼び名となった。





◆◆◇赤壁にて◇◆◆





夏口での黄祖軍との戦いでは本陣に姿を現した。
改めて龍の巫女と言う名を付けられた。
周瑜が以前と会話した中から『応龍』の存在を知ったので、ただの龍の巫女よりはと
更にそこから応龍の戦巫女と変えられた。

ただ居るだけという条件で本陣にいる
服装は重苦しい感じではなく、軽装重視のモノにした。
ただの巫女なら煌びやかに飾られたであろうが、戦巫女ってことと場所が戦場ってことで
いざと言う時の為に身軽なものにしたのだ。

この夏口の戦いでは応龍の戦巫女の存在で自軍の士気が上昇しいとも簡単に決着はついた。
それに周瑜の計略により、夏口の部下の甘寧が呉に降った。

「はぁ〜何事もなくて良かったですね、周泰さん」

「…あぁ…」

「私、役に立てましたか?」

「…あぁ…それより、なんともないか?…身体は…」

戦が終わり城へ帰還した際に周泰とは軽い祝勝会を抜けて外で話していた。
本当はもう少し規模を広げて催したかったのだが、背後に控える曹操軍の存在が気になるため
あくまで食事会程度のものだ。

「平気ですよ、怪我もしなかったし」

「…そうか…」

「最初は不安でしたけど、前線で皆さんが頑張っているのを知ってたから私も頑張れました」

「…あまり無理はするな…」

「はい」

以前ほど孫策の後ろに引っ付くことのなくなった
それは孫策に奥方の存在があったのと、自身が無意識に周泰といることを好んでいたからだ。

「次は曹操軍なのですよね」

「…あぁ…」

これは夏口のように簡単には行かないだろう。
かなりの大軍で攻めて来るらしい。

「…無理して出ることはないぞ…」

「あはは、大丈夫ですよ。周泰さんこそ無理しないで下さいよ」

「…ああ…」

周泰はそう答えるものの、の顔は晴れない。
周泰の身体についている傷跡。
それを見ての顔は晴れないのだ。

「…大丈夫だ…」

の頭を軽く撫でる周泰。

「でも、周泰さん…」

実はこの傷を負ったのは夏口の戦いの前だ。
孫策が異民族討伐を行った際、油断した孫権が無数の敵に囲まれてしまった。
その孫権を助けたのは周泰で、戦には勝利したものの周泰は重体に陥った。

がいれば即座に治せただろうが、周泰がを呼ぶことを拒否した。
偶然居合わせた華陀によって傷は癒された。
その後も平然とした顔で夏口の戦いで出陣した周泰。
は無理をしすぎると周泰を心配してまうのだ。

「…俺は平気だ…」

「あの時だって、すぐに私を呼んでくれれば良かったのに…たまたま華陀先生がいたから」

「…お前の力を使うことでもない…」

「でも」

「…俺の為に使わなくていい…」

「周泰さん…」

周泰の脳裏には小龍の言葉が反復される。



『お前は死ぬぞ』



隣で心配そうに自分を見つめる少女。
を死なせたくないから、あんな力は二度と使わせない。

「…、俺は平気だ…」

だから、笑ってほしい。
そんな顔をしないでくれ…



***



孫堅は長坂から民を引き連れ逃げてきた劉備の軍と同盟を結ぶことになった。
劉備軍の軍師諸葛亮がこちらへ来て、色々話し合われた。

周瑜と黄蓋の苦肉の策。
諸葛亮が東南の風を呼ぶ。

それらがあればこの戦に勝てるとのこと。

「一番良いのは、ニ喬を曹操にお渡しすればすむことですよ」

「なんだと!そのようなことができるか!」

「周瑜殿、何故そのように怒るのですか?それで済めば良いではありませぬか」

諸葛亮は羽扇を仰ぎながら淡々と話す。
それが余計に周瑜の癇に障ったようだ。

「小喬は私の妻だ。易々と渡して溜まるか」

「それは、失礼を…では、応龍の戦巫女をお渡しになれば良いのですよ。曹操が今一番欲しているものらしいですよ」

殿を…それもできん」

このようなやり取りが二人の間で行われていたのだ。
だから当初は和睦案が濃厚だったのだが、これらのことで開戦へと進むのだった。


「だーれが、ニ喬もも渡すかよっ」

船上で曹操軍の大船団を睨みつけながら孫策は言う。

「やる気がからまわりせんようにな、孫策」

「おぅよ。で、を連れてきたのか?」

「当然だ。戦巫女には居てもらわねばならないからな」

その言葉に孫策は顔を険しくさせる。
周瑜には理由がわかっているので苦笑いしてしまう。
赤壁にはニ喬は来ていないがはいる。

「わかってるさ、孫策。君の言いたいことは」

「ならよ…」

「だが、いてもらわないと困ることもわかってくれ。勝てる要素が増えるならそれに越したことはない」

「………」

「大丈夫だ、殿の傍には周泰が居るだろ?君が彼に護衛を任せたのだ」

「あぁ」

「諸葛亮が東南の風を起こせれば、我々に勝機が見えてくる」

「…だな。よっしゃ!曹操なんざ返り討ちにしてやるぜ!」

孫策は拳を高々と上げ、周りの兵士達はそれに呼応するのだった。



***



細かく練った作戦が功を奏し、徐々に連合軍の有利となってきた。
後は諸葛亮が起こす風と、黄蓋による火計が成功すれば良いのだ。

孫堅の傍でじっと前方を見つめる
そのすぐ後ろに周泰が付き従っている。

「大丈夫だ、。お前はここで大きく構えていれば良い」

「孫堅様…」

何もしなくてよいと言われても、戦場にいると言うのはやはり落ち着かないものである。



「小龍!どこ行ってたの?」

「少し散歩だ…それよりも見ろ」

「あ!」

孫と書かれた旗が揺らぎ始めた。
無風状態だったのだが、本当に諸葛亮が東南の風を起こしたらしい。
背後から吹いてくる風に全員が驚く。

「風が吹いた…すごい…」

「よし!後は計略通りに!」

万事が上手く行くように感じた。
投降を装った黄蓋が火計を起こすだけだ。
だが、本陣の前方で何やら悲鳴が大きくなってくる。

船上なのに、一頭の馬がものすごい速さで突き進んでくるではないか。

「孫堅様!お下がり下さい」

「…、俺の後ろにいろ…」

頷く
心臓が急に激しく動き出す。

「応龍の戦巫女!頂に参った!」

槍を片手に馬を走らせてきた男。
誰も止めることができずに突き進んでくる。

「はっ!」

周泰が刀を構えると同時に馬は高く飛び、周泰の頭上を越えていく。

「…!?…」

「あ」

一瞬の出来事だった。
目の前に刃を突き出された

!」

孫堅も周泰も手出しすることができなかった。
はその男を見て驚く。

「…嘘…文遠…」

それはが最初に知り合った呂布の部下だった張遼だった。
張遼が何故ここにいるのかにはわからない。

「本当に貴女でしたか、……それにその言葉は」

「………」

「一緒に来ていただけますかな?我が主の下へ」

その言葉で一瞬の表情が笑ったように見えた。

「あ、主って…奉先なの!?」

張遼はゆっくり首を振る。

「え、だって」

「…から離れろ…」

周泰はゆっくりと刀を抜く。
二人が知り合いだって事は驚きはしたが、だからと言ってこのまま連れて行かす気はない。

「貴公が動けば私はに危害を加えねばならないが」

「…刃を収めるのは貴様の方だ…に、龍の力を使わせたくなければな」

「龍の力か…」

それに関しては周泰より張遼の方が身に沁みている。
処刑人として精神が壊れかけているを見ていたのだ。
張遼はフッと笑みを浮かべ、刃をから放す。

「文遠」

、私の下へ…曹操様の下へ来る気はないか?」

「え!」

「龍の力を宿しているなら、誰の下にいるのが一番かわかるだろう」

龍は代々の皇帝が好んでいたもの。
支配するものの証。
張遼が言うにはそれに相応しいのは曹操と言うことだろうか。

「どうする、。答えによっては私は貴女を斬らねばならんぞ」

「文遠」

行くか残るか

生か死か


答えはどこにあるのだろうか?








遼さん登場。敵本陣に突っ込むのはゲーム中によくやったことですなw

03/08/07
13/08/28再UP