人と時と風の中




ドリーム小説
また戻ってしまうのだろうか?





◆◆◇守りたいもの◇◆◆





周泰は誓いを立てた。
それは己の中で、誰に言うこともなく。

「周泰さん、何かあったでしょう?ねぇ」

「…いや…」

「もう!そればっかり。そりゃあ、私なんかじゃ何もできないですけどね」

は周泰の隣で頬を膨らましている。
それを見て思わず噴出してしまう周泰。
今は二人で例によって逃げ出した孫策を探している最中だ。

「あ〜!なんですか、もう!」

「…なんでもない。本当だ…」

「本当に?」

「…あぁ…」

少なくともが自分を心配してくれたことに感謝する。
心配していたのに、いつ間にか逆に心配されていたようだ。

「…それより、自分の方を心配しろ…いいのか?…」

「あ、そっか…う〜ん大丈夫だと思いますけど」

「…無理に来ることはない…」

「でも…」

実は数日前からある事が軍議で話し出されていた。
それは、龍の力を持つを戦場に出そうということ。
それでは董卓と変わらないことになるが、別に力を振るえというわけではない。

本陣にいるだけでいい。

龍の力を持つ少女が自分たちのそばにいることを兵士たちや敵側に知るだけでも、戦では相当な効果が得られると考えたのだ。

孫策はその事について反対しているが、大半は賛成意見を述べている。
後は孫堅の意見だが…孫堅も反対なのだが、『龍の力』と言う言葉だけでも士気が上がることは知っている。
それを利用できるならしたいとも思う。

『では、自身に決めさせる。が嫌と言えば、無理強いはしない』

そうして話を聞かされたは正直迷っていた。
力は使わなくてもと言われても、いつ発動するかわからないし、戦は怖い。
けど、自分でも役に立てるなら、居るだけで良いと言うのなら少しは協力すべきかとも思う。

「半々なんですよね、私は」

「…そうか…俺はに来てほしくないと願うが…」

「周泰さん」

「…力がいつ発動するかわからないのだろう?また傷つくのはお前だ…そんな姿は見たくない…」

「あ、ありがとうございます」

周泰の優しさにこそばゆく感じるも、嬉しさも湧いてくる。

「…無理はするな…」

「はい」

「…小龍は何か言っていたか?…」

「小龍はお前の好きにしろって…でも、戦に行くときはちゃんとついて来てくれるって」

「…そうか…」

あの鳥の考えていることは少しもわからない。
普段は孫策と一緒にどこかに行ってしまっているし、好き勝手に遊んでいる気がする。
所詮鳥かと周泰は思う。

「よっ!また俺のこと探してたのか?暇だな、お前らも」

孫策が笑いながら駆けてくる。
やはりそのすぐ傍に小龍は居た。

「もう!小龍ってば孫策様を嗾けないでよ!」

「失礼なことを言うな。私の方が小覇王に誘われたのだぞ」

「だったら、ちゃんと止めてよ〜」

「いいじゃねぇか、平気だって。それよか、も行こうぜ、な?」

「…孫策様…」

「何だ、周泰」

「…次は私室からも出しませんぞ…」

「げっ!それは嫌だな…あ、権」

いつの間にか孫策の目の間に孫権の姿が。

「兄上〜あまり勝手なことをなさると、本当に許しませんぞ!」

「あはは、悪ぃでも平気だって」

「そんな悠長なことを言ってられませんぞ」

「あぁ?」

孫策は孫権に引っ張られて行ってしまう。
二人の姿には声を出して笑ってしまう。

「兄弟仲が良くていいですね」

「…そうだな…」

確執もなく上手くやっている孫家はこれからも大丈夫だろう。

「やっぱり、守りたいですよね…ここを」

「…?…」

自分の隣で目を細め遠くを見ている

「私、この国が好きです。孫策様がいて、孫権様もいて、尚香もいて…もちろん周瑜さんや周泰さんもいるこの国が」

は軽く拳を握る。

「私の、龍の力で役に立てるなら…皆を守りたいです」

「…俺は守ってもらう気はない…」

「え?」

「…いや、自分の身ぐらい自分で守る。は龍の力で自分を守れ…俺たちは平気だ。いや…力は使わない方がいい…その…」

ならば、きっとまたあの神通力を使ってしまうかもしれない。
破壊と再生の力。
人の為にが傷つくのは嫌だ。

「周泰さん優しいですね…わかりました。私も平気です。だから戦場に出ます」

!?」

「孫堅様の申し出を受けます。力を使わないでも私が役に立つなら、それでいいです」

「…、俺は…」

周泰はを止めたいと思うが上手く言葉が出ない。
口下手な自分を恨めしく思う。
で周泰が自分をすごく案じてくれるのがわかる。
だから、周泰に笑いかける。

「やり方はどうあれ、守りたいです。私も…」

それ以上は互いに何も言うことはなかった。



数日後、孫堅の下に知らせが届く。
夏口の黄祖が水軍を揃え、北から曹操が大船団を率いて押し寄せてくるとのことだった。
孫呉の危機は目の前だった。

劉備と同盟を結び曹操を迎え撃つか、曹操に和睦を申し入れるか。
果たして孫堅の考えはどうなのであろうか。


そして、再び龍の力を持つに危険が忍び寄っていた。







お互いがお互いを守りたいって思っていること。
03/08/01
13/05/13再UP