人と時と風の中




ドリーム小説
『よくない。今度使えば…お前は死ぬぞ』

そう言っていた。

偶然耳にした話。

孫策を助けたあの龍の力は、あの少女の命を削る物だった。

自分は黙っているしかないのだろうか?





◆◆◇花のように◇◆◆





孫策の傷はほとんど癒えていて、孫策自身も寝ているだけの生活に嫌気が差したのか
毎日部屋から逃げ出しては、弟の孫権に小言を貰っていた。
そんな、何気ない日常をは楽しそうに眺めては笑った。

この城での生活にも慣れ始め、には同性の友人もできた。
孫策、孫権の妹孫尚香である。

、今日は私が色々案内してあげるわ」

「はい、尚香様」

「もう、様はいらないわ。尚香でいいの。口調も堅苦しいのはだめよ」

そうは言ってもとは困ってしまう。
この国の君主の娘だし、姫だし。

「私とは友だち。友だちにそんな気を使われるのはいやだわ」

「…うん!」

尚香の言葉は兄の孫策と同じようにの気持ちを楽にしてくれる。
過ごせば過ごすほど、この孫家が好きになっていく。

「あら、周泰。策兄様また逃げ出したの?」

またも孫策を探し回っているらしい周泰に出会った。

「………」

「ま、私たちも見かけたら策兄様には言っておくから」

「…はい…」

「周泰さん、どうかしたのですか?」

「………」

この所の周泰の自分に対する様子が可笑しかった。
元々無口な彼が、一層無口になった気がする。
周泰は尚香に頭を下げて行ってしまった。
なんとなく淋しさが残る

「どうしたの?

「ん?周泰さんがいつもと違うから…」

「ど、どこが?」

「なんとなくね」

周泰が去ってしまった方をは見ている。

「すごいわね、そう思えるだけでも尊敬するわよ」

「………」

「どうしたの、

「うん…ごめん!尚香。城の案内はまた今度で!」

は手をあわせ、尚香に頼みこむ。

「周泰さんの態度が気になるの…だめ?」

「別にいいわよ。私には周泰の様子がどう違うのかわからないけど、気になるならいっていいわよ」

尚香は仕方ないと笑う。
は何度も頭を下げてから周泰を追いかけるのだった。

「にしても…よくわかるわね、…」

尚香はくるりと反転し、孫策でも探しに行くことにするのだった。



***



周泰は孫策を探しにあちこち歩くのだが、中々見つからない。
すると、後ろから自分を呼び止める声がする。

「周泰さーん!待って下さいよー」

「………」

「はぁ、周泰さん歩くの速いですね、探しちゃいましたよ」

が肩で息をしている。

「…なんだ?…」

「えっと…周泰さん最近変だなぁって」

「………」

はそれとなく聞こうとするも、周泰は視線を逸らすだけで答えようとはしない。

「あ!孫策様探さないといけないのですよね!私も一緒にいいですか?」

「…あぁ…」

は周泰の隣を並んで歩く。
周泰はと並んで歩く時、ちゃんとの歩く速度に合わせてくれる。
さりげない周泰の優しさがは好きだった。
さっきのことは気にしないようには色々話し出す。
だが、周泰の方は聞いているのか、いないのか反応がいつもより鈍かった。

「周泰さん、本当にどうしました?変ですよ?」

「…いや…」

二人は孫策を捜し歩いていると、ある一角に出る。
そこは。

「あ、ここって前に孫策様が…」

今と同じように孫策を探しに歩いた時に出た、城門がすぐそばにあった。
あの時、小龍が飛んできて、孫策が傷を負って帰ってきた。

「大丈夫だとは思いますけど…なんか気にしちゃいますね」

「………」

その直後に傷を治したのは
己の命を削ってまで使った力だ。
その時の事が鮮明に周泰の脳裏に浮かぶ。

「周泰さん?」

「…いや…」

なんでこんなに気にするのだろう?
もう二度とその力を使わなければ良いだけのことだ。
にもそれはわかっていることだ。
なのに、自分はそれがとても気になって仕方がない。

あの時、偶然に聞いてしまったと小龍の話。

自分はどうすれば…

「よぉ!何してるんだ?二人で」

馬に跨った孫策が城門を潜って来た。
あの時と同じように小龍も一緒だった。

「小覇王は無茶が好きだな、

「小龍!孫策様と一緒だったの?」

「…孫策様、あまり無茶なことはなさいませぬよう…」

「悪ぃ。けどよ、もう傷も塞がってるし寝てばっかだと厭きちまってよ」

孫策は全然反省する気はないようだ。
周泰はため息をつく。

「孫策様〜皆探してますよ?」

「大丈夫だっての。この歳で過保護すぎるのは良くないだろ?」

「…とりあえず、私室にお戻り下さい…」

「仕方ねぇか、厩舎によってから行く。小龍また今度な。あ!今度はも一緒に行こうぜ」

「…孫策様…」

周泰が無言で孫策に圧力をかけたようで、孫策はわかったと言ってそそくさと去っていく。
周泰もその後を追う。

「…周泰さん、変」

「どうした、

「ん?最近の周泰さんの様子が変な気がして」

「気のせいだろ」

「なら良いけどさ。ちょっと寂しいかなって思った」



***



『よくない。今度使えば…お前は死ぬぞ』

小龍が言った、言葉

『よくない。今度使えば…お前は死ぬぞ』

今また、耳にこびりつく

『よくない。今度使えば…お前は死ぬぞ』

なんで、こんなに気にするのだ?

『お前は死ぬぞ』

死んで欲しくないと願うのは普通だ。
それは孫策に対しても、に対しても、仲間や部下に対しても同じだ。

なのに、酷く頭に残る。

「…俺は、何がしたいのだ?…」

最初は破壊の力に抗おうとしてしていたをなんとかしたくて。
自分に嬉しそうに話しかけるにくすぐったい気持ちが出るが嫌にはならないで。
孫策を助ける為に使った力は己の命を削るもので。

気がつけば、のことばかり考えていた。

「…俺は…」

「…俺はを…死なせたくはない…」

もう2度と戦場に出さず、処刑人などにはさせたくない。
神通力なども使わせたくない。

が笑っていてくれるならば、それでいいのだ。

「…死なせるものか…」

周泰は誓った。
何故そう誓うのかはまだ疑問に思うが、素直にそう誓った。

ただただ、に笑っていて欲しいから。








副題の「花のように」は周泰君が彼女に対して「花のように笑ってほしい」って意味があったりしますw
03/07/26
13/05/09再UP