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人と時と風の中
私に呼びかける何か。 居もしない、ソレは私に問いかける。 『お前に力を与える』 でも、私はそんなの要らない。 必要ない。 けど、ソレは私の意志など気にも留めず、私の中に放り込む。 『、私の代わりに 』 え?なに?最後の方よく聞こえない。 『お前次第だ』 そう言って弱々しく姿が消えていく… アンタ!何者なのよ!! 『私は応龍』 そして私は見知らぬ場所で目を覚ました。 ◆◆◇召喚されし者◇◆◆ 。 普通なら何の不自由もなく平和な場所で暮らしていた子。 何の因果か、は囚われの身である。 ここは洛陽の都。 は応龍と名乗った不思議な動物の力によって、この地に飛ばされた。 見た事もない風景。 都と言うには少しどころか、かなり雰囲気が悪い。 かの有名な漢帝国。 しかし今、董卓によって力でねじ伏せられている腐敗した帝国。 誰も董卓に逆らえなかったのは、最強と呼ばれる武将呂布の存在と 『帝の印』 を董卓が握っていたから。 それは玉璽と呼ばれる判子ではなく、『龍の力を持つ者』の事だった。 そう、龍の力を持つ者はのことだった。 龍は神通力を持つと言われ、その力は災害を引き起こす強大なものだった。 龍と言う存在は中国を象徴する聖獣であり、皇帝をも象徴するものだった。 だから、各時代の皇帝、支配者たちは龍を好んだ。 その龍の力を何故が持っていったことを董卓が知ったのか? そこから話す事になる。 は飛ばされてから、意識がはっきりしないのにも関わらず、ふらふらと歩いていた。 無意識。 足も覚束無い女性が一人でいれば、下衆な考えを持つ野郎どもに狙われてしまう。 そう、も狙われた。 董卓が洛陽で好き勝手し始めてから、治安は酷くなる一方だった。 だから、誰もを助けようとはせず、見て見ぬふりをした。 「金目のもの、持ってるかい?」 「オレらと遊ぼうじゃねぇか」 嫌な笑みを浮かべる男たち。 の意識がようやくはっきりしてきた時にはすでに遅く。 が逃げないよう、路地裏へと追い詰め、の腕を掴む。 ≪手を離せ≫ 「はぁ?何言ってるかわからないねぇ」 が発した言葉は男たちには意味がわからなかった。 言葉が通じないらしい。 ≪汚い手で触るな!離せ!話せってば!≫ 無理だとわかっていてももがいて見る。 抵抗し始めたに男たちは早く始末してしまおうと更に力を強める。 ≪嫌!離せ!!≫ の服に手をかけた瞬間! 「ぎゃあぁ!!」 「ぐわぁ!」 男たちは一瞬にして絶命した。 何が起こったのかはわからない。 けど、周りには以外の姿はない。 沢山の返り血を浴びてしまう。 ≪な…なに?…これ≫ 死ぬ瞬間に力を込めたのだろ。 の右手首には男が掴んでいた後が残った。 急に力が抜けその場に座り込んでしまう。 「こっちだ!」 聞こえてくる人の声と走る音。 今のには遠くの出来事のような感じがして動くことは出来なかった。 *** 腐敗しきった都とは言え、呂布は都を赤兎で回る事は少なくなかった。 別に自分が見回ったところで何が変わるわけでもないし、自分も何かをしようとは思わない。 だが、城にいて胸糞悪い思いをするのが嫌だったからたまに城を抜け出す。 「あ、あの!りょ、呂布様!」 「ん?」 か細い声で自分の名前を呼ぶ声がする。 馬上から辺りを見回すと、少女が震えながらも自分を見ている。 無視しても良かったのだが、自分を呼び止める者が珍しかったので馬を止める。 「俺を呼んだのはお前か」 「は、はい!あ、あのお願いがあります!」 「………」 「さ、さっき。城の兵士らしき人たちが、そこの路地裏に女性を連れ込んでいくのを見たのです。その人を助けていただけないでしょうか?」 なんで自分が? そんな想いが湧きあがる。 「くだらん」 「お願いします!その女性の様子も変でしたし、見慣れない異国の服を纏っていたので」 「異国の服?」 別に助ける気はさらさらないが、異国と言う言葉が引っかかり言われた方向へ馬を走らせた。 言われた場所へと着くと、人垣ができていた。 血の匂いがする。 「どけ」 呂布の一言でその場にいた人間はサッと引いていく。 呂布が目にしたのは、血の海と化した場所に少女が座り込んでいたものだった。 さっき言っていた、城の兵士とやらは原形をとどめていない。 この少女、生きているのだろうか? 「おい」 呂布の声に少女の肩がびくりとした。 生きている。 溜まった血の海に躊躇うことなく足を入れる呂布。 血で染まった少女を抱き上げる。 騒ぎを聞きつけた警備兵たちがやってきた。 呂布の姿を見ると姿勢を正す。 「後は任せる。調べるなら好きにしろ」 「はい!あ、あの…その少女は」 「知らん。とりあえず、俺はコイツに用があるから連れて行く」 呂布の鋭い目に睨まれ、警備兵は何も言えず、呂布の後姿をただ見送っただけだった。 ≪アンタ、誰?≫ 「…?今のはお前の言葉か?」 ≪聞こえなかった?≫ 「何を言っているかわからん」 今の見た目ではわからなかったが、確かに異国の者らしい。 「呂布殿!先ほどからお義父上がお呼びで…あの?」 呂布の配下である張遼が自分を見たとき、なんとも言えない顔をした。 血で染まった少女を呂布が抱き上げているから。 「拾った。悪いがなんとかしてくれ。俺は董卓の所へ行く」 「は、はい」 言われた張遼は仕方なく、女官たちに頼み少女を風呂へ入れさせた。 なんとかするにも見てくれを何とかしようと。 それからしばらくして、呂布が戻ってきた頃には少女はさっぱりした格好をしていた。 「お戻りになられましたか」 「あぁ、で、あれは?」 「あれ…ですか?言葉が通じないのでなんとも」 「おい、お前の名は?」 ≪…名前って言った?≫ 「わからん」 ≪、≫ 「…?…それがお前の名か」 互いになんとなく通じた。 見ている張遼にはさっぱりなのだが。 ≪私、なんでここにいるの?何が起きたか良くわからないのだけど≫ 呂布は今度は何も答えなかった。 ただ他の者とは違った目でを見ている。 そう張遼には見えた。 が呂布に拾われ、ここで暮らすのはほんの数日。 後に董卓にその存在を知られ、董卓の下へ着かれて行かれるその日まで。 今日はここまで。 趙雲連載の玉璽の姫とは違った意味での皇帝の印となったのが、この話の彼女です。
でもまだ周泰君は出てきません。ま、仕方ないね。
03/05/20
13/05/05再UP
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