夕虹見たら百日日和




ドリーム小説
今日は夏侯惇の店、重逢は定休日だった。
なのでは自宅の部屋で勉強をしていた。
・・・・はずだった。
店と違ってずっと見ている人間がいないので、ついついベッドに寝転び漫画や雑誌を読みふけってしまう。
そんな時に一階から母の呼ぶ声がする。

。ちょっとー」

「なーに?」

「いいから〜」

ブツブツと文句を言いながら階段を降りる。
本当は勉強をしていなかったわけだが。

「ねぇお昼どうする?」

「え、そんだけ?もうーだったら自分は上がってくればいいのに」

「いいじゃないのよ。それに少しは動きなさいよ。毎日元譲君の美味しいご飯食べてるから太るわよ」

「ふ、太るほど食べていません」

「そうかしら?お昼以外にもデザートも食べているでしょ?」

母はばかりずるいと言いたそうな顔をしている。
いや、すでに言っているものと同じだ。

「もうわかったからーお昼は?」

はさっさと話題を変えようとする。

「冷蔵庫の中は空なのよねぇ。だから出前か、外に行くか・・・」

「出前なんてこの辺ないじゃん。ピザは嫌だよ、私」

「私もそんなに食べる気しないわ・・・・はぁなんで今日に限って元譲君のお店休みなのかしらね」

「お兄ちゃんの店、食堂じゃないよ・・・」

「でもは食べてるじゃない」

「そ、そうだね」

あ、話が元に戻りそうだ。

「じゃあ、どっか食べに行こうよ。どうせ後で夕飯の買い物もあるんでしょ?一緒に行ってあげるから」

「そう?荷物持ちしてくれるのかしら?」

「します。あ、ついでにお兄ちゃん誘っていこう」

の提案に母も異存はないようで素直に頷く。
でも軽く嫌味つきで。

「荷物持ちにさせる気ね、

否定はできないと笑い流しただった。


だが、残念な事に夏侯惇に断られてしまった。
彼は今従兄弟の仕事に同行しているのだという。

「あら、曹操さんの?」

「うん」

「珍しいわね」

母の運転する車の中で説明をした。

「なんかね、ちょっと珍しい珈琲の豆だか紅茶の茶葉だかを仕入れているお店に行けるからだって」

「曹操さん顔が広いからね」

「でも夜はウチに来るって」

「本当?じゃあいつもより多めに用意しないとね」

あまり実家に帰ってこない夏侯惇なので母は嬉しく思うらしい。

「とりあえず、何を食べようか」

「お母さんの好きなもので良いよ」

「迷うわね、そう言われると」

母は苦笑しながら考える。
夕食の買い物も済ませたいと思ったので結局は大手百貨店のレストラン街で一度に済ませることにした。



***



昼食も済ませて店を出る。
後は夕食の買い物だけなのだが、母も女性だ。
自然と他のフロアにも目も行ってしまう。
自分の欲しい服を見たり、にこれが良いだろうって勧めてみたり。
父の下着類などまで見てしまっている。

「・・・・・長い」

あまりの長さにはしばらく母一人に買い物をさせることにした。
終わったならば携帯で呼んでくれと。

「お父さんもお兄ちゃんも一緒に行きたがらないわけだよね・・・・」

母の買い物は長い。
一緒に見て回るのが大変なようだ。

休憩所のベンチに腰を下ろす
しばらくどうしようか考える。
また昇る事になるが上のフロアにある本屋かCDショップにでも行って時間を潰そうかと。

ふと、張遼の事を思い出した。
この所ずっと一緒にお昼を食べていたから。

日曜日でもだ。

本当に仕事が忙しいようで休日出勤は当たり前。
でもお昼になれば重逢に来てと一緒に食事し、勉強も見てくれる。

「張遼さん、お昼食べたかな・・・・」

今日は店が定休日だ。
だから張遼はどうしたのだろう?

あと、気になるのが、彼がに誕生日を祝ってくれると約束してくれたことだ。

『今、忙しいのでもう少し後になってしまいますがね』

『いいですよ、そんなの』

『私の気が治まりませんよ。必ずですぞ』

何をどうしてくれるのかな?
プレゼントに何かくれると言うことだろう。
今年の誕生日は友だちからも祝ってもらってプレゼントを幾つか貰った。
両親も。
兄は花束を。

友だちとはきっと違うものだろうなと思う。
大人からのプレゼントってどんなものだろう?
くれる相手が張遼だから、両親と兄とは違う大人からのプレゼント。
彼から見ればはまだまだ子どもだから、学業に関するものかな?と思ってしまう。
張遼は真面目だし。

でも子どもと見られてもだ。
だって女性の一人。
それなりのものを期待してしまう。

「張遼さんから見て、私はどんな風に写っているのかな・・・・・」

単純に先輩の妹?

それが一番妥当な線ではあるが。
まぁ、再会する前の彼の中ではランドセル背負ったガキだったろうし。

そんな事をボーっと考えていたら母からの呼び出しが来た。
母はすでに地下一階の食品売り場にいるとのことだ。

「いつの間に・・・・じゃあ行きますか」

はちょうどいい具合に降りてきたエレベーターに乗る。
だが、それは1階までしか止まらないもので、地下一階へは乗り換えなくてならない。
一階へ着くも、地下一階行きのは上に行ってしまったばかりなので、エスカレーターで下に降りる事にする。
一階は主に化粧品や宝飾品を売っているフロアだ。
はこの階が実は苦手だった。
香水の匂いが充満しているのを好まないのだ。
だって好きな香りはあるし、少量でならばつけている。
だが、限度ってモノがある。
出展している各店から様々な匂いが出るのはやはり勘弁して欲しい。
だから半ば駆け足で地下一階へ向かおうとするが、ある宝飾店で張遼の姿を見つけた。

「あ、張遼さんだ。こんな所で?」

仕事で来ているのかいつも見るスーツ姿だ。
店員と話している様子から、客であるかのようにも見える。

まさか、の誕生日プレゼント選び?

淡い期待を寄せてしまう。
だが、すぐにそれは違うと崩れた。

彼の隣には自分よりも綺麗で大人の女性がいたのだから。
彼女は店員が出した指輪を手に取り眺めている。

「・・・・・・・」

知らない顔だ。
大人の顔だ。

は急に震えが来た。
自分が知っている張遼はいつも笑っている。
その笑みもどこか子どもっぽさを残している。
兄とのやり取りが一段と悪戯坊主を想像させるような感じで。

でも、あそこにいる張遼の顔は違う。


の知らない顔をした大人が立っている。


「あの人に指輪でもプレゼントするのかな・・・・・」

だとするとそういう仲なわけで。
自分の恋などは単なる初恋でしたで済んでしまう。

張遼といる時間が少し縮まったと感じたものの。
の知らない時間の流れがあるのだ。
それはどうしようもない事である。

「・・・・・・・・」

怖い。
痛い。

すぐにでも大人になりたいと思う。
彼の隣に立てるような。
でも怖さもある。
大人にはまだなりたくないと思うような・・・・・


の携帯がなった。
母が中々来ないを心配したのだろう。
携帯には出ずにエスカレーターから地下一階へと向かった。



翌日。
は重逢には行かなかった。
朝目が覚めた時に酷い頭痛がした。
どうやら風邪をひいてしまったようだ。
母には毎日冷房にあたっているからでしょうと言われてしまう。

原因と言うならば寝る前に髪も乾かさずにダラダラとしていたからかもしれない。

ダラダラしてしまった原因は昼間のことがあったからなのだが。

「おや、殿はいないのですか?」

「あぁ。風邪をひいたようだ」

「それは大変ですね」

昼を食べにきた張遼。
だがの姿がないので残念な様子を見せる。

殿とのランチに慣れていたので、急に一人になると寂しいものですな」

「ほぅ、そうか」

「可愛い女性と一緒の方が楽しいではありませんか」

強面のオジサンを目にしながらはいいと張遼は言う。

「早く治して来てくださると良いですね。あの約束を果たしたいですし」

「約束?」

「えぇ殿と約束したことですよ」

「ほぅ」

張遼の忙しかった仕事も一段落着いたのだろう。
どこか彼は楽しそうである。

だが、はその週は一度も顔を見せなかった。







知らない面があるのはしょうがない話だよね。
05/09/26
13/05/01再UP