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だけど、それでも、きみをおもう。
どうして“ここ”なのだろうか? 【1】 「くそっ。数が多すぎる!」 襄陽にいた劉備軍は大軍にて迫る曹操軍から逃げていた。 だが、劉備を慕う民も一緒だったために簡単に追いつかれてしまった。 そんな中で劉備の家族すらもバラバラになってしまったことを知った趙雲がただ一人で 大軍の中に突入し、劉備の息子阿斗を救出するということをなした。 「あともう少しなのだ、あと…」 阿斗を助け出したのは良いが、代わりに失ったものがあった。 阿斗を大事に抱えていた糜夫人は負傷し足手まといになると感じ身を投げてしまった。 その彼女の為にもなんとしても阿斗を劉備の元へ届けたいと思うも数が多すぎるので苦戦していた。 「中々やるではないか」 「孟徳…」 「元譲、奴がわしの配下に降ればまた野望に一歩近づくとは思わんか?」 趙雲が単身で切り抜けようとしている姿を少し離れた陸の上から曹操と夏侯惇が眺めていた。 曹操の言いたいことは夏侯惇にはわかっている。 昔から敵味方出自関係なく、優秀な者を欲しがるのが曹操だ。 「悪い癖だぞ、孟徳。あいつは無理だ」 「ふっ、わからんぞ?ためしに捕らえてみればよい」 「お前な…あいつ一人に多くの兵士が犠牲になっているのだぞ」 何を言っても無駄だとはわかっていてもつい口煩く言ってしまう。 「その分、奴が働いてくれればよい」 「どこから来るのだ、その自信は…」 「何を言おうとも決めた。すでに徐晃に申し付けておる」 (また徐晃も面倒を押し付けられたな…) 夏侯惇は手で顔を覆い首を横に降った。 「……阿斗様!……?…」 趙雲が目を覚ました時、そこは長坂の大地の上でもなく綺麗な作りをした一室だった。 身体中が痛く、満足に起き上がることもできない。 「阿斗様…」 馬上から落とさぬよう、傷つけられぬよう懐へと抱きかかえた。 だが、今はその姿はない。 寝台に寝かされている自分。 「…私は」 「あ、起きた?」 部屋の扉が開き少女の声が趙雲の耳に入った。 少女は趙雲が目を覚ましたことで彼に近づき顔を覗きこんだ。 「身体中痛いっしょ?運ばれてきた時すっごい怪我してたしね」 「………」 「自分が誰だかわかる?頭打ったとか大丈夫?」 「…あ、あぁ」 身体が動かせないので目だけで彼女を探る。 綺麗な身なりはしている。 口調からがあまり身分が高い人間には思えない。 庶民的な感じ。いや、趙雲が知っている庶民とは違う感じがする。 「ここは、どこですか?」 趙雲は少女に尋ねる。 少女の顔は少し曇る。 「どこ…って覚えてない?自分が今までどこにいたのか、で、どうしたのか」 「…長坂で戦っていたのは覚えています。大事な人を守る為に」 「ふーん」 「沢山の兵士に囲まれて…」 趙雲は少しずつ思い出してきた。 じんわりと額から汗が出始め、少し呼吸が激しくなる。 「あ、いい。無理して思い出さなくても。あなた、ずっと熱出してようやく気づいたんだから」 「…熱?」 「大怪我の所為でね。だから、今は無理しないで」 「………」 少女は一旦そばを離れる。 戻ってきたかと思えば手に水を入れた桶を持ってきた。 寝台近くにそれを置いて、手拭を水に浸し絞る。 「汗、拭こうね」 そう言って趙雲の顔の汗を拭いてくれた。 「冷たくて気持ちいい…」 「そう」 「あなたは?」 「私は。ここの居候。当分は私があなたの世話をするから、なんでも言って」 はにこりと微笑んだ。 「私は」 「知ってる。趙雲。字は子龍、だよね?子龍さん」 「は、はい」 が自分のことを知っていると言うことはここは敵地ではないのか? 誰が自分を助けてくれたのだろうか? 「ずっと寝っぱなしだけどお腹空かない?スープとかなら食べれる?」 「す?すーぷ?」 「あ、あー汁物?雑炊なんかいいかな〜後で頼んでみるね」 「は、はぁ」 「あ、身体も拭く?」 「い、いえ良いです」 「なんだ、残念〜いい身体つきしてるから楽しみだったのになぁ」 「え」 「うっそ。冗談〜」 ポンポンとの口からは色んな言葉が出てくる。 表情も変わる。 珍しい、いや、このような女性とは初めて出会った気がする。 「じゃ、とりあえず。ご飯頼んでくるね。それまでゆっくり寝ててくださいな、子龍さん」 は手拭を桶にいれてから部屋を出た。 がいなくなったことで部屋は急に静かになる。 「ここは、どこなのだ?」 それと仲間はどうなった? 趙雲が考えるも再び目を閉じてしまった。 「子龍さん、ご飯ですよ〜」 がしばらくして戻ってきた。 声をかけても趙雲からの反応はない。 食事を乗せた盆を卓へと置いて趙雲の顔を覗きこんだ。 寝息が聞こえ安堵する。 「びっくりした。寝ちゃっただけか」 はそのまま窓辺へ移動する。 「ここは平和だなぁ…」 静かな場所で安静にしていれば趙雲の怪我も良くなるだろう。 彼はこれからどうするのだろう? は心配になる。 だって、ここは… 「…、殿?」 「起きた?ご飯持ってきたけど、食べれる?」 「少しだけなら」 趙雲は目を細める。 光が眩しいのだろうか。 「身体、起こすの手伝うね」 「す、すみません」 趙雲の上体をゆっくりと起こす。 起こすのだが、はじっと趙雲の顔を覗きこむ。 「な、なにか?」 「やっぱ、子龍さん身体拭いてからご飯にしよう」 「は?」 「それとシーツも着物も変えようね。衛生的に悪すぎ。ちょっと待ってて」 は扉を開け顔を外に出し声を出した。 「蘭玉〜新しい着物と被単持ってきて!」 の声に若い女性が答えるのが趙雲にも聴こえた。 「ずっと寝たきりだったもんね。着替えたほうがいいよ」 「そ、そうですか」 は寝台の上に片足を乗せ趙雲に近づく。 「あ、あの、殿?」 「だから、着物脱がなきゃ身体拭けないし」 「い、いいです!そんなの自分でやります」 「やれないっしょ?身体中痛くて動けないし」 「で、でもあの女性にそんな」 「女性の方がいいんじゃないの?ごついおっさんにやられるより良いと思うよ」 「いいです、本当に。結構です」 「強情だなぁ子龍さんは」 コンコンと扉を叩く音がし、若い女性が呼ぶ声がした。 「。持ってきたわよ」 「はーい。手伝ってもらえると嬉しいのだけど」 は扉を開け女性を招き入れる。 「手伝う?何を?」 「子龍さんの着替えと身体を拭くのと」 「え」 女性は頬を赤く染める。 「わ、私が?」 「そうだよ…あれ、もしかして蘭玉も恥ずかしいとか?」 困ったとは思う。 自分だって恥ずかしいとは思うが、それ以前に怪我人だからちゃんとしてあげたいと思う気持ちの方が強いのだ。 趙雲の容姿がいいために蘭玉などは余計に照れてしまうのだろう。 蘭玉を見て趙雲の方もさらに遠慮しそうだ。 「しょーがないな…蓮いるんでしょ?」 は庭に向かって声をかける。 すると少年が一人ひょっこり顔を出した。 は部屋を出て少年を手招きする。 「なに?」 「子龍さんの着替えとか手伝ってあげて」 少年、蓮はの後ろから部屋を覗きこんだ。 寝台にいる趙雲と目があうと顔を強張らせるがが蓮の頭を撫でる。 「大丈夫。子龍さん怖くないよ」 「う、うん」 「じゃ、お願いね。蘭玉と外で待ってるから、身体の汗を拭いて新しい着物に着替えるのを手伝ってあげて」 蘭玉と入れ替わりで蓮が部屋に入る。 「すまないな」 「う、ううん」 に言われたからと言ってそう簡単には緊張は解けないらしい。 「なるべく自分でやりたいと思うだが、中々身体が言う事を聞いてくれないらしい」 趙雲は蓮に向かって笑う。 「しょう、しょうがないよ。沢山怪我してるし」 ぽつりぽつりと会話しながら小さな身体で趙雲を支えたり、蓮は色々手伝ってくれた。 「蓮は殿の弟かな?」 連は首を横に振る。 「じゃあ蘭玉殿?」 「う、うん」 「殿はここの居候と言ったが、ここは君たちのお父上の家なのか?」 また蓮は首を横に振る。 「じゃあ」 趙雲は続けて質問しようとするが蓮はスッと離れてしまう。 「終わり」 「あ、あぁありがとう」 パタパタと駆けて部屋を出て行く蓮。 と、と蘭玉が入ってくる。 「終わったみたいだね〜ご飯……って雑炊水吸っちゃってるよ」 は卓の上の食事を見て苦笑する。 「作り直した方がいいかしら?」 蘭玉が言うも、趙雲がそれを止める。 「勿体無いです。それをいただきます」 「でも、冷たい食事は身体に良くないよ。私があとで食べるからいいよ」 は別に食べれないことないしと土鍋の中をかき混ぜる。 「いえ、本当に」 「子龍さんは本当に強情だ」 は笑った。 「じゃあ、私が食べさせてあげよう〜」 「え!?あ、その。一人で食べれますから」 「無理無理。遠慮なーし」 は寝台のそばに椅子を持ってきて座った。 食事を乗せた盆を膝の上において、さじで雑炊をすくって趙雲の口の前に持ってくる。 「はい、子龍さん。あーん」 「え、あ、殿…」 「ちゃんと食べないと薬も飲めないよ?じゃないと治らないし〜」 「…は、はい」 恥ずかしいのだが、我慢して口を開けに食べさせてもらった。 蘭玉は気を利かせたのかいつのまにか部屋からいなくなっていた。 不思議だった。 独りになるとあれこれ考えてしまうのに、といるとそれがない。 色々考えねば思い出さねばいけないことがあるのに… 「早く怪我治しましょうね」 そう言ってに微笑まれると素直に頷いてしまう。 「そうですね」 ここはどこで、自分はいったいどうしたのだろう? 無双4のころの趙雲話だったようですなw
05/01/21
12/11/04再UP
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