片言隻句




ドリーム小説
【9】





色々あったが、落ち着きを取り戻し再び以前と変わらぬ生活に戻っていた。
杏沙と鳳花と遊んだり、たまに屋敷に徐晃たちが訪れたり賑やかさは増している。

。元譲様とはどうなの?」

「は?」

「最近会ってる?」

「…特に会わないけど」

のんびり娘三人で茶屋にいた。
甘いものが好きだという杏沙にせがまれて入った店だ。

「仕方ないと言えば、仕方ないわよね。元譲様はお忙しい方だもの」

「あ、あのさ、杏沙」

「でもその分、久しぶりに会った時に感動が現れるものではなくて?」

「鳳花まで、何を言うかな…」

二人には夏侯惇とが付き合っているかのように見えているらしい。
全然そんなことはないのだが。

夏侯惇は会えば優しくしてくれる。
自分が最初にしでかしたことを思うと、優しすぎるぐらいだ。
色々気を使ってもくれたし。
周りが勝手に騒いでいるだけで、自分はそこまで夏侯惇に想いを寄せているわけではない。

とは思っているのだが…。

「公明様はたまにいらしてるわよね」

「徐晃さん?うん、兄上と結構仲がいいよ」

はその方とは仲はいいの?」

「徐晃さん?普通かな。真面目でいい人だよ。いっつも兄上と真面目に武について語ってる」

には聞いても面白くもないものだったので、二人のことはいつも放っておく。

「最近は沢山の方がお見えになっているわよね」

「うん。全部兄上のお仲間さんだけどね。酒飲みばっかで少し困るんだよね」

「そうなの?

「皆いける口みたいで量がすごいんだから。煩いし」

最初は楽しかったがあまり度を超すと腹が立つ。
最近では最初に顔を出してからさっさと部屋に戻ってしまう。
普通に会うのは構わないが、酔っ払いとは会いたくない。

「賑やかでいいじゃない」

「賑やか過ぎ」

笑う友には少し頬を膨らますが、杏沙を見て笑みを浮かべる。

「でも杏沙もつまらないでしょ?兄上と全然会えないからさ」

「そ、そんなことないわよ」

「兄上、最近は友だちとの付き合いの方が多いからね〜」

「いいことじゃないの」

形勢逆転しだした二人に鳳花はのんびり茶を飲み話を聞いている。

。元譲様に会えないからって八つ当たりはいけないわ」

「それは杏沙の方じゃないの?つーか、兄上のどの辺がいいわけ?」

「あら、文遠様はとても素敵だわ。は何もわかっていないのね」

「わからなくて結構。私から見て、あの人は性格が悪い!笑顔で人を騙す人だね」

「そんなことありません。こそ元譲様のどこに惹かれたのかしら?」

「ひ、惹かれてなんかいませーん」

「戦場にいる元譲様はそれはそれは恐ろしい方だと聞いたわよ」

「それは戦場ででしょ?普段はそんなことないもん。戦場でなら兄上だって同じじゃん」

何を互いに擦り付けているのやら?鳳花は思う。
だがこのままでは本気で揉めそうだったので間に入る。

「もうわかりましたから、その辺でお止めになったら?」

「鳳花」

「何をわかったっての?」

「お二人が相手のことをどのくらい好きだってことが。段々自慢、惚気に変わってますわよ」

「「………」」

「いいですわね、お二人とも」

ずずっと残りを飲みきる鳳花。
と杏沙は互いに顔を赤くし苦笑した。



***



鳳花と別れて杏沙と二人で屋敷へ戻る途中。

「ねぇ、

「ん?」

「本当のところはどうなの?元譲様のこと…はそんなんじゃないっていつも言うけど」

言おうとしたセリフを先に言われてしまう。
は頬を軽く指で掻き考える。

「どうって言われても…ちゃんと考えたことないし。杏沙たちが騒ぐほどのこと何もないし」

「でもお菓子を作った時とか」

「お礼だし」

そう言えば、あの時から杏沙に夏侯惇のことを色々言われ始めたのだ。

「食事会の時も楽しそうにしていたじゃない」

「あれは、杏沙が兄上と二人で人のことからかってたじゃん」

むしろ楽しんでいたのは君たちだ。

「花簪頂いて喜んでいたでしょ?」

「ま、まぁ…綺麗なものだったし」

「曹操様の宴にも呼ばれた時にも中々いい雰囲気だったと聞いたわよ」

「あの時は、色々あったし…って!なに、いい雰囲気って!何もないよ」

「あら、そうなの?」

賊の騒ぎでそれどころじゃなかったのに。

「でも元譲様の胸で泣いたとか」

はぶんぶん首を振る。
泣きはしたが胸でなんか泣いてない。

「し、杏沙。なんでそんな話を」

「鳳花から聞いたのよ?鳳花の家の人たちあの宴にいたんですって」

なにやら変な噂が流れていそうで怖い。
鳳花の家はいったい何をしているうちなのかとても気にはなる。

「いつまでもからかってばかりは悪いから、本当のところをちゃんと聞きたいなって思って」

「本当のところって言われてもなぁ」

「それに、ばかりずるい。私は隠してもいないのに」

本気ですか?杏沙さんとは唖然とする。
張遼のことを本気で想っているらしい。彼女の場合、最初から隠すもなにも否定もしなかった。

「兄上のこと本気なんだ〜いや、これは意外。半分冗談だと思ったよ」

「酷いわね、ってば」

もしかしたら杏沙は隠し事が嫌いとかではなく隠し事ができない性質なのかもしれない。

「だから、の気持ちも知りたいわ」

「…気持ちね。本当によくわからないんだ、私。夏侯惇とは最初が悪かったし…」

「でも今はそうでもないでしょ?」

「うん…ごめん、まだわからないや」

「そう」

「でもさ、もしちゃんと好きな人できたら杏沙には教えるから、約束する」

「本当ね?じゃあ約束ね」

別に約束などしなくてもいいことだとは思ったが、杏沙にだけは嘘はつきたくないと思えた。

「あら?お屋敷の前…」

「ん?あ……夏侯惇」

さっきまでの話題の中心が屋敷の前にいたのでは驚く。
夏侯惇もたちに気づいたようでたちの前までやってきた。

「お久しぶりです。元譲様」

「あぁ、杏沙殿、変わりはないか?」

「えぇ」

杏沙はニコリ微笑んで夏侯惇に挨拶する。
のほうはさっきまでのことを思うと少し恥ずかしいが、彼は知らないのだからと気持ちを落ち着かせる。

「どうした?

「な、なんでもない!」

杏沙は隣でくすくす笑っている。

「?」

「あ、えっと…兄上に用事?兄上は休みじゃないから城でしょ?」

「あぁ。今日は張遼ではなくお前に用があってな、待っていた」

「私?」

自分を待っていたと言われて顔が熱くなったのが自分でもわかった。

。中にご案内したら?ゆっくり話せばいいじゃない」

「う、うん。じゃあ、どうぞ」

「あぁ」

「では元譲様、私はこれで。、またね」

「え、えぇ!行っちゃうの?杏沙」

当然でしょ。と杏沙の顔は物語っている。
二人の邪魔をしては悪いからと。

「?」

夏侯惇にはまったくわからないことだったが。



とりあえず屋敷中へ夏侯惇を招く。
そして使用人に頼んでお茶を用意してもらった。
夏侯惇はすぐ戻るからかまわないとは言っていたが。
庭の花がよく見える部屋に案内した。
すぐお茶も用意されて、は夏侯惇に話を聞く。

「で、私に用って何?」

「あぁ。実はお前に会ってもらいたい人物がいるんだ」

「私に?」

夏侯惇が会わせたい人とは誰だ?

「孟徳の息子、子桓に嫁いだ者だ。名を甄姫と言うのだが、彼女の話し相手になってほしいのだ。少し強引な婚姻だったからな、今だ子桓との間にぎこちなさがあるんだ」

「それで、なんで私が?」

「気分転換になればいいと思ったんだ。卞夫人などもいるが、俺はならば彼女も気にいると思ったからだ」

確か、前に張遼に曹操の息子に嫁さんができたね。と話したとき、彼は少し苦笑いしていた。
嫁にしたはいいが二人は不仲なのか?
にはよくわからないが、別にその人と会うことには断る理由もなかった。

「別にいいけど。私、難しい話とかできないよ?」

「普段通りでいいんだ。お前らしくな」

「杏沙たちと話してるみたいに?」

「あぁ」

「いつから行けばいい?」

「そうだな……とりあえず明日にでも会ってみるか?」

「うん…あ」

「なんだ?用事があるなら別の日にでも」

「違う違う。お城へ行くんでしょ?私またこの間の衣装みたいなの着なきゃいけないの?」

正直、支度するのに時間がかかるので嫌だ。
たまにならば着飾りたいと思うが。

「なんだ、嫌なのか?俺は似合っていたと思うが」

「え、あ、その…動きにくいなって思って」

夏候惇に褒められたと思うと、顔が熱くなる。

「いつも通りでかまわん。明日、張遼と一緒に来るがいい」

「うん」

「では、それだけだ。邪魔したな」

夏侯惇は立ち上がる。

「え、もう行っちゃうの?」

「あぁ、まだ仕事がある」

「そっか…なんだ、つ」

そこまで言いかけてハッとする。

(なに?私、今つまんないって言おうとした?)

「なんだ?」

「なんでもない」

は笑って誤魔化す。

(杏沙が色々言うからだよ〜変に気になるじゃん)

「じゃあな」

「うん」

夏侯惇を見送った
前に見送った時には感じなかった寂しさが通った。

「あ、あれ?」

なんだろう、この寂しさはいったい。



「そうか。に頼んだのか」

「うん。だから、明日一緒にお城に行くの」

夕餉の時に張遼に夏侯惇からの頼みごとの話をした。

「ね、夫婦仲悪いの?」

「さぁ、どうだろうな。私は数える程度しかお会いしていないしな」

「ふーん」

「張コウ殿と気が合うらしいとか」

「張コウ…あ、あぁあの人か」

数回、この屋敷にも来てくれたの化粧を直してくれた変わった武将だ
そんな人と気が合うってどんな女性だろうとは首を傾げるが明日になればわかるからいいだろう。

「寝坊したら置いていくからな、

「しないよ。いや、私寝坊なんてほとんどしないけど?」

「そうだったか?とにかく失礼のないようにな」

「……じゃあ、私になんか頼むなっての」

べーっとは張遼に向かって舌を出した。








05/02/07
12/08/26再UP