旭日昇天



ドリーム小説
新品の死覇装。
いつもはこれを着ている人たちを見ていたのに、今日からは自分が着ることになった。
嬉しいやら恥かしいやら。緊張もしてしまう。
今まで知っていたようで、知らない世界への第一歩を踏み出そうとしているのだから。

「うん。よく似合っているな」

「ありがとうございます」

は褒めてくれた相手に頭を下げる。
少々堅苦しい態度のに苦笑してしまう。
だが、気分はいい。ずっと願っていたことだから。

「ようこそ、十三番隊へ。檜佐木君」

隊長自ら、を笑顔で出迎えてくれた。





【3】





本来、配属願いを出して霊術院時代の成績や能力を見、入隊試験に合格してから配属が決定するのだが。
は異例中の異例だった。
本人の配属願い以前に、隊首会で彼の配属先を各隊隊長たちが話し合ったのだから。
話し合ったと言っても、の入隊を希望する隊長同士の激しい攻防戦が繰り広げられたらしい。
らしいというのは、結果的にどうやって決められたなどという話が外部に漏らされることはなかったのだ。
隊首会終了後、敗れた隊長たちの落胆した顔は中々見物だった。

「ようこそ。と言っても、これから入隊試験を兼ねて、君は斬魄刀と向き合わなければならない」

「はい」

それが済まねば正式に十三番隊への配属が認められない。
入隊試験はもっと別のものだが、今回は特別処置となっている。
浮竹立会いの下、斬魄刀との対話、同調が今回の入隊試験となっている。
新人のうちは名も無い斬魄刀浅打ちを使うものなのだが、にはすでに斬魄刀能力の片鱗が見え始めていた。
それがきっかけで霊術院を一足早く卒業し、護廷十三隊への配属も決定したのだ。
元々霊術院での成績は優秀、入学からずっと特進学級在籍の三回生以降は常に筆頭という地位をキープしていた。
護廷隊への配属はほぼ決定だった。

「プレッシャーを与えるわけではないけど、俺は君にならばできると思っている。頑張れ」

「はい、ありがとうございます」

緊張の所為もあるが、少々硬い表情のに浮竹は苦笑する。
目の前にいるのは昔からの友だちであるが、彼自身は新人隊士として浮竹の前にいるのだろう。

(うーん…わかってはいたけど、寂しいものがあるなぁ)

後頭部を軽く掻く浮竹。
だが、まあまだ初日だ。
元々の十三番隊の隊風を考えれば、が十三番隊に馴染んでくれればいいだろう。

「よし。では、はじめよう」

「お願いします!」

浮竹がに掛けられた術を解く。
霊術院で発火、暴走したという力は、霊術院の教師たちによって封じられていた。
それを解く事ができるのは封じた者か、それ以上の力を持つ者だろう。
浮竹は後者である。

「すごいな、これは…」

今まで封じられていた反動だろうか、術を解いた瞬間燃え盛る炎がの体から発せられた。
総隊長であり、自分の恩師である山本が炎熱系であり、その能力は幾度となく見た。
彼が斬魄刀を始界しただけで、周囲が炎の海と化したくらいだ。
はそれに比べれば当然まだまだなのだが、だが、アレとは違う、強い炎の意志を感じる。

「結界はちゃんと張れているな?」

浮竹は素早くの側を離れた。

「「勿論です」」

浮竹と共に、試験に立ち会っているのが三席の仙太郎と清音だ。
十三番隊の席官が数名四方に待機し、結界を張っている。

「何事も起こらないとは思うが、万一の場合は朽木に頼みそうだな」

「何事も起こらぬことを祈るばかりです。きっと殿ならば大丈夫です」

今では副隊長でもあるルキアもこの場に立ち会っていた。
彼女は氷雪系斬魄刀の持ち主でもある、万が一の場合一番頼りになるかもしれない。

「多分、大丈夫だと思うが…あれで火傷したりしないだろうなぁ」

「そのようなことを言われると、私や日番谷隊長は常に霜焼けを気にせねばなりませんが」

珍しい彼女からのボケのような物言い。
それはそうだと浮竹は笑う。
大体、主と認めるならば、斬魄刀はを傷つけるような真似はしないだろうし。





は目を瞑る。
己に呼びかけてくる者の声を聴く為に。






「寂しいって顔しているな?修兵」

「べ、別に・…あーもう…俺は別にの配属に関しては文句なんかないですよ」

九番隊隊首室。
修兵は拳西の補佐業務をこなしていたのだが、拳西が修兵の顔を見て小さく笑っていた。

「そうか?そうは見えないよな?

「はい」

拳西の補佐に今日はも加わっている。
は拳西に問われて同意した。

にも九番隊以外がいいって言われていましたし」

それが寂しいのではないかと拳西には思える。
からすれば、それは修兵に甘えたくないという自分なりのケジメなのだろう。
周りの目も気になるようだし。

「十三番隊が一番アイツに適していると思います。負け惜しみじゃなくて」

「浮竹の人柄や、隊風がに合っていると?」

「はい。もともと浮竹隊長のことを慕っていましたし…ま、いつか引き抜けるものなら引き抜いてみますか?」

ニッと修兵は笑う。

「どうだろうな?浮竹がそうはさせないと思うが」

臨時の隊首会でも笑顔で他の隊長を言いくるめていた姿を拳西は知っている。

「ですよね。あの人なんだかんだいって最初から会得に狙っていましたし」

の十三番隊配属がほぼ決定したときの浮竹の顔は、そりゃあもう嬉々としていた。

「ですが…隊舎にも入ってしまいましたし、私は少し寂しいです」

死神になれば隊舎住まいだと言うのは覚悟していたが、は素直に寂しいと口にした。
更には幼い弟妹たちも、折角が帰ってきたと思ったのにと寂しがっている。

「俺達はまだこっちで顔を合わす機会が多いからな」

「一応、休みになれば帰ると言ってくれましたけど」

新人のうちはそうそう実家に帰るような事はないだろう。

「だけど、いいさ。少し前に比べれば」

の中でわだかまりを作ってしまった頃。
彼は霊術院を卒業したら、何も言わないでここでの生活を始めていたと思うから。

「お茶冷めちゃいましたね。今新しいのをお淹れします」

はそういって、新しいお茶を淹れ始めた。
夫婦の様子を見て、拳西はぼんやりと言った。

「レンタルってありか?」

「「はい?」」

「ねぇわな…あーなしなし」

拳西自身、修兵にからかい交じりで言ってしまうも十三番隊にが盗られてしまったのが残念だったのだ。
だから、無理な事を口にしてしまった。
ありえない失言だと反省して。


***



触れようとするならば、一瞬で灰にされてしまいそうな強い焔。
だが逃げる気など毛頭ない。
ずっと呼びかけてきた声に、応える時が来たのだから。

その双眸はとても紅く純粋なものに感じた。
自分を見つめるその双眸は何を感じているのだろうか?
主と相応しい存在か見定めているのか。
それとも過去にくすぶっていた卑しさを見通してしまっているだろうか?

《我の名を呼べ。我を求めよ》

俺でいいのか?そう問わずにいられない強いものを前にしては怯みそうになる。
逃げる気はないと思っても。
真正面から突きつけられる眼に自信が奪われそうになる。

それでも、は一歩踏み出す。
近づけば近づくだけ焔が大きくなっていく。
熱い。骨まで焦がされていくような感じがする。
辿りつく頃には燃え尽きてしまうのではないかと思うくらいに。

《我の名を呼べ。我を求めよ》

求めろと言いながらも、が近づけば焔が強くなる。
何をどうしろというのだ。

『逃げんなよ。お前の力でもあるんだぜ?』

修兵の言葉が聞こえた。
配属先が決まったと修兵の口から聞かされた時だ。

『お前がそれを否定すれば、斬魄刀もお前から離れていくからな』

今、目の前の強い焔は、自分に対して壁を作っているのだろうか。
自分がどこかで恐れている、心を開かないでいるから相手も焔を遮っているのか。
だから近づこうとすれば焔は強くなるだろう。

「俺は死神になりたいとずっと願っていたんだ」

それは家族だった人たちの為に。
義父となってくれた人を今度は自分が楽をさせてあげたくて。

「それはどれも自分のためというより、誰かのためにだけど…」

ゆっくりと焔に手を伸ばす。

「だけど、今一番願うのは、俺みたいに大切な人を亡くして悲しむ子どもができないように」

それでも、は幸せだった。
修兵という自分を守ってくれる人ができたから。
中にはそうでない子どももいただろう。

「偽善者みたいに聞こえるかもしれないけど、その為に俺は強くなりたいんだ」

《我の名を呼べ。我を求めよ》

「あんたの力。俺にくれ」

《我の名を呼べ。我を求めよ》

は強く願う。
力を得る為に、これからを戦う力を求めて。

焔の中に光るものが見えた。
恐れずに光に手を差し伸べる。

《我の名を呼べ。我を求めよ》

刀の柄が見える。それが死神の力、斬魄刀なのか。
は迷うことなく柄を掴む。
そして、見えた、聴こえた名前を呼んだ。

「迦具土!!」

刀を抜くと、焔は避け、紅蓮の焔の鬣を纏った白き竜が姿を現した。





がゆっくりと目を開けた。
手にはしっかりと刀が握られている。
刀を鞘から抜き、斬魄刀の名を知った時に刻まれた言葉を吐く。

「…紅玉に梟名せよ、迦具土!」

刀と鞘は同化し、姿を変える。

「…紅い…十文字槍…」

自分の背丈より少し長い槍へと姿を変えた。
これが解放された迦具土の姿なのだろう。

「はは…やった……俺の斬魄刀だ…」

ストンとその場に腰を下ろしてしまう。

「迦具土……迦具土…火と土か?」

てっきり火だけと思ったのだが、これから修行を積みもっと相手を知ればいいだろう。

「よくやったな。君」

「シ…浮竹隊長」

浮竹が笑顔でよってくる。その際、張られていた結界は解かれる。
は立ち上がる。

「斬魄刀との対話と同調を無事に習得したわけだ。うん、君は今日から正式に十三番隊の仲間だよ」

「はい!これからよろしくお願いします!」

「それで、その能力などからここにいる者たちとも話した。君、十三席に身を置いてもらう」

「じゅ、十三席…いきなり席官って…」

「それぐらいの実力はあると思っている。だが、下がるも上がるもこれからの君次第だ」

そうだ。席官入りを果たしたといえども、そこで終わりではない。
自分より上のものが現れれば、自分が下がっていく、落ちていくだけだ。

「はい!」

は力強く返事をした。
その目に迷いはなく力強いものだと浮竹には見えた。



***



いくら席官入りを果たしたとはいえ、新人なのには変わりない。
当面は先輩隊士に着いて色々覚えていかねばならない。

「私がその役目を担うことになった。殿、よろしく頼む」

浮竹から命じられたと、の教育係にはルキアが任された。

「ルキアね・・・・え、あ。ルキアさん、よろしくお願いします」

以前は姉ちゃんと親しく呼んでいたが、今はそうも行かないだろう。

「別に今まで通りでかまわないぞ。十三番隊は気安いところだ。殿がここに居たいと願えば誰もが受け入れてくれる」

馴れ馴れしいとは違うだろうが。十三番隊というのはそういう隊なのだ。

「今すぐに全部を話すこともないが、これからゆっくり色々話してやろう」

ルキアの目が酷く穏やかで、何かを思い出しているようだった。

「私があの方にたくさんのことを教わったように。殿にも」

「はいはいはい、堅苦しい話はそこで終わり!」

二人の間に清音が乱入してきた。

「新入りくんの歓迎会がやることになったから!ほら、君、行くわよ〜」

「え、あ、あの。歓迎会って、まだ昼間…」

「先輩の申し出断ろうってんのか?新入りは黙ってついてこい!」

いつの間にか仙太郎まで現れの首根っこを掴んで歩き出す。

「朽木、おめぇも早く来い」

「は、はい!」

ルキアも慌てて3人の後を追った。
配属2日目の朝に二日酔いの出仕となりそうで怖いだった。
だが、郷に入りては郷に従え。逃げ出すなんて無粋な真似はせずに受け入れる覚悟は決めた。








息子君の配属先は十三番隊でした。最後まで悩んだのは八番隊でもあるんですが。
それと、息子君の斬魄刀「迦具土(カグツチ)」ですが、日本神話に出てくる火の神さまでもありますが、私のイメージ
としては舞HIME、舞ちゃんのチャイルド「カグツチ」です。
いやー考えるの面倒だったんで(笑)解放後の十文字槍は、息子君のデフォルトがアレなんで、これにしました。
解号も考えるの大変でした。これを一人一人考えている先生ってすごいっすね、本当。
08/06/13
夫婦の会話に拳西君も加わりました。ルキアは副隊長なんですよね〜
12/07/22再UP