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旭日昇天
護廷十三隊総隊長、山本元柳斎重國のもとに真央霊術院からある報告がされた。 それは六回生筆頭檜佐木のことである。 元々優秀であった生徒だが、卒業を間近に控えたこの日。 死神の能力の片鱗とも思われる力が突然現れたそうだ。 その力はとても大きな炎で、校舎の一部を全焼させてしまったそうだ。 建物だけの被害で済み、生徒たちに怪我人などはでなかったが。 の今後の処遇を霊術院では、いち早く護廷十三隊へと預けた方がいいと考えた。 もうすぐ卒業ではあったが、いつまた力が暴走するとは限らない。 彼だけ一足早く卒業となった。 義父である九番隊副隊長檜佐木修兵が引き取り、彼は自宅待機を命じられた。 「あの小さかった坊も、もうそんなに成長したか」 年月は流れたが、今でも覚えている。 父親に着せられたという感じの羽織を着て正月の挨拶に来たことを。 それに、霊術院の書類からものことを知っていた。 各隊が最近少しだけざわついているのは、彼の配属先を巡っての事だというのも。 まだ少し先の話かと思ったが、すぐにでも彼の配属先を決定しなくてはならなくなった。 本来ならば、卒業時の成績と他の生徒との能力も照らし合わせて各隊にバランスよく新人を配属できるようにするのだが。 残念ながら、そうとはならず。彼一人が先に来てしまった。 「うーむ。わがままを言えば、儂が引き取りたいのだがのう…」 副隊長である男が聞こえる距離で呟く山本。 「恐らくそれは各隊で同じ事を考えておられるでしょう」 の能力を考えれば、山本と同じく炎熱系の斬魄刀を持つことになると思うのだが。 「……話し合いで決まればいいのだが」 更にいうなれば、この後もう一人配属先で揉めそうな新人という名の古株も控えている。 護廷十三隊にとって、超が付く豊作の年なのかもしれない。 山本は各隊隊長に臨時隊首会を開くことを通達した。 これに出席しなかったものは、問答無用で彼の配属先決定権は失われることにしようと勝手に決めた。 【2】 言うなれば、最初からの配属に興味がないと言っていたのは十二番隊だった。 実験に役立つような健康体なら誰でもいいってことで。 檜佐木。という青年のこともさほど興味はない。 技術開発局の阿近がたまに修兵から息子の話を聞かされるとぼやいているのを聞いたが。 ほぼ接点はないので、この緊急隊首会はただ聞いているだけの暇になりそうだ。 とは一応付き合いはあるとはいえ、多分彼はうちには配属されないだろうと思っているのが四番隊だった。 鬼道の成績は優秀だったという。 そんな彼が来てくれれば、いい戦力になりとても嬉しいのだが。 四番隊隊士は霊力を治癒能力に用いる隊。治癒や補給専門の後方支援部隊だ。 今回、の身に起きたことを小耳に挟んだのだが、なんとなく彼にはここは向かないような気がする。 炎熱系は治癒に向かない。超攻撃型だ。 折角のいい人材なのに、勿体無い。残念だ。としか思えなかった。 緊急隊首会では最初から傍観者になってしまいそうだ。 「面倒臭ぇな…隊首会なんてよ…」 地獄蝶から伝えられた内容に剣八はごろりと横になる。 隊首会を開くほどなのか?と面倒臭さが勝っている。 「剣ちゃん!なにやってるのよ!早く行かないとダメでしょ!」 やちるが仁王立ちで剣八を見下ろしている。 「…別に行かなくてもいいだろ…」 十一番隊の隊風とは、今回の対象はどう考えても合わないだろう。 あれだ。 昔、自分を見てピーピー泣いていたガキの話だと言うではないか。 「剣ちゃん、それって隊首会に行かないってこと?」 「おう。別にいいだろ」 「ダメよ!行かないと!!じゃないとを盗られちゃうじゃない!!」 本人が一番十一番を敬遠しているものの、やちるとしてはやはり自分の所に来てほしいものある。 が十一番隊に配属になれば、いつでも一緒だ。 面倒臭い雑務も、稽古中も、仕事が終わった後も一緒に居られる。 今まではずっと限られた時間しか会えなかったのだ。 「別に盗られたッてかまわねぇよ…聞けば鬼道に長けた奴だって言うじゃねぇか」 「そうだよ。すごいんだよ!」 「だからいらねぇよ。ウチの色じゃねぇな」 「ダメだったら、ダメーーー!!」 早く行けと剣八を無理矢理に起こすやちる。 なんだか前の晩酔いつぶれた父親を、必死で起こす娘のように見えなくもない。 「お父さん、今日は○○に連れて行ってくれるって約束したじゃーん!」みたいな。 「あたしがに十一番隊に来て欲しいって思ってんだから!」 「そりゃてめぇの私情じゃねぇか」 「そうだよ!でもが来て欲しいって思っているの、あたしだけじゃないもん!」 ぷりぷり頬を膨らませているやちる。 「修ちゃんもウッキーもそうだし、びゃっくんもみんな思ってるもん!」 「だったら、その欲しがっている奴らのとこに行けばいいだろう。俺は別にいらねぇ」 「強いよ!剣ちゃんも気に入るよ!」 「………」 剣八は再び横になってしまった。 完全に興味が薄れたようだ。 「剣ちゃん!!」 果たして剣八は隊首会に出るのだろうか?……多分欠席だろう。 ここにも副隊長に尻を叩かれている隊長が居た。 「いいですね、京楽隊長。前々からお願いしている通り、ぜひ彼を八番隊へ配属されるよう頑張ってください」 「わかってるよー。七緒ちゃんの頼みだもんねぇ」 隊首会に行こうとしている京楽に七緒が真剣に頼み込んでいる。 その姿、ちょっと妬けちゃうよ。などと京楽は思ってしまうが。 「でも、女の子だったら良かったのになー」 「真面目に働いてくれる人なら、私は男女問わずかまいませんが」 「いやいやー女の子の方がいいよ、華やかだしね。そういや、檜佐木君娘さん居るって言ってたよね」 七緒のこめかみがピクリと動く。 「檜佐木さんの娘さんはまだ子どもです。そんな子に手を出すのはやめてください」 「嫌だなぁ、ボクがそんな事するわけないでしょ?ボクには七緒ちゃんがいるしー」 「誰が隊長のものですが」 ぴしゃりと言い切る七緒。 触れようとするならばパチンと弾かれてしまうだろう。 「早く行かれてはどうですか?遅刻は厳禁です」 「七緒ちゃ〜ん」 本当だったら、京楽に頼まず自ら乗り込んで行きたいと思っている七緒だった。 「隊長。知ってます〜?今、君モッテモテなんですよー」 十番隊隊首室。 副隊長である乱菊が面白そうに言ってきた。 日番谷もそれなりに知っている。 一応その噂の主は友人でもあるし。 だが、そうか。彼も自分と似たような目に遭ったのかと逆に友人を心配してしまう。 (そんな弱い奴じゃねぇから…大丈夫だとは思うけどな) 日番谷も隊首会に出ねばと席を立つ。 「隊長。ぜひとも君をゲットしてくださいよ〜」 「あ?なんでだよ…」 「なんでって。君がうちに配属になれば楽しいじゃないですか。それに毎日美味しいもの食べられますよ〜」 本人の死神としての能力は関係ないのか。 乱菊から見てのの存在価値はそこか。 「隊長だって、君が来てくれたら嬉しいんじゃないですか?」 「……さぁな。俺はどっちでもいい」 「冷めてますね、隊長…あ!もしかして隊長恥かしいって思ってんじゃないでしょうね〜」 「松本…」 拳を思わず握り締めてしまう日番谷だった。 「やっぱり、あれかい?六番隊も君の配属希望しているのかい?」 「どうだろうな。うちは。隊長はのこと気に入っているようだけど」 イヅルと恋次が茶を飲みながらそんな話をしていた。 六番隊隊舎の一室で。 だが二人ではなかった、そこにはもう一人いた。 「雛森さんは?」 イヅルがどうやら誘ったらしい、雛森がお菓子を食べるのをやめる。 「優秀な子だもん。できれば来て欲しいけど、どうかな…こればっかりは」 「三番隊も同じだよ」 三、五番隊隊長は他隊に比べてとは接点が薄い。 「かえってその方がが配属希望するかもしれねぇぞ」 「そうかな?だったら嬉しいなぁ」 「本人の希望が通ればいいけど、その場合君の希望ってどこなの?」 確か、以前そんな事を言っていたような気がする。 「わかっているのは九番隊以外だろ」 「檜佐木先輩の下でって一番嫌がるよね、君」 「しかも義母さんまで一緒とくればな」 「で、でも。ほら、九番隊も結構隊風とかいいし…」 雛森が少し慌て気味に修兵のフォローをしようとしている。 「あ、そういう阿散井君は?朽木隊長のことは言っていたけど」 雛森が恋次に話を振る。 「俺?俺も別にな…も真面目な奴だからちゃんと仕事はするだろうし、けどな…」 「けど?」 恋次は頭を軽く掻く。 「もし、うちに来た場合、先輩がうるさそうで嫌なんだよ」 そっちの方が恋次には重要らしい。 「あ。うん、それなんかわかる」 イヅルも苦笑してしまう。 きっと親馬鹿丸出しで、毎日あれこれ聞かれてしまうだろうし。 がたとえ幾つになっても、修兵から見れば可愛い息子なのだろう。 「奥さんもきっと呆れていると思うけどな」 「けど、どこに行っても。これから君大変だよね」 「だな。こればっかりは俺達がどうにかしてやるわけにもいかないし」 お茶とお菓子を前に3人は少しだけしんみりしてしまう。 「大丈夫だよ。君なら。今までだって霊術院で頑張っていたんだから」 「うん。そうだね、雛森さん」 「ちったぁ面白くなるか」 先ほどの空気を払拭させるかのように3人は笑った。 と別れてから急ぎ隊舎に戻ってきた修兵。 拳西が隊首会に行くのに珍しくやる気を出している。 「聞いたぜ、修兵。息子の暴れっぷりをよ」 「隊長…楽しそうに言わないでくださいよ。予想以上で頭痛いんすよ…」 「んなの気にする事でもねぇよ。それより中々厳しい戦いになるな」 「隊長…をうちにとお考えですか?」 「当然。わざわざ余所にくれてやる必要あるか?お前だって息子がうちにいた方がいいだろうに」 拳西なりにを気に入っているらしい。 それはありがたいのだが。 「自身はうちを嫌がっているんですけど…」 「なぁにぃ!?うちのどこが気に入らねぇって!?」 「いや、単純に俺とがいるからだそうで…周囲の目が気になるみたいっす…」 そう思われる気持ちは修兵もわからないではない。 流魂街出身だからと学生時代筆頭についていた自分を好き勝手な目で見た奴がいたわけだし。 「んな甘ぇこと言っている奴なんざ実力で黙らせればいいんだよ。死神ってのはそんなに簡単なものじゃねぇ」 「隊長…」 「ま。最終手段として、修兵が別の隊に移動になればいいだろ。そうすりゃはうちに喜んでくるだろうからな」 「ひ、ひでぇっすよ!隊長!!」 呵呵と笑う拳西に笑えないと修兵は抗議した。 *** が実家に帰ってきたことで、弟妹たちは喜んでいた。 だがは自室にこもってしまった。 「、せっかく帰ってきたのにね」 「なんか元気ないよね」 そっと部屋を覗き込めば、こちらに背を向け横になってしまっている。 真萩と撫子は顔を見合わせる。 そして一旦自分たちの部屋に戻ったかと思うと何やらゴソゴソと漁った。 「「ー」」 「?」 なんだと振り返ろうとした時、上からパラパラと飴が降ってきた。 「な、なんだ?」 一つ飴を手に取る。 「、元気出してー」 「お前ら…」 「美味しいもの食べると元気でるよ」 は体を起こし弟妹たちの顔を見る。 飴玉は自分たちのおやつなのだろう。 それをにあげると言ってくれている。 きっと元気になるからと。 「ありがとうな、二人とも」 二人の頭を交互に撫でた。 「「えへへ」」 滅多にそんな事をがしてくれることはないので、二人は顔をほころばせて喜んでしまう。 「元気ないつーか…緊張してんだ」 「「きんちょー?」」 わかっていないだろうなと思いながら、は飴玉を一つ自分の口の中に放り込んだ。 「これからのことを思ってさ。でも、お前らがくれた飴玉のおかげで元気でた」 「「ほんとう!!?」」 「ああ」 修兵に引き取られたばかりの頃、甘いものを食べると嬉しいと言った自分の言葉に。 修兵がお土産でいつも甘い菓子を買ってきてくれた。 なんだか、それに近いなと思って思わず笑ってしまう。 「さすが、修兵の子だよな。俺を喜ばす手段あっさり見つけた」 よし。とは立ち上がる。 「買い物行くか。夕飯は俺が作ってやるよ」 「「わーい!!」」 弟妹たちは両手をあげて喜んだ。 今頃隊首会でどうなっているかという不安もあるが、自分が配属先を決められるわけではないので。 どこに配属されようが、それを受けるつもりだ。 「明日になればわかるか…多分」 今は夕食を何にしようかという方が重要かもしれない。 一応周囲はどうしているかなー?ってのを出しておきたくて。
とりあえず、息子会得にやる気満々とそうでない隊がいますよ。
08/06/09
弟妹の行動が可愛過ぎると自分で思うw拳西君と修兵の会話を追加です。
12/07/22再UP
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