旭日昇天




ドリーム小説
「お前は馬鹿か!!」

「痛い、痛いんだよ、修兵!!」

真央霊術院のとある一室。
死覇装の男性と、ここの学生であることを示す制服姿の青年がいがみ合っている。
いがみ合うというより、男性が青年のこめかみ辺りをぐりぐりと締め付けている。

「なんで、そんな大事なことを黙っていたんだ、ど阿呆」

「うるさいな。別に黙ってなんかいねぇよ」

「最初から俺に言えば、こんなことにならずに済んだんだろうが!!」

「いたたたたた!」

二人のやり取りに、霊術院の教師がオロオロしてしまう。

「あ、あの・・・・檜佐木副隊長も檜佐木君もその辺で・・・・」

二人の檜佐木。
鋭い目つきと顔に刻まれた傷が特徴の男が檜佐木修兵。
ここの卒業生でもあり九番隊の副隊長だ。
修兵とは対照的に人受けのいい顔つきなのが檜佐木
その名字から判るとおり、二人は親子だ。
ただ、血の繋がりはない。

「この馬鹿息子。頭下げる俺の身にもなってみろ!」

「うるさい、クソ親父!貴重な体験できて良かっただろうが」

「そんな体験したくもないわ!!」

口は悪いが、これが普通。
親子仲は悪くない。寧ろ修兵はをかまうし、もなんだかんだで父親と認めている。
一時期ちょっとだけ距離があったようだが。

「あのぅ…本当、話が進みませんので…」

は現在六回生筆頭。成績優秀で、彼も父親同様、卒業と同時に護廷隊への入隊が確実だろうといわれている。
各隊、隊長たちの水面下で(一部だが)を自分の隊に引き込む為の腹の探り合いが行われているらしい。
そうなるのは、成績だけでなく彼個人を昔から知っているからだろう。

「あ、すみません」

修兵はをようやく解放する。
教師の前でみっともない親子喧嘩を見せてしまった。
教師から見ても、これが護廷隊の副隊長の一人かと、六回生筆頭の優秀者の一面かという珍しいものを見たと。内心呆れているかもしれない。

修兵に呼び出しがあったのはつい数時間前。
隊長である六車拳西と隊首室で業務をしていた時だ。

「は?」

呼びに来たのは修兵の補佐役を今でも続けている、妻のだった。

「霊術院から君のことで話があるので、急いで修兵さんに来て欲しいと連絡があったんです」

?何があったんだ?」

隊首室で家庭の事情を話す羽目になるとはも思っていなかったようで。
多少拳西の顔色を窺っている。もっとも窺われているのは修兵だ。

「詳しい話は私も聞けませんでしたが、その…学院の一部を…壊したとかで」

「はあぁ!!?」

素っ頓狂な声を上げてしまった修兵。
要はあれか、子どもが学校の備品を壊したので、親を呼び出したと。
が暴れまわるような性格の子ではないとわかってはいるが、頭が痛くなってきた。

「ほぉやるじゃないか、少年もこうして逞しくなっていくんだなぁ」

「隊長…」

拳西は話を聞いていてニヤニヤ笑っている。
修兵は軽く咳払いしてから話の続きを聞く。。

「今すぐか?」

「できれば早々にと」

「……わかった。行ってくる…何やったんだ、あの馬鹿息子は…」

くしゃりと髪を掻く修兵。

「私も一緒に行った方が…」

「いや。俺一人でいい。まさかこんな呼び出しくらうとは思わなかったけどな」

ため息一つ吐いてから、改めて拳西に向き合う修兵。

「そう言う訳なので、申し訳ないですが、隊長。外出許可をください」

「おう。行ってこい。どんな事をやらかしたのか後で武勇伝を聞かせろ」

「武勇伝って…」

だが笑っていた顔から一転、拳西は真面目に言った。

「修兵が外出中は、。お前が俺の補佐をしてくれ」

「は、はい!」

どんな理由で暴れたかは知らないが、六回生筆頭が親の呼び出しをもらうなんて情けなく感じてしまう。
そして、急ぎ霊術院に向かった。
の話では学院の一部を壊したとのことだったが。
修兵は唖然とした。校舎の一部が燃え尽きていたのだ。

「……なんだ、こりゃ」

「檜佐木副隊長。お忙しい所申し訳ございません」

教師がを連れてやってきた。
は酷くムスッとしている。

「あの、が何かしたんですか?一応分別つく奴なんで暴れるような事はないと思うのですが」

「いえ、喧嘩などではありませんよ」

とりあえずはこちらへと、一室へ案内された。
そこで聞かされたのは、先ほど修兵が見た燃え尽きた校舎の一部はが原因だという事だ。
護廷十三隊のいずれかに配属されるだろうとは思っていたが、正式に死神になる前にその能力が現れたそうだ。

「え、それって…」

「声が聞こえたんだよ…」

が教師に代わって話す。

「少し前から、一部の術が暴走していたんだ。暴走っていうか、力が抑えられないって感じで」

単純に術との相性が悪いとしか思わなかったそうだ。
それでも、誰かに相談した方がいいだろうと思いながらも中々行けず。
ここ最近、妙に声を聴くことが多くなっていた。
なんだろうと思っているうちに、声は強くなり、授業中突然、発火した。

「死神の力っすね」

一般的に死神になるにはこの学院に入り様々なことを学べばいい。
一番の近道と言われるほどだ。
だが稀に、流魂街の住人がその力に目覚めることがあるそうだ。
今のはそれに近い。

「……そうか、お前は炎熱系か」

「それってさ」

「だが、、てめぇ……」

修兵の眉間に深く皺が刻まれる。

「なんでそういう大事なことを言わねぇんだ、馬鹿野郎!!」

と、冒頭に繋がるのである。
卒業まではあとわずか、卒業試験にも一応合格しているとのことだ。
この先死神になれば、暴走することもなくなるだろう。
それどころか、早々にオリジナルの斬魄刀を持つことになるはずだ。

「俺だってそんな事になるなんて思わなかったんだよ!」

「それじゃあ、何か起こってからじゃ遅いだろう、だいたい…あ、他の生徒たちに怪我などは」

から教師へと目線を変える修兵。
あれだけ校舎が燃え尽きてしまって、しかも突然だっただろうから他の生徒たちが心配だ。

「大丈夫です。迅速に非難しましたし、怪我をした生徒もいなかったので」

火も教師たちで迅速に消火されたそうだ。
修兵は教師に向かって頭を下げる。

「本当、すみませんでした。この馬鹿息子の所為で」

「いえ、私たちも息子さんの変化に気づいてやれず申し訳なく…それで今後のことなのですが」

このまま放って置くわけに行かないだろう。
今は霊圧が暴走しないように術で抑えてあるそうだ。
新人の死神は最初は浅打を持たされるのだが、はそれを通りこすであろう。

「卒業試験も終了しております。檜佐木君は少し早いですが、卒業ということで」

の顔が曇る。

「わかりました。こいつは連れて帰りますよ」

「上の方に報告はしておりますので、数日中にも任官状が届くと思います」

「はい」

どこに配属になるかはすぐには決まらないだろう。
だが、恐らく護廷十三隊であろうとは思うが。
修兵は席を立つ。
は教師に頭を下げる。
いつもより覇気がないが「ご迷惑おかけしました」と告げていた。

学院の廊下を二人で歩く。
だがは修兵より一歩下がっている。
目線も俯き加減で誰とも目を合わそうとしない。
生徒たちは副隊長である修兵の姿と、騒ぎを起こしたを遠巻きから見ている。

!」

「よぅ…」

同じ特進学級の仲間たちだろう、心配して様子を見に来たようだ。
は自然と止まるも、彼らとの間に一線引いてしまっている。
は彼らに向かって笑うも、修兵から見れば無理をしているとしか思えなかった。

「俺、一足先に卒業だってさ。ごめんな、最後の最後で皆に迷惑かけて」

「そんなこと」

「今は、力抑えられているから大丈夫だから…でも、まあ…」

二の句が告げられなくて、顔を背けてしまう。

「行くぞ、

修兵はの後頭部を軽く押し再び歩き出した。



***



寮の荷物も元々そんなになかった為に、片づけもあっさり終わって修兵と二人家に向かって歩いていた。
同室でもあった友人が手伝ってくれたおかげでもあるが。
その友人は「また卒業後にな」と先に卒業したを見送ってくれた。
彼も力に関しては周囲とは違う。
本来ならば学院にわざわざ通う必要もないのだ。
だが鬼道に関して丸っきりダメだったために、基礎を一から学ぶ為に入学したのだ。
彼もすぐに護廷十三隊のどこかに配属されるだろう。

「なあ、修兵…」

「あ?どうした」

「俺、帰っても平気か?」

「何言ってんだ、大丈夫だろうが」

はまた昼間と同じようなことが起きたらと、不安がっている。
家には幼い弟妹がいる。
彼らを傷つけでもしたらと思うと嫌なのだろう。

「お前、俺を誰だと思っている。お前みてぇな新米ぐらい指一本で制御できるぞ」

「修兵」

「その力間違った方向に使うなよ。そうならない方に6年間勉強したんだろ?」

死神になりたい理由は、家族だった人たちを養うため。
それが叶わず、今は目の前にいる父になってくれた人を将来楽を…と。
実際、修兵との力の差は大きいだろうが。
それと、自分みたいな悲しい思いを小さな子どもがしないためにもと思った。
自分は修兵が手を差し伸べてくれたから、今がある。
でも中にはそうでない子もいたかもしれない。
家族を失って泣き続けないようにしてあげたい。

「すぐにでもって思うけど…ニ三日は自宅待機だろ。恐らく」

「?」

(こいつの配属先を巡って揉めそうだからな…)

厄介者とみなして揉める。
ではなく、自分の隊によこせという争いが。
できれば九番隊で引き取りたいものだが。
適性とかあるだろうが、どうやって決めるのだろうか。

「修兵?」

「お前、九番隊配属じゃ嫌か?俺ももいる…それが一番良いと思うんだが」

「できれば九番隊以外で」

「なんだよ、それー」

「なんか守られているみたいで嫌だ。それに周りもいい顔しないと思う」

甘やかすつもりはないのだが、そう勝手に見られてしまうものだろうか。

「俺、修兵の息子ってだけで6年間好き勝手言われていたからな」

「なんか傷つくな、その言葉」

「俺が筆頭だというのも、修兵の息子ならできて当然。みたいなさ…父親が優秀だっただけにさ」

褒められているのだろうか、少々照れ臭い。

「修兵がすごいってのは前から知っていたけどさ」

「そ、そうか?」

何息子の前で照れてんだと自分で自分に突っ込んでしまう。
だが学院時代の成績を比べると自分よりもの方が優秀だ。
なにせ、初歩の鬼道ならば詠唱破棄できてしまうほどだ。

「あー…くれてやりたくねーなー、他所の隊になんか。なんか嫁に出す親の心境ってこうなのかー」

「……馬鹿じゃねぇの、修兵。なんで嫁なんだよ」

ちょっとその感覚は違うと思う。

「大体、嫁がって言うなら、撫子を見て言えよ」

「うーん…チャラついた男に持っていかれるのは嫌だな。その時は!真萩と3人で絶対阻止するぞ」

「くっ……あははははは。馬鹿だ。親馬鹿すぎる」

は腹を抱えて笑い出す。
笑うなと修兵はの頭をくしゃくしゃ撫で回す。
だが、少しは元気が出たようだと安心はしてしまう。

「今回は自己完結しようとしたが、また何かあったらちゃんと俺に言え」

「修兵」

「どうせ、俺に頼むのが恥かしいとかカッコ悪いとか思ったんだろ?」

「そ、それは」

の首に腕を回す修兵。

「お前の情けない姿なんざ、もう何十年も見てんだ。今更カッコ悪いとか言ってんな、阿呆」

「う、うるさいな」

「泣き虫息子は今も健在のようだから、お父さんの胸で泣かせてやるぞ」

「泣くわけねーだろ!」

傍から見れば何をじゃれあっているのだろうかと思えるだろう。
二人を知っている人が見れば、「本当に親子仲いいですねー」と微笑ましく笑われるかもしれない。

「ん?」

修兵の前にひらりと地獄蝶が舞い降りた。

《修兵!臨時隊首会だ。すぐに来い》

拳西からの呼び出し。ああ、案外早くに来たなと修兵は後頭部を掻く。

「修兵?」

「長い戦いになりそうだな」

「た、戦いッて!?」

修兵はニヤッと笑う。

「そりゃあれだ。君争奪戦の始まりだ」








やっぱりこの親子は書くのが楽しいです。
奥さんいるのに、奥さんより息子を可愛がっているようば父親修兵にしてしまってどうかとも思うのですが(笑)
息子君の能力に関しては日番谷君の時のようなものだと思ってくださればいいかなと。
一応火炎系能力らしいですよ、校舎一部を全焼させているので(笑)
08/06/07
原作が最終章に入って、ちょいちょい設定が変更になったので。それにともなってこちらも変更。
拳西君が隊長の9番隊です。
12/07/22再UP