ドリーム小説
買い物を済ませ、店を出る。
双子は恋次に本を買ってもらえて上機嫌だ。

「恋次。今晩来る?」

「んーどうすっかなぁ〜」

「何今更遠慮してるわけ?俺がいなくても入り浸っていそうなのに」

酷い言い草だなと恋次は口元が引きつる。

「バーカ。俺だってそれなりに遠慮してるっつーの」

たまには夕食にお呼ばれするが、がいた時ほどではないらしい。
奥さんに悪いし、子どももいるから酔うほど飲むこともないし。
修兵と飲むのも専ら外での方が多いのだ。
一つ進歩したというか、以前は恋次が檜佐木家まで送り届ける羽目になるくらい
修兵は飲むのだが、今はそんなことなく一人で帰るようになったそうだ。

「ふーん。知らなかった」

「まあ、一々話すことでもねぇよな」

「じゃあ恋次は来ないということで」

「待て待て待て」

じゃあねと背中を向けるの肩をしっかり掴んだ恋次。

「お邪魔させていただきます。夕食はぜひ君の作ったものが食べたいので」

急に丁寧な口調になる恋次。

「………」

「吉良もお前に会いたいと思うしな。二人で行くからよ」

「二人で?まあいいけどさ。俺もイヅルには会いたいし」

イヅルが忙しいのは相変わらずのようであるし、中々会えないでいるのでちょうどいい。

くーん。俺は?」

「恋次は結構ちょくちょく会ってる気がするから」

町中で見かける回数が多い。

「その反応嬉しいんだか、なんだかビミョーだなぁ…ま、いいか。じゃあ今夜行くからよ」

そう言って、恋次と別れた。





【日向ぼっこが好き】





家に着くとドッと疲れが増した。
行きよりも、帰りの方が双子は元気が良かった。
普通は逆だろ?帰る頃に疲れるものだろう?と思ったのだが、双子は元気にあちこち走り回った。
そっちは行くな!あっちは危ないだろう!
何度そんな注意をしたのかわからない。
は両手が荷物で塞がっていたので、追いかけるしかなかったのだ。
なので、帰りは行きの倍の時間がかかった。

とりあえず、夕飯のしたくはもう少し落ち着いてからにしようと思う。
双子の元気はまだまだ増しているから。

(日中保育所にいるって言ってたな…そりゃ一日遊び回る体力はあるよな…)

居間でごろりと寝込んだ。
自分だって体力がないわけじゃない。寧ろ有り余っている。
だけど、精神的に疲れている。
双子の相手もそうだが、すぐには緊張が解けていないようだ。

「カッコ悪ぃ」

すごく自分が。
色々なことに。
ガキ臭い感情に逃げようとする気持ちと、このままじゃいけないだろうという気持ち。
色々ぐちゃぐちゃだ。
家族で暮らすより寮生活を選び早5年。
直前までクズっていたのだ、一日やそこらですぐには気持ちに蹴りがつくはずがない。

「俺のこと嘗めてかかるなよ?何年お前の父親やっていると思ってんだよ」

多分、きっと修兵は気づいているだろう。

「いつでも話ぐらい聞いてやるけどよ。そういう話は多分、先輩とすべきだろ?」

黙ったままではダメなのだろう。

「あんま、変に考えるなよ?お前の考えすぎなんだからよ」

「そうだよ!にはあたしがいるからね!」

考えすぎかもしれない。
昔も考えすぎて修兵と一度大喧嘩したこともあったわけだし。
その時イヅルに、馬鹿だねって笑われた。ちゃんと言わないと伝わらないよと。

「ちゃんと修兵と話すかー」

自分から歩み寄らないと。修兵が無理矢理聞き出してくれるのを待っているわけには行かない。
もうそんなに子どもじゃないのだ。
子どもじゃなくても、修兵との差は大きい。
どんなに長い年月を過ごそうが、きっと修兵から見れば自分は子どもなのだ。

「……ぐはっ…お、お前ら…」

仰向けになっていたの双子が飛びついてきた。

「「ーあそぼー」」

「遊ばない」

「「あそぼー」」

今考え事していたというのに。
遊ぼう。遊ばないのやり取りは延々と続いた。



***



は今どうしているのかな?と心配になったやちるは檜佐木家にやってきた。
が寮に入って以来、ほとんどこの家に来ることがなかった。
日番谷も同じだ。元々修兵とは仲が良いというまでの付き合いではない。
同じ副隊長だったから、その頃の自分は酷く幼くて好き勝手やっていたわけだし。
隊長であった日番谷も同じだろう。
だけどと出会ったから、なさそうだった接点ができた。

「いっちーも来れば良かったのに・・・」

浮竹邸でのんびりとは行かず、剣八に追い回されているオレンジ色の髪の青年。
一緒にと思っていながらも、を独り占めできるチャンスなので半分は一人で良かったとも思っている。
は自分には話さずとも、彼には色々話しこんでいるらしいから。
きっとライバルはいっちーに違いない!
そんな話をされても二人とも嫌そうな顔をするだけだろう。
乙女心で考えるならば、不安になるものだろう?

ー?」

縁側の方からの霊圧を感じたので、ひょこっと覗き込んだやちる。
玄関から入らず、庭から入り込む。

「……おー……やちるか…」

縁側に腰掛けている
心なしか疲れているように見える。

「どうしたの?なんか疲れてる?」

「あー疲れた…」

疲れたから休憩というところだろう。
そばに盆が置いてあり、お茶と菓子が置いてある。
やちるはの隣に座る。

「なんで、疲れたの?」

「双子の相手は疲れる」

「へぇ、双子ちゃんの世話が見てたんだ」

見ているってほどではないとは答える。
双子の「遊んで攻撃」に結局負けてしまい、お絵かき、お馬さんごっこ、玩具などなんか様々な遊びをさせられた。
その後で、夕食の仕込みもしたし、洗濯物も取り込んだ。
いつも通りの家事をしてしまったわけだ。

「俺さー…つくづく自分が子どもっぽくなかったんだなと思った」

「なに、それ」

やちるは笑う。
笑い事じゃないとは拗ねる。

「だってさ。遊んでといわれて、何したらいいのかまったくわかんなかった」

周りは大人ばかりで、子どもで遊ぶようなことはほぼなかった。
いや、友達はいた。
いたけど、お絵かきなどしなかった。
カードを集めたり、面白そうな本を回し読みしたり、その程度だ。

「それを言ったら、あたしもそう大差ないと思うけど?」

気づいたら死神やっていたような感じだ。

「そうかぁ?まだやちるの方が子どもっぽいさ」

「そうかなぁ…自分じゃわかんないよ」

「自由奔放じゃん」

「なんかワガママって言われているような気がするー」

少しだけ頬を膨らますやちる。
そんなことないとは笑った。

「それで、双子ちゃんたちは?」

「あっちで昼寝してる。この時間はいつも昼寝の時間らしい。おかげで夕飯の仕込みできたからいいけどさ」

双子は隣の部屋で静かに寝ている。
だから、今ようやく一人でのんびりしていた所だ。

「夕飯。が作るの?」

「ああ。なんか…今日ぐらいはって思ってさ。やちる食べていくだろ?」

「え!?あたしの分もあるの?」

驚くやちるになんだよとは呟く。

「やちるがコロッケ食いたいって言ったんじゃないか」

「言ったけど、いいの?」

「なんで今更遠慮するかなー。どっちにしても今夜は恋次とイヅルも来るし、いいんじゃね?」

3人分大目に作ったのだから。

「まあ…来る気ないなら別にいいけどさ」

「た、食べる!のコロッケ久しぶりだもん!」

少し前にお昼にお好み焼きを作ってもらったが、あの時だって最初にリクエストしたのはコロッケだ。

「そんなに美味いものかわかんねぇけどな」

「美味しいもん」

「ふーん。そんなものかな…」

自分じゃわからない。でも、食べてくれた人たちが喜んでくれるのは悪い気はしない。

「………」

?」

朝から色々ありすぎて疲れた。
一息つけたと思うと急に眠気が襲ってくる。

「やちる…仕事は?」

ぼんやりしながらが聞く。

「え?あ、うん。平気だよ。ちゃんとやることやってきたから」

「偉くなったもんだなー。斑目さんに押し付けなくなったんだー」

「そ、そうだよ」

今でもたまに押し付ける事はあるが。

「じゃあ、すぐに戻らなくても平気か…」

「うん。平気だよ。あとで一度戻らないといけないけど…?え!?」

の体が傾き、やちるの肩に寄りかかってきた。

「ねむい…少し寝かせて…」

こんなこと初めてではないか。やちるは心臓が跳ね上がる思いだ。
でも、断る理由はない。

「いいけど、その体勢じゃ余計に疲れちゃうよ…はい、膝貸してあげる」

「…うん…悪い」

は素直にやちるの膝に頭を乗せ横になった。

「……ー寝ちゃった?…」

「………」

反応がない。すぐに眠りに落ちてしまったようだ。
やちるは笑みが零れてしまう。
こんなこと初めてだ。
いつも絶対、誰かに頼るという事をしないが、自分に無防備な部分を見せてくれた。
のそういうところを知っているのはきっと修兵だけだ。
それはこの先もきっとやちるが敵う事はないような気がしていた。
自分にとって剣八が絶対の誰にも変えられない存在ならば、にとってのその存在は修兵だ。

「あたしたちって…結構似たもの同士なのかもね」

そっとの髪を撫でた。

「でも、無理しちゃダメだよー?はすぐ我慢するから。あと気にしすぎ」

が寝ているので答えるわけないのだが、やちるは続ける。

「修ちゃんとちゃんのこと。今でも大好きなくせに遠慮してさ。この前の話、二人が聞いたら悲しんじゃうから絶対言っちゃダメだよ?
いっちーも……はやめて。にはあたしって強い味方がいるんだから!」

ここであえて彼のことは伏せておく。
自分がにとっての一番になれるようにと。
ごめんね、いっちーと謝りながら。

「でも、気を遣って疲れちゃったから、今寝てるんだよね」

やちるにならば肩が借りれると思って。

「お疲れ様。

好きな人とこういう時間を過ごすのもいいものだとやちるは思うのだった。



***



夕方、帰宅した修兵とが見たものは用意された食事と、にかまってもらおうとしている双子の姿だった。
とりあえず、子どもたちの関係は悪化することなく良好のようなので安堵する。

「おかえり。メシの仕度しといたからさ」

「ありがとう。君。今日一日疲れたんじゃない?」

がすぐに食べられるようにと手伝い始めた。
コロッケだけは揚げたてがいいと思って今から揚げるところだったらしい。

「まあ…確かに疲れた」

「「ー」」

「煩い、あっち行ってろ。揚げ物する時は近づくな」

足元にまとわり着く小動物を叱る
は笑いながら子どもたちに修兵の下へ行くように告げた。

「久々に君の料理が食べられて嬉しいな」

「喜ぶほどだとは思わないけど」

「明日は非番だから今日みたいに面倒かけることないから、ゆっくりしててね」

「…うん」

そうか、は非番か。

「修兵も?」

「ううん。私だけ」

「そっか」

少しチャンスが出来たと思った。

「うん。美味しそう〜やっぱり君には敵わないかも」

揚げたてのコロッケ。崩れることなく円形のそれから湯気が出ている。
のコロッケは小判型ではなく、丸いもの。
なぜ?といわれてもわからないが、自然とそういう形に作ってしまうらしい。

「そんなことないって…大げさ」

「大袈裟じゃないわよ。だって、君の愛情がたっぷり籠められているんだもん」

カクンと体が傾きそうになった。
笑顔で何言ってくれるんだ、この人は。

「私だって沢山籠めているけど、君のお父さんに対するそれには敵わないんだもん」

「……あ、あのさ……」

「ん?」

「すっげー気色悪い」

がドン引いているのがよくわかる。
でもはかまうことなく嬉々として語る。

「昔からそうだもん。お父さん大好きってのがすごく出てて」

「ちょ、ちょっと待った!もう言わなくていいから!こんなの他の誰かに聞かれたら…」

「他の誰かって誰だ?」

ニタニタっと口角を上げている修兵が立っている。
双子の相手はどうしたというのだ。

「しゅ、修兵!?え、いや…」

「照れることないのにな?」

「そうですよね」

夫婦そろって何を言い出すのだ。
修兵だって、面と向かってそんな事を言われれば嫌なはずなのに、どこか楽しそうだ。

「「おとーさん。なにしてるのー?」」

双子までも顔を覘かせる。
これ以上余計なことを言われてたまるかと揚げたてのコロッケを皿に盛りつけ双子に見せる。

「ほら、早く食いたいだろ?」

「「わー!すごーい!」」

「だったら、そこのアホ親父連れて行け」

「「あほおやじ?」」

、お前な!子どもになんてこと言うんだ」

だがは無視を決め込む。盆を持って居間へと移動する。
今日は客も来るので、居間での食事のようだ。

「よーし。俺がお前らに昔のアホ親父の話をしてやろう。恥かしい過去暴露だ」

よく意味がわからない双子だったが、要は父の昔話が聞けるらしいと素直にについていく。

「修兵さんの恥かしい過去?」

「いい。聞くな」

「そうですか?ちょっと興味ありますけど」

何を話そうと思っているのか知らぬが、それは絶対阻止だ。
奥さんの前にかっこ悪いところを今更見せられないだろうから。
その晩の夕食は約束通り恋次、イヅル、やちるが訪れとても賑やかなものになった。








ぐるぐるしつつもいい感じw
08/05/05UP
12/07/16再UP