ドリーム小説
。大丈夫かなー」

「大丈夫だって、さっき自分で言ってたじゃねーか」

浮竹邸にて。さきほどまで一緒にいたは修兵と帰っていった。
の友人である彼とやちるが一室での話をし始めた。

「いっちーは全部知っているんだ?」

「全部っていうのがどこまでなのかわかんねーけど…まあそれなりに」

やちるが気づいたの不安を彼も気づいたのだから。
やちるは少し面白くないと頬を膨らませる。

「もしかして一番のライバルはいっちーかも」

「はあ?なわけねーだろうが」

呆れて物も言えない様子にやちるが余計に頬を膨らます。
乙女心は複雑なのだ!といきり立ってしまうし。

「なに揉めているんだい、二人とも」

浮竹がくつくつと笑っている。
内容が内容なのでお互い浮竹には教えなかった。
その代わり浮竹に別の話題を提供する。

「ね。うっきーもといっちー狙ってる?」

「お、おい!」

何を突然と彼は思うも、すぐさま何を狙っているのかわかった。
わかったから後頭部を乱暴に掻いた。
そういう話は本人がいないところでやってくれと。

「そうだなーできればウチに欲しいところだな」

どうかな?と彼に笑みを向ける浮竹。

「ダメー。もいっちーもうっきーにはあげないからね!二人ともウチに来るんだから」

「俺はともかく、がそれ嫌がるだろ」

彼自身は十一番隊は嫌ではない。
性格や自分の戦闘スタイルを考えると一番適しているのは十一番隊だと思うから。
だがは違うだろう。
前から本人が嫌だと公言しているし。

「いっちーひどいー」

「って言われてもな」

「じゃあ君はウチが貰おうかな」

本当は二人とも引き受けたいのだが、で手を打とうと勝手に決めてしまう。

「どうでもいいけど…俺らまだ一年あるんで…勝手に決めないでくれよ」

しかも護廷隊に入れるかは未定なのだから。





【引っ掻かれた】





うわーすげー緊張するんですけど…。と数分前までは思っていた。
思っていた。
そう過去形だ。
緊張するのが馬鹿馬鹿しくなったとかではなく、自宅前に到着した時そんなものが吹っ飛ぶものが目の前に入った。

「………」

「どうした?

「………あ、表札ちゃんとある」

なに、ここどこ?
え?ここが俺んち?
いつのまに?

呆然としてしまった。
だって知っている家がなくなって新しい家が建っていたのだから。

「あれ?言ってなかったか?」

「聞いていない…まあ、別にいいけどさ…」

ほぼこちらから連絡いれることなどなかったのだから。
でもまさか数年で改築されているとは思わなかった。
どことなく以前の家より広く大きいような気がする。

「ほら。いいから入れ」

どんと修兵に背中を押されてしまう。

「ただいまー。今帰ったぞー」

玄関を開けて修兵がスタスタ上がっていく。
は急に薄れていた緊張が湧きあがってしまう。

「あ。ちょっ」

ちょっと待てと修兵を引きとめようとするが、子どもの声に遮られる。

「「おかえりなさーい。おとーさん!!」」

「おう。ただいま」

キャーと父親に抱きつく双子。
は一歩引き下がってしまう。

。何してんだよ。早くあがれよ」

「あ、ああ…」

「「?」」

なんかもう。これだけで辛くなってきた。
ちょっと浮竹の邸に忘れ物したとか理由をつけて逃げてしまおうかと考えてしまう。

(あの、双子はあの時の双子だろ?もう大きくなってやがる)

双子の双眸がじっとこちらを見つめているし。
5年という月日はそんなに長くないと思っていた。
いや、死神になってしまえば、ある程度成長すればここではそうなのかもしれない。
だが、目の前にいる双子を見れば、やはり5年の月日は大きく感じる。
双子がを知らなかったように、の中の記憶では双子はまだ赤子の姿だった。

「「おとーさん。この人だれ?」」

双子はを指差す。

「誰って。お前らの兄ちゃんだ。やっぱわかんねーか」

双子は顔を見合す。

「はぎ。写真と違うよ」

「うん。写真のは小さかった」

顔を知らない兄とやらをアルバムで確認したのだが、その中の兄はもっと幼かった。
そばにいる兄はどうみても大きな大人だ。

(なんだ?人のこと呼び捨てかよ、このガキどもは…)

自分が義父に対して常に呼び捨てだったのは置いといて、自分が同じことをされちょっと腹を立ててしまう

(修兵のガキだから、性格もそう大差ないんだろうな…)

しかも何気に失礼だ。

「ま。仕方ねーな。帰ってこないお前が悪い」

修兵にそういわれてしまうも、は目線をそらす。

「別にいい」

弟妹がいても、今まで何かをしていたわけでもない。
兄らしい兄。などと思われなくて十分だ。
この子らと、自分とでは決定的に違うものがある。
大人になった今、子どものようにそれを素直に口に出すつもりはないが。

(マジで逃げるかな…俺、居辛いや)

やちると約束はしたものの、やはり卑屈に考えてしまう。
同時に湧いたのが。

(死神になったら、益々よりつかなくなるだろうな)

住まいも寮から隊舎に。
九番隊に入隊すれば嫌でも修兵とには会うだろうが、きっと配属先は別だと思う。
そうすればほとんど会わない気がする。

「あのさ、俺」

はやっぱり逃げてしまおうと決め込んだ。
だがまたも声は遮られる。

「お帰りなさい」

「おう。ただいま」

がにっこり笑って出迎えた。
修兵との光景には小さく息を漏らした。

「お帰りなさい、君。大きくなったわね」

「…そうかな?」

「さ。早くあがって。いつまでもそんなところに居てもしょうがないわよ?」

の後ろに回り背中を押した。

「いや、俺さ」

君が帰ってくるから腕によりをかけて頑張ったのよ?」

今日の夕食はが好きなものばかりだとは言う。
料理の腕前はまだまだ君には敵わないけどと付け加えて。
荷物は二階の部屋に置いてきてねと言われて二階を目指す。
目指すという言い方は可笑しいが、何もかもが変わってしまっている家だ。
気分的にはそう思ってしまう。

「真萩。撫子。お兄ちゃんを部屋まで連れて行ってあげて?」

「「はーい」」

母親に言われて素直に返事をする双子。
は双子の後について階段をあがった。

「「………」」

何室かあるうちの南側がの部屋のようだ。その隣が双子の部屋であるようだ。
ここだと指差す双子。
は小さくありがとうといい、部屋に入った。
今日干したのだろう布団が一組が部屋の中央に置かれていた。
それ以外は特にコレといって見栄えがする部屋ではない。
机に本棚。箪笥に押入れ。普通の部屋。
モノがないだけに味気ない部屋だ。

「はあ…」

ここが実家だと言われてもピンと来ない。
何の感想もない。
たった5年でここまで変わるものなのか。
荷物を置いて、は窓を開ける。
そこから見える風景は何も変わっていない。
変わったのはこの家か?

「違うな…変わったのは俺だ」

寄り付かなかった自分が、家と家族を遠ざけたのだ。
深い溜め息が出た。
窓を閉め振り返れば、何か視線を感じる。

「?」

「「………」」

双子がじーっとこちらを伺っている。

「………?」

「「………」」

「何か用か?」

ついぶっきら棒に言い放ってしまう。
だが双子は恐れることなくきっぱり言い切った。

「「、わるい奴?」」

「はあ?」

「「おとーさんとおかーさんをだましたらやっつけるからな!べーっだ」」

勢いよく戸を閉められた。

「なんだ、ありゃ…かわいくねー」

少々呆れてしまうが、いや、いい。
お互い初対面に近いのだ、双子の反応もしょうがないだろう。
見知らぬお兄さんとでも写っているのだと思う。
自分が双子を見て困惑したぐらいだ、双子も同じだろう。

「決めた。明日の朝一で帰る」

歩み寄るという道を蹴り飛ばした。
あとでやちるたちに色々言われるだろうが、知るか、もう。



***



久々に一家揃っての夕食。
楽しいものになると普通は思うだろう。
だが、双子は面白くなかった。
両親の愛情は全て黙々と食べている「」に注がれているのだから。
学院生活はどう?
困った事はない?
あ、これも食べて。
あれこれ甲斐甲斐しく。

「おかーさん。おかわりー」

真萩が茶碗を母に向ける。

「なこもおかわりー」

「あらあら二人ともよく食べるわね」

双子の茶碗にご飯を盛る
すぐさま、へと視線を向ける。

君は?まだおかわりあるわよ」

「あ…食べる」

本当はさっさとこの席から逃げたいと思っただったが、本当にが自分の好物ばかり用意してくれていたので、逃げるに逃げられなかった。
そういや、自分は食べ物に関しては現金な性格をしていた。
修兵との初めての大喧嘩でも、沢山泣きまくったのに浮竹のところで親子丼をしっかり食べた。
今もタケノコとキノコの炊き込みご飯が本当に美味い。

「残ったら、おにぎりにしようか?明日の朝のお茶漬けでもいいけど・・・あ、でも残り物は良くないわね」

「いいよ。残り物でも。美味しいから」

「本当?君に言ってもらえると嬉しいわ。君の方がお料理上手なんだもん」

ニコニコと純真すぎる笑顔を向けられてしまい、は居た堪れない。
毒気が抜けていくというか。

「そんなことないよ」

「寮生活だとほとんど料理することないんじゃない?」

「いや、たまにする。食堂の厨房借りて。本当にたまにだけど」

奥さんと息子が楽しそうでいいなぁと修兵の目には映っている。
昔からこの二人は仲が良かったが。

「だったら、週末ごとにメシ作りに帰ってこいよ」

「はあ?バカじゃねーの。誰がするかよ。そんな面倒なこと」

六回生にでもなればもっと忙しいだろうに。
週末ごとに帰省など面倒臭い。

「いいじゃねぇか。お前のメシ食いたいって阿散井達も言うんだよ」

「まだ、んなこと言ってるのかよ、恋次は」

「俺も食いたいから。作りに帰ってこい」

「断る。奥さん目の前にしてよく言えるな、そんなこと」

「あら。いいのよ?私としても嬉しいし」

夫婦揃って何をいうのだ。
なんとなく、寮生活を止めて実家から通えと遠まわしに言われているようだ。

「俺は嫌なの。だいたい、ここの台所はもう、さ…主婦のものだろう。俺は主夫じゃねーの」

一瞬詰まった。
のことを何て呼べばいいのか迷った。
以前みたいに「姉ちゃん」か、お義母さんか。
二人が結婚した当初は何て呼んでいたっけ?薄情な話思い出せない。
かと言って、さんとも呼びにくい気がする。

「ウチに帰れば主夫だ、お前は」

「誰かだよ…」

何事もなかったかのように黙々と食べ続けた。
ただ、修兵がに心配そうに目を向けていた。
が自分たちに対し、壁のようなものを張り出していたことに気づいたのだ。

(バカ野郎が。長年父親やっているのを嘗めるなって言っただろうが)

家に一歩踏み入れてから、が戸惑っているのがわかった。
色んなもの全てに。
それをなんでもない顔をして進めた自分が悪かったのだろうか?




その晩。双子の部屋。
布団を並べて寝ている双子。ちょこんと掛布から顔を出しこそこそと話し込んでいる。

「やっぱり、はわるい奴だ」

「わるい奴だね!」

「「おとーさんとおかーさんを独り占めしてるもん!!」」

幼心に、どこかいつもの家ではない雰囲気を感じ取ったのかもしれない。

「今も3人であそんでいるし」

「あたしたちは早く寝ろって。ずるいよね」

親子で晩酌だー!と無理矢理を捕まえた修兵。
につまみを用意してもらい、大人たちは楽しんでいる模様。
それが面白くなくて、双子はをさらに悪者だと認定したようだ。




。明日なんだけどな」

夫婦だけになった時、修兵がにあることを打ち明けた。

「大丈夫でしょうか?」

それを聞いたは少しだけ不安になる。

「大丈夫だろ。それに元々明日は出なきゃならねーだろ?」

「そうですけど」

「預ける相手が変わっただけの話だ」

それはそうだろうが。
だがの不安は晴れないようだ。

「悪いな。俺がしっかりしとかなかった所為で…」

「そんなことないです。私の方こそ…」

の所為じゃないから。それだけは確かだから、気にするな」

昔からアイツは変なことで我慢するのだ。
しかも相手に伝わりにくいからやっかいだ。








引っ掻かれたのは全員。でも、知らぬ間に家が建て替えてあったら誰でもショックだろうなw
08/04/29UP
12/07/16再UP