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恋ごごろ。
去年初めてバレンタインと言うものを知った。 深い意味などは子どもである自分にはわからないだろうから。 いつもお世話になっている意味を込めて親しい人たちに手作りで贈ってみた。 今年はどうしようかと思ったのだが。 あれから色んなことがあって、色々思うこともあった。 なので、少々お節介を…いやいや、こうなればいいなというきっかけを作ろう思った。 「はい。君から頼まれたもの」 十番隊隊首室で乱菊からあるものを受けとる。 「ありがとう、菊ちゃん」 「お礼なんていいのよ。最初に代金も貰ったし、それに」 「ちゃんと約束するよ。菊ちゃんのご要望のもの作るから」 「わー。ありがとう〜君は良いお嫁さんになるわよ〜」 むぎゅうっと強く抱きこめられた。 世の男性達が羨む豊満な胸を押し付けられているものの、にはただ息苦しいとか感じていない。 「き、菊ちゃん。苦しぃ〜」 「あ。ごめーん」 呵呵と笑う乱菊。 大袈裟に呼吸を整える。受け取ったものを抱える。 「じゃあ。俺帰る。ありがとうね、菊ちゃん。冬獅郎も期待していろよ〜」 手を振って隊首室を出て行く。 片肘ついて呆れている日番谷がぽつり呟く。 「男友達から手作りチョコを貰うってどうなんだか…しかも期待しろって…」 女性同士はよくやるようではあるが。 その呟きに乱菊は笑う。 「いいじゃないですかー。君が作ったものなら美味しいんですよ?」 それはそうだが。 *** 自宅に到着し、居間で乱菊に頼んだ品物を開く。 「おーすげー」 ちょっと分厚い料理本(現世発売)お菓子・焼き菓子とケーキ特集。 という名のもの。 表紙にあるフルーツケーキだろうか?とても鮮やかで美味しそうだ。 「菊ちゃんが頼んだのは…確か…」 ペラペラと早速本を開く。 「あ。これだ。ちょこれーと…ぼんぼん」 今年はちょっと去年よりも力を入れてみようと思ったバレンタイン。 だが自分の為ではない。こうなったらいいなと思う方向へちょっと頑張ってみようと思ったのだ。 そのため、瀞霊廷内の本屋、九番隊隊舎で販売中の本などを立ち寄ったものの、どうもピンとこない。 さて、どうしようかと思っていたとき乱菊とばったり会った。 これから現世に出張だと言う彼女にお土産は何がいい?と聞かれ、料理本のことを頼んだ。 彼女は結構現世に足を運んでいるようなので、色んな現世情報を持っている。 身振り手振りでこんな感じの!とが説明し、乱菊にはちゃんと通じた。 土産ではなく、ちゃんとこれぐらいの予算でとお金を渡した。 当然現世の通貨は持っていないが、その辺は乱菊がちゃんとしてくれるとのこと。 そして買って来る代わりに、乱菊が食べたいと言ったものを作る約束をしたのだ。 最初からちょっとハードルが高いような気もするが、これも今後の為だと気合をいれた。 「おー…結構大変だぞ、このぼんぼんっての」 事細やかに説明しているので、読みながらは何度も頷く。 そしてお世話になった人達用に何を作ろうかページをめくる。 これもいいな、あれもいいなと選ぶ作業がなんだか楽しくてしょうがない。 「女の人は、貰ってもらえるかとか色々考えるんだろうなぁ」 ただ楽しいと思っている自分と違って大変だと感心する。 「姉ちゃん…結局去年渡した人とどうしたのかな」 ちょっとした機会があって、彼氏、付き合ってる人はいないという話は聞いた。 チョコレートはバレンタインに渡したようだが。 相手が誰というのはは知らない。 「ただいまー」 スッと襖が開いた。 疲れたという顔をしている修兵。いや、うんざりしている。 「お邪魔しまーす」 その反面元気のいい声がこだまする。 どうやら恋次が一緒に来たようだ。 「おかえりー」 足を揺らしながら本に夢中の。 修兵は少々ムッとする。 「お前な。お父さんが帰ってきたのに何だその態度」 むぎゅっとの背中を軽く踏む。 「ぎゃー!な、何するんだよ。修兵の馬鹿!でぃーぶいだ、でぃーぶい!」 「あ?なんだ、それ」 むくりと体を起こすし修兵を見上げる。 「菊ちゃんが教えてくれた。どめすてぃっくなんとかーっての」 ドメスティックバイオレンス。つまり近親者による家庭内暴力のことだ。 「ドメ…DVのことか?あの人子どもに何教えてんだよ…」 俺がそんなことするような奴に見えるのか、あの人には…。 がっかりである。 そもそも何故子どもにそんな話をしているのだ。 恋次は大爆笑しているし、物凄く面白くない。 「お前な、ちゃんと意味を覚えてから使え。近所でんな言葉使うなよ」 「えー…効果抜群だって菊ちゃん言ってたー」 色んな意味で色んな効果は確かに出てくるが。 「頼むから、あの人から変な言葉覚えてくるなよ…せめて浮竹隊長から教わって来い」 「行儀作法だったらうちの隊長の方がいいっすよ」 面白いものが見れたと上機嫌である恋次。 「あーなんかそれもいいよなって思い始めた」 「別に俺行儀悪くないぞ」 「一般常識を覚えて来い」 「修兵に言われたくない」 あー言えばこー言う。生意気盛りか? 「で。何熱心に読んでいたんだ?」 「内緒ー」 は本を抱えて二階へと行ってしまう。 「。お父さんは寂しいぞー」 「情けないっすねぇ、先輩」 「いつかお前にもわかるぞ、この気持ちが」 もし幼馴染を嫁にもらうならば、手強い舅がいるのだから気をつけろよ。 なんて仕返しに恋次に言っておいた。 *** 「姉ちゃん」 「あら。君」 スーパーで買い物をしていた。そこでと出会った。 休憩時間に食べる菓子を買いに来たそうだ。 「姉ちゃん、今年のバレンタインはどうするんだ?」 いきなり直球勝負だ。 「い、いきなりだね…んー…どうしようかな。14日は私非番なんだよね」 「休みなの?」 「うん。だから…その日に渡せないし、かと言って、その前日ってのもなんかなぁ」 今年はいまいち乗り気でない様子だ。 「去年渡した人はどうしているの?」 の頬が微かに赤くなる。 「わ、渡していないの…直接」 子どもに何言ってんだろうなと恥かしさが増してくる。 「え。じゃあその後って…」 「多分私からだってのは知らないと思う…それに今年はもっと渡しづらいかな」 これはその相手と上手く行っていないと言うことだろうか? (副隊長、甘いもの嫌いだっていうし…去年ほとんど受け取ったもの皆で分けたって言うし…) はで別の事を考えている。 ちなみに、彼女の好きな人が自分の義父であるのをはまったく気づいていない。 さらに言うならば、修兵が彼女に気があることもだ。 それぞれ不思議なくらいに気づいていない。 「休みで他に用事がないならさ、俺と一緒にチョコケーキ作らない?」 「え。君と?」 「そう。今年はちょっと大掛かりなものだから助手が欲しいんだ」 助手なんてわざとらしく大袈裟に言ってみた。 「駄目?」 下から目線で子どもにお願いされると嫌と言えなくなってしまう。 (どうせ。渡せないと思ったからいっかぁ) 少し考えつつも悲観的なものしか浮かばない今の自分には、その方がいいかもしれないと頷いた。 「本当!?やった!」 「ただ私が助手と言えるほど役に立てばいいんだけど」 その辺が心配だ。 年下の子どもとはいえ、彼の家事能力は自分を上回っている。 だがは心配ないとあっさり答えた。 「だって、修兵が姉ちゃんの御節すごく美味かったって言ってた」 「え。副隊長が?」 「お正月にちゃんと用意した姉ちゃんは偉いなって。俺に見習えってさ」 正月に各隊への年賀の挨拶回りで疲れた修兵に昼食として、持参した御節を食べてもらった時の話だ。 「そ、そんなことないよ」 「ううん。俺、期待しているからな」 色んなものに。 含んだ笑みを浮かべながらの。 「あ。ただ。当日姉ちゃんがうちにくることはみんなに内緒な。特に修兵には秘密」 「え」 まだ買い物があるからとは理由も言わないまま行ってしまった。 「ひ、秘密って…いいのかな」 家主に黙ってお邪魔してしまうことに。 *** 2月14日当日。の指定した時間に檜佐木家にやってきた。 今年修兵にチョコレートを贈るのをやめようと思ったのは、のことがあったから。 甘いものが駄目だという修兵。 それでも少しでも感謝の気持ちや自分の想いをこめてチョコを贈ろうと思った。 去年はから応援されてしまったこともあったのだが。 だが、面と向かって渡す勇気がなく机の引き出しに置いてきてしまった。 翌日修兵から何か問われることもなかったが、修兵に贈った他の子たちが怒っている現場に出くわした。 修兵は貰ったチョコレートを他の人たちとわけてしまったそうだ。 無神経だとか色々陰口を叩かれてしまったものの、自分達はまだまだ修兵に相手にされていないと逆に燃える者もいた。 それから、修兵の親戚だと思っていた子どもが実は息子だったとわかって女性陣は更に衝撃を受けた。 は修兵とのやり取りの場に出くわしてしまったので、事の詳細を知った。 だが、他の子たちと違って二人が親子であることに納得してしまった。 義理であるのが不思議なくらいに。 それからこの親子に色々世話になるものの、バレンタインが近づくとちょっとだけ憂鬱になった。 「きっと副隊長はちゃんと受け取ってくださらないのは、副隊長にずっと想う人がいるのよ!」 そんな噂が出始めた。 しかも、それがを産んだ人ではないか。などと。 を引き取る経緯を知っているのはごく一部の者のみ。 更に奥深い所は当人たちしか知らないようだ。恋次やイヅルであっても何があってのことなのかは知らない。 「その女性はもう亡くなっているのよ。それで忘れ形見、唯一残されたあの子を引き取ったのよ」 「もしかすると、副隊長と血の繋がりはあるかもしれないわね」 女同士の妄想というか、想像はすごすぎる。 わからない、知らない部分があるだけでとんでもないことを考えてしまうのだから。 それが事実であるとは思わないが、ただなんとなく。 (副隊長には好きな方いるのかも) などと思うようになった。しかも、よくつるんでいる乱菊を見て彼女、または彼女のような人では?と思った。 それにあの騒動である意味本当の親子になれた修兵とを見ていたら。 今が一番楽しそうで、親子の仲を邪魔したくないなとも思った。 今はただいなくなった東仙の代わりに隊をまとめている修兵の部下として、仕事を頑張ろうと励んでいる。 「姉ちゃん…ぼーっとしてちゃ駄目だぞ」 「ご、ごめんね」 と台所には以外にも数人女性が居た。 「やちる。真面目にやらないなら帰れ」 「やってるよー!」 やちるがに教わりながら一生懸命に湯せんしたチョコレートを型に流している。 「あの。君…これでいいのかな?」 泡立てた生クリームの入ったボールをに見せているのは雛森だ。 「んーとね…桃ちゃんが作っているのはチョコレートムースだよね。だったらもうちょい泡立てたほうがいいよ」 「うん。わかった」 当初はと二人でということだったが、どこから聞きつけたのか女性陣(女性死神協会)が我もと菓子作りに参加してきた。 が講師となってちょっとした料理教室になっている。 「姉ちゃん。姉ちゃんは俺に変わって修兵の分作るんだからボケッとしてんなよ?」 「う、うん…え?わ、私が一人で作るの!!?」 確か手伝いって筈だったのでは? 「元々一緒に作ろうと思ったのに…俺教えるだけで精一杯だもん」 檜佐木家の台所はそんなに広くない。 だから今日はほぼ一日を使ってバレンタインのチョコ作りになってしまっている。 ちなみにそれでもはちまちまと何か作っているようだが。 「殿。後はどうすれば良いのだ?」 ルキアまで居たとは。 「ルキア姉ちゃんは…チョコアイスだったよな。アイスが固まり始めたら取り出してかき混ぜる!んでまた冷凍庫に入れて、しばらく経ったらまたかき混ぜる。これの繰り返し!」 「うむ。わかった」 ガス・レンジ・冷蔵庫に冷凍庫。檜佐木家の台所の物総動員での作業だ。 ただは非番のは良いとして、他の者たちは仕事は大丈夫なのか?と心配になった。 今年は忙しい息子君。
08/02/14UP
12/07/16再UP
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