恋ごころ。




ドリーム小説
く〜ん。ちょっと見て〜」

十三番隊の三席虎鉄清音に呼ばれる。

さん。これで良いのでしょうか?」

八番隊副隊長伊勢七緒。

。焦げてしまった!どうすればいいのだ!」

二番隊隊長砕蜂。

(本当、みんな暇なの?…俺、知らないよ?…つーか料金取ってもいいんじゃないのかな)

なんとなくそう思った。
今各隊はどうなってんの?と直接現状を知りたいような知りたくないような。
それでも。

(みんな誰かの為に一生懸命なんだな)

それが本命か義理かはにはわからないが。

(でもやっぱり…講師代貰おうかな…)

材料はともかく、他はすべてこっち持ちなのだ。
電気ガス水道代がどのくらい跳ね上がるが心配だ。

「できたー!」

大きなハート型のチョコレートを見てやちるが叫んだ。

「あとは、これに字を書くの」

「アイシングだったら、居間でやって。ここじゃ狭いし書きにくいだろ?」

「うん」

には恐怖の対象である剣八にやるのだろう。

「あ。俺、菊ちゃんに頼まれた奴の続きやらなきゃ」

先ほどから皆への指導ばかりで自分の分が疎かになっていた。
でも、一応他の人達の分もちゃんと作ってはいる。

(だけどラッキーだったな。みんなが来てくれたおかげで姉ちゃんに修兵の分作ってもらえたから)

本当は二人で作りましたー。
に手伝ってもらったんだという面を修兵にアピールしたかったのだ。
子ども心にこの人ならば修兵にという思いが強い。
浮竹には焦っては駄目だよ。などといわれ大人しくしているつもりであったが、ちょうどいい時期だった。
少しでも修兵にのことが目に入ってくれればいいだけだ。



***



「あ。檜佐木先輩ー」

午前の執務が終了し昼食にしようかと副官室をでた修兵。
そこに恋次とイヅルが姿を見せる。

「おう。メシ行くなら行くか?」

「はい。ちょうど僕らもそうしようと先輩を誘いに来たんですよ」

三人で食堂に向かう。
今日は日替わり定食でいいかとさほど悩むこともなく決まった。
食べ始めてから恋次が思い出したように口を開く。

「せんぱーい。今年はどうなんすか?去年女子に大顰蹙買ったそうじゃないっすか」

「うるせーな。別にどうでもいいだろう。別にくれって頼んじゃいねぇよ」

欲しいと思う人からもらえているので別にいいのだ。

「そういう阿散井こそ本命からもらえたのか?今日はその本命来ちゃいねぇみたいじゃないか」

「だ、誰もルキアだなんて言ってないっすよ」

「朽木さんだなんて先輩も言っていないよ、阿散井君」

「うっ…そういう吉良こそどうなんだよ」

馬鹿馬鹿しい会話だなと修兵は思ってしまう。
バレンタインがどうとかなんて自分にはあまり関係ない。
今年彼女は非番でいない。
前日に貰えたわけでもない。明日もしかしたらと言う期待もない。
彼女の性格を考えればなさそうだ。

「でも。なんか今日見かけない人多いっすよね」

「?」

「伊勢や雛森とか。他の隊に行くと不在の奴が多くて」

「たまたま非番が重なったんじゃないの?伊勢さんなんて毎日忙しいし」

たまに休みを取らないと大変だろう彼女の場合。

「知っている奴らばかりだからそう感じるんだろ」

そんな日もあるだろうと修兵とイヅルはさほどその話題には乗らなかった。
だけど知らない。
その面子が今檜佐木家を占拠していることに。



***



夕方近くになってようやく生徒という名のお客は帰って行く。
完成したならばすぐに渡しに帰ればいいのにとは思ったが。
そこは女性たち。
ちゃっかり他の菓子などを持ち込みのんびりお茶を始めたのだ。
帰れと強く言えるわけもなく、もそこに混ざってしまった。

「長いことごめんなさいね。今日はありがとう」

七緒が代表でに礼を言った。

「いいよ。俺のほうこそ、沢山ありがとう」

作りにきた彼女たちだったが、個人的にの分をくれたのだ。
今日作ったのは彼女達が本命に渡すものらしい。

「今度またゆっくりお邪魔するね」

「うん。冬獅郎たちと来てよ、桃ちゃん」

バイバイと手を振り彼女たちを見送る。

「さて。姉ちゃん。最後の仕上げしちゃおうか」

「うん」

だけはまだ完成していなったので居残りだ。
最初はだけに作らせようと思ったのだが、思っていた以上に生徒が多すぎた。
そのために彼女は皆の手伝いに回っていた。

台所で最後の仕上げとやらを開始する。
夕方近くになっても夕食の準備をしていない
心配になったが訊ねるが、そこはしっかり者のだ。
すでに出前を注文してあるそうだ。

姉ちゃんの分もあるから」

「わ、私はいいよ。そんな」

「だって、今日一日姉ちゃんを付き合わせちゃったし。みんなが来なくてもそのつもりだったよ」

作っておいたものを冷蔵庫から取り出す。
また別で作っておいたクリームを絞る。

「わ。君さすが。お店にあるものみたい」

「そんなことないよ。俺としてはまだまだ微妙」

自分よりは確実に上手だと思うとには感じる。

「でも将来、料理人になるってのもいいかも」

「え。死神になるんじゃないの?」

「なるよ。それは俺の一番の目標で夢だから。あと約束」

姉ちゃんオレンジの皮摩り下ろしてとおろし金を指差す
は言われたとおりにしながら、の話に耳を傾ける。
は喋りながらもちゃんと作業をこなしている。

「父さんみたいだと思った人と義父さんとの約束」

「お父さんみたい?」

はそれには答えない。
すべて絞り終えるとがすりおろしたオレンジの皮を少しずつ散らしていく。

「完成!オレンジのチョコケーキ!」

小さめのセルクルで10個ほど作った。
1、2個修兵に渡して、あとは自分で食べようとか思ったりした。
あ。にもわけなくては。

「見た目も綺麗だね。副隊長喜ぶよ」

「息子から貰うってどうなんだろうな」

普通はないよなーとは苦笑する。
でも完成したケーキを見て嬉しそうではある。

「副隊長は喜ぶと思うな。だって君が作ったものだもの」

違うとに人差し指を突き刺す。

「俺と姉ちゃんが、二人で作ったものだぞ」

「う、うん」

私も。などと修兵に言ってもいいのだろうか?
息子から貰えるだけがいいだろうにとは思う。
それでも、今年は渡すつもりがなかったから…少しずるいかなと思いつつも便乗してしまおう。

「じゃあ修兵が帰ってくるまでに片づけしちゃおう」

「あ。それが一番大変ね」

すっかり陽も暮れてきた。
外の街灯にも灯りが灯されはじめている。
早くしないと修兵が帰って来てしまうから。



***



「ただいまー」

玄関を開けると、見慣れない女性モノの履物があった。
まさかと少し期待してしまう。

「おかえり、修兵」

居間でさっき到着したばかりだという出前の丼を用意している

「ただいま…なんだよ、出前かよ…」

「しょうがないだろ。今日作っている暇なかったもん、な、姉ちゃん」

台所の方に呼びかける
やはりと内心喜んでしまう修兵。

「す、すみません。副隊長お邪魔しています」

割烹着を身につけたが盆を持ってやってくる。

「い、いや。いい。どうせまたこいつに無理言われたんだろ?」

「そんなことないですよ。今日の君は大忙しだったんですから」

優しくは微笑む。

「…あ」

「突っ立ってないで座れよ…じゃなくて!先に手を洗って来い」

息子にあーしろこーしろと世話を焼かれてしまう。
ちょっとみっともないよなと思いながらもにだったら別に構わないだろう。
洗面所から修兵が戻ると二人は座って待っている。
三人で手を合わせて食べ始める。
にしてみれば、こうなったらいいなという構図なので自然と頬が緩む。
大人の二人はどうなのかなと様子を窺うも、これと言って普通なのが少々面白くない。

(んーシロさんに言われたじゃんか、焦るなって…)

お互いにただの上司部下としか思っていないのかもしれない。

(俺から見ると仲が悪いように見えないし、結婚ってのがいまいちわからないからなぁ)

浮竹に結婚はしないのか?と質問をした時、病弱な自分の世話を頼む羽目になることが嫌だとか言っていた。
好きな人の為にならって思うものではないだろうか?とは思った。
修兵が風邪をひき寝込んだならば、自分が看病をしようと思う。
以前似たようなことがあった時は風邪ではなくりんご病だったので、にうつしたくないと遠ざけられたが。

(俺の思う好きと大人が思う好きって違うんだな…難しいなぁ)

食べ終わってと二人で後片付けをする。
修兵はその間に風呂に入っている。
が洗った食器をが拭いて食器棚にしまう。

「姉ちゃん片づけまで手伝わせてごめんな」

「ううん。いいのよ。今日の私は君の助手だから」

それに夕食まで呼ばれてしまったのだから。

「今日は大変だったけど、楽しかったわね」

「うん。みんなどうしたかな?作った奴ちゃんと渡せたかな?」

「そうね。どなたに渡すのかは知らないけど、上手くいくといいよね」

それでもは去年あまり芳しくない結果だったようだが。
チラっとを見る。

(誰だよ。姉ちゃんの勇気失くすようなことする馬鹿は…)

ぷくっと頬を膨らませたくなるが、その馬鹿がすぐそばにいるのをは知らない。

「あ!そういえば」

「な、なに?姉ちゃん」

急に顔を向けるので驚いてしまう。

「私。君に用意してなかった。チョコ」

「あー。別にいいよ。一緒に作ったじゃん。修兵用に作った奴、あれ姉ちゃんの分も含まれているんだ」

「そうなの?」

「そう。だからそれでおあいこ」

ちゃっかりしているなぁとに笑われる。

「あとさ。一緒に作ったじゃん?そういうのもありだと思う」

「?」

「俺、誰かと一緒に料理するってほとんどないから。修兵って自分でもできるのに、一緒にやってくれないもん」

特技が料理らしいと以前七緒から聴いてはいたものの、その腕前を中々披露してくれない。
お前の為だぞーと言ってやってくれないのだ。
楽がしたいだけだろうと文句を言ってみるも。

「俺よりが作った奴の方が美味いし」

と言われてしまうと仕方ないと諦めてしまう。

「だから。姉ちゃん、また今度一緒に何か作ろうな」

たいした役にもやっていないと思ったのだが、楽しかったと思うのはも同じだ。

「ええ。楽しみにしているね」

やった!とは喜ぶ。



修兵が風呂からあがると、ちゃぶ台に可愛らしい小さなケーキが置いてあった。
すとんと腰を下ろしケーキを見る。

「俺と姉ちゃんから修兵にバレンタインの贈り物だ」

と…から?」

「ほ、ほとんど君が作ったんですが…」

「の割りに…数多くね?」

十個もある。

「あー。だって俺と姉ちゃんの分も入っているし」

「ふーん。ま、いっか。ありがとな」

修兵はニカっと笑った。
じゃあ早速食べるかという時に玄関が開く音がした。

ー」

とやちるの声がする。
は玄関に向かう。

「どうしたんだ、やちる」

夜に来るなど珍しい。
目の前までやってきたにやちるが手を伸ばした。

「はい。にチョコレート」

女の子らしいラッピングされたものをやちるは差し出す。

「え。でも、夕方もらったじゃん……七緒さんとかと一緒に」

「でもあたしはにその時あげなかったもん」

「…ふーん…その時くれればいいじゃん」

の言葉にやちるがぷくーっと頬を膨らませた。

「それじゃあ、みんなと同じみたいで面白くないもん!」

「は?」

「いいからもらってよーこれはの分なんだから」

「あ、ありがとう」

「どういたしまして!」

受け取ったにやちるがパッと笑顔を零した。

「あ。俺もやちるにあげる。夕方できあがったのがあるんだ」

待っててと居間の方へ一旦戻る

「ちびっこどうしたって?」

「チョコくれた」

居間から台所へタタッと移動し、ガサガサ何かしたかと思うと戻ってくる。
置いてあるミニケーキをさっとラッピングしてまた玄関へ向かう。
その際。

「俺、ちょっと出かけてくるー」

「おい」と修兵が引き止める間もなくさっさと行ってしまう。
玄関で待っていたやちるに行くぞと外にでてしまう。

「どこ行くの?」

「シロさんとこ」

「ウッキーのところに今?夜なのに」

「やちるがいるから大丈夫だって思ったし」

と言いつつも元々浮竹たちには明日渡そうと思っていたのだが。
ちょうどいいから少し二人きりにしてみようと思ったのだ。
ただ、そうなった場合、がさっさと帰ってしまうだろうということもあるだろうが。

「んで。これやちるの分な」

とラッピングしたケーキを歩きながらだがやちるに渡す。

「ありがとう!…ウッキーにもあげるの?」

「うん」

じーっとが持っている物と自分の手の中にあるものを見比べる。

「なんだよ。両方欲しいのか?食い意地張るなよ」

「ち、ちがうもん!」

「やちるにあげたのはケーキだぞ。オレンジのチョコケーキ。シロさんたちにはチョコクッキー焼いた」

ケーキよりもクッキーの方がちょっとランクが上じゃないか?とやちるは思った。
それだけで随分心が軽くなった。
急に笑うやちるには首を傾げる。

「早く行こうよ、。ウッキー喜ぶよ!」

「う、うん」

やちるはの手を引いて走り出した。



「…まったくしょうがねーな、の奴」

残された修兵と
仕方なく二人でケーキを食べ始めた。
にしてみればパイプ役とも思えるがいなくなっただけで随分緊張してしまう。
隊舎で仕事をしているときも二人だが、そんな緊張はないのだから。
目の前にいる修兵は副隊長の顔ではなく、父親の顔をしているから。

「折角の非番だってのに、一日大変だったようだな」

「い、いえ。私は楽しかったですから…雛森副隊長や伊勢副隊長などとご一緒でしたし」

昼間恋次が言っていた意味がわかった。
見慣れた人たちはこぞって我が家で菓子を作っていたようだ。
だからは忙しかったのだろう。

「出前の意味がわかった」

くくっと笑う修兵。
それを見ての顔が赤くなる。

「ん?どうした?」

「い、いえ…その…」

少しだけ勇気を出してみようか。

「副隊長に…作ったケーキ食べてもらえるのすごく嬉しいです」

「え」

お互い気恥ずかしくなって黙ってしまう。
コチコチと柱時計の音がやけに耳に張り付いてしまう。
まるで今の自分の心音を現しているようだ。

「去年」

修兵が口を開く。

「去年俺の机の引き出しに置いといてくれたチョコってさ…からのものか?」

誰と確認しなかったが、修兵にはではないかという期待があった。
は覚えていたのかと畏まってしまう。

「そ、その……」

甘いものが苦手で、貰ったほとんどの物を他人と分けてしまったというから
あれももしかしたら迷惑だったのかもしれない。
自然と目線が下へ下へと落ちていく。
が早く戻ってこないかとか、早く家に帰らなくちゃなどと焦りが出てくる。

「す、すみません。ご迷惑だったかと…その」

「…嬉しかった。ありがとう」

予想外の返事には顔をあげた。

「副、隊長?」

「あー美味いな、本当。今年もいいもの貰っちまったな」

修兵の顔も少し赤い。
それ以上深く聞ける勇気がなかった。
だけど、にはさっきの言葉だけでも十分で。

(私の方こそ…ありがとうございます)

何度も何度も心の中ではあるがそう口にしていた。





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