ぼくとお父さんと彼女といっしょ。 




ドリーム小説
「なんか引っ掛かるんだよな…」

ポツリ呟いた修兵。

「はい?どうかなさったんですか?副隊長」

その呟きに反応する
ここは九番隊副官室。

「なにか修正点でもありましたか?」

仕事の手が止まっている修兵にはそんな風に声をかける。
少しばかり仕事がたまって家に帰れない状況となっている。

「あ。いや、そう言うわけじゃないから」

集中して仕事を早めに終わらせなければ。
そうだ。仕事が終われば済むのだ。

「綺麗な、上品なおばさんなんだ」

が新しい友だちができたと喜んでいた。
年上の女性ではあるが、から見て年齢はあまり関係ないらしい。
その女性の家に滞在中の
本当はちょっと遊びに行くだけの予定だったのに。
修兵の仕事が立て込んでいるが為に、向こうからしばらくを預かると言ってくれたのだ。
普通に考えればなんていい人だろうと感動するはずだ。
今でもを一人残すことに不安があった修兵だから。
だがなんとなくその女性の態度が、あまり修兵には好ましく感じなかった。
こんな事を考えるのならば、いつも通りに恋次やイヅルにでも留守を頼めば良かった。

君が心配ですか?」

「あ……あはは、いや…その…」

相変わらずがらみで悩んでいるとに思われたらしい。
あながち間違ってはいないが、なんだか気恥ずかしいものがある。
曖昧に笑いながら仕事へと意識を集中させた。





【その17】





花乃の家に遊びに来た
ただ、行った先が大きなお屋敷だったので、腰が引けてしまった。
住吉家は貴族の一員らしい。
が作って持ってきたおはぎなど、貴族である花乃が食べるのか不安に思ったが。

「美味しいわよ。君」

と喜んで食べてくれた事にホッとした。
ただ、今夜は義父が仕事で帰らないと言う話をしたところ花乃は。

「だったらウチに泊まっていきなさい。その方がお父様も安心なさるわ」

と嬉々として修兵に連絡をいれていた。
修兵が断るんじゃないかと思ったのだが、仕事が終わるまでお願いしますと頼まれたと言われた。
別にこんな事初めてではない。
修兵が自分を一人残すのが不安に思うのはわかる。
現世へ出張した時に、眠れない夜が続いたくらいだ。
だが、同じ瀞霊廷内にいるとわかっているとそんなに不安ではない。
はどこかで期待していたのかもしれない。

「早く帰ってこい」

修兵にそう言ってもらうのを。
大きなお屋敷で粗相をしないようにと酷く緊張した。
そんなに花乃は「自分の家だと思って楽にしてくれていいのよ」と笑った。

夕食はとても豪華だった。
普段食べた事もない上品なメニューにため息が出てしまった。
花乃と花乃の旦那錦秋と3人で食べたのだが。
なんとなく。

(修兵にも食べさせてあげたいなぁ)

と考えていた。
副隊長の修兵ならば自分よりもいいものをいつでも食べているようにも思えるが。
いつだったか友だちが言っていた。

「副隊長クラスなら貴族と同等なんだって」

と。だからと言って修兵が別に貴族に対し身分をひけらかしているわけではない。

君、美味しい?」

「あ、うん。美味しいです」

頭の中は自分でも作れるかな?という事。
作って修兵に食べてもらいたいと。

(材料が手に入らないと無理だよなー。でも似たようなものとか???)

これはなんだろうと言う顔で食べているを見て花乃は微笑ましく見ているが。
錦秋はどこか複雑そうな顔をしていた。

元々泊まる予定ではないので、着替えは持っていなかった。
花乃は最初から用意していたかのように、一着持ってこさせる。
袖も丈もにぴったりのもの。

「おばさんの子どものものなの。これで我慢してね」

「ううん。俺の方こそ、迷惑かけてごめんなさい。大事なものなんでしょう?」

亡くなっていると聞いている。

君に使ってもらえると嬉しいから、気にしないで」

亡くなった花乃の息子。
それがどうも引っ掛かる。
この屋敷に来てから、一部の人たちが一瞬自分を見て驚くのだ。
貴族じゃない坊主が来たからか?と言う卑下した想いが沸くがそうではないようで。
年配の人になればなるほど、「あぁ」とか「まるで」などと言う事を呟く。
そして薄っすらと涙を浮かべているのでギョッとした。

子どもが居るだけで屋敷内の空気が違うらしい。

その晩、他所様の家という事もあり緊張して眠れないかと思ったのだが。
逆にその緊張し疲れて眠ってしまった。
修兵は今頃どうしているのかな?と思いながら。
できれば早くに「家」に帰りたいと…。



***



「檜佐木君はいるかい?」

九番隊副官室に浮竹がやってきた。
慌てて席を立つ修兵。

「浮竹隊長!御用があるなら呼んでくださればお伺いしたのに」

浮竹はついでの用があったからと手を振りながら笑う。

「どうぞ。お座りください。何かあったのですか?」

浮竹を来客用のソファに案内し、自分もその向かいに腰を下ろした。
その際、に浮竹へ茶を淹れるよう頼んだ。

「ん。何かというわけでもないんだが…少し気になってね…」

「はぁ」

気になるとはなんだろうか?
仕事上、確かに今立て込んで忙しいといえば忙しい。
自分は隊長ではなく隊長代行権限。もしかしたら気付かぬうちにミスでも連発していたのだろうか?
だがその割りに浮竹はのんびりしているし。

「どうぞ」

がお茶を出す。
彼女が居てくれて助かった。
自分ひとりならば、慌ててすぐに茶など淹れられないだろう。
それこそ浮竹に迷惑をかけそうだと。
の淹れた茶にありがとうと笑顔で答える浮竹。
修兵の前にも茶は出される。

「実は君のことなんだ」

…ですか」

浮竹が?なんだいったい。

「今、不在なんだって?」

「あ…はい。知人といいますか…俺が忙しいから預かろうって言ってくださった方がいまして…」

なんとなくバツが悪く感じる。
人様に聞かせたいと思うことではなかった。
浮竹の様子を窺うと、彼は腕を組み困惑した顔をしている。

「浮竹隊長?」

「あ、あぁすまん…実は俺が余計な真似をしたのではないかと思ってな」

「浮竹隊長が…なんでですか?」

浮竹は後頭部を掻く。

「俺が花乃さんに君のことを教えたからだよ」

「花乃、さん…あ」

を預かってくれている女性の名だ。
浮竹は説明してくれた。
と出会った経緯、そしてが修兵の子だという事。

「ですが、だからって浮竹隊長が気になさる事でも」

「うーん…そのな、俺はほとんど顔を見たことがないからわからないんだが…。
花乃さんには君と同じ年頃の子どもが居たんだ」

過去形か。
それだけでなんとなくピンと来た。

「子どもを亡くして以来、彼女はあまり家を出る事もなくてな。あの日偶然俺といた君を見たんだ」

彼女は酷く驚いていたの存在を。
どこの家の子だと根掘り葉掘り聞かれた。
その時は深く考えなかったのだが、後日思えば花乃には子どもが一人居たなと。
それからと会う公園に行っても、彼と会う事はなく。
それどころか、の友だちからは今家に居ないと言う話を聞かされた。

「なんとなく…あまりいい気分がしなくてな。どうしたものかと思って…」

「俺の仕事が一段落付くまでってことですから。なるべく早く迎えに行きますから」

「ん…すまないな、檜佐木君」

「あはは。浮竹隊長が謝ることないですよ」

浮竹は単に聞かれたから答えただけだ、日常会話をしただけに過ぎない。

「それに…もその、花乃さんって人に懐いているようですから、楽しくやっていると思いますよ」

「檜佐木君…」

浮竹が退出したあと、が居る事も忘れて頭を抱えこんだ修兵。
深いため息が出た。
浮竹が気にするくらいだ、もしかしたらすでに嫌な方向に向かっているのではないだろうか?

「副隊長!」

「な、なんだ?」

が真っ赤な顔をして拳を握っていた。

「早く、今の案件仕上げましょう!そして君を迎えに行かなくては!」

…」

楽しくやっているだろうと修兵は答えたものの。
先日の花乃とのやり取りが、修兵に苦い思いを広げさせていた。
だから、の今の懸命さに胸が熱くなる。

「本当の、本当に、君はお父さんが大好きなんですよ?きっと君待ってますから!副隊長のこと!!」

やっぱりいいな。がそばにいると言うことは。
仕事の補佐をしてくれて随分助かっている。
それ以上に、こうして精神面でも助けられている。
付き合うなら彼女がいい。
の義母になってくれるならば、彼女がいい。
自然とそう思える。

(ま…それは向こうが嫌がるかもしれねぇけどな)

単純に思うのだ、それでも。
自分の好きな人はなんだと。

「そうだな。早く片付けるか…俺も、あいつの飯食いたいしな」

修兵の不安は消えた。
その証拠にに優しく笑いかけている。

(わ・・・副隊長、その顔反則です〜)

に見せるお父さんの顔。
それとは違う、優しい男の人の顔だ。
は恥かしくなるものの、今は仕事だ。
早く終わらせて親子再会とさせてあげたいのだ。

「その時はも来い。も喜ぶからな」

息子をダシに使ったと内心笑うも、だがなんとなくいつもみたいに大勢で食事がしたいと思ったのだ。

「よし。再開するか」

「は、はい!頑張りましょう、副隊長!!」

早く息子を迎えに行く為にも。



***



息子が戻ってきたみたいだ。
そう花乃には感じていた。
と過ごす時間は悪くない。
一緒に買物に行ったり、本を読んだり、遊ぶ事もした。
最近の彼は亡くなった息子白露に見えてしょうがない。

「おばさん…何日もごめんなさい」

「あら。気にしなくていいのよ?お父様がぜひにと言ってくださったんだし」

「義父さんが…?」

それはなんとなの心を沈めてしまうようにも感じたが。
花乃には関係なかった。

「お父様もお若いのに大変ね。君さえ良ければいつまででもウチにいていいのよ」

「え……あ……」

即答はできないでいる

「そういえば、君犬が飼いたいのでしょう?おばさんが買ってあげましょうか?」

「え!?」

「どんな犬がいいかしら?あとでお店に見に行きましょうか」

困惑する
確かにそんな話はしたが、修兵に反対されている。

「ダメだよ。しゅ…義父さんに反対されているし…」

「じゃあ、おばさんちで飼おうかしら?君は好きなときに会いに来てくれればいいし」

「おばさん…」

「いっその事。おばさんちの子になる?君」

それがいいわ。と簡単に言う花乃。
は瞠目してしまう。
なんで?急にそんな話が?
おばさんちの子?自分が?

「将来死神になりたいのでしょう?おばさんちの子になれば学院に入るのも簡単よ」

「あ、あの。おばさん…俺…」

「お父様もまだお若いんですもの。一人で子育ては大変だわ。やりたいことだってあるでしょうに」

「あ…」

それは最初から思っていたことだ。
修兵に好きな人が居て、その人から見て自分が邪魔になれば…
修兵に捨てられても可笑しくないとか…。
修兵に迷惑をかけたくないとか…。
けど、修兵はそんなを叱った。
だから大丈夫だ、修兵はこの話をくだらないなどと言って蹴ってくれる…。

「片親だとどうしても負担がかかるでしょうし、しかも男親ですものね…」

はその辺しっかりしていると思う。
今までだって普通にやっていた。
確かに、色んな人たちの手を借りた部分もある。
あるけど、修兵と二人の生活は別に苦とは思わない。
世の中に片親の子だっているし、流魂街では子どもだけで生活している人たちもいる。
自分だけが大変なのではない。
わかっている。
わかっているのに、花乃の言葉に酷く揺れている自分が居た。

「ねぇ、君「花乃!」

錦秋が帰ってきた。
妻の言葉を遮って。

「あなた…なんですか?そんなに声を荒げて、君が驚いてしまいますわ」

「お前こそ、なんだ。今の話は」

「あら…聞いていたんですか?」

悪びれる事もなく、寧ろ喜んでいる節がある。
聞いていたのならば話が早いと錦秋にも告げる花乃。

君をうちに迎えてはどうですか?君の為にもいいと思うのですが」

「花乃、お前は…何を馬鹿な事を」

「あら。何が馬鹿な事でしょうか…私は君の為を思って言っているのですよ?」

豹変。
その言葉がぴったりなくらいに花乃の顔が怖かった。
だがすぐさまには笑みを向ける。

「ちょうどおじさんも帰ってきたから、夕飯にしましょうね」

を連れて部屋を出る花乃。
錦秋は何度もかぶりを振った。

「なにがあの子の為だ…お前の為だろうに…」








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