ぼくとお父さんと彼女といっしょ。 




ドリーム小説
【その6】





の風邪は大分よくなった。
卯ノ花に注射されたことと修兵に見張られながら飲んだ薬の所為かもしれない。
ただ。もう外で遊べるだろうなと思ったが、完治するまではと修兵に外に出してもらえないで居る。
その間友だちが見舞いに来てくれた。

「寝ているだけじゃつまらないだろ?これ面白いから貸してやるよ」

と一冊の本をに。

「俺、あんま本読まないけど…うん、ありがとう」

「それ、すっげー面白いぜ!人気あるからさ、もすぐにハマルと思うし」

友だち皆がこぞって薦めてくれた。
ブックカバーがしてあるのでそれがどんなものかもわからないが、そこまで言われると興味が沸く。

「返すのはいつでもいいからさ」

「だけど、早く風邪治せよ?いねーとつまんないし」

「そうそう。あの死神カード第4弾出たし、また交換しようぜ」

大人たちに普段囲まれているから、彼らと一緒にいるのは新鮮で、いやこれが当然の楽しさ、自然なのだろう。
も寝ているだけの生活に飽きていたから大きく頷いた。

「おう。ちゃんと…あ、友だちか?」

修兵が隊舎から様子を見に来たようだ。
まだお昼過ぎ。
日中を一人で残すのがいまだに心配のようだ。
子どもたちは修兵に向かって元気に挨拶する。

「い、いらっしゃい…あ、あー…阿散井!今すぐ菓子でも買って来い」

「へ?なんすか、突然」

恋次も一緒だったようである。
昼休みを檜佐木家で過ごそうとしたらしい。
ひょっこり顔を出した修兵と恋次に子どもたちの目が輝いている。
死神カードの本家本元が現れたからだろう。

のダチが来た。生憎出せる菓子がねぇから、お前ひとっ走り行って買って来い」

「パシリっすか、俺…」

「早く行け。じゃねぇと昼休み終わるぞ」

恋次は子どもたちを見て納得せざる得なく近くの店に出かけていった。

「修兵。何持ってんの?」

集団の子どもを相手にするのは修兵は苦手のようで、上手く彼らと話せないでいる。
居心地悪そうにしている修兵を見てはとりあえず訊ねた。
お土産にしては面白みがなさそうな薄さだと思いながら。

「あ?ああこれか。瀞霊廷通信の今月号が刷り上ったから読もうかと」

修兵の言葉に子どもたちの目が輝いた。
おもむろに修兵に詰め寄る。

「今月号って、今週末に発売の!」

「あ?ああ」

「すげー!まだ店で売っていないんでしょ!?」

「なんで、なんでのお父さん発売前の奴持ってンの!?」

質問攻めに修兵はタジタジになる。
は友だちが修兵の持っている本とやらになぜ興味があるのかわからない。

「なんでって…うち、九番隊は文芸担当で、瀞霊廷通信の編集もやっているからで」

なぜ真面目に答えているのだろうと修兵自身思ってしまう。
早く恋次が戻ってこないかと自分でパシリに出しておいて思ってしまう。
子ども相手は自分よりも恋次の方が向いているだろうと。
なにより自分の顔つきは子ども向けではない。

「すげー。の父ちゃんすげーな」

「すごいのか、俺にはわからないよ」

は苦笑している。
でも修兵は少しだけ照れ臭く感じる。
先ほどから子どもたちが「のお父さん」と修兵のことを呼ぶから。
死神たちは修兵との関係をつい最近知った。
それまでは「檜佐木の親戚」などと言われて。
自身、子どもたちにも「親戚の兄ちゃん」みたいな言い方をしていたらしいが。
それが消えてちゃんと「のお父さん」となっていたから。

(やべ…なんか嬉しいんですけど…)

「ねえねえ。今月号、見せてもらってもいいですか?」

「ん?ああ、別にいいけど…外に持って行くなよ?まだ発売前だからな」

修兵は子どもたちに瀞霊廷通信を渡す。
子どもたちはわーっとそれを囲みだす。

「瀞霊廷通信ってなに?」

修兵はのそばに腰を下ろした。
うん。昨日よりもいい顔だ。友だちが見舞いに来てくれたおかげかもしれない。

「死神の娯楽雑誌みてぇなものだな」

「それがなんで子どもに大人気なんだ?」

「さあ……あーそっか」

修兵はポンと手を打つ。
子どもたちが大人向けの雑誌を好む理由がわかった。

「あった!今月載ってるー!」

「マジで!?」

「何ヶ月ぶりの連載だよー」

目次を見てお目当てのモノが載っていたと子どもたちは喜んでいる。
にはさっぱりわからない。

「今月号絶対買いだよな。俺、親に頼んでおこうっと」

「僕もー!」

「俺、コミックス待ちだな」

流石に今は読まないようで、後のお楽しみに取っておくようだ。

「ねえ。何の話なんだよ?」

が溜まらず聞く。

に貸した本。その小説が今月号に載ってるんだ。だからさ」

「他の連載と違ってなぜか不定期なんだよ。すっげー面白いのにな」

「そうそう。決め台詞のそいつはお断りだ!≠ェカッコいいんだよ」

子どもたちの説明で修兵は内心あれかと頷いた。

「とにかくさ。あとで読んでみ。すっげー面白いから」

「ふーん。読んでみるよ」

「檜佐木先輩ー買ってきたっすよー」

恋次が戻ってきた。
子どもたちに菓子とジュースを与えて修兵は恋次と下でメシを食うと部屋から出て行った。



***



「へへ。早速買っちゃったよ」

九番隊隊舎のある場所から出てきた
風邪は完治した。
往診してくれた勇音にももう大丈夫だと太鼓判を押された。
なので久しぶりの外出になったのだが、その行き先は九番隊だったのがちょっと面白みが足りない。
風邪で寝ている間、友だちに借りた本がとても面白く買ってしまったのだ。
友だちに借りることもできたが、なんとなく自分の手元に置いておきたい気がして。
それにいつでも読みたい時に読めるではないか。
友だちに借りたものはとっくに返してしまったわけだし。

?お前何やってんだ?」

修兵との姿を見つけやってきた。
最近二人はよく一緒にいる。
それがなんとなくには嬉しい。

「修兵。姉ちゃん。何って本買ったんだよ」

「あ?」

ほら見てくれと二人に買ったばかりの本を向けた。

「やっぱり君もそれにはまったのね」

「子どもの人気bPだもんな、それ」

の手にした本を見て納得している。

「俺、ほとんど本を読むことなかったから。小説って面白いんだな」

普段見るのは料理のレシピ本くらいだ。
子どもとしてそれもどうかと思うが。

「そうなの?だったら良かったわね。一番最初に出会った本が面白くて」

「うん!」

大人びていた子が段々年相応になってきている気がする。
背伸びをするのは悪いことではない。
だが、無理はいけない。
が無理をしていたかといえばそうとは限らないが。
我慢はしていたような気もする。

「だがよ。俺に頼めば良かったじゃねぇか。わざわざ自分で買いに来なくてもよ」

「いいじゃんかー」

「少ねぇ小遣いからよく出したものだな。それ9巻までしか出てねぇけど、集めるの大変だろ?」

「じゃあ小遣い増やせ」

「ダメだ。まだ増えることはねぇなー」

「だったら言うなよな」

ツーンと口先を尖らせる
は二人のやりとりを微笑ましく見てしまう。
思わずくすりと笑みを零し。

君。もしかしたら副隊長は残りを買ってくれるって言っているんじゃないかしら?」

「な。!余計なことを」

の一言に修兵は苦虫を潰し、は晴れる。

「本当か!?修兵!」

目を輝かせている息子を見て修兵は目をそらしながらも、そんなに喜ばれるとちょっと嬉しかったりする。
最近の親馬鹿度数が増えていないか、この男は。

「なあ!修兵!」

修兵の死覇装を掴む

「……気が向いたら」

「はあ?なんだよ、それ」

「あー……お前の今後の行いによるな」

「俺、普段の行い修兵よりいいぞ」

困った顔をしながらも結局修兵は了承した。
そして嬉しそうに帰っていった。

。恨むぞ」

「え!だって最初から買ってあげたそうな顔をしていましたよ!」

珍しく拗ねたような目を向けられては焦る。
あ、ちょっと可愛いかもと思ったのは内緒の話で。

「どんな顔だよ、ったくよ…」

「あ、でもほら、よかったじゃないですか。もし総隊長のお描きになったのが欲しいとかじゃなくて」

「……まあそうだな」

護廷十三隊総隊長にして一番隊隊長山本元柳斎重國。
彼の連載はもう何年、いや何十年続いているのだろうかわからない。
何十年というのも怪しいものだ、それ以上ともいえるし。
すでに単行本として14064巻まで発売されているのだ。
果たしてがそれを好むかは不明だ。
好まれたらちょっと嫌かもしれない。



***



早速買った小説を読みえ終えてほくほくした気分になる
世の中にはこんな面白い話があるのだなあと顔をほころばせてしまう。
いつもの公園のベンチ。
早くお目当ての人が来ないかとうずうずしてしまう。

「やあ。君。風邪は治ったのかい?」

「シロさん!」

いつも以上に目を輝かせているに、やってきた浮竹は何かいいことでもあったのだろうと暢気に思った。

「シロさん。シロさんあのな!」

「どうした?そんなに慌てて。とりあえず座らせてくれ」

の隣に腰を下ろした浮竹。
そしておもむろに袖の中から菓子をとりだす。
にあげるとバラバラといくつもの菓子を。
浮竹に礼をいいその中の一つを口へと放り込んだ。

「今日は天気がいいなぁ。おかげで気分もいい」

のんびり散歩できるなんて贅沢だなどと少々年寄り臭いことを浮竹は呟いている。

「なあ。シロさん。シロさんにお願いがあるんだけどいい?」

「ん?俺にかい?別にいいぞ。で、なにかな?」

頼まれると基本的に嫌と言えない性格。
だが嫌だと思うことがない性格なのが浮竹だ。
小さな子どもとはいえ友だちからの頼み事は嬉しいものだ。

「本当!じゃあ…はい、これにサインください!」

「は?サイン?本?…おや、この本」

サインなどと言われて浮竹は困るが、が差し出したものを見て笑う。

「シロさん。すげーな!こんな面白い話書いているなんて!俺感動したよ!」

「いやーなんか照れるなぁ」

「カッチャン、俺の友だちが面白いって薦めてくれたんだ。本当面白かったよ!」

その本は浮竹十四郎が瀞霊廷通信で連載している「双魚のお断り!」というものだ。
主人公双魚が悪者を倒すアドベンチャー小説で双魚の決め台詞「そいつはお断りだ!」が
子どもたちに大人気なんだそうだ。
他の連載陣と違って不定期掲載なのは浮竹の体調によるもの。
だが人気は常に読者アンケートのトップ3に入るほどである。

「続き早く読みたいって思ってさ。でも俺の小遣いじゃ全部買えないからどうしようかと思ってて。そしたら修兵が買ってくれるって言うし!なんかもう俺嬉しくてさ!」

そんなに気に入ってもらえるものだとは作者冥利に尽きるというものだ。
だがサインなどは今までしたことがない。
さて、どうしようかと迷ってしまう。

「サインなんて恥かしいな。勘弁してくれよ、君」

「えーだってシロさんのサイン欲しいと思ったしさ」

「サインよりお菓子をあげるよ」

お菓子は別に欲しくないのだが、浮竹があまり乗り気でない所を見ると、素直に菓子を受け取ってしまう。

「しょうがないなぁ、シロさんは」

「あははは。すまんな。サインなんてしたことないんだよ、本当」

「まあいっか。作者本人と友だちってだけでも」

死神たちはともかく子どもたちには作者が浮竹だと知っていても雲の上の存在かもしれない。
護廷十三隊の隊長の一人なのだから。

「なあ、シロさん。どうして面白い話書けるの?」

「そうだなぁ」

天気の良い午後。
浮竹から聞けた面白い空想話に花が咲いた。








カラブリネタから。浮竹さんの連載は私も読みたい。
07/08/09UP
12/07/15再UP