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ぼくとお父さんと彼女といっしょ。
「風邪ですね。栄養と睡眠をたっぷりとってください」 が熱を出した。 お子様特有の。 修兵は四番隊の副隊長虎鉄勇音にを診てもらった。 「薬は食後にちゃんと飲ませてくださいね。一日三回、1錠ずつ」 「ああ。わざわざ来てもらって悪かったな」 「いいえ。卯ノ花隊長も心配なさっていましたし、また何かあれば遠慮なく呼んでください」 勤務外なのに、勇音は気にした様子もなく来てくれた。 卯ノ花までに心配かけたと思うと、息子の交友範囲の広さに脱帽してしまう。 いつもならば元気に勇音に礼を言うだったがそんな気力はないようで布団に包まってしまっている。 修兵は勇音を玄関まで送った。 「熱が下がるまでが大変です。檜佐木副隊長大丈夫ですか?お一人で看病なんて」 「あーなんとかなると思うけど…俺一人で無理なら吉良や阿散井たちに手伝わせるし」 その人選もどうなのかと勇音は少々心配になる。 「では、また明日にでも来ますから」 「おう」 勇音は見た目の体型とは違い申し訳なさそうに何度も頭を下げてから檜佐木家をあとにした。 【その4】 「ー薬飲んだか?」 「………飲んだ」 真っ赤な顔をしてけだるそうにしている。 「熱、下がらねーな…」 の額に手を当てるが、勇音に診察してもらった時と大差ないような気がする。 「何か食いたいものあるか?」 「………牛乳」 「いや、それ食い物じゃねーから」 「じゃあいらない」 はそのまま布団を頭から被ってしまった。 「食わないとダメなんだぞ…しょうがねーな…」 滅多に病気などしない修兵だから、こういう時どうしたら良いのかわからない。 を引き取ってから、も寝込むなどということがないので余計にだ。 周りはほとんど健康体。どうしたら良いのだろうか? 体が弱いというならば浮竹がそうだが、彼の場合ちょっと違うような気がする。 体が弱いわりには食欲がある人だから。 仕方ないので明日にでも勇音などにこの辺のことを聞いておこう。そう思った。 「えー、風邪なの?お見舞いしちゃだめ?」 翌日、に会いに来たというやちる。 あれ以来まともにと会っていないらしい。一応彼女も副隊長、中々に忙しいのだろう。 「まだ熱が下がらないからな。うつったりしたら大変だろう?」 「だいじょうぶだよー」 「やめとけって。ちびっこにうつりでもしたら後が怖い」 「?」 「とにかく。熱が下がったら呼んでやるから、今は我慢しとけ」 「……うん……」 やちるは小さく唇を尖らせる。 小声で「早く仲直りしたいのにな…」と聞こえたので修兵はやちるの頭を数回撫でた。 「君。風邪なんですか?副隊長出仕して大丈夫なんですか?」 九番隊副官室。室内には修兵の補佐をしてくれているがいる。 彼女にのことを告げるとそんな風に切り替えしてきた。 「大丈夫って何がだ?」 「子ども一人にしてって意味ですよー誰か今看ている人いるんですか?」 いくらがしっかりした子でも病気の子を一人置いて来てしまうのは精神的にダメだろう。 きっと心細い思いをしているに違いない。 「あー、一応暇そうな奴置いてきたから大丈夫だとは思う」 役に立つかはわからないが。 「阿散井の奴が非番だって言うから世話頼んできた」 「そうですか。ならばいいですけど。今日は早めに帰れるよう頑張りましょうね、副隊長」 「お、おう」 きっとお父さん大好きなだ。修兵がそばにいてくれた方が良いに違いない。 はそう思い、残業なしで修兵が帰れるように今日一日頑張ろうと気合を入れた。 「風邪つったらリンゴだろ?食うか、」 袋いっぱいのリンゴを持参した恋次。 修兵に頼まれて来たというが、恋次の態度はいつもと変わらない。 下手に病人扱いされるよりはマシだが多少は気を使ってほしい。 「…リンゴ?……擂ったのなら食べる」 「ああ?面倒くせーよ。男ならガブッと行け」 「そこまでしてリンゴ食べたくない」 「しょうがねーなー…んじゃ剥いてやるからそれで我慢しろ」 丸々一個をに食わす気だったのだろうか? だが恋次は意外に器用にリンゴを捌いていく。 「ほらよ。これでいいだろ?」 「うさぎさんがいいとか言ったら?」 「阿呆。んな可愛らしいことお前が好むかよ」 「うん。別にいい。ありがとう恋次」 とりあえず、恋次が用意してくれたリンゴをは食した。 だけど、いつもならば美味しいと思える味も今日はいつもと違うように感じる。 微妙な味。 が変な顔をすると、恋次がわしわしとの頭を撫で回した。 「風邪ひいているから味覚が馬鹿になってんだよ。気にするな。今はちゃんと食って薬飲んで寝とけ」 「うん」 「風邪って言えば卵酒でしょう〜」 ドンとの前に一升瓶を置いた乱菊。 昼過ぎになり彼女がイヅルを引き連れてやってきた。 一応の風邪の見舞いらしいが。 「え、えーと…菊ちゃん、俺酒は…」 「卵酒なんて酒なんて言っているけど酒じゃないから、風邪をひいた時にはこれが一番なのよ!」 「あ、あああの君。何か食べたいものとかあるかい?…卵酒は流石によした方が良いと思うから」 乱菊の耳に入らないようにボソッと耳打ちするイヅル。 「今はいいよ。さっき恋次がリンゴくれたし」 「本当?ちゃんと食べないとダメだよ?薬だって飲まないと」 「……うん」 「よぉーし!卵酒つくってあげるからね〜」 台所借りるわねと乱菊は嬉々としながら台所に向かった。 イヅルが慌てて追いかける。 「卵酒を選ぶってのはまああの人らしいよな…」 「うん。そうだね」 「あ。おい。なんか熱上がってねーか?」 「そんなことないよ?」 「もういいから寝ろ。卵酒はともかくなんか食えそうなもの持ってくるからよ」 恋次に寝かされては目を瞑った。 だがすぐさま下からイヅルの悲鳴と恋次の怒号が耳に入り中々寝付けなかった。 「38℃…中々下がりませんね……」 「………」 勇音2回目の診察。 熱を測るが昨日と変わらないの熱。 解熱剤を与えているのにちっとも熱が下がらないのだ。 「食欲はどうですか?」 「少しだけ…」 恋次からリンゴを。 あれからイヅルに卵粥を作ってもらった。 「ないわけじゃないんですね。ならばもう少し様子を見ましょうか。 それでも下がらない場合は卯ノ花隊長に診てもらった方がいいかもしれませんから」 「注射でも打てば治るんじゃないのか?」 そばで見ていた恋次。 乱菊は卵酒というより酒を飲みまくってイヅルに連れてかれた。 イヅル一人では無理だったのだが、そこに同じように見舞いに訪れた日番谷によってだ。 「それでもいいですけど…」 「卯ノ花隊長次第ってところか?」 「そうですね」 「、早く治したほうが身のためだぞ〜」 恋次は何か見に覚えでもあるのだろうか?卯ノ花の診察に対して少々恐怖を感じているようだ。 だがは以前リンゴ病にかかった時に診てもらったが、そんなことは感じなかった。 優しいお母さんを想像してしまったくらいだ。 でも注射は嫌なのでどうにかしたい。 普段は別々の部屋で寝ているのだが、今はが心配だからと。 修兵がの隣で寝ている。親子で並んで寝ると言うのは中々恥かしい気もしてしまう。 まして普通の親子とは違うから。 「………あたま、いたい…」 「しょうがねーだろ?我慢しろ」 「しゅうへー」 随分弱気になってしまったものだ。 熱が下がらないのに、咳き込む回数が増えた為に体のあちこちに負担が出始めた。 「もう寝るのいやだー」 「バーカ。寝てないと余計に辛いだろうに」 「身体中痛いから嫌だ」 「じゃあ少しだけ体起こせ」 は上体を起こすがふらふらと頭の位置が定まっていない。 終いには何度も咳き込み痛い、痛いとはくずり始めた。 腹筋と頭。体の節々。 痛がるにどうしたら良いのかと修兵は悩む。 自分だってこの辛さは経験があるがどうにもできない。 治るまで待つしかないのだ。 薬を飲んで、たっぷりの栄養と睡眠をとって。 「やっぱ、お前はまだまだガキだよ…」 を抱き上げ寝付けるように背中を何度も摩った。 「………」 「副隊長、顔が怖いです。どうかさなったんですか?」 中々治らないの風邪。 本当は風邪ではない、別の病ではないかと思い始めていた修兵。 に声をかけられるまで眉間に皺を寄せたままだった。 「あ、いや…別に」 「君、まだ寝込んでいるんですよね。いつも元気で走り回っている姿がないと寂しいですね」 「………ああ」 執務中には見せない父親の顔。 修兵は自然と今その顔になっている。 少しだけそれに見惚れてしまうだがすぐさま打ち消す。 「ですが、副隊長。夕方から副隊長の定例集会がありますけどどうなさるんですか?」 「………は?」 「しっかり予定に組み込まれていますけど」 今月の日程表。今日の日付の部分に書きこまれた定例集会の文字。 月に数回あるもので、隊長たちが行う隊首会に比べたら重要性は低いがそこそこ話し合いは行われている。 現在の状況から他隊の連携は不可欠なので修兵はどうしても出席せねばならなかった。 「忘れてた…あーどうすっかな…」 何度も頭をガシガシ掻く修兵。 副隊長の。ということは勇音もイヅルも恋次も出席なのだ。 これがまたいつ終わるかわからないものだ。それまでを一人にしておくわけにはいかないだろう。 「定例集会の方は欠席なさったらどうですか?皆さん事情を知っているわけですし」 「いや、ダメだ」 「でも、君が」 「あ〜………!」 「は、はい!」 パンとの両肩に手を置いた修兵。 「悪い。あいつの面倒見ててくれ」 「え……あ、は、はい。私で良ければ」 他にも修兵が頼めばやってくれる人はいるだろう。 だが、なんとなくが嫌がりそうだ。 にならば頼める。そんな気がした。 長い長い夢を見た。 いつかの楽しかった日々のことを。 大勢の子どもと大人二人。 皆で笑いあって過ごしたあの日。 楽しかったなぁ…。 弘幸と陽太と三人で悪ふざけして、源二郎から逃げ回った。 単なる追いかけっこなのかもしれないが、楽しかった。 が作ってくれたものは美味しかった。 家族だった僕たち。 ずっとずっと一緒だと思ったあの日。 両親はいなかったけど、両親と呼べるような人はいた。 源二郎が父親でが母親で。 いつか本当の家族になるんじゃないのかなって幼心に思ったものだ。 「先生」じゃなくて「お母さん」って呼んでいたらまた変わったのだろうか? 「源二郎」じゃなくて「お父さん」って呼んでいたらどうなっていたのだろうか? 急にひんやりしたものが頬に触れた。 冷たくて気持ちがいい。 「大丈夫?君」 「………」 薄っすらと目を開けるともういない「お母さん」がの頬に手で触れていた。 「あのね。牛乳の寒天作ったの。これなら食べられるでしょ?蜜柑とか苺とかいれてみたよ」 手がスッと離れたかと思うと額でぬるくなっていた濡れタオルを交換してくれた。 「。悪かったな…どうだ?」 「少し寝ぼけているような感じですけど」 苦笑している彼女の横に修兵が腰を下ろした。 「熱、中々下がらないか…卯ノ花隊長呼んだ方がいいかもな…」 は夢の中にまだいるのかよくわからなかった。 大好きだった二人が今一緒に居る。 「お父さん」と「お母さん」がここにいる。 あとは弘幸と陽太も一緒にいればいいのに……。 「。ほれ、薬飲まないといけないから、なんか食え」 ぺちぺちとの頬を軽く叩く修兵。 「あ。ダメですよー。君ようやく落ち着いたんですよ。今は寝かせてあげたほうがいいです」 「そ、そうか?」 が檜佐木家に到着したばかりの頃、はずっとうなされていた。 昼間よく一人で我慢していたなと変に感心してしまったくらいだ。 でも、もう少し大人を頼るべきではないのだろうかと心配もしてしまった。 今まで頼る生活ではなかったのかもしれないが、自身がどこまで踏み込んで良いのかわからないので口には出せなかった。 「副隊長。夕食はどうなされました?」 定例集会中に食べたのだろうか? 「いや、まだだ。コイツのこと気になったしな」 「でしたら簡単なものでよければ私が作りますけど」 「悪いな」 「いえ。これくらいしかできませんし、君に比べたら出せたものじゃないですよ」 は少々照れながら立ち上がる。 「お母さん…」 「「は?」」 から出た言葉に思わず動きを止めてしまう大人二人。 にはぼんやりとしながらだが「お母さん」がどこかに行ってしまうと思ったらしい。 「?」 覗き込んだ修兵の顔を見てはニコッと笑った。 「…お父さんもいた…よかった」 「お、おい。?」 頭まで可笑しくなったのか?これは本格的に卯ノ花を呼んだ方がいいのかもしれない。 そう内心焦るが、スッと寝息を立て始めただったので寝ボケていたのに過ぎないと感じた。 「あ。そうだ。シーツとか変えたほうがいいですよ」 が替えのシーツを持ってきた。 ついでに替えてしまおうと取り出す。布団も昼間干したものと交換しよう。きっと気持ちよく眠れるだろうから 「ほら、起きれるか?」 「うーん…」 「私がやりますから」 「悪いな。全部任せちまって」 「いいえ」 修兵はを抱える。 がその間にと布団一式変えようとしたのだが…。 「ふ、副隊長……あ、あの……」 「どうした?」 敷いていた布団を持ち上げたところ、バラバラと飲んでいるはずだった薬が出てきた。 「……薬、ですよね?これ?」 「…な……」 修兵は口許を引きつらせた。 「……お前は……」 飲んだと言っていたが、は飲んだ振りをしていたようだ。 それは治るものも治らないだろう。 「この馬鹿野郎が!」 修兵の雷が落ちたのは言うまでもない。 元ネタは私自身の経験から。あ、薬を隠すではなく、風邪の辛さみたいなのが。
でもって、息子君はお母さんが彼女だったらいいなぁと思っている様子の話。
修兵にその気があるのか微妙なところ…。
07/05/26UP
12/07/15再UP
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