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ぼくとお父さんと彼女といっしょ。
「やった!俺の斑目三席ぃ!」 「僕は…伊勢副隊長だ。ダブっちゃったけど…まあいいかな」 「は?」 「俺のは……あーまた大前田副隊長だ…この人3枚目なんだよな」 「交換してやってもいいけど、僕もその人もう持ってるからなぁ」 「なあ、この人多くね?」 最近たち子どもたちの間である物が流行っていた。 今日も公園で集めたそれらを仲間たちで見ていた。 【その壱】 子どもたちの間で流行っているそれは、護廷十三隊死神カード。 女性死神協会協力のもと発売されたそれは本来お菓子がメインなのだが、オマケでついているカードの方が子どもたちには人気があった。 第一弾として各隊隊長をメインとしたものだ。 ノーマルカード20枚(離隊した3名の隊長を抜かして1人2枚ずつ)とレアカード5枚の全25種。 レアカードの内容は山本総隊長の始解した時のものや日番谷隊長の日常姿など様々で確かにと言えるものだった。 は元々興味がなかったのでその第一弾の時は買うことはなかった。 だが、この所毎日購入してしまっている。 理由は、第二弾が副隊長シリーズだったから。 人数の関係、調節の所為か、ノーマルカードは隊長シリーズとは違って一人一枚。 副隊長だけでなく、有名な席官なども加わっている。 レアカードは第一弾同様、隊長がメインで、うち一枚は現世の死神代行が含まれているらしい。 「もう、大前田副隊長いらねぇ………」 「俺、この人連続で出た時なんか涙出てきた」 どういうわけか、子どもたちには彼は不人気ようだ。 「第一弾より難しいよな、コンプ」 「俺、別にコンプしたいわけじゃないんだよなぁ」 「なに?はコンプ目当てじゃねーの?」 「うん。欲しいのが手に入ったらもういいんだ。でもそういうのに限って出てこない」 そんなものだと、子どもたちは笑いあう。 子どもの小遣いでは一日一個が限度。 自分の小遣いを使うのでどれだけ買っても問題はないが、一月分それに費やす気にはなれない。 瀞霊廷内に住んでいて、金に苦労をしたことはないと言っても、子どもは子ども。 親から与えられる小遣いはそんなに多くないらしい。 それはも同じだ。 子どもに大金を持たせるわけにはいかないってこともあるだろう。 無駄遣いはよくないと。 だから仲間内でも一日一個にしようと決めた。 買いたい奴は何個買ってもいいが、基本はそれ。 なんとなく、買って袋を開けたとき、友だち同士で何が出たかを見せ合うのが楽しいってこともあるだろう。 「なあ、今回のレアカード誰かもう出したか?」 「ううん。俺はまだ」 「僕も」 「俺も。やっぱ今回は中々集まらねーよな」 「かっちゃん、誰か欲しいのあるの?」 「死神代行がほしい」 はふと以前出会ったオレンジ頭の旅禍を思い浮かべる。 彼がその死神代行だと後から聞かされたものだ。 「とりあえず、大前田副隊長はもう勘弁だな」 なんとなく皆で苦笑した。 *** 「なんかよ、お前…最近その菓子ばっかり食ってるよな?」 修兵が居間で菓子を食べているに言った。 夕飯前だが、が菓子を食っているのが珍しくてなんとなく気になった。 「別に」 「そうかあ?昨日も一昨日も食ってたぞ、それそんなに美味いのか?」 「普通」 「なら、なんで食ってるんだ?」 「別に。あるから食ってるだけだよ」 ウェハースチョコをバリボリと食っている。 は死神カードを集めているなどと修兵に言いたくなかったので詳しく理由を言うつもりはないらしい。 「意味わかんねーな…」 ガシガシと後頭部を掻く修兵。 「俺も、もう食いたくないんだけどね」 「あん?」 「なんでもない」 目当ては死神カードだけど、それはあくまでオマケ。 メインはお菓子なのだから、お菓子を粗末にするわけにはいかない。 だけど、毎日食べ続けると流石に厭きてしまう。 *** 「……あ。シ…浮竹隊長が出た」 「あーいいな。今回のレアカードの一枚浮竹隊長なんだー」 翌日、いつもの公園。今日も近所の店で菓子を買った。 が袋を開けると、出てきたカードはシロさんこと十三番隊隊長浮竹十四郎だった。 なんとなく、こそばゆいものがある。 このカードもそうだが、副隊長カードとなっている本人たちと顔見知りが多いので。 真面目な顔したそれらを見ると、思わず噴出したくなるものだが。 「久しぶりにいいもの出た感じかな」 はカードのシロさんを見てニコッと笑んだ。 「の欲しいカードってそれ?」 「ん?違うよ。これも出て嬉しかったけど、一番欲しいのは別ー」 とりあえず、このカードは久々の戦利品として懐にしまっておこう。 友だちとしばらく遊んだ後に帰ろうと思ったのだが、しばらく公園に残ることにする。 シロさんが来るかな?と思ってだ。 先日の騒動でシロさんが十三番隊の隊長だと知ったのだが、だからと言って二人は年齢を問わず友だちとして 顔をあわせている。 修兵が後日シロさん、浮竹に礼を言いに来たとも彼の口から聞かされた。 浮竹の反応は「まあ、多少は驚いたかな?」と言ってはいたがそうは見えなかった。 しばらく待つと、浮竹がのんびり歩きやってきた。 の顔を見ると手を振ってくれる。 「やあ。君」 「シロさん!」 相変わらず修兵がヤキモチを妬いてしまうほどに浮竹に懐いている。 浮竹はの隣、ベンチに腰掛ける。 「今日もいい天気だな」 「うん。あ、そうだ。シロさんにこれ見せてあげる」 「ん?なんだい?」 はさっきゲットした死神カードを浮竹に見せる。 浮竹は自分の姿がそこにあったので瞠目してしまう。 「え、えと……なんだい?これ」 「護廷十三隊、死神カード。第二弾の副隊長シリーズ。んで、シロさんはレアカード」 「よく意味がわからないのだが」 は丁寧に死神カードの話を浮竹にする。 ようは子ども向けの菓子で、カードはそのオマケだとわかる。 「俺としては複雑だなぁ。自分の知らないところでこういうのが売られているとは」 「女性死神協会協力とかって書いてあるよ」 そう聞いて嬉々としている協会員である自分の部下を含めた女性死神たちを浮竹は思い浮かべてしまう。 「あ。シロさん、こういうの嫌?だから反対しちゃう?」 隊長の一人でも販売サシ止めを命じれば簡単にそうなりそうな気がする。 はそうなったら嫌だなと少し不安になる。 浮竹は別にと首を横に振る。 「いや。そんなのことはしないよ。ただ驚いただけだよ」 「本当?俺の所為で売られなくなったら困るところだったよ」 友だち皆がこのカードを集めるのを楽しみにしているのだから。 「でも、意外だなぁ。君がこういうのに興味があるとは」 少し大人びたところがあるからオマケなどに興味はないと思っていた。 「ん?んー……うん、実はあんま興味ないんだ」 「ほう」 「でも、欲しいカードがあったから、なんとなく買っちゃう」 「欲しいカード?」 えへへとは笑う。 「見て見て、これはやちるだろ、イヅルも取った。なんか大前田副隊長ばっかり出ちゃうしさ」 今まで集めたカードを浮竹に見せる。 ああ、子どもっぽい。子どもらしいなぁと浮竹は微笑ましく思ってしまう。 「これ、桃ちゃん。なんか知り合いばっかりで妙に照れ臭さい」 「そうかもしれないな。俺も自分があってそう思えるし…ああ、なんだ。そうか」 「シロさん?」 「君の欲しいカードわかった」 の顔が少し赤くなる。 「シロさん、内緒だぞ。誰にも言っちゃだめだからな」 照れ臭いから赤いというより、少しだけ拗ねが入っているように見える。 浮竹は笑いながらも了承する。 (いやぁ、これを知ったらどう思うのかな、彼は) 浮竹は袖の中に手を入れる。 「ところで、君。お菓子食べるかい?」 「食べる!あ、シロさん、この菓子食べる?交換しようよ」 今日浮竹が出してくれた菓子は煎餅だった。 大袈裟な話、久々に食べた気がしていつもと違う味が、この煎餅美味しすぎないか?とまで感じてしまった。 浮竹はに貰った菓子を食べていたが、少し気に入った様子だった。 「…………」 夕食の買い物をしている最中、お菓子売り場を通ると、死神カードが目に付いた。 一個100環のそれ。 一個くらいならカゴにいれてもいいかな?などとちょっと惹かれてしまう。 でも食費から出すわけだし、修兵にばれたら叱られるかもしれない。 やっぱり、一個ぐらいいいよなと思ってカゴに一個だけ入れた。 「君。何してるの?」 ポンと肩を叩かれて悲鳴が出そうになるが慌てて口を塞いだ。 振り返るとがそこにいた。 同じように夕食の買い物にでもきたのだろうか? 「、姉ちゃん…びっくりした」 「ごめん。脅かしちゃった?」 「ううん、いいよ。別に」 見られたのが、声をかけられたのがで良かったと安堵する。 「今日のお夕食はなんですか?」 はカゴの中を覗く。 「豆腐にナメコ…はお味噌汁ね」 「うん。今日は家にある物使うし、あとは買って帰るだけ」 「お菓子も買うんじゃないの?ここお菓子売り場よね。私もお菓子を買いに来たのだけど」 休憩の時に食べようと思って買いに来たらしい。 「何かおススメある?」 「え?あ、あー…別にないけど…」 「あれ、なんだ。もうカゴに入ってるじゃない」 「あ、そ、それは」 「なーに?これ…」 は菓子を見て浮竹と似たような反応をした。 「第二弾、副隊長シリーズ……副隊長って…檜佐木副隊長とか?阿散井副隊長とか?」 「うん。今、人気あるんだ、この菓子。と言うよりオマケが」 は棚から一つそれを手にしてマジマジと見ている。 「なんか面白そうね。私も一個買ってみようかな」 「姉ちゃん、こういうの好きなのか?」 「割と…かな?菓子も美味しそうだしね」 は買うと言ってレジへと直行してしまう。 も慌ててレジへと向かう。 一緒に店を出て、外で菓子を開ける。 「……あ。恋次がでた」 「私のは……雀部副隊長だ。へぇ、こういう感じなんだぁ。面白ーい」 の口元が緩む。 変わりには溜め息がでる。 「どうしたの?君」 「中々…が出ないから…でも恋次は一枚目だし、いいかな」 いそいそとカードを懐にしまう、菓子の方をに強引に渡す。 「え?」 「証拠隠滅!姉ちゃんに菓子あげる」 「ありがとう。いいの?」 「俺、食べ厭きてるから。修兵にあんま見られたくないし」 「ふーん」 檜佐木家では菓子は禁止というか、食べすぎないように制限されているのだろうか。 は気にせず菓子をもらう。 「姉ちゃん!」 「なに?」 「その菓子のこと、特にカードのこと内緒だぞ」 「内緒?誰に?」 「死神さんたちに。大人が買いまくったら、俺ら子どもが買えなくなる」 俗に言う箱ごと買う大人買い。 「大丈夫じゃないかなぁ」 「あと、修兵には絶対、そのカードのこと言うなよ」 「副隊長に?……うん、言わない、約束」 は大きく頷いた。 *** (難しい…はあ、欲しいものって中々手に入らないものなのね) は休憩時間に一人で菓子を食べていた。 最近の仕事は副官室で修兵の補佐。 なので、ほぼ副官室に籠もっている。用の机も用意されている。 (今日は松本副隊長と綾瀬川五席が出たけど…) に死神カードのことを教えてもらってから、想像以上にはまった。 全25種コンプリートが目的ではなく、欲しいカードが一枚あるから。 だが中々それが出ない。 黙々と、菓子ウェハースチョコを食べている。 「」 修兵に呼ばれて背筋をピンと伸ばす。 「は、はい!か、勝手に休憩しちゃって申し訳ございません!」 「いや。別に休憩しているのはかまわないが……なあ、その菓子」 「は、はい?」 「最近人気あるのか?家でが毎日食ってるんだよな…でも、あいつ別に美味いわけじゃないとか言うし」 が強調したことが思い出される。 修兵にはこのカードの存在を知られたくないと言っていた。 菓子は見せてもカードは見せていないようだ。修兵は死神カードを知らないようだ。 かと言って素直に教える気はない。 自分もカードを集めているのを、周りに、特に修兵に知られたくないから。 「さあ?私にはさっぱり。偶然ではありませんか?」 「偶然ねぇ……」 修兵は疑うような目でを見るが、はシラをきり通した。 「今日こそでますよーに」 思わず、商品の前でパンと手を合わせてしまう。 1つだけ菓子を手に取る。 確かに大人買いしてもいいわけだが、たち子どもを主に相手にしたものだし。 自分も菓子には厭きてきたので、一日一個にしている。 毎日買ってはいるものの本命が中々出てこない。 ダブりも出てきたので、と交換することもあった。 「そろそろ君とも交換できなそうだしなぁ」 も欲しいものが出ないらしく、さらに他のカードが溜まり始めてきて嫌気がさしているようだ。 冗談ではあろうが、もし今度大前田副隊長に出会ったら、とび蹴りを食らわすかもしれないとがぽつり呟いていた。 「毎日食ってる菓子ってこれかぁ」 ひょいっとの後ろから手が伸びた。 「ひ、檜佐木副隊長!」 「なんか二人で隠していると思ったら、これがねぇ」 「うわ、うわ。あの、えと」 修兵が商品を見てふーんとニ三度頷いている。どうやらの後をつけていたらしい。 心の中でに何度も謝る。 「俺も一つ買ってみるか」 どんなものか興味あるしとニヤリと修兵は笑った。 修兵が帰宅すると、はちゃぶ台に顔を伏せていた。 ちゃぶ台の上には死神カードが散乱している。 「何してんだ、お前」 「しゅ、修兵!な、なんでもない」 カードをかき集めるだが、修兵はその中の数枚を掴み取る。 「あ、あー!」 「…阿散井だな、こっちは雛森か…へぇ浮竹隊長まであるな。ガキに人気あるってのはこっちか」 修兵に見られたと思ったら、隠す気にはもうならないようでは普通にカードを束に纏める。 「どういうわけかもはまってるみたいだったし」 「姉ちゃんから聞いたのか!」 「いや、あいつがこれ買うの見たから……んで、俺も買ってみた」 副隊長がそんなの買うなよ。は呆れる。 修兵は袋を開ける。中からウェハースチョコとカードが一枚出てくる。 「あ。俺が出てきた」 「嘘だろ!俺、まだ一枚も出てないのに!それ出すために毎日買って…あ、いや…」 「へぇ…はお父さんのカードが欲しかったのかぁ」 思わずニタニタっと頬が緩んでしまう。 うっかり口を滑らしたは口元が引きつっている。 「たまに可愛いことするよな、お前は」 「う、煩いな」 「ほれ。大事に持ってろよ」 カードをに渡す修兵。は頷くがその顔が嬉しそうで、見ているこっちが照れ臭くなる。 「にしても……の奴…」 「姉ちゃんが何?」 「いや」 修兵は髪を掻く。 (あいつは誰か目当てのカードでもあるのか?俺以外だったら複雑だな…) とりあえず、翌日からのカード集めは終了した。 同じようにも止めたらしい。欲しかったカードが出たそうだが、それがなんなのか修兵が知ることはなかった。 (やった。檜佐木副隊長カードゲット!) いやぁ、この頃。私自身が菓子のおまけのカードを必死こいて集めていたんですよね。
07/05/01UP
12/07/15再UP
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