お父さんといっしょ。




ドリーム小説
【其ノ拾壱】





修兵が朝目覚めると、隣で寝ていたの姿はなかった。
ぼさぼさ頭を掻きながらぼーっとしていたが、下からカタコト音がする。

なんだ、もう起きているのか。

部屋を出、ゆっくりと階段を降りる。



台所で朝食の仕度をしていた。
修兵の声に振り返るの顔は晴れていた。
いつもと同じ顔。

「おはよ、修兵。なんだよ、死覇装のまま寝たのか?洗濯するなら早く出せよ?」

「おう」

前の晩のことをとやかく言うつもりはない。
もし恋次たちが何か言おうとしてもきっと自分が黙らせるだろう。
それに意外と昨夜のことを覚えていないかもしれない。

「今日、仕事か?」

「ああ。といっても軽くだな。隊長に報告するだけだ」

「じゃあお昼うちで食べるのか?」

「わかんね。あ、でも阿散井たちが夕飯食いに来るつってたな」

「ふーん。じゃあ用意しておくな」

賑やかな夕飯になるだろうなとは思った。
そして、修兵に沢山彼が留守中に起きた話をしたく楽しみにしているのだった。



***



「なあ、知っているか?あそこに白い大きな塔があるだろ?あそこに大罪人がいるんだって」

「本当?怖いね、どんなことしたの?」

昼間、公園で近所の子たちと遊んでいた
仲間の一人がそんな事を言い出した。
最近になって本当に年の近い子どもたちと遊ぶようになった。
約束とかはしないで自然と公園に集まった時に。
だから気楽でいい。
行けないからといって気にすることもないから。

ただ、相変わらず修兵のことを父親だとは名乗れていない。

「そこまでは教えてくれなかった。は?んちも兄ちゃん死神だろ?」

仲間たちが一斉にを見る。

「そうだけど。俺、そんな話聞いてないや。修兵って仕事の話はしないもん」

んち、兄ちゃん九番隊の副隊長だろ?やっぱしゅしぎむってのがあるんだ」

「守秘義務だろ」

「そう、それ」

「あとね、この前瀞霊門が閉じただろ?外から悪い奴が入ろうとしたんだって」

「あ。あれびっくりした」

「それは修兵に聞いた。理由とかいわなかったけど、危ないから瀞霊門に近づくなって」

「わー怖いねー」

とはいうものの子どもたちには危機感はない。
瀞霊門はここから行くのに時間がかかる。
瞬歩が使える死神たちでもなければ簡単に到達は出来ない。

「悪い奴もなにしに来たのかな?」

「瀞霊廷には強い死神がいっぱいいるじゃん。来ても無駄だよな」

「あ、そうだ!なあ、昨日俺来なかっただろ?誰かさ、白くて長い髪のおじさん見なかったか?」

は仲間たちに尋ねる。
シロさんとはいまだ会うことがない。
がいるこの公園はシロさんと会っていた公園だ。

「見てない」

「俺も」

「僕も。のおじいさん?」

「違うよ。友だち…かな?すッげーいい人。いつも袖の中から沢山お菓子出すんだ」

「へーすごーい」

「でもおじさん。シロさんっていうんだけど、ここ最近会わなくて」

「あ、だから毎日この公園来てたんだ」

「うん」

彼らはいつも同じ時間にの姿を見かけていた。
なんだろう?と思って声をかけたのがきっかけだ。

「俺も会ってみたい、その人。会えば菓子くれるかな?」

「くれると思うけど、菓子目当てか?」

「あはは。ダメかな」

結局シロさんは今日も来なかった。
シロさんは家族、一族を養っていると言っていた。
その為に仕事が忙しいのだろうか?
仲間たちとも別れては夕食の買い物をしながら帰宅した。



***



「最近、恋次来ないけど、忙しいのか?」

「ん?……ああ、そうらしいな」

修兵と夕食を食べていた。

「イヅルも?」

「そうだな」

「つまんねーの」

修兵はくすりと笑う。

「おいおい。俺がいるだろ?お父さんと一緒ならいいじゃねーか」

「えー」

「って失礼な奴だな」

は食べ終え箸を置く。

「最近つまんねー」

「何が?阿散井たちが来ないからか?」

「それもあるけど、シロさんも来ないし…」

「シロさん?……日番谷隊長のことじゃないよな?」

初めて聞く名に修兵は首を傾ける。

「違うよ。あ、でも冬獅郎とも最近会ってない。つまんねー皆忙しいみたいで」

そのまま後ろに身体を倒す
こういうところを見るとまだまだ子どもだと思える。

「しょうがねーだろ。今、少し立て込んでんだ」

「それって。瀞霊門に悪い奴が来たって話?それも白い塔に大罪人がいるって話?」

「大罪人?」

はむくりと身体を起こす。

「かっちゃんから聞いた。聞いちゃダメな話なのか?」

「いや、別に。ただお前らが聞いた所でどうってことないし」

修兵は残りのご飯をかきこみ、ぐいっと茶を飲み干した。

「ごちそうさん。じゃあいってくるな」

立ち上がる修兵。

「いってらっしゃい」

は片づけを始め、修兵は出仕していった。



***



修兵から連絡があった。
しばらく帰れないとのこと。
外に出るのは構わないが、隊舎の方には絶対来るなといわれた。

「なんだかなぁ。夜明けに急に光が見えたと思ったら、朝方花火が上がるし」

「すごかったよな。なんかさ、この前いってた悪い奴が瀞霊廷の中に入ったんだって」

「本当?怖いね」

「今も暴れているらしいよ?本当は外に出るなって親にいわれたよ、俺」

「俺も修兵にいわれた。隊舎のほうには絶対来るなって。絶対だぜ?逆に気になる」

お昼すぎにいつもの公園にいた。
なんでも旅禍と呼ばれる者たちが侵入し暴れているらしい。
死神たちは躍起になって旅禍を探し捕まえようとしているようだ。

「そいつらの目的ってなんだろうな」

「瀞霊廷乗っ取るとか?」

「できっこねーよ、そんなの」

「でもさ、旅禍って禍をもたらすとかいうよね……やっぱ怖いよね。理由がなんだろうと」

子どもたちは黙ってしまう。

「帰ろうか。家にいたほうがいいし」

「うん」

蜘蛛の子を散らすように子どもたちは帰っていく。
仲間の一人がの方を振り返る。

、今日うちに来いよ。兄ちゃんしばらく帰ってこないんだろ?一人だと怖いだろうし」

「う……うん」

確かに一人で過ごす事になる。
でも修兵が現世に出張してしまったときと違い、すぐ近くにいると思えると別に恐怖心はない。
きっと夜も一人で寝れるはずだ。
今までだって夜勤で修兵がいない夜はあり、一人で過ごしたこともある。

「遠慮することないぜ?」

「あ、ううん。別に遠慮は…でもいいや。俺、大丈夫だから」

「本当か?」

「うん。大丈夫。もし、もし怖くなったら後から行ってもいい?」

へらっとおどけてみせる
ちょっと驚いた顔をもするも相手もすぐさま笑ってくれた。

「いつでもいいって。じゃあな」

「うん。またな」

互いに手を振り別れる。
も家に向かって走っていく。
今日の夕飯は冷蔵庫の中の残り物で済ませてしまおうと考えながら。
修兵の帰りを待つならば、やっぱり我が家がいいのだから。



***



旅禍は何をしに瀞霊廷に来たのだろう?
毎日あちこちで朝昼晩と激しい轟音が聞こえる。
一応が住む居住区では戦闘などは行われてはいない。

「……どうしたんだ?修兵」

修兵が一度戻ってきた。
昼飯を食べているとき、ちょうど。
おにぎりと朝の残りの味噌汁を食べていた時に。
修兵の分もかろうじてあったので出した。
修兵はぼんやりと言うか黙って食べている。

「ん?別になんでもねーよ」

「今日も恋次たち来ないのか?」

一瞬間が開いた。

「……忙しいからな、あいつらも」

「副隊長だもんな、一応」

「ひでーな、おい」

修兵は苦笑する。
ただすぐに表情が戻ってしまう。曇っているような、寂しそうな顔に。

「なにやってんだか、あいつら……」

後輩三人がそれぞれ牢に入れられ、それぞれ姿を消してしまった。
これから何が起こるのかまったくわからない。
隊長一人が殺害されるし、旅禍のせいで十一番隊を含め負傷者は続出しているし。
そんな中で極囚とされている者の処刑が明日行われようとしている。
一応、その者のことも知っているだけに気分は良くない。

(阿散井の様子が変わったのも、これが原因か)

まったく何がなんだか。
とりあえず、自分は明日の処刑に隊長共々立ち会うだけだ。

「修兵」

「ん?」

「今度さ、恋次たちが暇になったらまた皆で食事しよう。冬獅郎や菊ちゃんも、やちるも呼んで」

「そうだな」

「修兵がいないとき、皆わざわざ来てくれてさ、いつもの倍煩かった」

「そうか……そのうち色々治まるだろうから、その時な」

子どもに気を使わせてしまったと苦笑してしまう。
子どもだからこそそういう気配に敏感なのだろうか?
まあ、あまり子ども扱いすると怒るのでいわないが。

「あ、姉ちゃんもその時呼んでいい?」

もか?」

「うん。姉ちゃんにもいっぱい世話になったし」

「みたいだな」

ニッとに向かって笑う修兵。
あの時、彼女からの様子を聞かなかったらきっと、この子にまた辛い思いをさせていたかもしれない。

修兵は最後の一口を頬張り立ち上がる。

「今夜もしっかり留守番してろよ」

「おう」

修兵はの頭をくしゃくしゃと撫でた。
いつもなら嫌がるも、どことなく何かを感じていたのか避ける仕草もしなかった。



でも。
翌日の出来事は修兵の心に大きな傷を与えた。








黒縁メガネの反乱はあまり息子君には関係ないので、サクッと進行。
06/06/14
12/06/04再UP