お父さんといっしょ。




ドリーム小説
あ。はじめてなんだなって気づいた。





【其ノ九】





「え、明日から?」

「おぅ。急に決まった」

「ふーん」

ムシャムシャゴクリ。

今日の夕飯は天ぷら。
イカが安く買えて、サツマイモを沢山貰ったから。
玉ねぎと桜えびの掻き揚げも作った。
二人で食べるにはこのくらいでちょうど良いだろう。

「いつまで?」

「長くて一月かかるかもな……」

「ふーん。大変だな副隊長さんは」

「副隊長が行くつーのもなんだかなぁ」

修兵は箸でサツマイモを刺して食べる。
衣がサクッとしているが、中はほっくりしている。

「おぉ美味ぇ」

「行儀悪いぞ、修兵。人前でそれやるなよ?」

「…お前は俺のオカンか。とりあえず、俺がいない間戸締りしっかりしとけよ。あと、阿散井たちにも頼んであるし」

急な話だと修兵は言っているが、キチンと色々手を打っているようだ。
何が急な話だと言うと、修兵に現世へ出張が決まったそうだ。
が聞いたところで小難しい内容でわからないだろうから簡単に出張と説明した。

「修兵がいない間恋次が来てくれるの?」

「あぁ、暇なときはできるだけいてくれって」

「………」

「なんだよ」

はジトリと修兵を見る。

「修兵は俺が一人で留守番もできない奴だと思っているのか?」

「そ、そういうわけじゃねーよ。昼はともかく夜物騒だし」

「同じじゃないか」

「いいじゃねーか。阿散井は快く引き受けてくれたぞ」

うそ臭い。
無理矢理嚇したんじゃないか?そう感じる。
でも恋次が来てくれるのは構わないから追求はしない。

「別に良いけどさ」

「とりあえず、難しい任務でもねぇから、すぐに帰ってくるからよ」

「うん」



翌朝、修兵が出かけるというので玄関先で見送った。

「それじゃあ、戸締りだけはしっかりしとけよ?」

「うん。修兵も気をつけてな」

「おぅ。パパッと済ませてすぐに帰ってきてやるからよ」

わしわしとの頭を力強く撫でる修兵。
ニッと笑みを浮かべて。

「パパッとはいいけど、手抜きすんなよな」

「誰がするかよ、バーカ。いってくる」

「いってらっしゃい」

は修兵の背中をしばらく見ていた。
ただ、なんとなく。



***



ー腹減ったー」

日が暮れ始めた頃、そんな一声が玄関から聞こえたと思ったら、ズカズカと恋次が入ってきた。

「恋次?」

「飯、飯なに?」

「恋次はウチに飯食いに着ただけか?」

読んでいた料理本を閉じる。
明日はこれにしようかなとかアレコレ考えていた所だ。

「んなわけあるか。尊敬する先輩から大事な大事な息子さんのお世話を頼まれたんだぞ」

「なんだ、それ。うそ臭い」

「あ、ひでぇな」

「本当にそう思っただけだし。まぁいいや、飯にするのか?風呂も沸いてるけど」

「お、いいなぁ。先に風呂にすっかな〜」

家主は今頃現世でお仕事中。
美味しいご飯に風呂に寝床まで用意されちゃって至れり尽くせりで機嫌が一層良くなる恋次。

「イヅルは?てっきりイヅルも来るかと思った」

「吉良は残業だ。隊長に逃げられたーとか言ってたな」

「イヅル最近ソレばっかだな」

「そうだな」

恋次と二人で笑った。
恋次が風呂に入っている間に夕食の仕度をすることにした。
イヅルも来るだろうと思っていたから少し多めに作ったのだが、少し残念に思う。

恋次が風呂からあがり、二人で夕食を食べ始めた頃…。

ー」

ガラリと戸が開いた。

「お邪魔しま〜す」

家の者が出る前に勝手に入ってくる客。

「修ちゃんいないんだって?」

「寂しいと思って遊びに来たわよ」

やちると乱菊が顔を覗かせた。

「乱菊さん、その手にしてるものなんですか?」

一升瓶を持っている乱菊。

「阿散井。本当にいたのね、アンタ」

「いて悪かったっすね」

「あら〜美味しそうじゃない、君が作ったのでしょ?いいな、いいな〜」

「いつもより多めに作ってあるから菊ちゃんも食べてよ。やちるは食べる気満々なんだろ?」

「食べる〜」

ストンとちゃぶ台の前に座り込むやちる。

「悪いわね〜催促しちゃったみたいで」

は二人の分のご飯などを仕度し始める。
代わって乱菊もやちるの隣に座る。

「いいな、修ちゃんはいつもの美味しいごはん食べれて」

「そうよね、修兵の癖に生意気よね」

「乱菊さん、それなんか違う」

恋次と同じくらいに食が進んでいるやちるたち。
たまに恋次たちと一緒に食事をするとは言え、賑やかな食卓は楽しく、嬉しく感じた。

「なんだ、うるせーと思ったら松本もいたんだな」

「冬獅郎!?」

「あっら、隊長。こんばんは〜」

「……松本」

「うわっ、乱菊さんもうできあがってるの!?」

更に増えた客人たち。
日番谷に残業を終えたのだろうイヅルもいた。

「檜佐木、現世に行っているんだってな」

「うん。それで俺のこと心配してきたのか?冬獅郎も」

「別に心配じゃねーよ」

少し照れながらそっぽを向く日番谷

「あのさ、君……ぼ、僕の分も食事あるのかな?」

イヅルが心配そうに訊ねてきた。
遅くなったとは言え修兵に頼まれて来たのだ。

「イヅルの分もあるよ、冬獅郎の分も勿論」

「本当?良かった、もうお腹空いちゃって」

「吉良の分はともかく、俺の分まであるのか?」

「あるよ。なんとなくだけど、沢山作った方がいいかなって気がしたから」

「………」

「なに?」

日番谷はジーッとを見て溜め息を吐いた。

「しっかりしすぎって言うか………ほら、手ぶらじゃ悪いと思ったから」

日番谷は紙袋をの前に差し出した。
それを受け取り、中を見る。

「あーからあげだ。いっぱいあるじゃん。ありがと、冬獅郎」

はイヅルと日番谷も座らせて、台所へ引っ込む。
彼らの分の食事も出すようだ。
お酒を飲んで騒いでいる、乱菊に恋次。
飲んではないがやちるもケラケラと笑っている。

(……世話しに来たと言うより世話になっているってのが正しいな)

子どものの世話になりっぱなしの副隊長たちを見て日番谷は再び溜め息を吐いたのだった。



***



修兵が現世へ行ってから早くて、もう1週間が経った。
そう感じるのは、毎日誰かが遊びに来てくれるからだろう。
それに恋次とイヅルが必ず家に泊まってくれていた。

「えーと、やちるはコロッケが食べたいって言ってたよな…恋次は焼肉…どっちかだよなぁ」

作るとするなら大人数ならば焼肉が簡単だ。
でも自分もコロッケが食べたいからコロッケにしようかと迷う。
あぁでも、餃子でもいいよなと思う。
餃子ならば沢山作って焼きながら食べられるし。
そうすれば酒を飲む乱菊にも合うし。

「俺、段々酒のつまみとかまでも手を出しているよなぁ」

修兵は家では飲まない。
たまに恋次たちと飲むが軽くだ。
いつも外で飲み潰れて恋次に担がれて帰ってくるのだ。
でも、最近乱菊が夕食を食べに来るので、と言っても彼女は必ず酒を飲みながらだ。
だから、酒のおつまみなんてものもこさえる様になった。

「修兵が帰ってきたらなんて言うかな」

修兵が帰ってくる前に酒の空き瓶だけはなんとかしたい。
そう思う。
今日もまた数本増えそうだし。

「こんにちは、君」

後ろから声をかけられは振り返る。
すると、が立っていた。

「あ、姉ちゃん。久しぶり」

「うん。久しぶりだね。どう?元気?」

「元気だよ、なんで?」

「ほら、檜佐木副隊長が今現世に行ってるでしょ?」

修兵がいなくて寂しがっているとでも思ったのだろうか?

「俺そんな子どもじゃないよ」

軽く口先を尖らせるはクスクスと笑う。

「そういう意味じゃないけど。でも、それなら良かった。それでこれからどこに行くの?」

「夕飯の買い物。餃子にしようかなって」

は歩き出す。
立ち止まったままでは人様の邪魔になってしまうから。
も自然にの隣を並んで歩く。

「餃子かぁ。焼くの難しいよね」

「うん。油断すると失敗する。それで修兵によく文句言われる」

「えぇ副隊長文句言うの?駄目だよね、作ってもらってるのに」

「だよな〜だから修兵に言うんだ。だったら自分でやってみろーって」

「そうだよね」

「でもさ、修兵の奴こう言うんだ。それじゃあの為にならないって」

「なに、それ」

は軽く噴出すがは面白くなさそうな顔をする。

がもっと上達するように。とか言ってさ」

「で、上達しちゃうんだ、君は」

「…不味いもの修兵に食べさせるわけいかないじゃん」

「そっかあ。なんか副隊長の奥さんになる人は大変だね。君以上の腕前がないと困るかも」

姉ちゃん、なれそう?」

「私?私は…え!な、なに言うの、突然。わ、私は別に」

一瞬にして顔が真っ赤に染まる

「大丈夫だよ、その時は俺がみっちり教えてやるから」

「え、えぇ!?」

「あ、俺ここで買い物するの。姉ちゃんは?」

は店の前に立ち止まる。

「わ、私は別に買い物ないから」

「姉ちゃん、今晩暇ならウチで食ってけば?」

「え、でも」

「一人増えるくらい問題ないし」

「う、うん……」

「姉ちゃんの分まで作っておくから、来ないと困るな、俺」

半ば強引にを誘った
は渋りながらも承知してくれた。
恐らく、上司の留守中に家にあがると言うのが気に引けたのだろう。
は一度隊舎に戻ってから夕方また来ると言った。

そして、数時間後。
が檜佐木家を訪れると。

姉ちゃん。いらっしゃい。早く上がってよ」

「な、なんか騒がしいね…」

「そう?最近こんなだよ」

に押されて中へと上がりこんだ。
通された居間で見たものには顔が引きつる。

(え、えー!副隊長ばかりじゃないの〜あ、日番谷隊長までいる…い、いづらいよ私)

ちゃぶ台を囲んでいるのは日番谷に恋次にイヅル、やちるに乱菊。

「あれ、お前は?」

「は、はい。九番隊十席のです。その…あの…」

「恋次。姉ちゃん苛めるなよな」

開いている所に座ってと言われるも、どこに座ればよいか判らない。
でも立ったままなのは邪魔だろうし、鬱陶しいだろうから乱菊とやちるの隣に座った。

「苛めてねーよ」

「なに、なに?修兵の彼女?」

「ち、違います!とんでもないです」

やはり、この席は失敗した気がする。
やちるとはある程度知っている仲だが。

その後も何度か乱菊に絡まれた(酒が入っていたために)ものの楽しい夕食をは過ごしたのだった。

それからまた1週間が過ぎた。
修兵はまだ帰ってこない。

は珍しく一人の夜を迎えようとしていた。








パパは出張中。
06/03/29UP
12/06/03再UP