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お父さんといっしょ。
「シロさん、今日も来ない…」 いつもの公園、いつもの時間。 シロさんと会うのを楽しみにしていたのに、彼は来ない。 そうなってからすでに4日も経った。 【其ノ八】 「ちぇ〜シロさん、忙しいのかな」 いつもシロさんの方が早く来ていた。 だから待ってもしょうがないと思っては踵を返す。 公園を出たところで、の前に影ができた。 「。こんなところで何してるんだ?」 「修兵!修兵こそ……あ」 修兵がいたにはいたのだが、一人ではなった。 白い羽織を着た人物と一緒にいた。 「檜佐木。この子だね?」 「はい」 スッとの前に立つ男性。 「初めまして、君。私は東仙要。君の義父が所属する隊の隊長だよ」 「あ………は、はじめまして」 瀞霊廷で住むようになって色んな大人には出会った。 人見知りなどと言うのは滅多にしないだが、この男性、東仙の前では緊張し萎縮してしまう。 「そんなに怖がることはないよ?一度君とは会っておきたくてね。檜佐木に頼んだんだ」 にこりと笑んでくれる。 こっちも笑顔で返したいのだが。 隊長であり、修兵の上司と言うことで粗相があってはいけないと思い硬くなってしまっているようだ。 「おい、」 「いいよ、檜佐木。元気に暮らしているようだしね」 東仙はの頭を撫でから横を通り抜けた。 「今日はもう良いよ。一緒に帰るといい」 「隊長」 「急ぎの仕事もないし、大丈夫だよ」 東仙は一人で帰ってしまった。 「」 「………」 は俯いている。 「なんだよ、どうした?」 「あの人、俺のこと知ってるんだ」 「あぁ。お前を引き取る時に俺が隊長に頼んだからな、知っていて当然だ」 「……ふーん」 が以前言っていた。 修兵が厳しい分、甘い採点をくれるのが隊長の東仙だと。 でも、なんとなく、にはあまりそのように思えなかった。 「同じ隊長でも、俺は冬獅郎や卯ノ花隊長の方がいい」 「お前にはあの人の良さがわかんねーか?お子様め。俺が尊敬している方だ」 修兵はニッと笑みの頭を撫でる。 「わかんなくていいよ」 その手を払っては走り出した。 「おい、!」 最近のは可愛くない態度をとる。 いや、女の子ではないので別にこれぐらいは普通でいいのだろうが。 あまり反抗的な態度を取られると怒りより悲しくてへこむ。 家に帰るわけでもなく。 夕食の買い物をするわけでもなく、一人歩いている。 俯き加減で後ろから見たら肩でも落として泣いているかのように見える。 急に寒気がした。 東仙と会って、あの頃を思い出した。 あの頃……修兵と初めて出会った時だ。 「ようた………」 思い出すと痛くて悲しくてしょうがない出来事。 周りで知っているのは修兵だけ。 引き取ったことをしっているならば東仙も知っているかもしれない。 もう一年も経つんだ、あれから。 一度もあそこには行ってない。 行きたくても行けない、遠いように感じる。 「………」 はキッと口を結んで顔を上げ、再び走り出した。 ここから一番近い瀞霊門に向かって。 瀞霊廷は広い。 子どもの足では限度がある。 でもは走って走って、目的の場所に向かう。 「はぁ……はぁ……はっ……遠いなぁ…」 途中何度も立ち止まってしまう。 「ダメだぁ…」 時間だけが過ぎて距離が縮まない。 はその場に座りこんでしまう。 もう夕日が出ていてそろそろ帰らないといけない。 夕食の仕度もしていないのだから。 でも、なんとなくどうでもいい気がして。 「はあ〜」 疲れてしまって寝転んでしまう。 「あー一番星だ」 輝く星が目に入る。 結局なにもできなくて、疲れただけで。 の額に汗が目に薄っすらと涙が滲む。 「なーにしてんだ、お前はこんなところで」 「……しゅーへー」 あからさまに小馬鹿にしたような表情でを見下ろしている修兵。 には広すぎるこの街も修兵にはそう難しくなく移動できるようで腹立たしい。 「転んで起き上がれないのか?ほら」 手を差し伸べる修兵。 はジッとその手を見る。 「なんだよ?」 「…別に」 あの時もそうだったなって思って。 泣いて震えて縮こまっていた自分に差し伸べた手。 『出て来い。ずっとそこにいる気か?いるならやっぱ陽の当たる場所がいいぞ』 あのままあそこにいたらどうなっていただろうか? 今みたいに笑っていられる生活はできていなかった気がする。 「しょーがねーな。よっ」 修兵はの腰を掴んで抱き上げる。 そのまま背中に背負いだした。 「しゅ、修兵!?」 「疲れたんだろ?負ぶってやるよ」 「い、いい!俺、自分で歩ける!」 「遠慮すんな。お前を背負うぐらいなんてことねーよ」 「お、重いとかじゃなくて」 恥ずかしいとか知っている人に見られたら嫌だなとか。 でも頑として解放しようとしないので大人しくする。 「なぁ、」 「なに」 「どこ行こうとしていた?」 「どこって…」 「俺んとこいるの嫌か?」 「え?」 負ぶされているから修兵がどんな顔をしているのかわからない。 でも、修兵にそう思わせてしまった原因は自分しかいない。 「無理矢理つーか、結構強引につれて来たもんな、お前のこと」 「別に、俺…嫌だなんて一度も思ったことないよ」 「…」 「俺の方こそいつも修兵に迷惑かけてるし…邪魔だとか思うんじゃないかって」 「馬鹿。俺がそんな風に思うわけねーだろっ。寧ろに苦労かけっぱなしだ」 吉良も言っていただろ?と修兵は言う。 主婦のような真似させてと以前言われたことはある。 「あんな、修兵」 「おぅ」 「俺、陽太に会いに行こうと思った」 「陽太?…あ、あぁお前のダチか」 ぼんやりと顔を思い浮かべる。 でも修兵の中ではその子の顔はいまいち覚えていない。 修兵が見た顔は眠っていた顔だったから。 「うん。でもここ広くて行けなかった」 「そっか」 「やっぱ独りじゃ無理だ。今度連れていってよ」 「俺が?あ〜どうするかな」 「頼むよ。俺独りじゃ行けない場所だし。陽太に俺の親父をちゃんと紹介したいから」 「え」 修兵はから出た言葉に驚き一瞬立ち止まる。 「なぁ、いいだろ?修兵」 思わず笑みが零れる。 に始めてそう言われたなと思って。 修兵は再び歩き出す。 「しょーがねーから、連れて行ってやるよ」 「約束な!」 背負われて恥ずかしいとか思っていたのに、は足をぶらつかせるほど機嫌を良くしていた。 何がこの子の中であったのかは修兵にはわからない。 だけど、今は笑っているから良しとしよう。 あの頃の話をできるようになったのならば尚更だ。 「あんま暴れると落とすぞ!」 「落ちるぞ、じゃねーのかよ、普通」 「うるせー」 「あ、夕飯どうする?俺、何もしてないぞ」 「ラーメンでも食って帰るか。何がいい?」 「俺、山菜蕎麦」 「ラーメンって言っただろうが、なんで蕎麦なんだよ」 「ラーメンより蕎麦の方が好きだから」 「あー別にいいけどな。じゃあ蕎麦屋だな」 途中で会った恋次とイヅルも加えて蕎麦屋で夕食を食べた。 その後そのまま檜佐木家で飲み始めた大人三人。 酔っ払いの相手を嫌々ながらにしていただった。 親子の出会いは割とよくある話ですw
06/02/25UP
12/06/03再UP
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