お父さんといっしょ。




ドリーム小説
「シロさーん!」

「やぁ、君」

午後のとある時間帯になるとは公園に出かける。
先日友だちになったシロさんと一緒に散歩をするのが日課となっていた。

「お家の人にはちゃんと行ってきたか?」

「あんなのに一々言うほどのことじゃないよ」

軽く頬を膨らますにシロさんは苦笑する。

「なんだ、その様子じゃまだ喧嘩しているんだな」

「…だって…」

「お父さん、病気で寝込んでいるんだろ?側にいてやった方がいいと俺は思うが」

「…向こうが追い出すんだよ。だからもう二度と世話してやんない」

は先日の一件以来意地になっているようだ。

「それにもう治ってるよ。普通に起きてるし」

「そうか、それは良かったな」

とは言われても、はほとんど修兵とは口をきいていない。
いまだ恋次も一緒に住んでいるので別に困ることはないし。
とりあえず、今は馬鹿親父のことなど知らないとは知らん振り状態だ。





【其ノ七】





ーあーそーぼー」

檜佐木家の玄関前でやちるが呼ぶが反応は無い。
でも鍵は開いている。

「?」

やちるは戸を開けて覗き込む。

、いないの〜?」

シーンと静まり返った家。
仕方ないから帰ろうと思ったが、ギシっと奥のほうから音がした。
なんだいるじゃないかと思ってやちるは勝手に上がりこむ。

、何してんの?あそぼー」

と音がした方に顔を出すと、そこには修兵がいた。
風呂上りでタオルを腰に巻いた姿で。
つまり、そこは脱衣所だ。

「…なんだよ、ちびっ子。勝手に人んち入るな」

普段から目つきの悪い修兵の目が一段と厳しくなっている。
やちるにぶっきらぼうに言っても、やちるは全く動じない。
と言うより、この状況。
普通の女性ならば恥ずかしがるとか、悲鳴をあげちゃうとかあるものだが…

「あれぇ、修ちゃんだったの?だと思ったのに〜」

つまんないと唇を尖らせるやちる。
修兵は濡れた頭を拭きながらやちるを追い出す。

「着替えるから帰れ、ちびっ子」

「ちびっ子じゃないもーん」

よりチビだろうが」

「むぅ」

機嫌が悪いようで修兵はやちるの目の前で戸をぴしゃりと閉める。
やちるは面白くないがのことを聞きたかったので居間の方に移動する。
ちょこりとちゃぶ台の前に座って、置いてあったお饅頭に手を伸ばす。
もぐもぐと食べてしまう。勝手に…。
一個が二個、二個が三個と。
菓子皿に置いてあったお饅頭が残り一個で、それにかぶりついた時修兵が入って来た。
あからさまに嫌そうな顔をして。

「勝手に人んちで和むな、ちびっ子」

「なによ。修ちゃんに用事じゃないんだよ、あたしは」

だろ?見てわかるじゃねーか、いねーよ。だから帰れ」

「なんでいないの?」

「知らねーよ。ここ最近昼過ぎになるといねーし」

それが、修兵が不機嫌になる理由、其の一。
修兵は腰を下ろして新聞を広げる。

「そう言えば、修ちゃん、なんでいるの?」

「……ここ、俺んちなんだけど」

「違うー。仕事は?休みなの?あー九番隊って暇なの?」

「暇じゃねーよ、すげー忙しいんだよ…好きで休んだわけじゃない、病欠だったから仕方ないだろ」

「そうなんだ」

確かに最初は熱が出て、身体の節々が痛くてしょうがなかったが後半はほとんど寝ていることに飽きてしまうほどだった。
でも出仕できなかったのは、修兵を診察してくれた四番隊隊長卯ノ花に出仕を禁じられていたから。
だがようやく明日からは通常勤務に戻れそうだ。

「わかったら帰れ」

お前も一応副隊長で忙しい身だろと修兵は言う。

「その辺はつるりんがいるから大丈夫」

「…いっその事あの人が副隊長やった方がいいんじゃねーのか…」

ボソッと呟く修兵。
だがやちるはそれには気付かず立ち上がる。

「しょうがないなぁ。帰りながら探そうっと」

「あぁそうしてくれ」

「じゃあね、修ちゃん」

「おぅ」

パタパタと軽い足音を残しやちるは帰って行った。
やちるが去ったことで家の中は一段と静かになる。
元々騒がしい場所ではないが、昼間でもこんなに静かなものなんだと気付かされる。

ボーっと庭のほうを眺めて、以前の一人暮らしだったころと変わらない状況なのに
なんだか、妙に物足りない。

「…あいつ、昼間寂しいって思ったりしねーのかな…」

家事は全てに任せっぱなし。
それはが自分からやると言い出したことだし、修兵も無理しない程度でいいと言ってはある。
朝起きてからせっせとやれば午後は暇なのかもしれない。

最近ではやちるや日番谷と言う友だちができたようだし、家にいることも少なくなっているのかもしれない。

「それはそれでいいことなんだよな…」

この所、軽く無視されて寂しい。
これが恋次とかなら生意気だー腹がたつとでも思うが、相手だとへこむ。
それを作った原因は自分なわけだし。

そう言えば寝込んでいる時に、隊の子が数名来てくれた。
看病でもと言う話だったが、すぐに断った。
自分よりも隊の方が忙しく大事だからと。
あの日からなんだよなぁと修兵は溜め息をついた。





「そう言えば、シロさんって普段何してる人?」

「何している人に見える?」

公園のベンチでシロさんから貰ったお菓子を食べながら疑問をぶつけてみた。

「なんで、質問で返すんだよー」

「いやぁ、すぐ答えたら面白くないだろ?」

「そうかなぁ…」

シロさんはくすくすと笑う。
はシロさんの職業を想像する。
昼間のんびり散歩をできてしまう職業とは?

「貴族で無職」

「な、なんだ、それは」

「だって、シロさんが働いている姿想像つかない。でも着ているものとか高そうだし」

「親の金で生活していると?」

「うーん…怒った?」

「いいや。一つ言わせて貰うと、逆だな」

「逆?」

「俺が家族を養っているんだ。驚いたか」

「すげーシロさん何者?」

「シロさんはシロさんだ」

はははと豪快に笑うシロさん。
結局何を聞いても上手くはぐらかされてしまった。

「ずりーよ、シロさん…あ、俺もう帰る。夕飯の買い物あるから」

すくッとベンチから立ち上がる

「そうか。気をつけて帰れよ」

「うん。シロさんもまた明日」

「あぁまた明日」

そう言ってシロさんと別れて公園を出る
少ししてからその公園にやちるがやってきた。
やってきてベンチに腰掛けているシロさんに気付き近づく。

「あれぇ、ウッキーなにしてんのー?」

「やぁ、やちる君。俺は今まで友だちと遊んでいたのさ。そう言う君は?」

「あたしは友だち探しているの。でもどこに行ったかわかんないんだよね」

「そうか、それは残念だな。じゃあ残念賞で飴をあげよう」

不思議な袖の中。
いつもかなり菓子をしまいこんでいるらしい。
やちるは貰った飴を嬉しそうに頬張っていた。





今日も恋次は来るだろうからと、夕食の材料は多めに買う。
そして帰って洗濯物を取り込み、夕食の仕度をせねばと急いで帰る。

「ただいま」

喧嘩中と自分では言っておいても、律儀に“ただいま”などと言う

「おぅ、お帰り」

「…何してんだ?」

「見てわかんねーか?」

「………」

台所に夕食の材料を一先ず置いて今を覘くと修兵がいた。
そして、修兵のしていることに目を疑った。
だって、修兵が洗濯物を畳んでいたから。

「やることねーし、いいかなって思ったから」

「ふーん」

なんとなく会話が続かない。
勝手に拗ねて無視していたのは自分の方だから。

「今日のメシなんだ?」

「あ、うん。カレーにした」

これならば、恋次だけじゃなくイヅルが来ても平気だから。





「少し辛くねーか?

「そうかな、俺はこのくらいがいいけど」

恋次も交えての夕食中。

「阿散井は辛いの苦手だったな、まぁこれがうちの味って事で我慢しとけ」

修兵は普通に食べている。
も特に変わらず。
辛いとは言っても、中辛で子どもでも食べれる辛さだ。

「辛い、辛いッすよー」

「あたしももう少し甘い方がいいー」

「お子様どもめ」

さぁ食べるぞと言う時にやちるが来て一緒に食べている。
半日と遊ぼうと探し回ったようだが、最終的にもう一度家にやってきた。
この半日遊んだ所為で十一番隊はどうしたものか修兵は少し不安になる。

「今度からは金平糖入れるといいよ、

「嫌だ。流石にそんなカレーは食べたくない」

「えー」

「いつもどんなカレー食ってるんすか…」

一応元上司ってこともあって恋次はやちるに敬語だ。

いつもより口数が少ないに気付く修兵。
まだ怒っているのかと思うが、よくの顔を見ると…。

、お前!」

頬はいつも以上に赤くなっている。

「ん?」

「まさか…お前、熱はあるか?身体がだるいとかないか?」

「んー?少し腕が痒い」

「あー、やっぱりだ、こんちくしょー」

修兵は髪を少し乱暴に掻く。
意味がわからない恋次とやちる。

「なんすか、先輩」

「うつったら困ると思って遠ざけていたんだぞ、俺は!あーくそ!結局うつってるじゃねーか」

修兵は恋次の問いかけには答えず居間から出て行ってしまう。
も意味がわかっていないが、なんとなしに腕をボリボリと掻いている。

数分してから戻ってきた修兵はそのままを抱きかかえる。

「な、なんだよ!」

「うるせーこのまま四番隊へ連れて行くからな」

「なんでだよーどこも悪くねーよ、俺」

「悪いんだよ、寧ろ感染してんだよ、お前は」

「あの、檜佐木先輩?」

「阿散井、一応だ。ちびっ子も一緒に連れて来い」

「は?」

「あたし、どこも悪くないよ?」

「それを判断するのは卯ノ花隊長だ」

有無を言わさず修兵によって四番隊へ連行されたについでのやちる。
やちるは診察の結果大丈夫だったが、は…。

「りんご…病?なにそれ」

「頬がりんごみたいに赤くなる病気だ」

「でも、頬に赤みが出た時点ではすでに周りへの伝染も、本人が辛いと思うこともありませんので大丈夫ですよ」

夜だったにも関わらず診てくれた卯ノ花。
優しそうな女性だなと言うのがの第一印象。
お母さんと言うのがいたらこんな感じかと…。

「これならばいつも通りの生活で大丈夫ですよ」

「本当、すみませんでした」

「いいえ。檜佐木副隊長がご心配になる気持ちもわかりますから」

優しく笑む卯ノ花。

「ただ、身体にだるさがあったり、痒みがひどい時は休んでくださいね。一応痒み止めは出しておきますから」

卯ノ花はそう言って隊士の一人に薬の手配をさせた。

「先輩がうつしたくないって言っていたのは、先輩がりんご病って奴だったからですか?」

「えぇ。一般的には子どもがかかる病気なのですが、稀に大人でもかかる方がいるのですよ」

「先輩、子ども体質だったんすね」

「ち、違げーよ」

恋次は二マニマと修兵を見て笑うが、卯ノ花が凛とした声で仲裁する。

「そうは言っても馬鹿にしてはいけない病気なのですよ?特に妊娠中の方がかかると流産の危険もあるのですから」

「とにかく、大事なくて良かった…ちびっ子も大丈夫だって言うし」

「あたしは大丈夫だよー修ちゃん心配しすぎー」

やちるの批難の声をわざとらしく聞かないようにする修兵。

(心配は心配でも別の意味でだっての。ちびっ子を病気にでもしたら更木隊長が怖ぇんだよ…)

とりあえず、大事無いと卯ノ花に言われた
少し痒みがあったので貰った薬を塗って寝てしまうのだった。





「あれ……シロさん来ない」

いつもの時間、いつもの公園。
でもシロさんはいくら待っても来ない。





「す、すまんな、卯ノ花隊長…」

シロさんこと十三番隊隊長浮竹十四郎。
見事に彼もりんご病にかかっていた…

「いいえ。最近流行っているのでしょうか…気をつけませんとね」

これは各隊に通達せねばと卯ノ花は思うのだった。








パパはリンゴ病でした。ま、割となめちゃいけないものですよ。
06/02/04UP
12/06/03再UP