お父さんといっしょ。




ドリーム小説
【其ノ2】





「お、おはようございます。檜佐木副隊長」

「お、おう。おはよう」

「早々で申し訳ないのですが、虚討伐の報告書に目を通していただきたいのですが」

「わかった」

九番隊副官室に朝一で来た女性。
深々と修兵に頭を下げてから書類を手渡す。

「で、ではお願いします」

「おう」

再び一礼してから女性は副官室を出た。

「…はぁ…」

修兵は女性が去った方を見て溜め息をついた。

「………俺、嫌われてるのか…やっぱ…」

女性は、修兵の部下でもある。
九番隊第十席
仕事はそこそこできると思う。
人付き合いも良いほうだと思う。

でも、修兵に対しては畏怖を抱いているようで仕事上での会話しかしたことがない。
まぁしょうがないかと自分では思う。
副隊長って立場と自分の見てくれを思えば。
しょうがないと思っていても、少しばかりへこんでしまう。

だって、修兵は彼女が好きなのだから。



「は〜緊張した〜」

副官室を出てから一直線に廊下を走っていた
かなり離れた所で胸を撫で下ろす。

「朝から会えてラッキーだったな」

修兵の前では緊張して顔が強張っていた。
でも今は笑顔になっている。
さっきまでキュッと閉じて口は頬と共に緩みきっている。

「滅多に会うことないし…今日はいいことありそうだなぁ」

一日頑張るぞ!と目いっぱい伸びをした。


ぶっちゃけた話。
お互い気にはかけているってことだ。
あぁ、アホらしい。


「なんだよ、修兵の奴……」

午前中、修兵の自宅では彼の息子(養子)であるがちゃぶ台の前で仁王立ちしていた。

「何度も何度も念押したのに…何故に忘れるんだよ!馬鹿修兵!」

ビシっとちゃぶ台を、と言うよりちゃぶ台に置かれたものを指差す。
大きな封筒が一つでんと置かれている。
ひょこっとその場に正座する

「…これ、なきゃ困るものだよな?……怒られちゃうかな?隊長さんに…」

ちょんと意味もなく封筒を突付いてしまう。
そして腕を組んで考えこむ。

「でも、必要なものならば自分で取りに来るよな」

しかも彼は死神で瞬歩が使えるから、取りに戻るなんてわけもないだろう。

「……いっか?」

誰に言っているのだ。
誰もいないのに、確認してしまう。

「でもなぁ…やっぱ持っていく?」

は封筒を持って立ち上がる。

「途中で会うかもしれないよな。持ってくだけだし」

夕食の買い物もあるからちょうどいいから出かけよう。
途中で会えばその時に渡せばいいわけだし。
…でもあまり大事なものではないのかなと少し不安になるが。

家を出て九番隊隊舎に向かう。
思えば死神たちのいるそんな場所に向かうのは初めてだ。
瀞霊廷内は死神たちが住まう街だから会うことはよくある。
それに修兵の知り合いたちとは何度か会っているわけだし。
途中で見知った人に会えたら楽だろうなと思いながら進むが、今日に限って誰とも会わない。
そうしているうちに九番隊隊舎まで来てしまった。

「……どうしよう」

子どもが一人来たところで通してもらえるとは限らない。
だが、の姿は今ここでは異質に映る。
だからか、話しかけられた。

「君、どうしたの?」

「あ、あの届け物なんですけど…その…」

「ん?誰にかな?お父さんかお母さんが死神なの?」

綺麗なお姉さんが声をかけてくれた。
だが“お父さん”と言われて、素直に頷けなかった。

「呼んであげるよ。名前はなんて言うの?」

優しそうな人だからすぐに呼んでもらえるかなと思って名を告げる。

「え?」

「檜佐木修兵…」

「檜佐木副隊長?うん、わかったちょっと待ってね」

奥へ向かった女性。
あの人にはどう写ったかな?
最初に誰かの子どもと認識されたようだし。
はやはり来なきゃ良かったと思ってしまう。

少し経って女性が修兵と一緒に戻ってきた。

「あちらです」

。どうした?」

「あ……うん。これ、忘れてったろ?朝忘れるなって言ったじゃないか」

少し俯き加減だがは封筒と修兵に見せる。

「あ……そういやお前に何度も言われたよな」

修兵は封筒を受け取り、頭を掻いた。

「持ってきてくれて、ありがとな、

わしわしとの頭を撫でる修兵。

「別にいいよ」

俯きっぱなしのを不審に思う修兵。

「どうした?」

「なんでもない」

「副隊長。その子」

今まで黙っていた女性が修兵に問う。

「あ、あぁ。こいつ俺の「檜佐木の親戚!」

修兵の言葉を遮り少し強めにが答える。

…」

眉を顰めて唇を少し噛む修兵。

「副隊長と親戚なんだ」

女性はに向かってニコリと笑う。
は頷く。

「俺、帰る」

「お、おい!」

は修兵たちに背を向けて走り去っていく。

「…副隊長はあの子と仲悪いんですか?」

…別に悪くねーよ」

「じゃあ照れていたのかな?」

「何に?」

に声をかけたのはで。
としては初めてみた副隊長ではない表情の修兵を見れて嬉しかった。

「お仕事しているお兄さんの姿とか」

「…忘れ物するような奴に?」

「あ」

は軽く笑った。
その笑みに修兵の頬が少し赤くなるがすぐに真面目な表情に戻る。

「仕事に戻るぞ、

「はい!」

修兵は封筒の中身を確認しながら歩き出す。
も続こうと思ったのだが、足元の物へ目がいった。

「あ……お財布?」

カエルのがま口だ。
は拾って修兵を呼び止めようと思ったが、彼の姿はもうなかった。
おそらく、先ほどの少年のものだと思うのだが。

「…今から追いかければ間に合うかな」

は少年が向かった方に駆け出した。
財布はないと困るだろうと思って。



「……あれ、財布?俺のガマちゃんがない!」

ポケットを何度も探るも愛嬌のあるカエルのがま口がない。

「どうしよう…今日の夕飯買えない…」

どこで落としたのだろう?
いや、家に置いてきた?
そんなはずはない。
だって、出かける時にちゃんとポケットに入れたのだから。

「もう〜どうしよう〜」

頭を抱えて座り込んでしまう。
今から戻って修兵にお金を貰おうかと思ったのだが、あんな態度をとったばかりで引き返せない。

あんな態度を取ったからバチが当たったとか?
でも、しょうがないじゃないか。
は他所で親子だという事をある理由で知られたくないのだ。

「どうしたの?そんなトコに座り込んで。お腹痛いの」

「い、痛くないよ」

顔をあげると自分より幼い感じのする少女に声をかけられた。

「子どもがこんなトコで何してんの?」

「こ、子どもってお前だって子どもじゃないか」

「あたしは子どもじゃないもん」

「どこがだよ、俺よりチビじゃん」

お互いにムッとする。
なんだいきなり。
ピンク色で外にはねた髪が少し可愛いとは思うのだが。
でも良く見たら死覇装を着ている。

「…まさか死神?」

「そーだよ。死神だよ。あたしは草鹿やちる。十一番隊の副隊長なんだから」

「え…」

どうだ凄いだろうと胸をはるやちるには絶句する。
自分より幼いと思ったのに。

「あんたの名前は?」

「俺は………檜佐木

?檜佐木?…修ちゃんのこと?」

「修ちゃん?修兵のことだったらそうだよ」

「へーは修兵と同じ名字なんだ」

いつの間にかやちるまで座り込んでいる。

「うん。修兵は俺の親戚だよ…」

今日二度目だ。こんなこと言うのは。

「そうなんだ〜……で、なにしてんの?ここで」

「あ、えっと・・・財布落としたみたいで。アレがないと今日の夕飯作れない」

「そっか。大変だね。一緒に探してあげる」

「え、いいよ」

「なんで?」

「だ。だって副隊長は仕事忙しいだろ?…あ、じゃなくて忙しいんですよね」

やちるはぷくーっと頬を膨らます。

「なんで、急に言葉遣い変えるの?つまんなーい」

「だって、副隊長」

「あたしは副隊長だけど、友だちにそんな風に言われたくないもん」

「と、友だち?」

「そう。はあたしの友だち」

「いつから?」

「今さっき。だからもあたしのことやちるって呼んでいいよ」

変な奴。
会ったばかりなのに。
でも、の回りは大人ばかりだから嬉しくはあった。

「わかった。やちる」

「じゃあ。これあげる。特別だからね」

やちるは袋を取り出し、の手の上に中身を出した。

「わ、なんだよ。こんなに」

「こんぺいとう、おいしいよ!にもわけてあげる」

「こ、こんなに?」

山盛りだ。

「ごはん、これにすれば?」

「無理だよ、修兵食べないよ」

「修ちゃんのごはん作ってるの?」

「う、うん。修兵の家に住んでるから」

「そうなんだ〜じゃあ今度遊びにいくね」

「う、うん」

やちるを見てると悩むのが馬鹿馬鹿しく思えた。
だから話をしていて自然と笑顔になった。

「あーやっと笑った〜」

「え?」

、ずっとここにしわがよってた。なんかシロちゃんみたい〜」

ずっと眉間にしわがよっていたようで、思わず隠してしまう。

「今度シロちゃんにも会わせてあげるね。きっとと気が合うよ」

「そっか楽しみにしておくよ」

「約束ね」

眉間にしわがよりっぱなしだと言うシロちゃん。
相当苦労しているんだなと思ってなんだか可笑しかった。
は金平糖を一粒口に放り込んだ。

「甘い…でも美味いや」

「でしょ?」

「…なんか夕飯これでいいかなって気がしてきた」

おかずとして出したら修兵はどんな顔をするだろうか?

「あ、いたいた〜」

二人の所へ先ほどの女性がかけてきた。

「草鹿副隊長。こんにちは」

ニコリとやちるに向かって微笑む。

ちゃん、に用事?」

「はい。これ、君のだよね?」

にカエルのガマ口を見せる。

「あ、俺の財布。ありがとう、お姉ちゃん」

「どういたしまして。渡せて良かった。檜佐木副隊長に渡そうか迷ったんだけど」

から財布を受け取る
ただ、金平糖をどうしようか迷う。

「やちる。なんか袋もってね?このままじゃ持って帰れない」

「食べればいいじゃん」

「こんなにいっぺんには食えない」

「しょうがないなぁ。今回だけだからね、袋ごとあげる」

やちるが最初に入れていた袋へと中身を戻す。
そしてそれを貰った。

「じゃあ今度、俺がやちるになんかあげる」

「ホント!?」

やちるは手放しで喜ぶ。
はようやく立ち上がり、ちゃんとに頭を下げた。

「お姉ちゃん、ありがとう。おかげで夕飯買える」

「ううん。本当にたいしたことじゃないから。でも良かったね」

「うん」

「君が…えっと君?が檜佐木副隊長の食事の用意するんだ?」

「うん。家事は俺がやってる」

「すごーい。でも知らなかったなぁ。副隊長にこんな可愛い家族がいたなんて」

「か、可愛くないよ!それにあんま知られたくないから…」

「な、なんで?」

は不味い事でも言ったのかと慌てるがはなんでもないと顔を背けた。

「俺、もう行くから。やちる、また今度な」

「うん、バイバーイ」

「お姉ちゃんも…お姉ちゃんの名前は?」

「わ、私はよ。。よろしくね」

「うん。じゃあな、姉ちゃん、やちる」

は、今度は落とさないぞと財布とやちるからもらった金平糖の袋をしっかり握って走り出した。








女主も登場。でもメインは息子君。
05/12/12UP
12/06/03再UP