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お父さんといっしょ。
「起きろー、起きろ。修兵ー」 少年が部屋の窓を全開に開けると清々しい空気がと光が入ってくる。 「んー…まぶし……」 急に入ってきた光に目がくらんで思わず毛布を被ってしまう。 「何してんだよ、今日は定例集会ってのがあるんだろ?遅刻してもしらねーぞ」 「………」 「副隊長がそんなんだと下の奴等に示しがつかねーぞ」 「………」 「もうすぐ早くしねーと、メシ冷める!食わねーなら恋次と食うからな!」 「……恋次?」 彼が毛布から顔を出した時には少年はすでに階段を降りた後だった。 仕方なく起きて同じように階段を降りた。 障子を開けると家主を差し置いてちゃぶ台の朝食に手をつけている男が一人いる。 「…なんでお前がここでメシ食ってんだよ…」 「おはようございます、檜佐木先輩。お先頂いてます」 赤髪の男は質問には答えずふっくらとした厚焼き玉子を頬張っている。 「修兵!先に風呂入ってこい。沸かしてあるから」 「あ?別にいいって……それより」 「煩い、先に入れっての。修兵酒臭いんだよ」 「………」 昨夜は目の前にいる後輩と飲んだ記憶はある。 どうやら帰宅後そのまま寝てしまったようだ。 「わかった、先に入る」 幼い子どもにキツク言われて渋々風呂場へ直行した。 その背中はなんだか情けないなぁと後輩は苦笑してしまう。 「お前、先輩によくあんな口聞けるな」 「俺だって最初は大人しくていた。でも途中からバカバカしくなったんだよ。恋次おかわり食うか?」 「おう、大盛りでな」 「わかった」 自分に対しても同じような態度だが、そこら辺は追及しない。 茶碗に言われたとおりにご飯を盛る少年。 「はい」 「おぅありがとな」 受け取り再び食べ始める。 数分してから家主がさっぱりした顔をして入って来る。 「あ、阿散井てめー一人で食ってんじゃねーよ」 「先に頂いてますって言いましたよ」 「うるせー。ってなんでお前がウチで食ってんだよ」 「あー檜佐木先輩酷いっすよ。ベロベロに酔った先輩を運んだの誰だと思ってんすか」 「……覚えてねー」 「くそ重てぇの我慢して運んでやった可愛い後輩に対して酷い仕打ちっすね」 「しょうがねーよ、修兵だもん。恋次、コレ食って元気出せ」 少年が彼の茶碗の上に厚焼き玉子を一切れ乗せる。 「あー俺まだ食ってねーんだぞ、!」 「いいじゃん、玉子焼きの一切れぐらい、昨夜は恋次も大変だったんぞ」 「そうそう」 「くっそ……」 少年が茶碗にご飯を盛り家主の前に置いた。 「立ってないで、修兵も食べる。本当に遅刻してもしらねーぞ」 「おぅ」 言われて腰を下ろす。 朝から随分賑やかな食卓。 これが普通。 普段は家主と少年の二人きりだが、それでも賑やかだと思う。 そしてこれから出勤だと言う二人を見送る。 「じゃあ、行ってくるから」 「メシごちそうさん。またよろしくな、」 「図々しいんだよ、阿散井」 「いいじゃないっすか、先輩〜」 「わかったから、早く行けよ。本当に遅刻だぞ!副隊長二人が遅刻なんて恥ずかしいんだぞ」 少年に言われて男二人は慌てて駆け出す。 「いってらっしゃーい!」 「おぅ!」 「……よし」 玄関で仁王立ちして二人がちゃんと出かけたのを見届け少年は踵を返す。 「今日はいい天気だからな、修兵の布団干しておかないとな、恋次が使った分も」 パタパタと階段を掛けていく。 各部屋に敷きっ放しの布団を小さな身体で数往復しながらベランダに運ぶ。 「っしょいと…ふぅ…これで良し。次は洗い物だ」 小さな身体で忙しなく動く。 これが少年の仕事でもあるのだ。 少年の名は。 先ほどまで一緒に食事をしていた家主檜佐木修兵の息子。 息子と言っても義理。 1年ほど前に養子になった。 理由はとりあえず、置いといて。 親子と言っても、修兵は家事では頭が上がらない。 を養子にするまで一人暮らしはしていたのだが、きっと今一人で暮らせといわれても多分無理。 がいないと何もできないダメ親父に成り下がっている。 でもにとって修兵は父親なわけで、嫌っているわけでもない。 なんだかほっとけない気分になる。 恋次。 修兵の後輩だと言う阿散井恋次にも言ったのだが、最初は緊張しまくった。 何せ、修兵は護廷十三隊の九番隊副隊長。 何か粗相があってはならないとかしこまっていたのだ。 言葉遣い。 態度。 色んなものに。 でも、修兵のもともとの性格のせいか、自分の出自のせいか。 なれないことは長くは続かず、今のようになった。 でも修兵はその方がいいと笑ってくれるのでも気が楽になった。 それ以来、親子だけど兄弟のような友だちのような関係が続いている。 「でも、俺としては不満な点もあるんだな、これが」 「は?どの辺にっすか?」 食堂で恋次と同じく後輩のイヅルを連れて昼食をとっていた修兵。 「君は先輩には勿体無い出来のいい子じゃないですか」 「……吉良、大人しい顔して言うじゃないか」 「本当のことだもんなぁ」 この後輩は可愛くないと修兵は毒づく。 「檜佐木先輩が1年も父親をやっているってのが凄いですし」 「まだ言うか…」 「な〜先輩んち行ったらガキがいたから驚いたよなぁ」 礼儀正しく出迎えてくれた頃が懐かしい。 「どこの女に孕ましたのかと思ったっすよ」 「阿散井、殴るぞ」 修兵は恋次が食べていたヒレカツを一枚食べてしまう。 「あー先輩何するんすかー」 「うるせー。ちっとも話が進まないじゃないか」 これ以上は食べられては敵わないと恋次は大人しく聞き手に回る。 イヅルはすでに食べ終えてお茶を啜っている。 「アイツ、人前で俺のことなんて呼ぶか知ってるか?」 「「修兵」」 「だろ?」 「それのどこに不満が?」 「不満。大いに不満だ。俺って一応父親だろ?だったら呼び方は一つだろうが」 恋次とイヅルは顔をあわせる。 修兵は不満たらたらで箸で煮物を突付いている。 「……わからなくもないっすが、先輩に向かってお父さんって呼ぶのなんか変じゃないッすか」 「お父様って感じもしないですよね」 「なんだよ…俺は父親じゃないか」 「百歩譲って親父じゃないっすか?」 「そうかなぁ」 どれも結局似合わないと恋次たちは笑う。 「似合う、似合わないじゃねーんだよ」 「そうですけど、もっと威厳をつけてから言わせればいいんじゃないですか?」 さらりと放ったイヅルの一言に固まる修兵。 「………」 「それともパパって言われたいっすか?うわ、気持ち悪ぃ〜」 ゲラゲラと大笑いする恋次。 イヅルも口元を隠して笑っている。 修兵だけが面白くない。 「………あともう一つ」 「まだあるんすか?」 今度はどんな面白い事を聞かせてくれるのだと恋次の目は楽しそうにしている。 言うの止めようかと修兵は思うが、のことを話せるのはこの二人のみなので 仕方なく話す。 「アイツ、初対面の人に向かって“檜佐木の親戚です”とか言いやがる…」 「よっぽど先輩の身内って思われたくないのですね」 「吉良…お前俺を傷つけて楽しいか……」 胸元を軽く押さえる修兵。 恋次も流石にそれは言わないほうが良かったのにと乾いた笑いが出てしまう。 「そう言うことは君に直接言った方がいいですよ」 「ま、まぁそうなんだけどな」 なんとなく聞きづらい。 イヅルが本気で言ったわけではないとわかっているが、が本心では嫌がっているのかなとか思うと中々聞けないのだ。 おかげで、直接修兵の自宅に行った事のあるこの二人以外にはは親戚の子ってことになっている。 「あ、先輩。今日は定時上がりっすか?」 「あん?まぁな」 「じゃあ今晩お邪魔していいっすか?」 「くんな」 「酷いっすー自分ばかり美味いもん食ってー」 「あ、僕も行きたいです。君に久しぶりに会いたいですから」 勿論お土産持参しますよとイヅルは言う。 恋次も持っていくからと煩いので渋々了承した。 帰り道。 「修兵ー」 買い物袋を手にして駆けてきた。 お使いの似合う少年だと思わず頭を撫でてしまう。 「な、なんだよー」 「いや。夕飯の買い物終わったのか?」 「うん。今日は修兵の大好きなものだぞ」 「…コロッケ?」 「そう。だから急いで帰って作ろう」 買ってきたものではなく、これから作るのだという。 面倒臭い気もするが、の作ったコロッケは確かに嫌いではないし。 むしろ好物なので修兵は再びの頭を撫でる。 「それじゃあ、急いで帰るぞ。」 先ほどみたいに嫌がる様子もなくもにこりと笑む。 「あ、忘れてた。後で阿散井と吉良が来るってよ」 「恋次とイヅルが?じゃあ沢山作らないとすぐになくなるぞ」 時間もかかるから早く行こうと修兵の手を取り走り出す。 「そうだな……」 とりあえず、今はまだいいか。 今みたいな関係も嫌いじゃないし。 自分の手を取るってことは少なくとも嫌われてはいないんだ。 そう思うことにした。 修兵の家族話。
05/11/27UP
12/06/03再UP
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