ドリーム小説
【息もできない】





、あの」

「………」

姜維はに謝りたくて、彼女を見つけ呼び止めた。
だが、のほうは聞く耳持たぬと言った感じで姜維の横を素通りしていく。

「ちょっと待って!」

の腕を掴む。

「僕の話、聞いて」

にしてみれば今更なんだと言う気持ちの方が強いのだろう。
告白したのに、信じてもらえないなんて。
姜維も自分のしたことがどれほどを傷つけたかわかっているつもりだ。
最低だと思っている。

「話ってなんの?」

それでもは聞いてくれるようで姜維はホッとする。
ただ、まだその顔には怒りが解けていないようでむくれている。

「あ、あのね…」

はっきり言おうと思っているのに、なんて言えばいいのかわからない。
これは散々悩んだことではないか。
悩んで、それでもと仲直りがしたいって結論に達して、とりあえず謝ろうって。
勇気を出さねば。
ここでまた躊躇すれば、に不信感を与えてしまう気がする。

「ごめん!」

「………」

「ずっと謝りたかった」

「………」

「許してもらえるとは思ってないけど、このままってのは嫌だし」

「何に?」

「え?」

「何に対して謝っているの?姜維は」

「……君を傷つけた事、かな?」

「なんで疑問系なのよ」

「あ、いや」

「傷ついたよ、いっぱい傷ついたよ。泣いたし、もう姜維なんて嫌いだって思った」

「だ、だよね」

はっきり面と向かって嫌いと言われて痛みが走る。
でもそれで落ち込むのは筋違いだと思う。
自分は先にそれをにしてしまったのだから。

「でも謝りたかったからさ。ごめんね、

「………」

今までずっと掴んでいたの腕をそっと放す姜維。
謝ったらどうするのだっけ?
色々考えるも、今更告白する雰囲気でもないし、勇気もない。

「それだけ、だから…」

姜維はに背を向けて歩き出す。
意気地なしだなって自嘲する。
これでは一方的に言っただけで、なんの解決もしていない。
謝った。
はい、終わり。

それでは駄目なのに。

でも【嫌い】って一言がこんなにも胸を締め付けるものなんだと思ったら。
それ以上は何も言えなくて。

「あ…姜維」

で、去っていく姜維の背中を見て自分からは何も言えずにいた。
姜維の方から声をかけてくれて本当は嬉しいのに。
きっかけを作ってくれたのに。
意地から、素直になることを拒否してしまった。

嫌いって確かにあの時は思った。
思ったけど、今までずっと好きだったのに、簡単に嫌いになれるわけ無いじゃないか。
せっかく姜維が謝ってくれたのに。

何に?って聞けば自分を傷つけたと言った。

一瞬、またも振られたのかと思ったが、そうじゃなくて…

もう友だちにも戻れないのだろうか?
一緒に昼を食べたりなんてことももうないのだろか?
自分が仕事に夢中の姜維を呼びに行ったり…
いつも普通にしていた事が一瞬で消えてしまった。

このまま自分はずっと怒った振りをして、姜維と距離をとってしまうのか。
そして、姜維は姜維の好きな女性のことをずっと思い続けていくのだろうな…

(それでも、このままなんてのは嫌だ)

自分が姜維を突き放してしまったのに、元通りになりたいってのはずるい?

(ずるいよね?ずるいけど、そう思ったんだもん)

視界がぼやけてきた。
泣くのは簡単だ。
ここで泣いていても何も始まらない。

そしては駆け出していた。
姜維の長い髪、一つにまとめた髪を掴んだ。

「痛っ」

「姜維」

姜維は首だけで振り向く。
自分の髪を掴んで俯いている
姜維は視線を前へと戻す。

「私も謝る。ごめん」



「虫がいいってわかってる。わかってるけど姜維と仲直りしたい」

「それは、僕だって。君と喧嘩したままなのは嫌だよ」

背中から聴こえるの声。
少し震えているのがわかる。
でも自分の声も震えている気がする。

「あのね、

ここで言うのは、ちょっと変かもしれない。
変だろうけど、ここで言わなきゃいつ言う?

に顔を向けれてないのが情けないのだが、顔が見えない分ちゃんと言えそうな気がした。

「僕の好きな人ってのはね」

一呼吸いれる。

のことなんだ」

「え…」

後ろでどんな顔しているのかな?
嘘だってやっぱり思うかな?

「僕は前にも言ったとおり、君の好きな人が趙雲殿か馬超殿だと思っていたんだ。
正直な話、君のことは本当にいい友だちだと思っていた。この先もずっとそう続くのだろうなって。
でもね、いつも一緒にいたのに、君が他の誰かの隣で笑っているのだろうなって思ったらすごく嫌な気分になった。
のことが好きなんだって気づいても、きっと君の好きな人は…って思ったから」

キュッと拳を握る。

「思ったから、ずっとこの想いは隠していこうって…」

「なんで?私の好きな人が趙雲か馬超って思ったの?私一言もそんなこと言ってないよね?」

「あ、それは…だって、あの二人はとても凄い人だと、大抵の女性はお二人に夢中になるだろ?も、自分の好きな人は【王子様】って言ったよね。お二人がまさにそれだって思ったし」

【王子様】ってあの時思わず言ったことを思い出し、は恥ずかしくなる。
もっと他にも言いようはあっただろうにと。

「僕はお二人に比べればまだ未熟でどうしようもないから…」

先日の馬超とのやり取りで、少しは気持ちや見方ががかわったのだが、やはりそれがコンプレックスになっているようで
すぐには拭いきれず言葉に出してしまう。
自分の小ささを口にするのは男らしいとは思えない。
思えないけど、正直に全てを吐いてしまわないと悪循環になって苦しいから。
嫌われてもいい、本当の自分はこうなんだってに知っていてもらいたかったから。

「そんなことない。姜維だってカッコいいもん」

は姜維の背中に自分の額をつける。

「あの時言った【王子様】は姜維の事だよ。覚えてない?初めて姜維と出会ったとき、姜維は私の事助けてくれたんだよ。すごくカッコよかったんだから」

そう言われて顔が赤くなるのが自分でもわかった。

「尚香と出かけた占いの館でも姜維との相性を占ってもらったしね」

そんな事もあったなと思った。
でも、あの時の自分はの好きな人は趙雲か馬超だと決め付けていたから。

は、まだ相性最悪って思う?」

「あの占い師に言われた事?思ってないよ。最初はかなりへこんだけどね。姜維は励ましてくれたし、何より姜維と相性が悪いって気がしないし」

「だよね。僕もそう思った」

くっと笑みが零れる。

「姜維。嫌いなんて嘘だからね。姜維のこと好き。すっごい好きだから」

「………」

「ずっと好きだった。今も好きだから」

【好き】と連呼されて嬉しさと恥ずかしさで口元を隠してしまう。
現金だなって。
今の自分はすっごく嬉しい顔をしてるに違いないと。

「姜維」

「なに?」

「顔見せて」

「えっと。どうしようかな」

「なんでよ」

「恥ずかしいから」

「私も恥ずかしいけど。姜維の顔見たい」

「痛いよ、。髪引っ張らないでくれよ」

姜維が背中を向けたままなのが気に入らなくて、今どんな顔をしているのか気になって。
思わず髪を引っ張ってしまう。

「じゃあ顔見せて」

「わかった」

姜維が同意したのでは掴んでいた手を離す。
くるりと反転した姜維。
顔中真っ赤にしている。

「「ぷっ」」

互いに互いの顔を見て笑った。
同じように赤く、口元が緩んでいるのだから。

のこと好きだよ」

「私も姜維が好き」

「仲直りできた…かな?」

「できた。と言うよりそれ以上だと思うけど?」

「だね」




ようやく痞えた物がとれた気がした。








05/01/09
12/05/13再UP