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【好き】 と仲直りしようと思ったのに、さて何をどう言って良いやら悩み始めてしまった。 だって、喧嘩の原因は恋愛絡みだから。 最初はが姜維が告白されていた事を見てたってことに姜維が腹を立てた。 で、が姜維を好きだと言ってきた。 で、そんな事は嘘だと思って、そう言ったら叩かれた… 「なんて言って謝るんだよ…」 馬超と趙雲から逃げ出したのにすぐにの元へ謝りに行けずに1日経ってしまった。 本来ならば仕事をせねばならんのだが、机の前で、うんうん唸りながら先ほどから悩みまくっている。 「僕のこと、好きだって…」 「好きって……うわっ」 馬超に励まして(?)貰ってから改めて考えていたら急に恥ずかしくなった。 さっきまでは全然信用してなかったから。 は自分のドコがいいんだ?とも思った。 馬超や趙雲ってすごい人がそばにいるのに。 なんで自分なんだって。 『だって、私、姜維の事好きだもん!』 うわ、うわ、うわ〜 「ヤバイ……口元が緩む」 だって本当は自分だってが好きなのだから。 姜維はの好きな人ってのは馬超か趙雲だと思っていて そんな二人に敵いっこないって思ってたから告白もしないで隠していた。 でも、そうじゃなくて、は自分が好きで… ようやく嬉しさが湧き上がってきた。 謝るとか、これからどうするとか、そんなのが、今の姜維には全て吹っ飛んでしまって。 照れて机をバシバシと叩いてしまう。 笑って、照れて、机叩いて。 そんな事を数回繰り返す。 「…何してんだろ、僕…」 急に自分が阿呆に見えた。 溜め息をつきながら上体を机に突っ伏す。 顔だけを横に動かし窓の外を見つめる。 「お腹空いた…」 いつもならばが『お昼食べに行こう!』って呼びに来てくれる。 でも昨日、今日との姿なんか全然見てない。 「そりゃあ、そうだよなぁ…」 はもう自分のこと嫌いになっただろうなぁと感じる。 去り際に嫌いだー!って言われたし。 「姜維殿」 「は、はい!」 慌てて身体を起こした。 馬岱が沢山の書物を抱えて笑っているではないか。 「何度かお声をかけたのですが、聴こえなかったようですね」 「あ、あは、あはは…申し訳ありません、馬岱殿」 「いえ、お気になさらず」 そう言って馬岱は持っていた書物の一冊を姜維に手渡す。 「お借りしていた本、お返ししますね」 「あ、わざわざすみません」 「姜維殿はまた色々悩んでるようですね」 「い、いや。別に」 馬岱には先日、のことで悩みを聞いてもらった。 またも見透かされたようで恥ずかしく感じる。 もう馬岱には隠せない感じだ。 ただ、馬岱は無理やり聞き出そうってことをしないからいい。 手渡された書物を脇に置く。 「馬岱殿にはいつもお恥ずかしい姿ばかり見せてますね」 「そんな事ないですよ。いいじゃないですか、若者らしい悩みで」 「そ、そうですか?」 「私なんか、いつも従兄上の事で頭を悩ませてますから」 仕事もしないでフラフラと勝手にいなくなる従兄弟をあっちだ、こっちだ探してる毎日。 捕まえても素直に仕事をしてくれないので、つい口煩く言ったりして。 「昨日も仕事放って趙雲殿から逃げたようでして」 あ、それは自分も一緒でした。 「た、大変でしたね、あは」 「もう慣れですよ、これは。またかと思って諦めてる自分もいますし」 「あ、諦めちゃうって」 「思うだけで、実際には諦めませんよ?従兄上の事、見捨てたりしたら、それこそ大変な事になりますし」 馬岱が執務放棄なんてしたら、そりゃ大変だ。 「最終的にはちゃんとしてくれるからいいのですが、周りに迷惑かけっぱなしってのがね」 「はぁ」 「一度、出仕拒否してみようかなって考えているんですけど」 にっこりと笑いながら言う馬岱に姜維は驚く。 「そ、そんな事したら大変じゃないですか」 「誰が呼びに来ても従兄上が仕事してくれないから嫌ですーーって我が侭言ってみたいなぁって」 「馬岱殿〜」 「従兄上も一度痛い目見た方がいいと思うんですよね」 そんな事になったら、馬超は果たして必死で仕事をするだろうか? 姜維の脳裏には「あ、そう」って遊びに行ってしまう馬超の姿が浮かぶ。 「結果は半々かもしれないですね」 「そうですか?」 「従兄上のことだから、最初は必死でやってくれるかもしれないけど、途中で飽きてしまいそうで…」 「それって結局誰かが見てないとだめって事ですか?」 「ですね。従兄上は“オレの仕事場は戦場だ!”ってお人ですから」 「言われて見ると・・・」 「私も従兄上が机上で書類と睨めっこしている姿より馬上で戦場を駆ける姿の方が好きなんですけどね」 「馬岱殿」 馬岱は人差し指を口元に持っていき、小声で『内緒ですよ』って片目を瞑った。 「そんな事、従兄上が聞いたらますます仕事をしなくなりますからね」 「あは、そうですね」 なんだかんだ言って、馬超に甘い馬岱のようだ。 *** 馬岱としばらく話し込んだ後で、適当に昼餉を済ませた。 そして再び仕事場に戻り、午後の執務を開始する。 だが、午前中と同じでアレコレ考えての繰り返しで中々進まない。 「やっぱり、謝ってすっきりさせた方がいいのかなぁ」 でも、なんて言って謝ろう? そこでつまずいてしまう。 酷いこと言ってごめんなさい? 「そうかもしれないけど、だって悪いと思うぞ…」 盗み見ていたし。 しかも、自分叩かれましたから。 「あれは痛かった…」 稽古中の怪我や戦でついた怪我も確かに痛い。 でも今回のは物理的なものに加えて精神的にも痛かったし。 「ってすごいな…」 この時代の女性は男性に歯向かうことってのがあまりない。 住んでいた世界の違いか。 「のいた世界の女性って強いんだな、きっと」 いやいや、ここの世界の女性も強いですよと、話を耳にした人間は思わずそう答えてしまうかもしれない。 話がそれた。 「本当、さっさと謝りたいけど、会ってくれるかな、…」 早く行動しないと、そろそろ馬超にまたからかわれてしまうかもしれない。 「あぁ?まだ仲直りしてねーの?しょうがねーなー姜維は」 って。 「ま、確かにしょうがないんだけどね、今の僕じゃ」 このままだと仕事にもならないし、早く本当に何とかしたい! でも、できない! この繰り返しはどうにかならないだろうか? 「…ちょっと待てよ?もしかして、僕は…」 あることに気づいた姜維。 に好きだって言われて、んなわけない!って一蹴した姜維。 「謝るには…僕がに告白しないといけないのか?」 実は僕の好きな人は君でした、あはは、ごめんね〜 これは軽い言い方だが。 「いや、別にしなくても謝れるよな、うん…」 とりあえず、傷つけてしまったことを謝るべきなんだろう。 その後で、告白すればいいのかな? …告白するのか?自分? 自問自答が始まった。 「あ〜もう〜」 一体自分は何をどうしたいんだ? 「に謝りたい」 じゃあ、謝ればいいじゃないか。 「会ってくれるかな?」 会ってくれるまで、何度も会いに行けば? そして、どうする? 「わからない…けど」 けど、なんだい? 「やっぱ、好きだから。嫌われたままでいたくない」 じゃあ、頑張れ。 「うん、頑張る」 最終的に謝ったとしても、もうに嫌われて駄目かもしれない。 けれど、自分が彼女を好きな気持ちは変わらないから。 隠してた気持ちを伝える勇気は、今はちょっとない。 ないけど、一言謝りたいんだ、やっぱり。 04/12/16
12/05/13再UP
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