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それを見た時、私の中で先を越された悔しさと 自分にはできないという思いからの羨望が入り混じってとても嫌な気分になった。 【告白】 その日一日とても天気が良くて結構気分が良かった。 はいつものように昼餉は姜維と食べたし、空いてる時間は尚香と楽しく過ごした。 今日も一日ご苦労様と趙雲と馬超を見送った。 さぁ、自分も部屋に帰ろうとした時、渡り廊下にいる姜維の姿が見えた。 (あ、姜維だ。何してるのかな?) いつもみたいに声をかけようとしたができなかった。 彼の向かいには女性がいたから。 誰付きのかはわからないが何度か見かけたことのある女官だ。 彼女は少し恥ずかしそうにしている。 それだけで、どんなシーンなのかは簡単に想像がついた。 普通ならば見たくないから、彼らにばれないように去ればいいのだが 姜維の返事、または姜維が彼女へなんと言うのかが気になった。 だから、少しだけ近づいてしまう。 「あの話ってなんでしょうか?」 「は、はい…」 どうやら彼女から姜維に。らしい。 「あの…ずっとお慕いしておりました……私、姜維様が好きです」 「え」 ポッと頬を染める女官。 姜維が少し戸惑っているのがわかる。 「ぼ、僕のことですか…」 まさか自分が告白なんぞされるとは思わなかったらしい。 すぐ近くには趙雲、馬超って自分よりもすごい人がいるのだから。 「お、お気持ちは嬉しいのですが…すみません」 「そう、ですか…」 あっさりと彼女の気持ちを断った姜維に、どこかホッとした。 だが同時に、本当に今の彼には恋愛ごとなど興味はないのだと感じ少し寂しい。 自分も気持ちを伝えたら、彼女みたいに断られるのだろうかと思う。 「あの、姜維様」 「は、はい」 「姜維様はどなたかお好きな方でもいらっしゃるのですか?」 「え!?」 「相手が誰なのかはお聞きしませんから、それだけでも言ってくださいませんか?」 そうすれば自分はまだ諦めがつくから・・・ いないと言うならば、きっと思い続けてしまうから。 (姜維の好きな人…恋愛には興味ないって言ったけど…) それに『いない』って自分に言った。 「好きな人、ですか………います」 いないって言ったのに、姜維の口からは『いる』と出た。 「います。でも…僕はあなたみたいに想いはきっと告げられないですけどね」 「そんなことは」 その姜維の顔は少し寂しそうだった。 「諦めてしまっているので。だから、こんな情けない奴なんかにあなたが気に留める必要はないです」 「姜維様…」 それでも女官に向けて笑った顔を見せる姜維。 いや、から見ればその笑みは『彼の想い人』に向けてのモノではないだろうか? そう思えて切なかった。 (姜維、好きな人いないって言ったじゃん…興味ないって…) あれは自分になど言ってもしょうがないってことか? はもうその場にいられなくて、彼らに見つからないうちにと逃げた。 (姜維の好きな人って誰だろう?) 姜維が諦めてしまうような人って? すでに結婚してしまった人? すでに彼氏がいる人? 身分の違い? 故郷に置いてきた人? それとも、もう二度と会うことのないような遠き場所に行ってしまった人? (ずるいよ、姜維…いないって言ったくせに…) 違う、覗き見したから罰が当たったんだ。 後で覗いたのがばれたら姜維に嫌われてしまう。 文句なんか言える立場じゃないのにね。 でも、これで自分は失恋決定なんだ。 *** 泣いて悲しむなんて、そんなことはするもんかと決めた。 だって、自分の口から伝えてきっぱり断られるのならいいが、昨日覗き見して一方的に知ったのはずるいと思ったから。 だから、今日、姜維に会ったらいつも通りにしようって決めた。 「姜維ーお昼食べよう〜」 「………」 「ん?どうしたの?」 姜維に声をかけたのに、姜維はを見て少し眉を顰める。 「どうしたのは、君のほうだよ」 「ん?」 「なんか空元気なように見えるけど?」 ……意外に鋭い。 でも、そんなこと気にしてもらっても困る。 「そんなことないよ?変な姜維〜」 「」 「さ、早くお昼食べに行こうよ。早く行かないと好きなもの無くなっちゃうよ」 は姜維の腕を引っ張り歩き出す。 「ちょっと、!」 姜維は引っ張られた腕を引っ込め立ち止まる。 「姜維?」 「僕には言えない?そりゃあ、趙雲殿や馬超殿に比べたら頼りにならないけど」 「え、ちが、違うよ」 「君の様子がおかしいなんて見ればわかるよ、いつも一緒にいたのだからさ」 「………」 いつも一緒にいたから? は俯いてしまう。 いつも一緒にいたのに、こっちの気持ちなんて気づいていないじゃないか。 悲しく、腹立たしい。 心配してくれるのは嬉しいが、それはやはり友だちとしてか。 「?」 「じゃあ、今私の考えていることわかる?」 「考えていること?」 「ずっと、何を思っていたか当ててよ」 顔を上げて姜維を見る顔は怒っている。 こんなのなんか初めてだ。 「考え事まではわからないよ……ごめん」 本当は言いたくないけど、腹が立って口にしてしまう。 「姜維の好きな人って誰?」 「な、何を突然」 「姜維に好きな人いるって知ったの!でも、姜維は前に私に『好きな人いない』って言ったじゃん」 「それは…」 急に何を言い出すのかと姜維は思う。 今、の様子が可笑しいのと自分の好きな人なんて関係ないではないか。 と言うか、どこでそんな事を知ったのだと思う。 昨日の女官がわざわざ人に広めるようなことはしないと思うし。 「僕の好きな人なんて、君には関係ないだろう」 「関係なくない」 「!」 「興味ないって言ったくせに、隠すようなことなの?」 「だから、そんなのには」 「姜維はその人のこと諦めているから?」 「、ちょっと待ってなんでそんな事……昨日、聞いてたの?」 「………」 姜維ギュッと拳を握る。 「盗み聞きなんて酷いじゃないか」 「わざとじゃないもん、聴こえただ」 の言葉を最後まで聞かないうちに姜維は声を上げた。 「それでも、せめて知らぬ振りぐらいすべきだろ! 僕は良いとしても彼女が他の人が知っているなんて知ったらいい気持ちしないだろう。 さっきも言った。僕の好きな人なんてには関係ないから、君が知る必要なんてないんだ」 「関係ある!」 「関係ない!ほっといてくれよ!」 「っ」 は一瞬怯むが抑え切れなくて言葉を放つ。 「だって、私、姜維の事好きだもん!」 「ぇ…」 言ってしまったと、は大きく息を吐いた。 姜維は一瞬大きく目を見開く。 だが、すぐさま顔を背けた。 「か、からかうのよしてくれないか」 「からかう?」 「君の好きな人が僕?そんなわけないだろう?」 何故に姜維に否定されねばならない、は自分の耳を疑った。 「それとも、友だちだから、だから友だちの好きな人ってのに興味あるの?」 全然通じてない。 それがとても痛い。 さらに姜維の口から出る言葉に打ちのめされた。 「の好きな人は僕じゃなくて、趙雲殿か馬超殿だろう?」 …………。 「姜維の馬鹿!」 バチンと辺りに気持ちのいい音が響いた。 に引っ叩かれた。 そして、そのままは走り去ってしまった。 叩かれた所為で、耳の奥がキーンと音がする。 「なんだよ……それ」 叩かれた箇所を数回さすり、そのまま顔を覆った。 「だって、本当のことじゃないか…」 姜維はとは逆方向へと歩いて行った。 04/10/27
12/05/12再UP
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