ドリーム小説
この前の僕の態度はとても悪かったと思う。
人に言われた事、他人の噂話に一人で苛ついたこと。
が普通に話しかけても、苛立ちを隠せなくて。

今思うと、大人気ないとよくわかる。

の事が好きだと気づいても
彼女の好きな人は別の人だ。

それも僕なんかじゃ、到底勝てそうもない人。

諦めるしかないじゃないか…だから。
いいお友だちで、一番の友だちでいたいと願った。





【叶わぬ恋とは知りながら】





「姜維がね、なんか変なんだ」

「変?」

尚香の部屋に遊びに来ていた
最近様子が可笑しいと言う姜維の事をは尚香に話していた。

「変って?どこが?」

自分が見た限りではさほど変わった様子は見られない。
でも、にはそう見えなかったらしい。

「不機嫌な日が続いたなぁと思ったら、急に元に戻るし」

「あら、不機嫌じゃないならいいじゃない。いつもの姜維殿に戻ったならば」

「うー、なんて言うかさ。なんか悩み事があるみたいで、黙って考え事してることが多いかな?」

「そりゃあ、悩みの一つや二つあっても可笑しくないでしょうが」

「あとね…これ言うと自分でへこむんだけど…」

は少し顔を俯かせる。

?」

「最近の姜維は…私の事避けてるみたい」

「は?」

「避けてるって言うか…壁みたいの作ってる気がする」

すっごくつまんない…

と呟く
俯き、顔にかかった髪のせいでの表情は尚香にはわからない。

もしかして、泣いてる?

「私は姜維殿の考えている事はわからないけど、そんなに深く考える事でもないんじゃないの?」

「かな?」

「悩みがあるとしても、べらべら話すような人じゃないでしょ?」

「確かに」

姜維の性格なら、誰にも言わずに自分でなんとかしようと思うに違いない。
は顔を上げ尚香に向かって笑んだ。

「ありがと、尚香。ちょっとすっきりした」

「そう?」

「私がうじうじ考えてもしょうがないよね」

「でしょうね」

くすりと尚香も笑う。

「もしかしたら、女の子には言えないような悩みかもしれないしね」

「え?」

「男性には男性の。女性には女性の悩みがあるでしょうが」

色々とね。
そうなると自分では力になれないかもしれないけど、あの人たちならとは思った。



***



「ってなわけで、俺たちが話を聞いてやるぞ、姜維」

「…………」

「あははは、姜維。そんな顔をしなくてもいいじゃないか」

馬超と趙雲がわざわざ姜維の仕事場にまでやってそう言った。

「別にお二人に話す事などありませんよ。まったく…」

確かに数日前までに対して色々考え悩んだ。
でも、それはもう自分の中で解決済みだ。
だが、面白くないと思えるのは、がこの二人に『姜維の悩みを聞いてやってくれない?』って頼んだことだ。

(大きなお世話だよ。よりによってお二人になんかに話すわけないだろ?)

どちらかは恋敵なのかもしれないのに。
そんな相手にほいほい話すほど自分は馬鹿ではない。

「遠慮することないぞ?」

馬超が姜維の肩を叩きながら言うが、姜維はなんでもないと言う。

「でもなぁ、の奴が心配してたぞ?」

「だから、何も話すようなことはありませんってば!本当に勘弁してくださいよ」

「そうか?」

「馬超殿、無理強いはよくないですよ。話したくなったらいつでも聞いてやるから、姜維」

「だから、趙雲殿…」

二人の先輩は人の話を聞いているのかいないのか微妙な所だ。
本当は姜維をかまいたくてしょうがないのかもしれない。

「いいねぇ、に心配してもらっちゃって〜」

「馬超殿?」

「あんま心配かけるなよ?」

「あのですねぇ〜」

いい加減にして欲しいのだが…

「馬超殿。そのくらいにしたほうがいいですよ」

趙雲が微苦笑しながら馬超を止める。
あまりからかうと、意地になりそうだし。

「さぁ、我々も仕事をせねばいけませんよ、馬超殿」

「あ〜?面倒だな、まったく…悪かったな、仕事の邪魔してよ」

「い、いえ」

「じゃあ、私たちはこれで失礼するよ」

「はい」

何しにきたのだか?
二人は部屋を出て行く。
出て行く際に趙雲が一言言った。


「もっと素直になったほうがいいぞ、姜維」


って。
姜維は何も言い返せなかったが、それが妙に悔しかった。
大人の余裕って奴を見せられた感じがして。

二人に比べれば自分はまだまだ子どもだと。

趙雲にしてみれば、きっと可愛い後輩君、弟分のことを思って言ってくれたのだろうが。
最近の姜維にはそれに気づく余裕がなかった。

とはいいお友だちでいようと、考え、接するも苛立ちなどが現れる。

この先の自分はどうなるのだろうか?

「仕事…片付けなきゃな…」

止まった手を動かす姜維だったが、能率よくはできないのであった。






「丞相、終わりました」

どさっと孔明の机の上に置かれた書類などの山。
それを見て孔明は目を細めて笑う。

「ご苦労様です、姜維」

「いえ。他になにかありますか?」

「今は特に急ぎのことはありませんよ……あ」

「丞相?」

「そうですね、雑用で悪いのですが、この書簡を馬超殿の下へ届けてくれませんか?」

「はい。馬超殿ですね」

姜維は書簡を受け取り馬超の元へ向かう。
今の時間ならば、執務室だろう。
と思いつつも、いないだろうなぁと苦笑する。

彼は自分の執務室にいることが少ない。
ジッとしているより何かしら動いている方を好む。

だから、鍛錬所だったり、厩舎だったり。
趙雲の執務室で話していたり、まぁ、色々だ。

馬超の執務室の前に到着する。
軽く扉をノックすると、返事がした。
だが、声はやはりと言うか馬超ではない。

「失礼します」

「姜維殿」

馬超の従兄弟で副官でもある馬岱だ。
中に入れば部屋の主の姿はない。

「この時間ならば、馬超殿はいるかと思ったのですが、留守のようですね」

馬岱は困ったように笑う。

「お急ぎの用件ですか?多分、趙雲殿の所だと思いますけど…本当いつも申し訳ないです」

「いえ、馬岱殿が謝る事ではないですよ〜丞相から書簡を預かってきたのですが、急ぎとは聞いてませんし」

と言って姜維は書簡を馬岱に渡す。

「馬超殿にです」

「はい、ではお預りします。姜維殿、お時間があるようならお茶でもどうですか?」

「いいのですか?」

「はい。少しすれば従兄上も戻られるかもしれませんし」

どうぞと、馬岱は椅子を勧めてくれる。
姜維は好意に甘えることにした。

馬岱とは歳がほとんど変わらない。
なので、たまに二人で話し込むこともある。
馬岱も礼儀正しい青年なので、歳が変わらぬと言っても口調が丁寧で少し堅苦しいと廻りからは見られるかもしれない。
でも、お互いはそうは思っておらず、趙雲や馬超とは違った意味でいい友人関係を築けている。

どうしてもあの二人は上官・先輩と言う感じがするし。

「最近、ご機嫌斜めのようですね、姜維殿は」

「え。嫌だなぁ、馬岱殿まで。馬超殿から何か聞いたのですか?」

出してくれた茶を啜る姜維。
ここでも言われたかと、ちょっと恥ずかしい。

「従兄上からは何も。ただ、私が見ていてそう思ったのですよ」

「あは、恥ずかしいですね」

「私でよければ愚痴の相手になりますよ?私もたまに聞いてもらってますし」

とニコリと笑う馬岱。
馬岱の愚痴とはもっぱら、遊びすぎの従兄弟に関してだろう。
さっき、趙雲にも似たようなことは言われたが、あの時は話す気にもなれなかったが
馬岱にならという気がする。

「愚痴ってほどでもありませんけど…少し最近の自分に苛ついてしまって」

「ご自分に?」

「はい。趙雲殿や馬超殿から見ると自分はまだまだ未熟だと思うし、子ども扱いされているなぁとか」

「そうですか?」

「僕自身はそう思ってしまうのですよ」

「そう思う、何か原因があるのでしょう?」

「え!?…あ、と…一応」

「秘密厳守しますよ、姜維殿」

「絶対ですよ?」

と、姜維は思い切って、のこと、趙雲と馬超には敵わないと話した。
今の自分はまだまだだと、自分の気持ちに気づいた時には遅かったと。

「そうですかぁ?遅くはないとは思いますよ、私は」

馬岱もとはよく話す方だ。

馬岱は正直、の好きな人など興味はない。
興味はないと言うと、失礼かもしれないが、元々人様の恋愛ごとには首を突っ込む人ではないし
一応、馬岱にはお付き合いをしている人がいる。

「従兄上か趙雲殿が殿の好きな人ですか……そうは見えないですけど」

「僕なんかはお二人に比べたらまだまだひよっこだし…女官たちや女性兵たちからもとても慕われていますし」

(姜維殿…ご自分もそう想われているって気づいてないのですか?)

馬岱は口に出すか迷ってしまう。

(言っても信じないだろうなぁ…きっと)

「今まで、何も考えないでに接していたのに、変に意識してしまうし…挙句の果てにはお二人に僕の相談に乗ってくれって言うし…言えるわけないじゃないですか、そんな事」

「そうですねぇ、言えませんよね」

「いつも子ども扱いされているような僕がお二人に敵うわけないじゃないですか」

少し顔がむくれてきた姜維。
今まで溜めていたものを吐き出している。

「えっと、姜維殿は殿が好きだけど、彼女は兄上か趙雲殿が好きと。
姜維殿は兄上たちに自分が劣るから、殿ことは諦め、いい友人でいたいと」

「まぁ、そんなところで…」

「でも、色々考えちゃって苛々してしまうと」

「はい……あ〜本当、自分が情けなくて苛々します!」

姜維は卓に顔を伏せてしまう。
馬岱は、今の状況にもがいている姜維を見て笑う。
嫌な笑いではなく、微笑ましく軽く。

その笑いに姜維は少し口を尖らせながら、馬岱を軽く睨む。
睨むと言うよりは拗ねているようで。

「呆れているのでしょう、馬岱殿」

「いえ、別に」

「ガキっぽいって思ってるでしょう」

「いいえ、全然。ただ」

「ただ?」

「………」

思っていることを言おうか悩み躊躇してしまう。

「なんですか?馬岱殿」

(兄上たちの気持ちがわかるって言ったら、怒るだろうなぁ、姜維殿は)

今の姜維を見ていて、馬岱は思った。
馬超たちが姜維を構いたくてしょうがないわけが。
兄貴分として、弟分の姜維を可愛がりたくてしょうがないのだろう。

恋愛で悩みもがいている姜維を見て、馬岱も…

(見守ってやろうとか、そういう気持ちになりますねぇ…)

でも口に出したら、姜維はさらに膨れるだろうから言わないけど。

黙り込んだ馬岱を見て、姜維は余計に気になる。

「馬岱殿、なんですか?」

「あ、あぁ…姜維殿は殿のことが本当に好きなんだなぁって思って」

「え」

ボッと顔が赤くなる姜維。
馬岱はくすくす笑った。

「馬岱殿〜」

「あ、申し訳ありません。話を聞いていると諦めきれていないなぁって思って」

「諦めきれていない?」

「従兄上たちには敵わないと言っても、殿のことを気にしてますし、結局どうしていいかわからないみたいな」

「そうですか?」

「私に聞かれても。私はそう思ったのですけどね」

「…いい友だちでいようと願ったのだから、うだうだ悩むなんて可笑しいですよね」

「そうですか?人を好きになってすぐさま諦められるなんてことできないでしょう、普通は。別に友だちでいたとしても、好きだと言う気持ちは変わらないですし、殿が従兄上たちと上手く行くとも限りませんし」

「………」

「とりあえず、いつも通りでいてみればいいんじゃないですか?」

「いつも通りですか?でも、僕は」

「相手を意識してしまうと?大丈夫ですよ、案外簡単に出来ますよ」

「そうですか?そうは思えないのですけど…」

「簡単ですよ、あ、こんなものか〜ってぐらいに。姜維殿は姜維殿のやり方でご自分らしくいけばいいと私は思いますよ」

「できるでしょうか?」

「できますよ。なにも失敗してはいけないことでもありませんし。失敗したらしたで次に頑張ればいいのではありませんか?」

「ありがとうございました、馬岱殿」

「いいえ、ちょっと生意気なことを言ってしまいましたが」

「そんな事ないです。楽になりました」

人に話すのを嫌だと思ったが、馬岱に話して良かった気がする。
今は何も変わっちゃいないし、これからどうなるのかもわからない。
でも、とりあえずは自分の思う通りにやれればいいなと思った。

「馬岱殿に話してよかったです、本当」

「そうですか?従兄上たちから見れば、ずるいと思われてしまいそうですけど」

「ずるいだなんて」

「ま、今の姜維殿は反抗期なのでしょうがないですよね」

「は、反抗期?」

「そう見えますよ。放っておいてくれと言いながらも、本当は頼りたいけど、意地張ってできない、みたいな」

「からかってますね、馬岱殿〜」

と言って二人は笑いあった。
それを見て、馬岱はさらに一言。

「姜維殿が楽しく笑っていれば、従兄上や趙雲殿も安心されると思いますよ。勿論殿も」

と言った。



馬超の執務室から出た時に、とバッタリ会った。
彼女は趙雲と一緒にいた。

二人が並んでいるのを見て、チクっと胸が痛んだ姜維。

「馬超殿に用があったのか?姜維」

趙雲に聞かれ、素直に頷く。

「はい。ですが留守のようで、馬岱殿と少し話をしていました」

「そうか。馬超殿なら遠乗りに行ってしまったよ」

「あ、それは」

姜維が言おうとしたとき、執務室の扉が勢いよく開いた。

「本当ですか!それは!」

「あ、馬岱殿」

馬岱が書類を握り締めている。
どうやら、少しご立腹らしい。

「気分転換をするとか言っていたが…」

「従兄上…見ていただければならないものが山積みなのに…」

「馬岱殿?」

「従兄上!!」

「え?あ!ば、馬岱殿!?」

馬岱は馬超を連れ戻しに行くつもりらしい。
書類を握り締めたまま駆けていった。
ついでに趙雲の腕も引っ張って。

「あらら、馬岱君可哀相〜」

「本当だね。苦労するよね」

「趙雲もだけど…」

残された姜維とは顔を見合わせて笑った。

「なんか、元気でたっぽいね、姜維」

「僕は別にいつもと変わらないよ」

「そうかな〜?」

「そうだよ。それより、馬超殿と趙雲殿に余計な事吹き込まないでよね」

「え?なんのこと〜?」

「惚ける気?…まったく。じゃあね、僕はもう行くから」

馬岱のところに長く居すぎた。
早く戻って、仕事の続きでもと思う。

けれど、に腕を捉まれてしまう。

「え、なに?」

「明日はお昼一緒に食べようね」

「お昼?」

「そう、ここの所一緒に食べれなかったもん、明日は一緒に食べたいよ」

「わかった。明日だね」

「うん」





結局の所、に対する想いだとか、これからどうしようか
そういうの全てが宙ぶらりんなのだが、とりあえず、何をどうすれば良いのかを
考える為に進もう…って偉そうに思ってしまった。

馬岱殿はいつも通りにいることだって言っていて、それは案外簡単だと言っていたが。

簡単だった。

とりあえずは、明日の昼餉は一緒に食べると約束した。








馬岱君がいい感じ。でも当然ながら更新したのは昔なので無双6の彼とは別人ですw
04/07/26