ドリーム小説
“うん、興味ないし”

へぇ、興味ないんだ…

“いないね”

へぇ、好きな人いないんだ。

ちょっとはさ、私の事、気にしてくれてもいいじゃん!
私ってば望みゼロ?

つまんなーい!





【王子様】





一昨日の昼餉の時間。
姜維といつもみたいに他愛のない話をしていたら、好きな人、恋愛話になった。
馬超はあーだとか、趙雲はこうだね、とか…
姜維自身のことを尋ねても、本人は『興味ない』の一言。

それがには面白くなかった。

「今は恋愛ごとより、勉学の方が興味あるんじゃないの?」

「やっぱり?尚香もそう思う?」

「それか、女性には興味がないとか!」

「…なんか洒落にならないから、止めてよ〜」

「あはは、そうよねぇ、孔明殿をとても尊敬してるものね、尊敬から愛情がぁ〜ってなったら困るものねぇ」

「尚香さん、マジ勘弁してください」

「あははは」

は今、劉備の奥方尚香の元にいた。
年が変わらぬ二人はすぐさま意気投合した。
は尚香相手に先日の話をしていたのだ。

「聞いてみたら?女性より男性に興味あるの?って」

「そんな事聞いたら、口利いてくれなくなるよ〜」

「そうね」

と笑う尚香の顔はとても楽しそうだ。

二人の会話からわかるように、の好きな人は姜維だ。
姜維自身は彼女の事をなんも意識していない様子だが、は違った。
早くから姜維に想いを寄せていた。
でも、今の関係が心地よいってことと、姜維に特に変な虫がついているわけでもないので気にしないでいた。

すぐさま告白しようとか思っていなかったので、当分は現状維持でいいかな?と。

だが、たまたま話したことで、姜維のちょっとした恋愛感みたいのが聞けた。
聞けたのはいいが、その後をどうしても気にしてしまうだったので、尚香に相談してみた。
相談と言うより、雑談に近い。

「今さぁ、私が告白しても、きっと姜維はさ〜」

『はぁ?何言ってんの?』

「って、ことになりそう〜」

「…否定はできないわね。そんなに焦ることないんじゃないの?本人に興味がないんじゃしょうがないし」

「そうだよねぇ…」

「あ、食べる?美味しいわよ、これ…お茶もどうぞ」

「ありがと」

尚香がお茶にお菓子を出してくれた。
当分はここにいても良いらしい。

出されたお菓子をパクリと食べる。
庭に面した部屋だったので、二人でぼーっとしながら外を眺める。

「姜維の好みの女性ってどんな人かな?」

「好みねぇ…年上とか?」

「うわっ、最初から私には無理じゃん」

は年下だもんね……うーん、頼れる人とか?」

「私じゃ全然じゃん!」

「あとは……武芸が秀でてるとか…爽やかな笑顔?」

「ちょ、ちょっと尚香、それはさ」

「兄貴肌とか?」

「………趙雲と馬超じゃん、それって」

「そうとも言う、あはっははは」

「アンタ、どうしても姜維を男色の道に進ませようとしてるわね。うりゃ」

は拳を握って尚香のわき腹に軽く当てる。

「あは、ごめーん。最近、平和すぎてなんか面白い話題ないかなぁって思って」

面白い話題を作ろうとしているのか?尚香さん…
しかもその手の話題はあっという間に広がりそうなのですけど?



***



尚香と遊んだ(?)あとで、いつもみたいに姜維を誘って昼餉を食べに行く。
なんか姜維は機嫌が悪いようで、終始膨れ面をしていた。
この様子じゃ、さっきの尚香との話をしたら笑い話じゃすまなくなりそうだ。

食べ終えてもムスッとしている姜維。
孔明にでも怒られたか?
いや、姜維の場合は相手が孔明なら落ち込みそうだ。

「どうしたの?姜維、機嫌悪そうだね」

「あ…ごめん」

「いや、私に謝っても…姜維なにかあったの?」

「あ、…ちょっとね」

「ふーん」

執務上のことならにはわからないから、聞くこともあまりできない。
聞いても内容を理解できないし。

(馬超殿と趙雲殿が変な事を言うからだよ…関係ないっての、僕には)

どうも、先日二人の先輩から言われた事を引きずってるらしい。
現に、今まで気にもしなかった事が耳に入ってきてちょっと嫌なのだ。

“若い兵士たちの間では結構人気がある”

この趙雲の言葉。
実は本当だった。

って可愛いよねって話を兵士たちがしているのを何度か聞いた。
相手が劉備らに可愛がられているので、声をかけれないと言っていたのが救いだが…

(救い?…何を言ってるんだ、僕は)

気軽に話せる間柄の姜維を羨ましいとか言っていた。

(話したければ、話せば良いじゃないか…関係ないよ、そんなの)

「姜維?」

「な、なに?」

「顔が怖い」

「ごめん…はぁ」

「ね、姜維」

「なに?」

「姜維の好みの女性ってどんな感じ?」

は懲りないのか、姜維に訊ねる。
少しざわついていた、食堂が一瞬静まる。
どうも聞き耳を立てている女官たちがいるらしい。

…」

「あ、やっぱ興味ないって答える?」

「そうだよ」

近くにいた女官たちが肩を落としたのは気のせいか?

「つまんないのー」

「じゃあ、逆に聴くよ?君の好みの男性は?」

「え!?」

ボッと火が出たかのように顔を赤くした

「あた、あたしの好み?……」

それは君だよ。

って言えたら楽なのだけど、イマイチ、姜維がこの話に乗ってそうもないし。
なんか機嫌悪いし…
でも、姜維っぽいことをそれらしく伝えたい気もする。
気づけよ、ってことで。

「………王子様?」

「はぁ?」

(私の馬鹿ーーーー王子様ってなにさ!王子様ってーーー)

「白馬に乗った王子様…なんちゃって〜」

笑って誤魔化せと言った感じの
姜維は一瞬呆けた顔をするが、また先ほどみたいな膨れっ面に戻る。

「ふーん、王子様ね」

「きょ、姜維?」

(白馬に乗った王子様ね、なんかそれって趙雲殿や馬超殿っぽいじゃないか…そうだよな)

確かに二人の愛馬は白馬だ。
姜維は残っていたお茶をぐいっと一気に飲んで立ち上がった。

「ごちそうさま。じゃあ僕はもう行くから」

「う、うん」

スタスタと歩いて行ってしまう姜維に、は深いため息をついた。

「逆に聴くとか言ってたわりには、やっぱ興味ないじゃん」

例えが悪すぎたかもしれないが、好みのタイプが【王子様】って…
でもから見れば好きな人が王子様に見えるってのはあるものだし…

「恥ずかしい〜」

赤く火照った顔をは手で扇いだ。



***



孔明に頼まれ資料集めをしていた姜維。
集めた資料を急いで孔明のもとへ届けようと廊下を小走りで進む。
途中の渡り廊下で、女官や女性兵たちが何かに騒いでいるのが目に入った。
思わず足を止めてしまう。

「…あれは」

趙雲と馬超が手合わせと言うか己の得物を使って演舞している。
場所は庭園で、二人の目の前に劉備と尚香、尚香の膝の上に阿斗がいたので彼らに頼まれでもしたのだろう。
それをさらに女性陣が囲って、騒いでいたのだ。

「やっぱりすごいなぁ」

二人は互いの呼吸に合わせ、舞っている。
一つの動作を決めるごとに、女性たちからは黄色い声が飛ぶ。

ふと、尚香の隣にがいることに気づいた。
彼女は目を輝かせ拍手している。

「………白馬の王子様か」

姜維から見れば、趙雲と馬超がまさにその理想のようである。

頼れるし、武術はほとんど負けなし、性格も女性から見れば完璧な人たち。
何より、顔がいい。

が惚れるのも納得かな?」

自分じゃ、あの二人にはまだまだ敵わない。
それに二人は自分を子ども扱いをしてよくからかう。

“よく考えてみ?ちったぁ変わるかもよ”

なーんて馬超は言っていたが、考えたら考えたで自分が小さい奴だと気づかされた。

「僕には恋愛ごとより勉学が必要かもね」

姜維は再び歩き出した。



もう考えるのはよそう。

が誰の事を好きでもどうでもいいじゃないか。

僕には関係ない。

まして、彼女の好きな人が趙雲殿か馬超殿ならば、僕はあの二人には敵いっこないんだ。



ふざけ半分でお二人があんな事を言うから、変に意識をするんだ。

もうやめよう。

これ以上考えると泣きたくなってくるから。



僕には、関係ないことだ。



でも、気づいた。





僕は、が、好きなんだ。





好きだと、気づいたけれど、僕には、関係、ない…





「うわっ、それは、どうかしら?

「あは、やっぱ、尚香もそう思う?恥ずかしい〜」

は趙雲らの演舞を見終えた後に、尚香に先ほどの話をした。
【王子様】って単語に尚香は呆れた。

「それはから見て、姜維殿は【王子様】に見えるってこと?」

「うーん、っぽくない?」

「さぁ?が想像している【王子様】ってのがイマイチわからないし」

「なんて言うの?危機一髪って時に助けてくれたり」

「そんな状況になったことあるの?」

戦場に出る尚香ならともかく、年中城にいるが命を狙われるなどまずない。

「ないけど!……あ!あった」

「命を狙われた事?」

「違う、違う。助けてくれた事」

「そんなのいっぱいあるじゃない、の場合」

尚香は思い当たる物を指を折りながら話す。

転んだ時に起こしてもらったり、手当てしてもらったり、
お金なくて、代わりに払ってもらったり
熱を出して看病してもらったり…

「それから〜」

「ちょっと待って!違うって、確かにそう言う些細な事はありますけどねぇ」

これは姜維だけに限らず、相手が趙雲だったり馬超だったり、孔明や月英など様々です。

「あら、違った?」

「違うの!……それはね、まるで少女漫画のような出来事だったんだよ」

って、がよく話してくれる、男女の恋愛を描いたものですか、と尚香は頭に思い浮かべる。

が劉備の世話になるようになって、成都での生活に落ち着き始めた頃。
大人ばかりの世界に萎縮してしまう毎日。
気を使われてばかりで嫌気がしていた。

一人で散歩でもと思って、ふらふらし始めた時に、頭の上から聞こえた猫の鳴き声。
枝から降りれなくなったのか、にゃあにゃあ鳴いている。
はあの高さなら平気だ、自分でもできると思い、木に登り始めた。

さぁ、猫のいる所まで来たぞって時に、猫はひょいと上手に下に降りていった。

『嘘……』

そしてのことなど見向きもせずに行ってしまう。

『薄情者〜誰の為に登ってやったと思うのよ〜』

は頬を膨らますが、猫は別に助けろと言ったわけでもないし。

『さぁて、どうしようかなぁ』

猫を助ける為に登ったのはいいが、どうやって降りようか考えてなかった。
せめて梯子でも使うべきだった。
とりあえず、木は頑丈そうなので折れる事はないだろう。
が考えていると、下から声がした。
自分と年が変わらない青年が下から見上げている。

『ねぇ、なにやってるの?』

『……わ、私?』

『年頃の女の子がすることじゃないよね?あまり感心しないなぁ』

『す、好きで登ったわけじゃないですー!それに女が木登りしたって変じゃないもん』

『ふーん。そう言うものかな?でも、とりあえず、早く降りたら?他の人が見たら怒られるよ』

『わ、わかってます!』

『その木、劉備様がとても大事にしている木なんだってさ』

『う、嘘!?本当!?ヤバ、早く降りなきゃ』

慌てるに青年は笑う。

『嘘だよ。そんな大事な木なら囲いでもしてあるよ』

『はぁ〜?嘘つくなんて酷くない?』

青年の言葉には頬を膨らます。
そこで待ってろ!文句を言いに急いで降りてやる!
は木から降り始める。

でも、手が滑って木から落ちてしまった。

『!?』

落ちる!
頭打つかも!って思ったとき、青年に抱えられていた。

『大丈夫かい?』

『……あ、ありがとう』

パッと見、頼りなさげに思えた青年だが、落ちてきたをしっかりと受け止めてくれていた。
に向かって笑った顔がとても安心できた。

「それが、姜維殿だったの?」

「そう!なんか運命って感じするっしょ?」

「そんなものかしらねぇ?それでは姜維殿に惚れたんだ」

「まぁね。結構格好よかったんだ、その時の姜維って」

「だから【王子様】?なんか単純〜」

ケラケラ笑う尚香には少し頬を膨らますも、すぐさま笑う。

「いいじゃん、私にはそう見えたの!」





姜維は私にとって身近な【王子様】なの。

今は全然興味なくても、絶対、振り向かせて見せるんだからね!









王子様ってw
04/05/28
12/05/12再UP