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生生流転
#27 「おんや〜ちゃんじゃないか、どうしたの?お散歩中?だったらボクもご一緒していいかな?」 に声をかけたのは京楽だった。 「京楽さん」 「どうしたの〜?なんか元気なさそうだね。ん?なに?ボクの顔に何かついてる?」 は京楽の顔をジッと見た。 京楽は終始飄々とした態度をに見せる。 「あの、私……」 「本当に、なにかあったみたいだね。そして、それは浮竹が絡んでいると見た」 浮竹と言われて肩をビクつかせる。 それを見て確信する京楽。 「ん〜どうしたの?」 「死神を好きになってはダメなんですか?」 一瞬動きが止まり、京楽の顔から笑みが消えた。 少し寂しそうに俯いたの頭を軽く京楽は撫でた。 「そうかい……ちゃんは浮竹が好きなんだね」 小さくだが頷く。 「別にダメだって決まりはないと思うなぁ」 「本当ですか?」 パッと顔をあげる。 京楽は己の顎をさする。 「ただ、今までそうだった事がないからね」 「………」 元々相容れない存在だから。 「……ですよね……すみませんでした。もういいです」 は京楽に頭を下げる。 「あれ、いいの?」 「はい、いいです。納得しましたから」 「本当に?」 「はい」 「本当の本当に?」 「……はい」 「本当?」 「納得しなきゃ困るじゃないですか!」 は京楽に噛み付くかのように詰め寄る。 くっと唇を噛締める。 「ごめんよ、意地悪したつもりじゃないんだけどね。なんで諦めてしまうのかな〜って思ってね」 「どうせ……もうすぐ現世に帰るし…もう会うこともないかなって…」 「うーん。まぁそう言われちゃうとそうだねとしか答えようがないけどさ」 「それに、浮竹さんは最初から私のこと相手にしてないようだし、振られちゃったようなものかなって」 「え、いつ浮竹が?」 はボロッと涙を零した。 俯き、それを乱暴に拭う。 「もうやだ、最近泣いてばっかで……涙腺弱くて」 学校でたつきたちと騒いで、部活を真剣に打ち込んだあの、ほんの数ヶ月前の自分とは随分違う。 急に自分が変わってしまったようで、嫌だ。 「あ〜あ〜そんなに強く擦っちゃダメだよ」 京楽はの腕を掴み止めさせる。 「可愛い顔が台無し」 「……浮竹さんから見れば、私は子ども、孫、曾孫、玄孫…それ以下かもしれないし」 「ちゃん、なんかずれてるよ?」 持っている手拭での涙を拭いてあげる。 なんか父親になった気分だ。 やっていることは母親だが。 「ほらほら、泣かないの。ボクからはそうは見えないんだけどねぇ」 「でも実際、軽く流されました」 「どんな風に?」 「うっ……」 薄っすらと頬を赤くする。 恥ずかしいのだろう、その話をするのが。 「好きですって言ったら、好きだよって言ってくれたけど」 「良かったじゃないの」 「でも、その後、いつもとまったく変わらなくて、普通色々期待しちゃうじゃないですか!」 その手の話を男性にしてしまうのはどうかと思ったのだが、今余裕がない。 それに京楽になら話せると思った。 一護たちに、この話はできないと思っていたから。 「何もなかったと?しょうがないねぇ、浮竹も。ちゃんはそれでもう諦めようって思ったんだね」 は何度も頷く。 京楽は苦笑いしかでない。 昔からあの友人は、その手のことに疎い。 疎いと言うか、素で気づいていない。 でも、その割には独占欲が強いよな〜と思ったりする。 のことは旅禍だからと、あれこれ匿っていたようで、そこそこ気に留めていた。 (ちゃんに何かあると、一番に気づくの浮竹だよねぇ…) それに双極で山本から逃げる為にを担いだ京楽に、浮竹は面白くなさそうにしていたし。 「とりあえず、少し落ち着こうね。まだそうだと決まったわけじゃないし」 「そうですかぁ?」 不信感たっぷりの目では言う。 京楽は大丈夫と胸を張る。 「何か食べに行こうか?沢山泣いてお腹空いたでしょ?」 「いえ、別に」 とは断ろうとするが、彼女の腹の音が鳴った。 京楽にも聞こえたようで、ほらねと笑った。 「こ、これは泣いたからじゃなくて、さっき十一番隊の道場で久しぶりに手合わせしてもらったから」 恥ずかしくて焦る。 「どっちにしてもお腹は空いてるってことじゃないか。よし、ボクがご馳走してあげるから」 「でも、京楽さん忙しくないんですか?お仕事だって」 「大丈夫だよ。ちゃんは気にしなくて良いよ〜さ、行こうか」 は軽く鼻を啜る。 身体を沢山動かしたからと言うのもあるが、泣いた所為もあって腹が空いたのは事実だ。 ここは京楽に甘えてしまおうと考える。 「じゃあ、ご馳走になります、京楽さん」 「あぁ、いいよ〜」 「京楽さんはお父さんみたいですね」 まだ少し潤む目元を拭いながらは言う。 京楽が歩き出したのでは後に続く。 「そう見える?ボクはまだピチピチの独り者だよ〜?」 「ピチピチですか」 の顔に笑みが戻る。 それを横目で京楽は見て軽く頷いた。 「さぁて、何食べたい?瀞霊廷には美味しいお店いっぱいあるよ」 *** 「浮竹ぇ〜いるか〜い?たまには一杯どうだ?」 夜、雨乾堂に京楽が姿を見せた。 美味い酒が手に入ったと浮竹に見せる。 もう寝るだけだったので、構わないと浮竹は京楽を招きいれた。 「久しぶりだねぇ、こうやって飲むのはさ」 「そうだったか?」 「そうだよ。最近、君は忙しいようだしね」 「それはお前だってそうじゃないか」 「ボクはそうでもないよ。七緒ちゃんがいるし」 「あまり彼女を困らせるなよ。フラフラ出歩いているお前を探すのに時間割いているようだし」 「ん、そうだね」 京楽は浮竹に酒を注ぐ。 「今日はね、楽しかったよ」 「何がだ?」 静かに二人で酒を飲み交わす。 「可愛い女の子と楽しくデートしちゃったよ、羨ましいだろ」 「また、お前は……」 どこにフラフラしているのだと、厳しい目で京楽を見る浮竹。 京楽は気にすることもなく軽く受け流す。 「お父さんみたいって言われちゃったけど、まぁそれでもいいかなと。少なくとも嫌われてはいないようだし」 「はいはい」 くいっと酒を飲む浮竹。 京楽が言うだけあって、本当に美味い酒だ。 「だからさ、浮竹」 「ん?」 「君、当分ちゃんに近づくな」 「は?」 「彼女のためだよ。今のお前さんは酷だ」 何を突然言うのだ、京楽は。 に近づくなと言う意味がわからない。 「俺は別に彼女に何もしていないぞ、お前じゃあるまいし」 「いいや、したよ……ってさり気なく酷いこと言うね、浮竹」 くつくつと京楽は笑う。 「していない。何を言うんだ」 「とにかくさ、このまま会わないでさよならしちゃった方がいいよ」 「なんだ、それは」 目の前にいる男の言動に腹がたつ。 でも京楽は静かに酒を飲む。 「どうせ、もうすぐ現世に帰るんだ、いいじゃないか」 「京楽」 「もっとも、ちゃんはもうお前の前には顔を出さないと思うけどね」 「え……君が?」 「そうだよ」 に自分は何かしたか? 思い当たることがない。 「現に今日殆ど会っていないだろ?」 「………あぁ」 少し浮竹の背中が丸くなったように見える。 少なくとも懐かれていた子に会うなと言われれば誰だって寂しさや不満はあるだろう。 「あのね、浮竹。君とちゃんは違うんだよ」 「それは俺が死神で彼女が現世の人間だからか?」 「あーそれはこの際置いといて。ボクが言いたいのはもっと別のことさ。死神だからってのはどうでも良いんだよ」 「ならば、なんだ。それは京楽にはわかるのか?」 「わかるよ」 「………」 「持っているものが違うんだよ…抱いているものとでも言うのかな」 「もっとも、浮竹も持っていて、気づいていないだけかもしれないけどねぇ」 京楽は空になった猪口に酒を注ぐ。 「俺が気づいていない?…」 「そうだったらいいなと、ボクは思うけどね。こればかりはお前さん次第だ」 「京楽」 「ま、気づかないうちはちゃんに近づくの禁止」 浮竹は唇を軽く尖らせる。 「なんで、お前に禁止されなきゃならないんだ」 「なんでって、ちゃんがお父さんみた〜いって言うから娘に近づく不届き者を排除するんだよ」 「誰が不届き者だ」 「いやぁ、今夜も月が綺麗だねぇ」 酒の所為か、浮竹をからかっているからか、京楽は終始機嫌が良かった。 浮竹は少しすっきりしないまま酒を飲んだ。 *** 「可笑しいと思ったんだよ、あの時」 「あは、すみません」 「別に良いけどな」 に会うのを禁止!などと一方的に言われた浮竹。 守る守らないは別として、どうしようかと考えていた。 と自分の違いと言うのがイマイチわからない。 そんな浮竹が目にしたもの。 少し照れた様子のと楽しげにしている檜佐木修兵の姿だ。 「旅禍があそこでふらついているって気づかない周りも、俺もそうだけど」 「もういいじゃないですか。仕方なかったんですよ、本当」 「浮竹隊長が隠すわけだよな〜」 「浮竹さんは悪くないですからね」 「わかってるって。あー思い出した、あの白い狼つーか、犬。のだっけ?」 「ですか?そうですけど、それがどうかしました?」 会話はよく聞き取れなかったが、檜佐木の口から“”って発せられた。 なんか、それが面白くなかった。 檜佐木から何か聞いては慌てた様子を見せた。 「本当ですか?うわ、全然気づかなかった。じゃあ恋次君に迷惑かかってますよね。謝りに行かなきゃ」 「阿散井の所行くのか?なら案内してやるよ」 「お願いします」 檜佐木はこっちだと、を連れて行く。 浮竹は彼らとは反対にくるりと背を向けた。 無言で頭を掻く。 「……なんだ、これは……」 こうは書いたが、京楽さんは案外非協力的だと思っています。とうか、浮竹さんよりな人?
06/03/19
12/05/05再UP
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