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生生流転
#26 瞼が少し重い。 でも光が差し込んできたのだから、朝なのだろう。 早く起きねばと思った。 「う〜」 瞼を擦り薄っすらと目を開ける。 すると、ではない別の顔が目に映る。 「………へ?……う、浮竹さ…ん?」 何故?なんで、自分は浮竹と一緒に寝ているのだ? サーッと血の気が引いていく。 今まで雨乾堂で寝起きはしたが、あれでも隣に布団を並べてとかが一緒だとかだ。 は今、いない。 反乱後も普通に姿を周りに見せていた。 最近は何やら六番隊副隊長がお気に入りなのか、彼の後をついて回っている。 呼べばすぐに来るので、迷惑をかけてない限り良いかなと放っておいている。 「………」 そーッと身体を起こす。 同じ布団で寝てたいたなんて、まったく気づかなかった。 でも、なんで? 浮竹は気持ち良さそうに寝息を立てている。 「……昨夜は…」 自分の未消化の思いを浮竹にぶつけてしまった。 戦い終わって悩んだことを。 浮竹はにとって最高だとも思える言葉をくれた。 それが嬉しかった。 抑えていたものが一気に溢れ、彼の腕の中で思いっきり泣いてしまった。 そして。 『浮竹さんにまた会えて良かった…私…浮竹さんが、好きです』 などと口走ってしまった。 「うっ……私の馬鹿……」 でもそのとき、浮竹は。 『あぁ、俺も君が好きだよ』 と答えてくれた。 そのままずっと泣き続けたをあやしてくれた。 まさかとは思うが、自分は泣きつかれて寝てしまったのだろうか? だからと言って、浮竹と同じ布団で寝ている意味がわからない。 「………」 最初から告げる気などなかった思い。 ただ単純に、そういう風に浮竹を意識していた自分に驚いた。 命を助けてもらった事や、瀞霊廷に来てから過ごした事が自然と浮竹へと想いが向いていたらしい。 恥ずかしい。 顔が熱い。 両手で頬を覆う。 告白してしまうとは、しかも浮竹も答えてくれたわけだし。 ヘラッと笑みを浮かべてしまう。 「ん、おはよう、君」 浮竹も目を覚ましたようだ、ゆっくりとだが身体を起こす。 にっこりと笑顔をに向けてくれる。 「お、おはよう、ございます!あ、あの……私、その昨夜…」 「あぁ、君寝てしまったんだよ。で、ずっと俺の着物を掴んだままで、面倒臭いからそのまま一緒に寝ちまった」 アハハと豪快に笑う浮竹。 二、三瞬きをする。 なんだろう、この違和感。 「ちゃんと眠れたかい?」 「は、はい」 「それは良かった。今日もいい天気だな」 浮竹は立ち上がり、外に出る。 「あ、あれ?」 「君はどこか行きたい場所はあるか?あるなら手配するぞ」 「浮竹さんは?」 「俺は、事後処理がまだあってな、案内してやれなくてすまんな」 「…あ、いえ、お気になさらず……」 「さぁて、もうすぐ朝食の時間だな。しっかり食べて今日も頑張らないとな」 は一度部屋に戻った。 戻ると織姫はまだ寝ていた。 引きっぱなしの布団にストンと座る。 「…………」 浮竹の態度。 なんか、いつもと変わらない。 そういうものなのか? 少し釈然としないが、は寝ている織姫を起こすことにした。 「織姫、起きて。朝だよ、ごはんだよー」 「んー石田くん、カンガルーじゃなくてそれはマイケル・○・フォックスだよ!」 バッと上体を起こす織姫。 手まで伸びている。 「お、織姫?」 「………」 少し反応が遅れるが、織姫は目を覚ました。 「おはよう〜ちゃん」 「お、はよう…なに、石田がカンガルーとかって」 「え〜?」 「ま、いいや。さ、着替えてごはんにしよう」 「うん」 *** なんと言うか。 浮竹に会って話をしても期待するようなことは何もない。 以前と変わらず。 寧ろ、あれはなかったことにされている? 「………」 「」 「………」 「!」 「なによ!」 「顔が怖いんだよ、どうした?」 「………ど、どうもしないわよ」 の態度に一瞬怯む一護だがすぐさま返す。 はあわてて自分を落ち着かせる。 「あれか?まだ悩み事解決しねーのか?」 一護に聞いてもらおうとしたのだが、乱入者のためにそれができなかった。 一護はがそれをまだ引きずっているのかと思ったようだ。 「あ、違う。あれはもう平気。ごめんね、ありがと黒崎」 「いや、なんでもねーならいいよ」 「たださ、ちょっとムシャクシャするって言うか、すっきりしなくて」 「そうか…なら俺と一緒に来るか?」 「どこに?」 「十一番隊の道場。お前剣道やってたろ?気晴らしになるんじゃねーのか?」 「黒崎…」 「な、なんだよ」 パーッとの表情が明るくなる。 「行く!道場行く〜!ありがと、嬉しい〜ほら、早く行こう!手合わせ、しよ、黒崎!」 は一護の腕を引っ張り走り出す。 「お、おい!そっちじゃねーよ!」 十一番隊の人たちとはは面識がなかった。 織姫たちは少しあるようだが。 一般の隊員たちとは面識がない。 一護が顔を出すと、強面の男性たちがいっぱいいた。 「なんだ、一角の奴いねーし」 「お邪魔しまーす!」 一護の姿を見てガンを飛ばしてきた男たちもを見て少し変わる。 だが、単純に一護の彼女か?とか思われ、男たちはやはり面白くなさそうだ。 彼女に良いところ見せようって言うのかよ〜な感じで。 「はぁ〜久しぶりだなぁ、道場って」 部活も止めてしまったので、もう関係ないと思った場所。 は中に入り、辺りを見回す。 「竹刀じゃなくて木刀かぁ…」 くるっと振り返り、近くにいた男性に訊ねる。 「あの、お借りして良いですか?」 「あ?良いけど、どうするんだ?」 「誰か私と手合わせしてくれませんか?」 「はぁ?」 何を言っているのか、この子は。 そういう目で男たちはを見る。 は笑ってはいるが、男たちの言いたいことがわかっているのか、こめかみが少しピクピク動いている。 「危ないよ、お嬢ちゃん」 「ご心配どうも。でも少しくらいお願いできません?」 男たちは顔を見合わせる。 そしてニヤッと笑みを浮かべる。 「じゃあ俺が」 その中の一人が手を上げる。 よりも大きい男。 腕も何倍も太い。 「ここには防具なんてないぞ、それでもいいのか?」 「はい」 は木刀を一本選び握る。 初めて触るものだが、何度か振ったりして感触を確かめる。 「お願いします」 「とりあえず、顔と頭はナシにしといてやるよ、傷ついたら大変だろ?」 「どうも」 はニッコリ笑むが、一護がに耳打ちする。 「おい、大丈夫なのかよ?」 「黒崎…君の幼馴染は誰?」 「は?たつきがなんだ?」 「私はたつきに認められし者よ、だから心配なし」 空手部所属の幼馴染。 今年のインハイで全国2位の結果を出した。 「お、おう」 とりあえず、本人が言うのならばいいかと一護は下がる。 もし万が一危険だったら自分が割って入れば良い訳だし。 向かい合って、一礼する。 「はじめ!」 一護の号令と同時にはスッと一歩前に出て男の胴に一撃入れる。 「そ、そこまで」 あっという間で、男は腹を抱えて蹲る。 「あれ、おしまいですか?」 「情けねーな…次は俺だ!」 見ていた男たちは呆気に取られるが、まぐれだと思ったらしく、次は俺だと名乗り出る。 は誰でもいいですよ〜なんて気軽に答える。 そして、何度やってもが勝つ。 護廷十三隊最強集団の自分たちが!と冷や汗を掻く男たち。 「ひゃー楽しかった。ありがとうございました!」 は相手をしてくれた男たちに頭を下げる。 「久しぶりにいい運動になりました!」 「そ、それは良かったデスね…」 男たちは立つ瀬がないと多少へこみ気味だが。 「でも、練習試合と実戦は違うと思うんですよ、真剣は私も使ったことないし。 きっと、実戦や真剣を使ったものなら皆さんの方がお強いですよ」 ニコッと笑顔を向けられ男たちの頬が赤くなる。 「あの、良かったらまた来てもいいですか?その時はお相手してくださると嬉しいんですが」 男たちは最初の態度とは違って両手を挙げて喜んでー!などと言っている。 は最後にもう一度頭を下げてから道場を後にした。 一護はまだ残るというのでそこで別れた。 「うん。黒崎のおかげで少しすっきりしたなぁ」 モヤモヤを吹き飛ばせた気がする。 心も身体も軽くなったような。 一護には今度お礼をしなくては思っていると、浮竹の姿を見つけた。 どこかに向かって歩いているようだが、隣には女性がいた。 「あ、あの人は確か卯ノ花さんだ」 物静かな大人の女性。 が卯ノ花に感じたものだ。 後は、周りから聞いた話で母親のような優しさも感じるとか。 難しい話をしているのかと思えば、楽しく談笑しているように見える。 「そう言えば…初めてだ」 浮竹が別の女性とあのように笑っている姿を見るのは。 清音も浮竹の近くにいるが、彼女は部下だ。 常に浮竹の一歩後ろにいる。 誰でも気安く声をかけやすいのが浮竹だが、一般の隊員たちには無理だ。 他隊の隊員からも慕われているとは聞いたが。 でも、そんなのを気にしないで同等の立場で卯ノ花は接することができるではないか。 「あ……」 は胸に手を当てる。 チクリと痛みが走る。 「綺麗な人だもんね……それに、向こうから見たら私は子どもかな、やっぱり」 死神は人の数倍も長く生きているらしい。 見た目以上に年を重ねている。 それだけではない。 「人を好きになってはダメなのかな…」 今まで気にしないで一緒にいたが。 本来、たちには見える存在ではない彼ら。 知りもしない存在だった。 唯一の例外なのだ、自分たちは。 だから、浮竹はあの言葉を聞き流したのではないか? 「………」 それに、あと少ししたら、瀞霊廷、尸魂界から現世へと帰るのだ。 多分、そうしたら、浮竹とはもう会わない気がした。 「気づかなきゃ良かった…色んなものに…」 06/03/17
12/05/05再UP
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