生生流転




ドリーム小説
#24





裂けた空は元に戻った。
だが、傷ついたものは沢山あった。

救護補給を専門とする四番隊の隊員たちが駆けつけ、傷ついた者たちを急ぎ治療し始めた。

「黒崎君!ちゃん!」

は自分でも珍しく泣きそうな表情をしていた。
織姫たちも双極へとたどり着き、二人を見つけ駆け寄った。

「織姫……黒崎が…」

「大丈夫、任せて!」

織姫が六花を解放する。
瞬時に現れた小さき者によって一護の身体を癒していく。
それでも簡単にはいかずに織姫は懸命に力を使う。
はぼんやりそれを眺めている。

一方ではルキアが不安な様子で兄白哉の治療を見守っていた。
そこへ四番隊隊長卯ノ花が到着へ彼の治療を始めた。
白哉が一番重症らしい。
治療を開始し、少ししてから白哉はルキアを呼びよせ今までの彼の思いを語りだした。

ルキアが朽木家の養子となった本当の理由。
二つの掟に挟まれた状態での自分。
一護への礼とルキアへの謝罪…

それでも、はぼんやりとそれを眺めていた。

さん」

「………」

さん、どうしたの?」

石田がの肩を揺らした。
ハッと我に帰る

「あ、ううん。なに、石田」

笑みを浮かべて石田に目を向けるが、すぐさま表情が暗くなった。

「え、何?僕の顔に何かついてる?」

「う、ううん…ただ…なんか石田の顔つきも違うなぁって」

「は?僕の顔つき?」

「いいの、気にしないで。それより、何?最初に声かけたのは石田だよ」

「あぁ。さんは今までずっとどこにいたんだい?僕たちは隊長たちと戦ったり四番隊の救護牢にいたりしたけど」

「あ、聞いた。石田と岩鷲君も一緒だったのは今、知ったけど。茶渡がそこにいるってのは」

「誰から?」

「京楽さん。あー確か八番隊の隊長さん」

……何故、京楽さんのことを?」

茶渡も話しに加わる。
自分を倒した隊長から聞いたとは一体?茶渡は小首を傾げる。

「最初から説明しなきゃいけないんだけど…私ね」

そこへ更に人が割って入った。

君」

声をかけられは振り返る。
すると、仙太郎と清音を従えた浮竹が立っている。
いつの間にと思った。
治療している四番隊、治療されている者、そして旅禍である自分たち以外はさっさと双極から去っていたから。

「浮竹さん」

「誰?」

石田たちには単純にどこかの隊の隊長だろうと言うことしか認識されない。
隊長たちの共通は白い羽織を羽織っていることだから。

「とりあえず、君の友だちをウチで預かることにした。もう牢に入ることもないだろう」

「そうですか?ありがとうございます」

は浮竹に頭を下げてから石田の方に顔を向ける。

「まだ黒崎の治療に時間かかりそうかな?」

「どうだろうね」

「一段落したら、彼は四番隊に任せた方がいいだろう」

「そうですね」

そうしているうちに、なんとか終わったらしい。
織姫が額の汗を拭いながら大きく息を吐いた。

「織姫、どう?」

「うん、もう大丈夫」

ニッコリ笑う織姫。
少し寂しそうにそれを受ける

「じゃあ、そろそろ行こうか。君たちも疲れただろう?」

浮竹に言われて、一護を四番隊に任せて移動する。



***



十三番隊の隊舎の一室に石田たちは案内された。
障子を開けると日本庭園を思わせる庭が目に入る。

「なんか、すごいね〜」

今まで逃げ回って、戦っていた。
負傷し、治療されたとは言え、牢に入れられた状況から一変して、お客さん扱いだ。
織姫は旅行に来たみたいだと、庭を見てはしゃぐ。

「お茶、淹れてきたよ」

を連れやってきた。
彼女は一旦席を外していた。

ちゃん〜良かった、さっきはちゃんと話せなかったけど、こうしてまた会えて良かったよ」

「そ、そうだね」

は石田たちの前に茶を置く。

「ここの最中美味しいんだよ、浮竹さんが分けてくれたから食べて。あと少しで夕食だけどさ」

「わーい。最中だ最中〜」

織姫は早速一つ手に取り口に放り込む。

「おいしい〜」

いまいち、よくわからないのが石田たちだ。
一応お茶や最中はもらってはいるものの、どこかすっきりしない様子だ。

さん、さっきの話だけど」

「あぁ、そうだね。説明しないとね」

は座って織姫たちの顔を一通り見る。

「瀞霊廷に突入した際、黒崎とも私、はぐれちゃったの」

「そうだったんだ」

「うん。それで落ちた場所が、十三番隊の隊首室、雨乾堂の池に落ちたの」

「お、落ちた…」

は苦笑いしながら後頭部を掻く。

「落ちて気を失っちゃってね。が引き上げてくれたらしいんだけど、その後隊長の浮竹さんに助けられて」

先ほどに声をかけ、ここに案内してくれた男性だ。

「それで事情話して、ずっとここにお世話になっていました」

「………」

それぞれ黙ってしまう。
なんと言うか、言葉が出ないようだ。

さん…」

「わ、私だって、まさかそうなるとは思わなかったよ。夜一さんに隊長クラスと出会ったら逃げろ!って言われたけど…」

「?」

「夜一さんは?」

「あ」

「そう言えば見ていないね」

黒猫の夜一。
ここにいる全員、瀞霊廷内では一度も会っていないらしい。

「ど、どうしよう〜」

「って言われても、探しようがないよ」

「そ、そのうち出てくるんじゃないかな」

「………」

全員黙る。
だが、誰がと言うわけではないが、夜一ならば大丈夫だろうなどと言い始めた。
室内には乾いた笑いが起こる。

「そ、そうだ。黒崎は知っているかもしれないし…」

「だ、だよね!うんうん……明日聞きに行こうよ」

「あははは〜あーこの最中おいしい〜」

「でしょ?なんか瀞霊廷の中でも有名な和菓子屋さんのなんだって」

「なんか不思議な所だね、ここは」

「死神たちが住まう街…か」

「出歩いても良いなら、散策でもしてみようか?」

「うん。いいかも」

「もう戦わなくていいんだもんね」

「……だな」

「…………」

なんだかしんみりしてしまう。
敵対していたはずなのに、いつのまにかそうではなくて、共闘した仲になった。
に至っては浮竹の性格や過去の自分の経験から、警戒することもなかった。

「…織姫、最中食べすぎ」

「え、えーそ、そうかな?」

「石田と茶渡の分なくなる」

はくすりと笑む。

「あ、ぼ、僕のことは気にしないで、十分食べたし」

「俺も、もういい。残りは井上とで食べろ」

「私はそんなに食べれないよ。浮竹さん沢山持たせるんだもんなぁ」

菓子皿いっぱいに積まれた最中。
織姫以外はそんなに甘いモノは得意ではないようだ。

「じゃあ遠慮なく食べちゃいます!いっただきます〜」

「この後夕食なんだけどね」

藍染が仕出かした事、今後のことを思えば安堵してばかりはいられないだろう。
死神たちにすれば重大なことだ。
隊長三人が裏切り、被害も甚大だったわけだし。
でも、たちにしてみれば、当初の目的はルキアの奪還、処刑停止だ。
それは見事に果たされ、彼女は兄との関係も少し改善されたようだし。
自分たちの役目は終わったような気もした。
だから、こうして友だちと何気なく話していられるのが楽しかった。



***



昼間の騒動が嘘みたいに静かな夜だった。
久しぶりに会えた仲間たちと食べた夕食は美味しかった。
数日間だけなのに、空気がなんとなく変わった気がした。

織姫の意味不明な行動に石田が世話を焼いていたし
尸魂界にくる時と違って顔つきが変わっていた茶渡。

本人たちに言えば、きっと気のせいだと言われそうだが、は少し寂しくなった。

新たに与えられた部屋で織姫と寝ていたのだが、は彼女を起こさないように部屋を出た。
雨乾堂の方へ無意識に歩いていた。

あの池が見えたなと思った時に、先客がいた。

「石田?」

「?…さん。どうしたの?」

雨乾堂に繋がる廊下(?)の手すりに身体を預けていた石田。

「石田こそ」

「僕は少し眠れなくて、散歩かな。でも勝手に出歩くのも悪いと思ってアレコレ考えていた所だよ」

「そっか。私も似たようなものかな」

は石田の隣に並ぶ。

「あの建物はなんだか知ってる?」

石田が雨乾堂を指差す。

「うん。私がお世話になっていた場所だよ、雨乾堂って言って十三番隊の隊首室」

「あ、あれが?…なんかすごいね」

「隊長さんの仕事部屋だからちょっと違うの想像しちゃうよね」

はくすりと笑む。

「各隊によって様々な特色はあるようなのは知ったけど、あれが隊首室だとは思わなかったな」

ちょっとした別宅みたいなイメージがした。

「……さん」

「ん?」

「前に君が言っていた、助けてもらった死神には会えたのかい?」

石田にしか話していなかった。
は光り輝いている月に顔を向ける。

「うん…会えた。運がいいね、私。でも…やっぱりって言うか覚えていないみたい」

「……そうなんだ。でも会えて良かったね」

「うん、良かった。出会って戦うようなこともなかったし…寧ろ」

最初に思った。
敵対してしまったらどうしようかと。
でも実際はたちに協力をしてくれた。

「じゃあ、やっぱりその死神は浮竹さんなんだ」

「すごい、よくわかったね、石田」

「消去法かな。ま、会ってみてなんとなくそうかなとも思えたし」

あと、自分が出くわした隊長からはそのようなことをするように思えなかった。

「私さー」

「ん?」

「……やっぱりいいや」

「は?」

「なんでもない」

は石田に言いかけるが止めてしまう。
今思っていること、単純に石田に言っても困ると思うからだ。
いや、これは他の誰が聞いても答えようがない。
そんな気がする。

(……私、ここに何しに来たんだろ)

「僕はそろそろ戻るよ、さんはどうする?」

「私も戻るよ、フラフラしてたら、誰かに怒られそうだし」

「いいのかい?」

「え、なんで?」

「ここに来たってことは浮竹さんに用があるのかなって思ったし」

「……こんな時間に押しかけるつもりはないよ。単純に散歩していただけだって」

「そう?じゃあ戻ろうか」

「うん」

二人は騒ぐことなく、静かに部屋に戻った。








06/03/12
12/05/05再UP