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生生流転
#23 の背に乗って浮竹たちから離れた。 そこにいるのは危ないからと浮竹に言われて。 危ないからだけではないとには感じた。 自分がいるのは邪魔なだけだ。 離れろと言われてどこに行けばいいのか正直わからないが 京楽が七緒をどこかに運んだのでとりあえず、彼女の元へ行こうと思った。 総隊長である山本に一睨みされただけで、身体が竦み動けなくなってしまうくらいだ。 どうなったか心配でもある。 あの時、自分だったら? きっと簡単に気を失ってしまった気がする。 そうならなかったのは浮竹のおかげだ。 「何から何まで浮竹さんがいたから、私は…」 「………」 「あ、どうしたの??」 駆けるのを止めてしまう。 心配そうにを見つめる。 「あ、あ〜大丈夫!私は。どこも怪我もしていないし!」 いつも心配をかけてしまう。 周りは気づかずともだけにはわかってしまう。 はの身体にギュッと抱きつく。 「ありがと、。平気、私は平気だよ」 首に腕を回しても余裕のある今の。 大きな狼のような姿。 「さて、七緒さんって人探さないと」 姿勢を正して前を見る。 にはそれが合図となって再び駆けだした。 少し行った場所の芝生の上で倒れこんでいる人影を見つけた。 「あ、あの人だ!」 駆け寄って声をかける。 「大丈夫ですか?えと、七緒さん」 「……?」 まだ少し震えているようだが、目だけで七緒はの姿を確認する。 「その〜向こうは危ないからって、あと七緒さんが心配だったし…あ!汗、冷や汗すごいです、拭いた方がいいですよね」 は懐からハンカチを取り出し七緒の額に流れる汗を拭こうとするが、七緒に止められた。 「大丈夫、自分でできます」 ゆっくりとだが、身体を起こす七緒。 は七緒のすぐそばに座り込む。 「あなたは、旅禍ですよね?」 七緒は汗を拭いながらに問う。 「はい。って言います、こっちは」 「浮竹隊長と一緒にいたようだけど」 「…まぁ、そうなんですけど…」 お互い会話が続かない。 何をどう話せばいいのかわからない。 七緒に至っては、旅禍である青年に止めを刺そうとして京楽に止められたくらいだ。 はそのことは知らないのだが。 「今更、こんなこと言うの変ですけど…」 「?」 は申し訳なさそうに七緒に言う。 「京楽さんも私たちの手伝いしちゃって大丈夫だったんですか?」 京楽さんもと言うことは浮竹もそうだったと言いたいのか。 七緒は眼鏡をかけなおす。 「元々、あの方は自分で決めたら誰かどう言おうが好きに進む方だから…」 今回のことも自分で決めたことで後悔はしていないと言うことか。 「あなたが心配するだけ無駄です」 「そ、そうですか…はは…」 きっぱり言われてしまうと、も言い返すことができない。 でも七緒はそうは言っても京楽を信じ尊敬しているのではないだろうか? わざわざ彼女も着いて来たのだし。 浮竹たちがいる場所からかなり離れているとは思うのだが。 そこから溢れる大きな霊圧。 あの総隊長のモノだ。 それを感じる。 一言で言って物凄い。 焔が立ち上がっているような。 も七緒も無言でその方向に目をやる。 「……浮竹さん」 これからどうなるのだろうか? ルキアは助け出すことができたが。 無事に仲間たちとあの日常へ帰ることができるのだろうか? 浮竹たちはどうなるのだろうか? あれこれ考えていても今の自分は何もできない、無力だ。 だから、無事であることを祈る。 仲間も自分を手助けしてくれた浮竹たちのことを… *** どのくらい時間が経ったのだろうか? 長いようで短く、短いようで長く感じる。 ずっと七緒と動かず待っているわけだが。 「ん?」 突然空気が震えた。 何かを多少感じるのだが、よくわからない。 むずがゆく感じる。 だが、七緒の表情が見る見るうちに変わっていく。 「七緒さん?」 は訊ねようとするが、七緒が手で制する。 少し黙っていてほしいと言うことだろう。 「………」 長い沈黙のあと、七緒が深く息を吐いた。 「七緒さん、なんですか?今の…よくわからないんですけど」 「あなたには聞こえた?」 「いえ、何も。ただなんか空気が違うなぁってくらいで」 「そう…とりあえず隊長たちのところに向かいましょう」 「え?行っても大丈夫ですか?だって」 「大丈夫です。多分もう戦いはしないと思いますから…行きましょう。行きながら説明はしますから」 七緒は駆け出した。 もの背に乗って駆け出す。 七緒の話はこうだった。 先ほどが感じた空気の震えは四番隊副隊長虎徹勇音が使った縛道の一つ天挺空羅と言うもので。 直接脳に言葉を届けることができるものらしい。 緊急伝令の時に使われるようだ。 だから、今その緊急時なのだろう。 それによれば、死んだと思われていた五番隊隊長の藍染惣右介が全ての元凶らしい。 彼は死んだように見せかけて尸魂界の最高司法機関四十六室の殺害全滅し、その後自分の目的を恰もその四十六室の決定であるかのように見せかけて遂行していたとの事だ。 他にも三番隊隊長市丸ギンに九番隊隊長東仙要も彼の仲間であり、十番隊長日番谷冬獅郎に五番隊副隊長雛森桃を殺害しようとしたらしい。 わかりやすく七緒に説明されたのでなんとかにも理解できた。 「じゃあ朽木さんの処刑が早まっていったのは、その藍染って人の所為なんですね?」 「恐らく…」 「な、なんで朽木さんがその人に殺されなきゃならないんですか!」 「私にもその目的はわからないわ」 「そ、そうですよね。すみません…」 そうしているうちに浮竹たちがいる場所に到着した。 「京楽隊長!」 「あれ、七緒ちゃーん」 辺りには炎がくすぶっているのだが、彼らはすでに戦闘態勢を解いていた。 京楽が七緒の姿を見てふにゃっと表情を和らげる。 も浮竹のそばに駆け寄る。 「浮竹さん!あの」 「君…」 「あ、血出てます」 額を切ったのだろうか?赤いものが流れている。 はハンカチを取り出し、浮竹の血を拭う。 「い、いい。君。汚れてしまうよ」 「そんなの気にしないでください!」 身長差があるからは少し背伸びをした格好になるが。 「…すまない」 「なんで謝るんですか…他はどこも怪我していないですか?」 「あぁ。これもかすり傷だよ」 「良かった…」 は安堵し笑みを浮竹に見せる。 「あ…」 「?」 そんな風な笑みを見せてくれたのは初めてではないだろうか? 浮竹はそう思った。 思ったらなんか照れ臭く感じる。 二人のやり取りを見ていた京楽はニィっと笑みを浮かべて七緒に顔を近づける。 「七緒ちゃーん。ボクもボクも怪我しちゃってるんだけど」 「そうですか」 「え、それだけ?ボクも浮竹みたいに優しく手当てして欲しいなぁ」 「自分からそう言う風に言われるのはどうかと思いますが…」 じとりと京楽を睨みつける七緒。 それに動じることはない京楽。 「えーだって、浮竹ばっかりずるくない?」 「知りません」 プイッとそっぽを向く七緒。 「さて…」 もう一人この場にいた。 総隊長の山本だ。 「行くとするかの…」 「先生…」 勇音からの伝令には、藍染は今双極にいるとのことだった。 そこで何をしようとしているのか突き止めねばならない。 山本はスッと姿を消した。 「浮竹さん」 「君、君は、これ以上は…」 「嫌です。私も行きます!朽木さんが…」 は浮竹の目をまっすぐに見る。 浮竹は後頭部を掻き、息を吐いた。 「おいて行かれても、勝手に着いて行く…だったな。しょうがない」 そんな事をされた方が心配になってしまう。 浮竹はに手を差し伸べる。 「行こう、君」 差し伸べてくれた手にの顔が晴れる。 そして浮竹の手を取る。 「危ないとわかっていても…いいんだな?」 「はい」 ここで待っているのは簡単だ。 きっと安全で。 でも気持ち的に落ち着かない。 何もできなくてもこれから起こる出来事には目を瞑らず見なくてはいけない。 そんな気がした。 迷いのない目。 浮竹はの手をギュッと握りもう一方に手で肩を抱く。 そして瞬歩で双極を目指した。 京楽たちも後を追った。 「…これまでじゃの」 「…何だって?」 「…わからぬか藍染。最早おぬしらに…逃げ場は無いということが」 双極の丘に集結した各隊の隊長、副隊長たち。 は着いたと同時に目を開く。 黒ブチ眼鏡をかけた男性が中央で動きを封じられていた。 あれが藍染だろう。 刀を突きつけられている二人の男性に、倒れている者数名も目に入る。 「…黒崎?」 オレンジ頭の青年が血に伏している。 その一面、彼の血だろうか?赤く染まっている。 「黒崎!」 「君!」 倒れている仲間の姿には浮竹から離れて駆け出した。 バッと離れた手に急に寂しさがこみ上げてくるが、今はそんなことを考えている状況ではない。 「……藍染……」 浮竹は前方にいる男に集中する。 「黒崎っ!」 は一護に駆け寄る。 「はっ……はぁ…………はぁ」 「いいよ、しゃべらないでよ……」 彼は戦っていたんだなと思うと、涙がこみ上げてくる。 息をするのも苦しそうな一護の姿。 「ごめん。黒崎…」 何もできない自分。 力に何もなれない。 そうしているうちに空から突然の光が落ちてきた。 藍染はその光に囲まれる。 彼を捕縛していた二人はその光から咄嗟に離れた。 次々と空は大きく裂けていき、中から以前一度だけ見た大虚が何体も姿を現す。 更に光が二つ降り、藍染たちは天に昇っていく。 一護は痛みを堪えながら昇っていく彼らを見ていた。 は不安を覚えながら動けなかった。 そして、藍染たちは空の向こうに消え、裂けた空は何事もなかったかのようにいつもの顔を見せた。 06/03/04
12/05/05再UP
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