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生生流転
#19 再び雨乾堂。 浮竹の後をついて再び雨乾堂へと戻ってきた。 腰を下ろした浮竹の向かいにも座る。 「まだちゃんと聞いていなかったな。君たちは何名で瀞霊廷に来た?」 は仲間たちの顔を思い出しながら答える。 「6人と一匹…あ、を入れたら二匹ですね」 「一匹ってなんだい、一匹って」 と同じように動物を連れた者がいるのだろうか? それでこの尸魂界にルキアを助けに来たというからすごいとしか言いようがない。 「でも夜一さんはすごい猫ですよ。ここの事も詳しかったし」 「夜一?」 「はい、黒猫の夜一さんです。私がここまで力を使えるようになったのも夜一さんのおかげなんです」 「それでか……そうか」 「浮竹さん?」 「なんでもない」 先ほど懺罪宮で見た懐かしい顔。 彼女がオレンジ頭の旅禍の青年と繋がっていた理由が分かった気がする。 「それで、君の仲間と言うのは?」 「………あ、えーと……」 素直に教えるべきかは迷う。 浮竹が一護たちのことを知ってどうするのだろうか? 捕まえる? この情報を他の死神たちに言う? 「あぁ、大丈夫だ。誰にも言わないから」 の考えを読み取ったのか浮竹が笑っての頭を撫でた。 子ども扱いされているなぁとは思いながらも少し照れてしまう。 「確か、前に名前をチラッと聞いた覚えはあるな」 「あ、はい。向こうから一緒に来たのは黒崎、茶渡、石田、織姫と夜一さんとです。流魂街で岩鷲君も加わりました」 岩鷲君と言う名を聞いて先ほどの重症人だろう。そして良く知っている男の…。 「その仲間の中に死神はいるのかい?」 「黒崎が死神の力を持ってます。朽木さんと一緒に私は虚から助けてもらいました。私だけじゃなくて織姫も茶渡も」 「黒崎君と言うのはオレンジ頭の?」 「…はい、そうですけど……浮竹さん、黒崎と会ったのですか?」 「………会ったというより見た…だろうな」 忘れられない顔をしていた。 「あの、それで黒崎は?」 「ん、あぁ。行ってしまったよ」 「そうですか……一応無事みたいで良かった…」 は胸を撫で下ろす。 少しだが感じた一護の霊圧。 でも、どこでどうしているのかはわからず不安だった。 全員の安否はわからないが、一人でもはっきりとわかって良かった。 「私は直接聞いたわけじゃないからよく知らないですけど、黒崎も朽木さんに助けられたそうです。皆、朽木さんがいたから、黒崎が死神になったから助けられたんですよね…」 「君…」 「黒崎と朽木さんのおかげで…昔を思い出せた…にまた会えた」 はいつの間にかごろりと横に寝そべっているの身体を撫でる。 「に謝ることができました……それと…」 はジッと浮竹を見る。 浮竹はなんだと軽く傾げる。 は小さく笑み目線をそらす。 (浮竹さんに助けてもらったこと思い出せた) 「君?」 「皆、朽木さんと黒崎のおかげで救われたのになぁ…それが罪に繋がるなんて」 「それは…仕方ないとしか俺は言えないな」 「あ、別に浮竹さんを困らせるつもりじゃないですから」 は慌てて否定する。 浮竹もわかっているようでそれ以上は言わなかった。 浮竹は更にから話を聞いた。 そうしているうちに四番隊から戻ってきた仙太郎と清音を連れて再び出かけると言った。 「だから、今度は絶対にここから出てはダメだぞ?」 「はい。今度は出ません。留守番してます」 浮竹はこれから上にかけあうようなことを言っていたので、邪魔はせず大人しく待っていると決めた。 それで良い方向に動けばいいわけだし。 しかもダメだと言われてすでに二度も約束を破っているわけだし。 「じゃあ、行ってくるから」 「はい、いってらっしゃいませ」 浮竹たちが出て行ってから、今のやり取りになんとなく笑ってしまう。 家族でもないのに。 とりあえずは、と一緒に大人しく留守番していよう。 膝を抱えて天井を見つめる。 「皆、無事だよね……きっと。もうすぐ、なんとかなるから…」 そしたら、皆で帰ろう。 残りの夏休みを楽しもう。 *** そろそろ陽が沈むかと言う時間帯。 まだ浮竹たちは戻ってこない。 大人しく待ってはいるものの、もともとの性格の所為かジッとしているのは辛い。 でも勝手なことをしたら、今度こそ浮竹に怒られてしまうだろう。 いや、怒られるだけで済めばいいが。 何もすることがないとなると、自然と身体を横にしてしまうわけで… の前足を握って遊んでいたが、感触が気持ちよくて段々と眠くなってくる。 後もう少しで眠りに落ちそうって言う時に。 「浮竹ぇ〜いるかーい」 「!?」 「暇だろうから見舞いに来たよー隊首会での話もあるしね〜」 誰か来た! そう思っては身体を起こす。 しかも相手は話し方から浮竹と同等の存在のようだ。 は焦る。 ここに他の隊の人間が来ることはありえるのだ。 昼間、檜佐木に会った時には時に何も言われなかったが、今は違う。 見つかりでもしたら非常にマズイだろう。 自分は旅禍でそれを浮竹が匿っていると知られたならば… 「体調はどうだい?人形焼買ってきたんだ、食べるだろ?……おや?」 相手は返事も待たずに中へ入ってきた。 入ってきて、の姿を見て一瞬止まるがすぐさま笑みを浮かべる。 「君は何してるのかな〜?ここは十三番隊の隊首室だよ?」 死覇装に白の羽織。 浮竹と同じ隊長らしいが、帯と更に上に羽織った着物が女物で少し遊んでいるように見えてしまう。 「え、あの……」 逃げられるものなら逃げたいが。 「君と似たような霊圧をボクは知ってるなぁ〜」 「っ!」 に一歩近づく。 は一歩下がる。 グルルル… がの前に立って相手に向かって威嚇する。 「怖いなぁ〜、大丈夫だよ、とって食いやしないよ。あ、人形焼食べようよ、美味しいよ」 「は?」 そう言ってその場に座り込んでしまう。 は威嚇はやめるが、京楽に近づきもしないで外に出てしまう。 「八番隊隊長、京楽春水。よろしく。ほら〜突っ立ってないで座りなさいな。あ。お茶あるといいなぁ」 「は、はい」 意味もわからず、京楽のペースに巻き込まれてお茶の用意をし始める。 ここに茶器を置いてあったよなぁとか、湯はここで沸かしていたようだと思い返す。 「君の名前は?」 「…です」 「ちゃんかあ、名前も顔も可愛いじゃないの」 「ど、どうも」 京楽は自分が持ってきたという人形焼を取り出す。 「ここのは美味しいんだよね、まぁボクは徳利最中が一番好きなんだけどね」 「あ」 思い出した。 ここで浮竹に会った時に、浮竹が『京楽がくれた最中が〜』などと言っていたことを。 ちょくちょく遊びに来る仲なのだろうか? 「あ、あの。お茶です、どうぞ…」 「ありがとう」 京楽に茶を差し出す。 「それで、ここで何をしているのかな?どうやら、勝手に入り込んだって風には見えないけど」 「……あ、その……」 「あれか、ルキアちゃんを助けようとしてる…」 「は、はい」 真面目に何を答えているのだ、自分は。 「浮竹も当然知っているんだよね?」 「はい…あ、でも!う、浮竹さんは悪くないですから!私が勝手に押しかけたようなものですし。ここから出ろと言われれば出ますし、あ、出るって変か。素直にじ、自首と言うか、牢にも行きますから。だから、浮竹さんは無関係で…なので、罰するなら私だけで、お願いします」 自分の所為で浮竹の立場が悪くなるのは嫌だ。 は京楽に向かって頭を下げる。 「別にボクはそんなつもりはないけどねぇ。無意味に争うつもりもないし」 京楽の顔を覗き見る。 「とりあえず、人形焼食べよう」 「は、はい」 顔をあげる。 京楽に差し出された人形焼を一口食べる。 「尸魂界にもこう言うのあるんですね」 「あるよ。お腹減るしね。どうせなら美味しいもの食べたいじゃない」 「はぁ」 「で、お味はどう?」 「お、美味しいです」 「それは良かった」 京楽はニコリと笑った。 *** 「隊長…」 「簡単には行かないとは思ったが…」 門前払いと言うか、朽木ルキアの処刑停止を求める進言をしようと思ったのだが。 誰一人として通されることなく、目の前の扉は堅く閉ざされている。 「………」 とりあえず、次の手を考えるべきか。 浮竹が腕を組み考えこんでいると、こっちに向かってくる何かに気付いた。 「?」 屋根を伝って飛んでくる。 そして、目の前に降り立った。 「?」 それはといつも一緒にいる犬で。 主人思いの優しい犬だ。 そのが自分の前に単独で来るとは。 「どうした?君と一緒に留守番だろう?」 浮竹の言葉がちゃんとわかるようで、は浮竹の羽織を銜えて引っ張り始める。 「な、なんだ?」 「こいつ、隊長に用があるみたいですね」 「お、おい。そんなに強く引っ張るな、どうした…あ、君に何かあったのか?」 そうでもなきゃ、が来るわけないだろう。 「わかった。戻ろう」 大丈夫だとは思っていたのだが、誰かがの存在に気付いたのだろう。 気づかない方が可笑しいのか? 浮竹は急いで雨乾堂に戻った。 06/01/29
12/03/21再UP
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