生生流転




ドリーム小説
#13





空鶴の花鶴射法二番“拘咲”により一護たちは打ち上げられた。

「な…なんか…内部は思ったほど衝撃はないんだな…」

「バカ野郎…これからだぜ!」

上りつめたと思ったら、真横に飛ばされる。
穏やかだったのが強い力で砲弾は進む。
岩鷲は懐から書状のようなものを取り出し開く。

「な…何する気だ、おまえ!?」

「“継の口上”だ!花鶴射法・二番は二段詠唱なんだ!打ち上げから方向決定までを“先の口上”でその後の加速と軸調整を“継の口上”でコントロールする!そうすることでそれぞれの精度を上げるんだ!無事に突入したきゃ邪魔するなよ!」

「お、おう!」

「さて…と。みんな聞いてくれ。瀞霊廷に無事に突入するためにはこの砲弾の軸を安定させる必要がある!
そのためには全員の霊力の放出量を均一に調節しなきゃならねえ!
だが、俺はこれから術式に入る!そうなると霊力の放出にあまり気を払えねえ!そこでだ!
みんなの霊力量を合わせてほしい!こいつに手を触れてれば周りの奴の霊力量がわかるはずだ。 だから、それぞれで調節してくれ。ミスったら終わりだ!頼むぜ!」

全員が力強く頷く。

「花鶴射法二番!!“継の口上”!!」

始まった。
一護たちは霊力の調節に入る。

思えば、不思議なものだと思った。
確かに、最初に空鶴は見張りの意味も込めて岩鷲をつけると言った。
死神嫌いの彼が姉の言う事だから仕方なしについてくるのだろうと。

でも違った。

一護との間で何かあったようで、彼は幼い頃に亡くなった兄の事を話した。
天才だった兄は死神なってからも優秀だったが、ある日仲間の死神に殺されてしまったそうだ。
それでもその仲間に向かって笑いながら礼を言った兄。
何故、そこまで信じれるのか、憎まないのか。
一護は他の死神とは違うような気がする。
だから自分の目で本物の死神を見極めるのだそうだ。

理由はどうであれ、瀞霊廷に突入するのに仲間が増えたことは心強い、そう思った。

「く、黒崎くん…ちょっと多い…っ!」

「そ…そうか?わ…悪い…」

「黒崎!もう少し落とせ!」

「わ…わかってるよ!これでもけっこう減らしてんだ!!」

「…一護…」

「わ…わかってるってば!」

「黒崎…もうちょっと落として…ッ!」

「わかってるって!今減らしてんだ!ちょっとまってくれよ!」

砲弾を作る事には成功した一護だが、細かい霊力の調節は不慣れのようだ。
元々人より大きい霊圧の持ち主で今まで、そう言う事を気にしたことがないのだ。
言われて一護は焦る。
一方で、口上に集中しなければならない岩鷲の表情が苛つき始める。

「バカ野郎!!同じ行2回読んじまったじゃねえか!!」

「何だよ、ちくしょう。それも俺のせいかよ!」

「てめーがギャーギャーうるせえから気が散ったんだろが!!ボケェ!!」

完全に口上は止まった。
口上は止まったが一護と岩鷲の罵りあいは続いている。

「やめて黒崎くん、岩鷲くん!そんなことしてる時じゃないでしょ!」

「そうだ止せ!」

「ちゃんと霊力調節しなきゃまずいってー黒崎ー」

たちの言葉など二人には届いていない。

「なんで仲悪いのにこの二人隣に並ぶかな…」

は溜め息をつく。
とりあえず霊力の調節をと思ったが、茶渡が外に目を向け、声をかける。

「…おい…外…見てくれ…」

「…せ…瀞霊廷だ…!!」

障壁が張られているのがわかる。
口上は止まっているが砲弾はまっすぐに障壁に向かって飛んでいる。

「ぶつかる…っ!」

「こうなっては仕方ない!!全員でありったけの霊力を込めるんじゃ!!少しでも砲弾を堅くしろ!!」

障壁にぶつかった!
夜一に言われたとおりに霊力を霊珠核に込める。

「行ってくれえ!!」

ゆっくりとだが障壁を通り抜けていく。
抜けたと思った瞬間に砲弾が破けた。
一護たちは宙に浮いた状態になった。

「ど…どうなってんだこりゃ!?どうにかシールドを通り抜けたのはいいけど…なんで俺達地面に落ちねぇんだ!?」

「離れるなっ!今はシールドにぶつかった砲弾が溶けて一時的に儂等に絡みついているだけじゃ!じき渦を巻き破裂して消滅する!その時に離れておったら衝撃で皆バラバラに飛ばされる…」

夜一が言った直後に急激に渦が巻き始めた。

「始まったぞ!」

「うぉぉ飛ばされてたまるかよ!」

「おわー!こっちくんなー!」

岩鷲は一護に無理やり掴む。
この空間では中々上手く動けない。

「それぞれ近くにおる奴を掴め!絶対に離れるなよ!」

一護と岩鷲は互いを掴み。
茶渡が織姫を抱える。
は一護の近くにいたので彼の右肩を掴んだ。

「黒崎!」

「おぅ離すなよ!」

「肩を借りるぞ!」

「夜一さん!」

夜一はの肩に止まる。
茶渡は石田に手を伸ばすが、あと少しの所で渦の勢いに負けて引き離されてしまう。

「茶渡くん!」

茶渡は織姫を一旦離し、石田のほうへ飛ぶ。
そして手を伸ばし彼を掴んだと同時に織姫の方に飛ばした。

「茶渡くん!」

石田は織姫に受け止められたが、茶渡は単身飛ばされてしまった。

「チャ…チャド!」

「案ずるな!奴なら必ず生き延びる!!それよりも!下で奴を探したくば、まず自分達の無事を考えろ!」

「くそ…ッ!」

一護は織姫に向かって手を伸ばし、織姫も一護に向かって手を伸ばす。

「井上!!」

「黒崎くん!!」

あともう少し。
手が届く!

その瞬間に巻かれていた渦は轟音とともに破裂した。
しかも5つに別れてそれぞれ吹き飛んでしまった。

「………」

「つかまって石田くん!!火無菊 梅厳 リリィ!!『三天結盾』!!!」

「…一人になってしもうたか…これはこれで…却って都合が良いかもしれんの…」

「さがってろい!砂になあれ!!!『石波』!!!」

それぞれが無事に着地できるように態勢を整えた。
は…

「くっそ〜黒崎の腕もっと強く掴んでいるべきだった!…ってこんなことしている場合じゃない!」

は右手を前にかざし、左手をそっと重ねる。

!!」

霊力を込めるとが姿を現す。
更に強く念じるとは円を描いて盾となった。

地面に激突するかと思ったのだが…

「え!?」

バッシャン!!

が飛び込んだ先は固い地面ではなく、池だった。

(…うぅ…これってラッキーなのかな?…)

水中で体勢を整え必死で水を掻き揚げ顔を出す。

「…ぷはっ!…た、助かっ…て…げふっ!」

着ている服が水を吸ってしまい体が急に重くなる。

「ちょ!…ジ、ジーパンがっ!…さ、最悪!…」

今更の話なのだが、一護は死神の死覇装、石田が滅却師の衣装をまとっていた。
茶渡と織姫もそれぞれ動きやすい格好をしていた。
の格好はと言えば、上は黒のTシャツに下は黒のジーパンだった。普通に動く分には何も問題はないが。
現在水の中。
動きやすくてお気に入りのジーパンが、今、1番邪魔をしている。

(…だ、ダメ!…)

はもがくが、却って逆効果となり体力だけが奪われついに沈んでしまう。

(……も…意…識…も…)

織姫を守るって決めたのに、ルキアを助けるって決めたのに。
瀞霊廷へ潜入できたそばから、脱落しそうになっている。
悔しくもあるが、意識が段々と遠のいていった。

最後に目に映ったのはだった。





「…なんだ?」

護廷十三隊 十三番隊隊長浮竹十四郎は寝ていた身体を起こした。

最近の瀞霊廷は騒がしい。
そう言えば緊急隊首会だとか通達があったが、身体の状態を優先して休んでしまった。
いつも静かな雨乾堂の周りも朝方から騒がしくてゆっくり寝ていられない。
そう思った矢先に池に何か落ちた。
人の霊圧のようなものを一瞬感じたのだが。

気になって外に出たら、池の中から急に一匹の犬が飛び出していた。

「…犬?なんで此処に?…それに…あ!大丈夫か!?」

犬の背で少女がぐったりとしている。

「隊長ォ!何事でありますか!」

同じように異変に気付いた部下が二人姿を現した。

「お、起きて大丈夫なのですか!?」

「あぁ、大丈夫だ。それより…彼女のほうが」

「「彼女?」」

浮竹は近づこうとするが犬が唸り声をあげた。

「うぉ、なんですか!この犬は!」

「あ、危ないですよ!隊長!咬まれます!」

「平気だ…大丈夫だ、彼女は君の主人か?だったら助けてやりたいのだが…いいか?」

浮竹は犬に向かって手を伸ばす。
後ろにいる部下は犬が襲ってこないかとハラハラしてしまう。
犬は威嚇するが浮竹の顔を見て敵意がないと感じ取ったのか浮竹の手を舐めた。

「いい子だ」

犬の頭を一撫でしたあとに少女を抱き上げる。

「清音」

「は、はい!」

「彼女の着替えを頼む。あ、中で寝かせるから」

「た、隊長!いいんですかい!?そいつは多分」

「あぁ旅禍だ。だがこのままにしておけんだろう」

「しかし…でしたら牢へ入れたほうが」

浮竹はさっさと雨乾堂の中へ運ぼうとする。
清音と呼ばれた少女も止めようとするが先に頼まれてしまったことせねばと場を離れた。

「牢ね…まぁいいじゃないか。ほーら、仙太郎どいた、どいたー」

簾を上げて中へ入ってしまう。
犬も一度身体を振って水を飛ばしてから浮竹のあとに続いた。



***



「…ん…」

「くぅーん」

が目を覚ますと心配そうに覗き込んでいたが映った。

「……?……」

主人が目を覚ましたことに尻尾を振る
は手を伸ばしの頭を撫でる。

「…………」

確か池に落ちたのだが、どうやら助かったらしい。

「なんで……私……」

が自分を助けてくれたのだろうなとは思うのだが。
よく見れば布団に寝かされているし、着替えまでしてある。

「誰が?」

は身体を起こす。
見慣れない部屋。
流魂街や空鶴邸とは違う感じのする部屋。

「……瀞霊廷の中だよね?」

だとすると死神たちの住まう街だ。
親切な死神さんが助けてくれたのだろうか?
そんな事を考えていると男が一人入ってきた。

「おっ。気がついたようだな。大丈夫か?どっか痛む所あるか?」

「……?……」

「足を少し痛めていたようだが、俺の鬼道で治してみた。多分大丈夫だと思うが?」

顔を見上げると長身の男がニコリと笑んで立っている。
が返事をする前に男はの近くに腰を下ろした。

「あ、あの?……」

「利口な犬だな〜君の事助けて君が起きるまでずっと側にいたぞ」

男はの頭を撫でる。
人懐っこい子ではあるが、警戒心が多少はついている。
なのにも男には吼えようともせず大人しくしている。

「さて、君の名前を聞かせてもらおうかな。旅禍ってことはわかっているから隠してもダメだぞ」

それに今瀞霊廷中が旅禍探しで煩いのだ。

(……こ、この人……)

目覚めて混乱したものの、男の姿を見ての心臓が早鐘を打つ。
顔はよく覚えていなかったが、声は忘れていない。
長い髪もただ長いだけじゃなかった、白髪だったから覚えていた。

(……こんなに、早く会えるなんて……)

は掛け布団をギュッと掴むと俯いてしまう。

「……っ…ひく……」

の目から涙が零れ落ちる。

「お、おい!?どうした?やっぱりどこか痛めているのか?」

泣き出したに男は慌てて顔を覗きこむ。
は首を横に振る。



この人は私を助けてくれた、死神だ。








彼女を助けてくれたのは浮竹さんでした。
05//11/13
12/03/20再UP