生生流転




ドリーム小説

#10





轟音と共に門は完全に閉じてしまった。

「黒崎くん、大丈夫!」

「黒崎っ!」

「あー痛ってえ!」

ガバっと起き上がったので大丈夫だろう。

「無事なようじゃな、一護」

「門は?」

一護の目にも閉じられた門が目に入る。

「悪い。俺のせいで門が…」

「いや、相手が市丸ギンでは仕方ない。怪我がなかっただけでも良しとせねばな」

一護は立ち上がり残月を背に戻す。

「井上…あいつの手当て手伝ってくれ」

「あ、うん」

「ん?」

先程まで誰一人いなかった街に急に人の姿が現れる。
しかも沢山も。

「なんだ、あいつら」

「今まで隠れていたのか…」

「どうして…」

「儂らは恐れられていたのじゃ。死神の導きなしに不正に尸魂界へ来た魂魄は「旅禍」と呼ばれ尸魂界ではあらゆる厄災の元凶とされるからのぉ…」

「敵だと思ってやがんのか?」

住人を前にそれぞれ身構える。
だが、老人が現れ声をかけてきた。

「お待ちくだされ、私はこの流魂街の長でございます。
今の一件すべて見ておりました。ジ丹坊の恩人としてあなた方を歓迎したい」

集まってきた人々は、死神は好かないが、流魂街出身のジ丹坊にはそうでないらしい。
そのジ丹坊の為に市丸ギンに立ち向かった一護は他の死神たちとは違うと感じたらしい。

織姫はジ丹坊の治療に入り、茶渡は前に会ったと言うシバタ少年と出かけてしまった。
そしては…

再び閉ざされてしまった門の前にいた。

「……考えてもみなかったなぁ…」

あの時、虚から助けてくれた死神。
あの人とも戦うことになるのだろうかと。

顔はよく覚えていない。
大きい後ろ姿に長い髪。
それと優しく響いた声だけだ。
会えば、この人だってわかるかもしれないが。
会った時に敵だったら嫌だなと思った。
の考えている事がわかったのか、は細い声で鳴き見上げている。

……」

さん!」

「…?…石田?どうしたの?」

呼ばれて振り返れば石田がいる。
呼びにきたのかとは思ったのだが、突然石田が頭を下げた。

「ごめん!」

「ちょ、ちょっと何?どうしたの?」

石田は顔をあげるが、の顔を見ることができずに少し伏せている。

「こっちに来ていっぺんに色々あったから、言い出せにくくなっちゃったけど…僕の所為で」

「石田の所為って?」

「断界で僕が拘流に捕まった時に君まで巻き込んでさ…」

「あぁ〜」

確かにあの時、石田の足に引っかかって転んだ。
でも、石田の所為ではないとは思っている。

「足、痛いんじゃないのかい?黒崎が戦っている時座り込んでいたし」

「あ、気にしないでよ!あのね、私部活中に何度も捻挫とか経験してるから、ちょっと癖ついちゃってさ」

だから石田の所為ではないよ。

「でも痛みがあるには変わりないだろ?井上さんに頼んで」

「ん。そうしようと思ったけど…あの子今ジ丹坊さんの為に頑張ってるでしょ?」

だから余計な事はさせたくない。
たいしたことじゃないと思ったから、あの子に余計な力を使わせたくはない。

「だから平気」

「……だったら、せめて僕に治療させて」

石田に近くにあった縁台に座らされた。
そこで石田はの足首を見て顔を歪めた。

「腫れてるじゃないか…たいしたことないなんてないだろ?」

「う、うーーん。少しは良くなってると思うんだ」

「どこから出るの、その根拠」

「あはは、どこかなぁ」

石田は包帯を取り出しの足に巻きつける。

「でも捻挫ではないかな?」

「うん。だから大丈夫だよ」

「それでも痛いんだろ?…一応こうして巻いておくけど、そんなに効果はないと思うから」

早めに織姫に治してもらってほしい。
石田はテーピングの要領で包帯を巻いてくれたのだろう。
靴を履いて立ってみると、それでも先程よりは大分楽になったような気がする。

「ありがと、石田!結構いいよ」

「…礼を言われるほどじゃないよ…」

原因は自分にあったのだから。

「それと、もう一つ気になったことがあるんだけど…」

「何?」

「さっきの市丸って隊長のこと知ってるのかい?なんかジッと見ていたから…」

石田はそこまで言ってハッとする。

「あ、あぁいや!別に言いたくなければいいんだよ。気づいたの僕だけみたいだし」

「…知らないよ」

は歩き出す。
石田もの隣を歩き出す。

「え?」

「あの人は初対面」

「そ、そうなんだ」

「ただね……もしかしたら、私の知っている死神は隊長さんなのかな〜って思ったから」

「え?」

「石田は他の死神にも会った事あるんだっけ?」

「…あぁ。六番隊とか言ってた」

「隊長さんってのは、みんなあんな格好なのかな?」

「さぁ?それは知らないけど…僕が見た六番隊の隊長は少し違っていたけど…」

「そっか…」

この世界も陽が暮れるようだ。
太陽が傾きオレンジ色で染まっている。

さんが…出会った死神…って」

「一度だけ。本当に一度だけなんだ。虚に襲われた所を助けてもらった」

「ふーん」

「……優しい感じの人でね、白い羽織だったなぁって」

「もし…その人が君の前に立ちはだかったらどうするんだい?」

は驚いて石田を見る。
言った石田自信も少し驚いているようだが。

「あ、いや…その…」

「わかんない」

「…だよね」

「私は、織姫が黒崎を守るって言うから、その織姫を守るためにここに来た。
朽木さんとももっと仲良くなりたいから、彼女を助けることも決めた。
でも…もし、その人が出てきたら、決意が揺らぐかもしれない…あの人、私に生きろって言った」

さん…」

もう向こうはのことなど覚えていないだろう。
でも、戦えば、もし本当に隊長だったならば、は負けるだろう。

「よそう。考えるの」

「は?」

「まだわからないんだろ?だったら今は考えるのよそう。今はあの中に入る方法を考えなきゃ」

「石田…うん、そうだね」

はニコリと笑む。

「あーなんか石田優しい〜」

「な、何を突然言うんだい!」

「そう思ったから。それになんかさ、黒崎も茶渡もそうだけど…今までそんなに接点なかったのにさ。こうして一緒にいるのが当たり前って思えるくらい馴染んでるなぁって」

は織姫とは付き合いが長い。
たつき繋がりで一護とも知り合ったが、話すようになったのは高校に入ってからだ。
それでも、たつきがいないとあまり話すこともなかった。
石田ともほとんど話すこともなかったし。

「やっぱ付き合ってみないとわからないものだね」

「………」

「またさ、中に入ったら迷惑かけちゃうかもしれないけど、よろしく頼むよ」

「そ、そうだね…」

石田の頬が薄っすらと赤く染まったのは気の所為か?
夕日の所為でそう見えるのかはわからない。



***



夜。
この街の長の家にて今後の話し合いを始めた。
一度門を開けてしまった以上、警戒されて門の内側の警備は今回の何倍にもなるだろう。
直接門を開けるのは得策でないと。
更に言うならば。他の門を開けようにもここから歩いて十日もかかってしまう。
ならどうしようかとそれぞれ焦るが、夜一は落ち着いたまま告げる。

「門がダメなら、門以外から突入すればいいだけのこと」

「門以外?」

「長老殿。志波空鶴をご存知か?」

「な、なんじゃと!」

「なにしろフラフラと住処を変えたがる奴じゃ、今どこにいるか所在が掴めぬ」

「志波空鶴…あんた方まさか、アレで壁の中に入るつもりかね…」

どことなく長老の手が震えている。

「アレって?」

その時、外から何か近づいてきた。

「何の音だ?」

それはまっすぐここへ向かっているようで音は段々近づいてくる。
止まったと思ったら、扉を吹っ飛ばして男が転がり込んできた。
その後にはでかいイノノシが一頭。

「うわ!イノシシ」

「ウゥッッ!」

でかいイノシシの登場にが唸り声を上げた。

「あー!ダメ!生はダメ!食べちゃダメだから!」

「ち、違うと思うよ、さん…」

皆の視線がイノシシに注がれていたが、男がのそりと起き上がる。

「やれやれ…また俺のボニーちゃんに振り落とされちまったぜ…」

男は服を掃い長老のほうに顔を向ける。

「よっ!久しぶりだな、おっちゃん!!」

「ガンジュ!何しに来た!帰れ!」

「なんだよ、久しぶりにカオ見せたってのに帰れたあゴアイサツだな。お客人が驚いてるぜ」

男・ガンジュは一護ジロりと見つめ、かけていたサングラスをとると近づいてきた。

「おんやぁ」

「…なんだよ」

「なんだよじゃねーよ、なんでこんなトコにクソ死神サマがいやがんだって聞いてんだよ」

ペチペチと一護の頬を叩くガンジュ。

「あーー!?」

「あーー!?なんとか言いやがれこのタンポポ頭」

「おべぁ!」

一護の顎を掴んだと思うと、彼は一護に殴り飛ばされた。

「何しやがんだ!ケンカ売ってんのか、コラァ!!」

「そりゃこっちの台詞だ。いきなり全力でカラんできやがって!!このイノシシ原人!」

更に罵りあいはパワーアップする。
それを見て織姫はどうやって止めようかとあたふたするが、長老はやはりこうなったかと暢気に茶を啜っていた。

「何なんですか!長老さん!」

「てめーら俺様を知らないってか」

「知らないね」

「知らないわ」

「知らないなぁ」

「知らん」

「知りたくもねー」

「へっ仕方ねー教えてやるぜ…俺様の名はガンジュ!自称「西流魂街の真紅の弾丸」にして
自称「西流魂街のアニキと呼びたい14年連続ナンバーワン!!そして!自称「西流魂街一の死神嫌いだ!」

「全部自称だ!」

「はっまったく救いよーのねぇ奴だぜ」

「なにぃ?」

「なんだよ…」

「うおぉぉぉ!!」

ガンジュは突然一護に体ごとぶつかった。
その勢いで二人は外に飛び出してしまう。

「黒崎くん!」

「黒崎!」

たちも外へ出ようとするがガンジュの手下に阻まれる。
…手下全員がイノノシに乗っているので少しひいてしまうが。

「やっぱ…の方が格好いいなぁ」

の頭を撫でる。

〜たくさんいるけど生は食べちゃダメだからね〜」

ちゃん。犬ってイノシシ食べるの?」

「肉は与えれば食べるよ。でも生は流石に食べさせたことないし…魚は生で食べたか。マグロのチアイとか」

「…イノシシ相手に勝てるのかい?犬ってのは」

「石田。秋田犬は熊犬よ。マタギの犬!熊と戦う犬なんだから!」

「家庭で飼う犬は熊とは戦わないだろ…」

「あー!茶渡にツッコまれた!」

などとしているうちに一護とガンジュが再び殴り合いを始めた。
長老も出てきてガンジュを止めさせようとするが彼は死神がなんであろうと嫌いらしい。

「まずい!黒崎の奴斬魄刀を持ってないぞ!」

言うよりも早く茶渡が斬魄刀を一護に向かって放った。

「サンキューチャド!」

一護は斬魄刀を構えて応戦し始める。
だがすぐにガンジュが使った術によって素手での戦いとなる。

一護がガンジュの手首を掴みそのままの勢いで顔に一撃を与える。

「…あ」

ガンジュは吹っ飛ぶも立ち上がる。
思いっきり殴ったのに立ち上がるガンジュの打たれ強さに一護は少し呆れてしまう。

「…そう言えば初めてか…あーよくわからなかったしなぁ」

ちゃん、どうしたの?」

はブツブツ言いながら口元を手で押さえている。

「黒崎の腕…」

「黒崎くんの腕?え?まさか怪我しちゃったとか!?」

織姫は一護が大丈夫かと目を見張るがどこも怪我した様子はない。
更にの口から漏れた言葉に愕然とした。

「…好みなんだよなぁ」

「…ちゃん…男の人の腕好きだったよね、そう言えば…」

織姫は肩を落とす。

ジリリリリリリ!!

「た、大変だーアニキ!!9時だーーー」

突然アラーム音が聞こえたと思ったらガンジュの手下が叫びだした。

「何ィ!9時!?まずい!カモン、ボニーちゃん!」

ガンジュが口笛を鳴らすとあのでかいイノシシが一護の背後から姿を現した。

「ん!?」







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05/11/11
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