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生生流転
#7 「とーーーーーーーーつ!!」 「おおおおおおおおお!!!」 「わあああーーーーーーーー!!」 「ごおおお…」 「はーーーーーーっ!!」 空きビルの一室からこだまする声。 通りがかった人間が聞いたら何事かと思うだろう。 「………」 そこで先程から夜一による尸魂界へ行くためのレッスンが行われていた。 生徒は茶渡と織姫と。 声の主は茶渡と織姫だ。 は口をぽかーんと空けて見ていた。 「…まるで駄目じゃな。それではいつまでたっても尸魂界へ行かせるわけにはいかぬ」 「そんなあ…」 息も切れ切れになっている織姫。 「そんなではない。 己の能力を自在に発現できるようにならねば尸魂界へ行っても犬死じゃぞ。 難しいことではあるまい。最初の時を思い出してそれをなぞれば良いのだ」 「そんなこと言われても…最初の時はただ、必死で…」 「何に必死だった?」 「え?」 「人が剣を握るのは何かを守ろうとする時じゃ。 それは己の命だったり、地位だったり、名誉であったり。 愛するもの、信じること、善し悪しはあれど“守る”という意志に変わりはない」 夜一はそれぞれの顔を見つめる。 「思い出せ。その時、おぬしが何を守ろうと思うたのか」 織姫も茶渡ももそれぞれが何かを守ろうとした。 織姫はたつきを… 茶渡は一護の妹を… は母と愛犬を… おぇっ 茶渡は何か失敗したらしい。 「…どうした?」 茶渡が隣の織姫を見たとき彼女のヘアピンが光った。 「!光ったぞ…?今」 「えっ!?えっ!?ホント!?」 「そうじゃ、心と魂は直結しておる。大切なのは心の在り様。おぬしは…何のために尸魂界へ行く?」 織姫は問われて呼吸を整える。 目を閉じて。それを心に思い浮かべて。 そして迷いのなき目を開いて答える。 「黒崎くんを守るためです」 「そうじゃ」 織姫の言葉に反応し、彼女のヘアピンは光弾けた。 同時に小人が現れる。 「…み…みんな…!」 自分の力でもあるそれが現れた織姫の顔は晴れるが、それは一瞬で辺りは急激に騒がしくなった。 「ピンチもねえのに呼び出してんじゃねぇよ!!このクソ女!!」 黒い小人が織姫の髪を引っ張る。 「こら!!椿鬼!やめなよっ!!」 「いやーーーーごめんなさい、ごめんなさい!!」 ドタバタ暴れまわっているが、夜一からすれば一応合格点らしい。 あとは自分の能力をしつける訓練をすれば良いらしい。 そして茶渡とに目を向ける。 「…さて、次はおぬしらの番じゃな。おぬしは…何のために尸魂界へ行く?」 「………」 は考えていた。 でも考えてもわからないから、あっさり夜一に言った方が早い気がした。 「ね、夜一さん」 「なんじゃ?」 「私の場合、が力を貸してくれたの。でもって幽霊みたいな存在でしょ?」 その場合はどうすれば良いのだろうか? 「違うな。確かにその犬の霊がおぬしを助けたかもしれぬが、おぬしの力に引き出されたようなものじゃ」 「…?意味わかんない…」 「そうじゃな…一々説明すると面倒くさい。それに説明するより身体でわかった方が良い」 夜一さんもわからないのでは? そう思ったら、肉キュウでバシっと顔を叩かれた。 「い、痛い!」 「喜助も言っておっただろう?その力は己の魂の底から引きずり出された能力だと」 「はい。夜一さんも言いましたよね。でも私は」 「深く考えすぎるな。とやらは確かにおぬしを守っていた様子はあるが所詮ただの動物霊だ。力などない。だが、虚を倒した。それはおぬしがを取り込んだのだ」 「は?」 「の魂はおぬしの魂と同化・共存したとでも思っておけばよい」 「……は私の力になってくれると?」 「そうじゃ。改めて聞くぞ。おぬしは何を守ろうとした?」 夜一に見つめられて息を呑む。 落ち着け。 落ち着いてよく考えろ、思い出せ。 「あの時は、虚に襲われて…母と佐助を助けようとした。なんでもいいから力が欲しかった」 その時、が現れて彼に触れたらそれは剣と化した。 「では、何のために尸魂界へ行く?」 織姫が行くと言った。 彼女は自分の力で一護を守ると。 「私は……織姫が黒崎を守ると言った。その織姫を守るために行く」 の身体が青い光に包まれる。 尸魂界に行く理由はそれだけじゃない。 自分も朽木ルキアを助けたいと思った。 そして、本当の彼女と友だちになるんだ。 虚に襲われた時のルキアは教室で見せる顔とは違っていた。 口調とかも男っぽくて。 でも、そっちの方が何故かしっくりして。 案外気があうんじゃないかって。 それに約束した。 夏休みになったら遊ぼうって。 ウチにおいでと。 だから、彼女を助けに行くために。 「私は尸魂界に行く」 はっきり口にした。 決意も固めた。 青き光は風となっての前に降り立った。 「!」 「今はそれがおぬしの力の証じゃろう。だがまだまだじゃぞ?常に使いこなせるようになれ」 「はい」 それから数日後。 ビルの壁が吹き飛んだ。 「できたーー!!やった茶渡くん、やったあ!!これで尸魂界に行っけるっv」 茶渡も力の発現を見事にこなせた。 「よっしゃ!三人とも合格だよね!」 「ねーちゃんと茶渡くんと三人頑張ったものね〜」 妙な連帯感が生まれるが夜一に一喝される。 「馬鹿者共!!大さわぎになっとるではないか!!さっさと逃げろ!!」 パトカーやら救急車のサイレンが聞こえる。 「う、裏口から!」 三人と一匹は慌てて逃げ出した。 これで尸魂界に皆で行ける… *** 八月一日。 浅野からの召集で花火大会に行くことになった。 尸魂界へ行く前の息抜きとでも思えばいいかと思ったのでも参加することにした。 たつきと織姫と待ち合わせて、途中で茶渡と合流した。 「そっか、インハイ準優勝か。惜しかったね。でも準優勝もすごい!おめでと、たつき」 その腕で頑張ったね〜と織姫と二人ではしゃいでしまう。 たつきの右腕はギプスで固定されている。 二人のはしゃぎようとは対照的にたつきの眉間にはしわがよっている。 「……聞いたよ。あんた剣道部やめたって」 「あ〜うん。やめちゃった…色々考える事があってね。それに夏休み、部活やってられるほど暇じゃないんだ」 「だけどさ」 「……ま、武者修行の旅にでも出るとでも思っておいてよ」 「……」 「心配性だなぁ、たつきは。ね?織姫」 「うん」 たつきの前に一歩でる。 振り向きはしなかったけど。 「たつき…心配かけてごめんね。何も相談しなくてさ。でも自分で決めた事だから後悔なんかないよ」 「…」 「ほらほら〜集合時間に遅れるぞ!」 パッと笑顔を見せる。 「うん」 そしてまっすぐに歩き出した。 (ごめんね、ありがと。たつき。あんたの変わりに私が織姫を守るからさ) それからすぐに浅野たちとも合流して、花火大会会場まで歩き始めた。 会場まで歩いている途中でも教室でのやりとりみたいな馬鹿話をしたりして楽しかった。 夜一とのレッスン中も織姫や茶渡がいたからつまらないとか思ったわけではないが。 友だちと遊ぶのには理由なんかいらない。 単純に楽しかった。 さらに一護の家族が混じり、更に賑やかになり、一護の父が朝から確保したという特等席に向かう事になった。 「それじゃ行くぞ、ヤロウ共!!」 「レッツラドン!!」 大人も子どもも混じって駆け出す。 「…はー仕方ねー俺も行くか…」 一護はたつきの方に振り返る。 「悪りーな、たつき。毎度毎度。イヤなら来なくて大丈夫だからな」 「わかってる、わかってる。心配しなくても後からちゃんと行くって」 この一家とも付き合いが長いからわかっているとたつきは言う。 「早く行ってあげる」 そう言われて一護はたつきたちと別れた。 たつきと織姫は何か話があるようだ。 少し歩いた場所でが待っていた。 「」 「おぅ。遅いじゃん。おじさんたち行っちゃったよ〜」 は一護の隣に並んで歩き出す。 「いいね、楽しい家族でさ」 「そっか?」 「ぶら霊の時も思ったけど、家族のこと結構大事にしているよね、黒崎は」 「な、なんだよ。いきなり…」 「そう思っただけ」 自分はそこまで家族と仲良かったかなと考える。 まぁ悪くはないと思う。 でもあそこまではしゃぐとかお兄ちゃんが大好きですってオーラみたいなのはないなぁと。 一護の妹達が可愛くて思い出してくすくすとは笑ってしまう。 「なんだよ、気色悪りーな…」 「いやいや、羨ましいなと思ったからさ」 「…なぁ、」 「ん?」 「…浦原さんから一応聞いた。お前も行くんだな…」 は一護の顔を見上げる。 少し機嫌が悪いような、口を曲げてを見ている。 はフッと笑みを浮かべる。 「行くよ。そのために夜一さんのレッスン受けたし、部活も止めた」 「なんでそこまですんだよ…理由は?そこまでする理由はなんだよ」 「理由?それは織姫が行くから。たつきの代わりに織姫を守ってあげるの」 そのための力はある。 ここ数日で一撃だけでなく長時間を出す事もできた。 色んな力が形となっている。 「あとは、そうだなぁ。朽木さんと本当の友だちになるの。もっと仲良くなって、帰ってきたら一緒に遊ぶのさ」 「…」 あ、なんだ。 春先に見た夢。 今、思い出した。 あの頃から予知夢とでも言えることを見ていたんだ。 はっきりはしなかったが。 「黒崎だって止めたって行くんでしょ?私も自分の意志で行くの。足手まといになるつもりもない」 「……」 「もう決めたの!」 「……わかった。もう何も言わねぇよ」 「それで良し!」 「期待はしねーけどな」 「なにをーすごいんだからね!私との力は」 「へぇ〜」 「信じてないな!黒崎!今見せてもいいんだぞ」 「ここで見せるな、馬鹿」 一護父の特等席につくまでの間、ずっとそんなやりとりが続いた。 いつからだっけ? 黒崎とこんな風に話せるようになったの? 楽しくていいもんだね。 彼女の能力はあんま関係ないというか、割とどうでもいいですw
05/11/10
12/03/20再UP
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