生生流転




ドリーム小説
#6





「……あれ?」

朝、教室に入って気がついた。
彼女がいたはずの席には別の子が座っていた。

「………」

ちゃん、おはよう!」

「お、おはよ。織姫…」

自分の席でボーっとしていたに織姫が声をかける。

「どうしたの?ちゃん」

「え?あーうん…どうしたって言うか…」

は耳の裏を掻く。
自分でもすっきりしない態度。

そうしているうちに担任の越智が教室に入ってくる。
それぞれ席に着く。

「黒崎ー黒崎一護休みか〜?」

は空いている一護の席をチラっと見る。
更に前方の石田の席も空いている。

先日、この二人は何やら揉めていた。
理由などは知らないし、別に興味も無い。
ただ、突然現れた大虚と言う奴を一護が撃退した。

「黒崎は…遅刻かもしれないし、ま、いっか。次〜」

間違いじゃない。

(…やっぱり…)

呼ばれなかった。

『朽木ルキア』

と。
彼女がいた席には桃原少年が座っているし。
誰も何も言わない。
気がつかない…

休み時間、茶渡には話しかけた。

「おーい、茶渡。ちょっといい?」

「…あぁ」

「あのさ…茶渡も気づいてる?朽木さんの事」

もか?…彼女が消えている」

「何かあったのかな?黒崎も今日来ていないし、何か知ってる?」

茶渡は首を横に振る。
それ以上はも言えなかった。
同じように織姫にも聞いてみたら、彼女もルキアがいないことを不思議に思っていた。
そして誰も彼女を覚えていない事にも。



***



終業式終了後、担任の簡単な言葉で一学期が終わった。
職員室では剣道部顧問にある事を願い出ていた。

「休部したい?やっぱり団体戦も出るつもりはないのか?

「…はい、すみません」

「なんだ、いったい…最近のお前の態度は」

顧問の目からは明らかにに対する不満・不審が見えている。
それでも、今のにはインターハイより大事なものがあった。
朽木ルキアのことを誰も覚えてない事に不審に思ったは織姫と浦原商店に行った。
そこで彼女が尸魂界に帰ってしまった事を知った。
一護は彼女を助けにいくつもりらしい…

「休部が駄目なら退部でも構いません」

…わかった、お前は今日付けで退部だ」

「…はい…今まで色々ありがとうございました…」

は顧問に頭を下げてから職員室を出る。
多分、他の部員から見たら自分は逃げたとしか思われないだろう。
それでも構わない。
部活よりも大会よりも今は大事なことがあるから。

学校を出てまっすぐに向かう。
途中で走る一護と出くわした。

「黒崎!」

「んあ?。なんだよ」

「織姫知らない?」

「あ、あーあっち。多分まだいると思うけどな」

「そっか。サンキュ」

「おう」

彼は再び走り出した。
はその背中を見て笑みを浮かべる。

「私も一緒だからね、黒崎」

少し歩いた先の電話ボックスから織姫が出てきた。

「織姫」

ちゃん、私決めたよ…尸魂界に行く、茶渡くんも行くって」

「そっか。私も……織姫と一緒に行くよ」

「いいの?」

「その為に剣道部やめて来た」

「え!?ちゃん、そ、それは」

織姫は慌てふためき泣きそうな顔をしている。
は苦笑してしまう。

「いいの。休部願い出したけどね。ムリなら退部させてくれって頼んだのこっちだし」

「で、でも〜」

「多分、多分ね…尸魂界行ったらもう竹刀なんて握れない気がする」

これから戦う事を考えると。
そんなに気にすることでもないかもしれないが、は嫌だった。
多分尸魂界であの時みたいに力を振るうと思う。
全てが終わった時に、じゃあまた竹刀を握ろう…そんな気分にはなれないだろうなと。

「いやあ〜我ながら変なところで頭固いなぁと思うんだけどね。もう決めたし」

ちゃん」

「逆にあんたはいいの?」

「うん。行く。行って黒崎くんを守るの」

「そっか。じゃあ私が織姫を守る」

友だちを助ける。
友達を守る。

その力があるならば、私はそれを手にする。



***



尸魂界へ行くと決めた。
朽木ルキアを助けに行くと。
茶渡と織姫と一緒に。

その三人の目の前に今、黒猫が一匹いる。

「レッスン…ですか…?」

「そうだ。尸魂界へ行くというなら受けて貰わねばならん。やれるか?」

(………)

死神を見た。
虚も見た。
更にどでかい虚も見た。

でも今が1番驚いた。

なぜって。

「儂の授業はちと厳しいぞ」

「やります!レッスン!!」

「そうか、お主らはどうじゃ?」

「…あ、あぁ」

「や、やります…」

黒猫が普通に喋っていたから。
では行こうと黒猫夜一は歩き出す。
その後を織姫がはりきって駆け出す。

「…す、すごいな井上は」

「う、うん。何も動じてないよね。そこら辺尊敬しちゃうわ…」

ちゃーん!茶渡くーん。早く〜」

呼ばれて早足で織姫たちに合流する。
そんな三人と一匹が向かったのは石田雨竜がいると言う山だった。

「あーーーーいたいたーーー!!うおーーい石田くーーん!!」

突然の来訪者に石田は随分驚いている。

「…い…井上さん…!?…と茶渡…くん?さん…!?」

いい天気だなぁとは空を見上げてしまう。
綺麗な青が広がっている。
こんな所でのんびりできたら気持ちいいだろうにと暢気なことを考えながら岩場に腰掛けていた。
がそんな事を考えている間に織姫が石田に色々説明していた。

「…レッスン?」

胡散臭い。
そんな風に石田の目は訴えている。

「そう!尸魂界へ行くにはレッスンを受けろって言われて。どうせやるなら石田くんも誘おうと思って!」

「そうか…いや、君達の霊力が最近急激に高まっていたことは気付いていたけど…まさか、そんな形で話が進んでいたなんて……でも師は?一体誰の指導を受けるんだい?」

「…ム…」

「えっと…誰…っていうか…ジツはその人、もうさっきから石田くんの隣にいるんだよね…」

普通は人だと思うだろうに、は苦笑いしてしまう。
織姫の言葉にどんな人物が!?と石田は自分の隣を見る。

「!まさか!?そこまで完璧に気配を消せる人間が…」

「儂じゃ」

「うわあつ!!?」

石田は猫が喋った事で驚き飛び上がる。

「な…なななな何だ一体!?何なんだよこいつはーーー!?」

「…何って言われても」

織姫と茶渡は顔を見合わせて

「「…猫?」」

「見りゃわかるよ、そんなことは!!僕が言っているのはどうして猫が喋っているのかってこと…」

石田はそこで一旦落ち着きを取り戻す。

「い…いや、し…失礼…僕としたことが取り乱してしまった…見苦しいところを見せたね…」

「まったくじゃ。猫が喋ったくらいで情けないぞ、小僧」

「喋るなあ!!」

石田は夜一を叩こうとするが夜一は軽くそれを避ける。

「順応性の低い奴よ。少しはあの小娘を見習ったらどうじゃ?話の本題はそこではなかろう」

「そうだよ石田くん!猫が喋るくらいたいしたことじゃないじゃない!」

(たいしたことだって…織姫ぇ…)

「石田くんだって朽木さん助けに行くつもりなんでしょ!?だったら一緒に夜一さんのレッスン受けようよ!!」

驚き様々なリアクションを見せていた石田だったが、その表情が一転する。
少し冷めたような織姫たちを突き放すような目をして。

「…せっかくだけど…僕は遠慮させてもらう」

石田は腰を上げる。

「な・・・何で!?夜一さん、すごいんだよ!?ここに来れたのだって夜一さんが石田くんの霊気たどってガイドしてくれたからで…」

織姫は夜一を抱き上げる。
それは相手にすごいと思わせるような感じをさせないが…

「…そういう問題じゃないんだ。悪いけど、その“ヨルイチさん”の力とかを信用してないわけじゃない。
僕は、ただ…一人でやりたいだけだ。それに…僕は元々朽木さんを助けに行く気なんて無いよ」

石田は織姫達に背を向ける。

「僕はただ、あの死神達に負けた自分が許せないから修行する。それだけだよ、朽木さんなんて知らないな」

今度は夜一が石田に背を向ける。

「…夜一さん…」

夜一に縋るような目を織姫は向ける。

「聞いた通りじゃ、その小僧には尸魂界へ行く意志は無い。ならば我々もここにはもう用は無い筈じゃ」

夜一が歩き出したのに続きも立ち上がりそれに続く。

「はいはーい、んじゃ、またね石田」

「そん「行こう…井上」

夜一とを止めようとする織姫だが茶渡に止められる。
そして茶渡も歩き出す。

「石田くん…また…気が変わったら、いつでも言ってね……待ってるから」

織姫も去った後に石田は呟くがそれは誰にも聞こえなかった。



始まったばかりの夏休みは、いつもと違うことになりそうだ。








05/11/05
12/03/20再UP